ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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387話

 

 

パーティーの後片付けをしてしまうと修と遊真はふたりだけで屋上に出た。

遊真が三門市を発ったのが7月5日で、3ヶ月以上も離れ離れであった親友が再会したのだから積もる話もあるだろうし、レイジたちがいる場所では話せないこともある。

そういった理由で()()()()()()()()()()ふたりだけで話をする機会を作ってやったのだ。

 

 

「オサム、しばらく会わないうちに顔つきが変わったな」

 

「どういう意味だ、空閑?」

 

「なんとなくだが前にはなかった自信みたいなものが出てきたカンジ?」

 

「なんだよ、その言い方。…でも、そうかもしれない。ぼくはC級の時に特定の師匠を持たず、B級ランク戦だって観戦したことはなかった。積極的に強くなろうという意思がなくて、入隊しただけで無為に半年以上も過ごしてきただけだった。だけど空閑がこちら側の世界に来てから大きく変わった。迅さんに誘われて玉狛支部に異動し、部隊(チーム)を作ってB級ランク戦にも参戦した。毎日が目まぐるしくて、あっという間にアフト遠征。それも無事に終わったことでやっと自分を振り返って見直すという機会が持てたんだ。それでぼくに足りなかったものを見付けて、それを補うことに専念したからな」

 

「オサムに足りなかったモノ?」

 

「ああ。ぼくは訓練生でいる間に学ぶことを学ばず、経験することをせず、共に戦う仲間を作らなかった。それでいて個人(ソロ)ポイントが全然足りないうちに空閑と迅さんのおかげでB級に昇格させてもらったものだから、しっかりとした()()がないうちに家を建ててしまったような不安定でおぼつかない状態になってしまった。でもA級になって遠征に参加()()()()()()()()()ってがむしゃらに前を向いて走っていた。下位や中位グループなら空閑の戦闘力と千佳のトリオン量でなんとか凌げたけど、さすがに上位グループでの試合では苦労した。だから嵐山さんや出水先輩にお願いして射手(シューター)の技術を覚え、スパイダーを使うぼくにピッタリな戦術を使うようになったけど、それって不安定な土台を強化したことにはならない。家の見栄えを良くしようとして色を塗り替えたり飾り付けをしただけなんだ」

 

「ふむふむ…」

 

「だからアフト遠征にはお情けで連れて行ってもらったけど全然役に立たなかったし、A級昇格試験でも不合格になってしまった。ぼくが玉狛支部で先輩たちにいろいろ面倒をみてもらっただけでなく、本部のA級の人たちにも特別に指導してもらい、すごく恵まれた環境にあったのは間違いない。それなのにこの体たらくはぼく自身に責任があることなんだ。それでぼくのことを無条件に肯定してくれる空閑や千佳、それに玉狛支部の先輩たちではない人と接することで何かがわかるんじゃないかって考えた。空閑が近界(ネイバーフッド)へ発った後にポジション別合同訓練というのが行われたんだけど、そこでぼくがダメな理由が良くわかったんだ」

 

「ダメな理由?」

 

「それは友人がいないことだった。誰でもボーダーに入隊したばかりの頃は周りが知らない人ばかりで、個人(ソロ)ランク戦や合同訓練をやっていく中で自分と同じような価値観や戦闘レベルを持つ相手と知り合ってお互いに切磋琢磨していく。あまりレベルに差がありすぎると相手にしてもらえないから、自然と同レベルの人間と頻繁に戦うようになるんだ。でもぼくはそれをしなかった。誰もぼくを誘ってくれないし、ぼくも誰かを誘うなんてこともしなかったから()()()になっていた。それが身に染みたのはポジション別合同訓練の初日の時だ。一緒に戦いたいと思う相手と3人1組の部隊(チーム)を作ることになったんだけど、ぼくは誰からも誘われなかった。ぼくは誰かに声をかけようとしたんだけど、その時にはもう遅かったんだ。ぼくには一緒に戦う仲間が空閑と千佳しかいないんだってここでハッキリとわかった。訓練生の時に空閑のような一緒に戦う仲間を探しておくべきだったって」

 

「……」

 

「それでしばらくして攻撃手(アタッカー)の岡宮って後輩がぼくに声をかけてきた。彼はレイガストを選んだものの師匠となって指導してくれる正隊員がいないってことでぼくを頼ってきたというわけなんだ。だけどぼくは後輩に指導できるほど立派な人間じゃないからと言って断った。それは事実で嘘じゃない。ただ本当の理由はぼくには彼に対する後ろめたさがあったからなんだ。正々堂々と入隊して正隊員を目指し努力している彼と、入隊試験に落ちたというのに迅さんという影響力のある人間に拾われただけでなく正隊員として相応しい実力もなくB級に昇格させてもらったぼく。それでぼくは逃げてはいけない状況で逃げてしまったことに罪悪感をも抱いた。そこで自分で自分が嫌になってヤケを起こそうとした時、なぜだか霧科先輩のことを急に思い出して、あの人ならこう言うんじゃないかって想像したら冷静になれたんだ」

 

「ほほう…それで?」

 

「あの人はいつでも過去は変えられないけど未来ならいくらでも変えることができると言って、過去の出来事をなかったことにはせずに、きちんと心の整理をして前へ向かって進んでいる。自分がB級に昇格した手順が納得できるものでないのなら、結果を出して自分自身に納得させるしかない。大事なのは手順ではなくどれだけの結果を出すかなんだって言いそうだなって想像したら気が楽になった。だからぼくはもう一度訓練生だった時の自分に戻り、同じ訓練生の岡宮くんと一緒にレイガストの訓練をすることにした。師弟関係なんかじゃなく同じ目的を持つ友人としてだ。するとぼくはずっと抱え込んでいた負い目みたいなものが消えていくような気がして、足元の不安もなくなっていった気がしてきた。土台をしっかりと踏み固めて頑丈な家を建てても大丈夫なようにしたからだと思う。それで今までの不安が消えたから、空閑が言うように自信みたいなものが生まれてきたんじゃないかって思うんだ。それに1週間くらい前にトリオンの計測をしたら少しだけだけど数値が上がっていた。これは霧科先輩にトリオン器官を鍛えるためにはトリオンを消費するようにして訓練をした方がいいと言われていたから実践してみたんだ。ぼくの決定的な欠点はトリオン能力の低さだから、こうして少しずつでもトリオン量を増やすことも続けなきゃって思うよ」

 

修の話をずっと聞いていた遊真は自分のことのように喜んだ。

 

「よかったな、オサム。この約3ヶ月はオサムにとって必要な時間で、ひとりになったことでひとりではなくなったってことか」

 

「ああ。それに訓練の成果もあって岡宮くんはB級に昇格したんだ。だからレイガスト以外の武器(トリガー)の相談に乗ったり、本部基地での個人(ソロ)ランク戦もやっている。勝率はあまり自慢できるものじゃないんだけど、やっていて楽しいって思えるようになった。空閑がよく本部基地に出かけて行って村上先輩や緑川たちと個人(ソロ)ランク戦をやっている気持ちがわかった気がするよ」

 

「それは上々。オサムはこれまで格上の人間に教わるばかりだったけど、同レベルの奴と何度も繰り返し戦うことで自分を鍛えるってことを覚えたわけだ。おれも昔は親父から教わるばかりだったけど、そのうちにいろんな国でおれと同じようなトリガー使いを相手に訓練をするようになった。そのおかげで与えられるだけでなく自分から発見して手に入れるということを覚えたんだ。そしてその方が楽しいし上達するってわかった。オサムもそのことが理解できたってことだな」

 

「ああ」

 

「じゃあ、次のシーズンには玉狛第2を再結成して、今度こそA級を目指すぞ!」

 

「いや、実は…」

 

修は遊真の留守中にA級昇格の規定(ルール)が変わったことを説明した。

 

「そっか…市民救出計画が終わらないとB級はいつまでもB級のままなのか。それだと玉狛第2として遠征に参加することはできないってことか?」

 

「そういうことになるな。だけどぼくは諦めてはいない。遠征の参加資格は()()()()()A級隊員ということで、アフト遠征の時のようにB級からも選ばれる可能性はある。玉狛第2(チーム)としては無理だけど解散したんだから空閑は個人(ソロ)で参加できるし千佳は機関員としでの参加は確定だ。だったらぼくがなんとかして遠征メンバーに潜り込めるように努力すればいいだけのこと。そうすればまたみんなで一緒に近界(ネイバーフッド)へ行けるんだ」

 

「そして今度こそチカの兄さんと友だちを探す手がかりを見つけような」

 

「ああ、約束だ」

 

星空の下、ふたりは固く手を握り合った。

 

 

◆◆◆

 

 

翌日、城戸から午前10時に本部基地の会議室に来るよう言われていた遊真はそれよりもずっと早く玉狛支部を出てツグミに会いに行った。

城戸たち上層部のメンバーに報告する前にツグミに話しておきたいことがあるからだ。

レプリカの修理ができたのはツグミがトロポイはエクトスに近い場所にあると推測し、遊真が調査に最適の人材であると城戸たちに推薦したからで、その礼を直接言いたいだけでなく相談をしたいことがあったためである。

ツグミには昨日のうちに約束していたため、寮に着くとすぐにミーティングルームに案内された。

 

「ユーマくん、長旅お疲れさまでした」

 

「いやいや、何年も相棒と一緒に旅をしてきたおれにはどうってことはない。それに帰りはその相棒がいてくれたからな」

 

遊真はそう言って指輪からレプリカを登場させた。

 

〔はじめまして…ではなかったのだな。しかし改めて自己紹介をしよう。私の名はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。以後よろしく〕

 

レプリカの記憶装置には三門市で起きたすべての事象が消えてしまっているから、ツグミとは初対面ということになる。

しかし遊真によって修との邂逅から旧弓手町駅での三輪隊との戦い、ボーダー入隊、アフトクラトルによる大規模侵攻…と話は聞いていて知識としては戻ったものの、それは単に音声入力されたデータに過ぎない。

レプリカの能力は自身が体験して得た「経験値」が高ければ高いほどその性能を発揮するため、遊真が関わりのあった人物に直接会わせることでデータを経験値へと変えようというのだ。

 

「わたしは霧科ツグミ。こちらこそよろしくね、レプリカ」

 

〔ツグミがボーダーの人間に働きかけてくれたおかげで私の修理の時期が早まったとユーマから聞いた。感謝している〕

 

「そんなこといいのよ。こっちもユーマくんがエクトスへ行ってくれたことにすごく感謝しているんだもの。それにあなたの近界(ネイバーフッド)の情報はボーダーにとって欠かせないものだから、あなたが早く()()()()することは大歓迎なのよ。だからこれからもユーマくんとあなたにはボーダーのために働いてほしい。お互いにとって利害関係が一致したってだけ。そう考えてくれると気が楽になるわ」

 

〔なるほど、それがツグミの思考の基本なのだな。理解した〕

 

こうしたコミュニケーションによって単なるデータが経験値へと変わっていくわけで、失われた部分と大規模侵攻から現在までのデータは入力済みであるから、あとはできるだけ大勢の関係者に会わせることでアップデートしていくだけだ。

前日のパーティーでも玉狛支部のメンバーとは可能な限り会話をして、遊真から与えられた()()()()()()()()()()をアップデートし、さらに新しい情報を加えていった。

しかし遊真と関わりの深い人物でありながらツグミはパーティーに参加していなかったので、翌朝一で彼女に会いに来たというわけであった。

 

「きりしな先輩はなんで昨日玉狛に来なかったんだ? 迅さんは来てくれたのに」

 

少々不満そうに遊真が訊くものだから、ツグミは正直に答えた。

 

「だってわたしはもう玉狛支部の所属じゃないもの。それに昨日はちょっと忙しくて、夜は手が離せない用事があったのよ」

 

「用事って?」

 

「今日は忍田本部長の誕生日。今夜は実家に帰ってお祝いをしてあげようと思っていたから、昨日から料理を作って準備をしていたってわけ。わたしにとってはこれからいつでも会えるユーマくんとレプリカの帰還お祝いパーティーよりも父親の誕生日祝いの方が優先なの。だって34歳の誕生日の夜をひとりで過ごさせるわけにはいかないでしょ? 誕生日だっていうのにお祝いしてくれるのが娘だけの寂しい人なのよ、忍田本部長のプライベートって」

 

「そうなのか…」

 

「それで今度はこっちから質問だけど、城戸司令たちへの報告の前に何かわたしに話しておきたいことがあるからここに来たんでしょ? 普通の相談事だったらオサムくんにするだろうけど、たぶん彼の手には余る内容なんじゃないかな?」

 

ツグミの推理が的中したらしく、遊真はニヤっと笑って話を始めた。

 

「きりしな先輩はトロポイがエクトスに近い場所ってことはキドさんやシノダさんたちに内緒にしてただろ。それなのにレプリカが元に戻っているとなればそこんところを追求される。でもいつまでも隠しておくこともできないからレプリカが元気になったってことは報告しなきゃならない。報告するならトロポイって国のことも話さなきゃいけないだろうけど、そうなると困ることになるんだ」

 

「何が困るの?」

 

「それには深い事情があって…」

 

遊真はトロポイでの出来事を話すのだが、それは十数年前の有吾とトロポイの因縁にまで遡るものであった。

 

「おれが生まれる少し前、親父は近界(ネイバーフッド)のいろんな国をひとりで旅していた。今でもそうだけど近界(ネイバーフッド)の国は治安がいい国は少なくて、内戦とか戦争とかやってる国の方が多い。だから親父はそんな国では傭兵みたいなことをやっていた。一宿一飯の恩義って言うらしくて、世話になった国がヤバイ時には加勢して大勢の人間を救ったんだってさ。その中でトロポイに来た時もどこかの国と戦争の最中で、親父は国軍に加わって戦うことになったんだそうだ。それで親父の活躍で敵を追い払ったもんだから英雄扱いされて、トロポイの名誉国民ってことで当時の最新技術の自律型トリオン兵の作成技術を教えてもらってそこでレプリカを造り上げた。国の最高機密ってことだから絶対に国外に持ち出ししてはいけない技術のはずなんだけど、当時の国王が感謝の気持ちを表したいと言うもんだから、親父は悪用しないって約束で教わったらしい。だけど他所の国でレプリカのことをどこでどうやって手に入れたのかなどは絶対に口外しないようにって約束させられた。おれも親父から話を何も聞いていなかったからレプリカの故郷のことやどうやって親父と旅をするようになったのかなんて全然知らなかったんだ。親父はちゃんと約束を守ったってことだな」

 

トロポイは近界(ネイバーフッド)の国の中でも非常に古い国で、トリオンやトリガーの文明も他国よりははるかに進んでいる。

そして軍事目的ではなく、国民の日常生活に役立つ技術を発展させていき、自律型トリオン兵も軍事利用ではなく生活の中で様々な活動の支援を行うことを目的として作られた。

しかしその技術を奪おうとして他国が諜報員を送り込んでくるのは当然の流れで、そもそも戦争を好まない温和なトロポイ国民は潜入した敵国の諜報員を捕らえると記憶を消して偽の記憶を植え付けると解放していたそうだ。

そのおかげでトロポイという国の存在すら不確かな存在となり、自律型トリオン兵のことも人々の記憶から消え去ったのだが、アフトクラトルのヴィザが知っていたのは彼が若い頃にはまだトロポイの名は有名であったからだろう。

ゼノンたちが使用していた国家の配置図でもその存在は記されていたが、その国がトロポイであるとは断定されてはいない。

謎に包まれた正体不明の国だからトロポイである可能性が高いと判断した結果ビンゴであったわけだ。

有吾は約束どおりに息子の遊真にすらレプリカの由来について話はしなかった。

だからこそトロポイの技術者(エンジニア)は有吾の息子のためにレプリカを修理してやったのだった。

 

「でもトロポイのことを内緒にしなきゃいけないのにどうしてわたしに喋っちゃったの? それってマズイんじゃない」

 

「うん。そのことについてはトロポイの技術者(エンジニア)に『どうしても話さなければいけない場合、信用できる相手ひとりだけならいい』って許可をもらってある。だってレプリカの存在はキドさんたちだって知ってる。レプリカを修理したことをずっと隠し続けることができないんだから、トロポイに行って直してきたことを正直に言うべきだとレプリカが言うんだ。それできりしな先輩にだけ説明をして、どうしたらいいのか判断してもらったらいいだろうって()()が決めた。この話はオサムにも内緒なんだ」

 

「つまりわたしが他の人にペラペラ話してしまわないって信用してくれているってことでしょ? だったら全面的に協力しないといけないわね」

 

「きりしな先輩ならそう言うと思った。それでどうしたらいいのかキドさんたちに会うまでに考えてくれると助かるんだ」

 

本来なら修に相談したかっただろう。

しかし修では他人を上手く誤魔化すシナリオを考えるのは得意ではないし、城戸たちの前で平然と演技をするのも無理だ。

レプリカには城戸たちのデータはあってもどんな人間なのか不明な点が多いために欺くことは難しい。

そこで城戸たちのことを良く知っていて、嘘であってもそれが真実であるかのように上手く相手を丸め込める技術を持っているツグミが最適だと判断したということである。

 

「そうね…()()()()()()()()()()()()の場所を知っているのはゼノン隊の3人だけで、彼らがわざわざ上層部のメンバーに告げ口するはずがないから、彼らにはその国がトロポイではなかったと言っておきましょう。そうすればトロポイの正確な場所を知るのはあなたとレプリカとわたしの3人だけになる。あの3人が信じてくれるかどうかはわからないけど、わたしは彼らのことを信じているからわたしの『嘘』を本当のことだと思ってくれるはず。それでエクトスへ行く途中で立ち寄った国が()()()()トロポイであったため、レプリカの修理が済んでからエクトスへ向かった。その時にトロポイの情報を他国の人間に漏らしてはいけないからという理由であなたがトロポイに立ち寄ったことやレプリカの修理をしたことなどの記憶を消されてしまったことにすればいい」

 

「記憶がないのになんでそんなことを知っているんだって突っ込まれたら?」

 

「もちろんレプリカに説明してもらったことにするのよ。あなた自身はトロポイに関する記憶は一切ないんだけど、レプリカはそのことを覚えていてあなたに説明した。それでOKでしょ。レプリカなら城戸司令たちに追求されても上手くあしらうことができると思うわ。トロポイの人にとって国の情報が他国の人間に漏れなければいいわけで、有吾さんのことと彼の息子であるあなたを信頼しているからこそ信義を尽くしたのだから、わたしは友人たちのために働いてくれたトロポイの人の恩に報いるために絶対に約束は守る。…ねえレプリカ、あなたにお願いがあるんだけど話を聞いてくれる?」

 

〔ああ、いいとも〕

 

「今ここで話をしたことはすべて記憶したわね?」

 

〔もちろん。一言一句すべて正しく記録されている〕

 

「それなら万が一わたしがトロポイの情報を他人に漏らした場合は、()()()()正しいと判断する処分の仕方をしてかまわない」

 

〔処分というと命を奪う…という意味か?〕

 

「ええ、それも含めて」

 

〔それくらいの覚悟があるということなのだな?〕

 

「もちろん。トロポイの人は有吾さんのことを名誉国民として慕っているくらいだもの、その息子のユーマくんに対して精一杯の気持ちを込めてあなたを修理した。ここであなたやユーマくんのことを無視したってよかったはずなのに誠意を尽くしてくれたんだから、その気持ちに応えるのが義務ってものよ。わたしは嘘をつくことがあるけど、その嘘で誰かを傷つけようってことじゃなくて真実こそが誰かを不幸にしてしまう時だけ。ユーマくんとあなたがこのまま三門市で仲間たちと楽しく暮らしていくためになら城戸司令たちに嘘をつくこともためらいはない」

 

〔その言葉を信じよう。…実は私を修理した際、機密漏洩の恐れがある場合は対象者のトロポイに関する記憶を消去するシステムが技術者(エンジニア)によって新規に加えられた。しかしそれを使うことはなさそうだな〕

 

「ええ。…それでわたしが話したことに嘘がないってことはユーマくんが保証してくれるわよね?」

 

ツグミがニコニコしながらで遊真に訊くと、彼は大きく頷いた。

 

「ああ。きりしな先輩の言葉に嘘はない」

 

「ありがと。レプリカもわたしがどんな人間なのかがこれで少しはわかってもらえたと思う。だから安心してユーマくんのフォローはわたしに任せてね」

 

〔了解した〕

 

「じゃあ、本部基地へ行きましょう」

 

 

 

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