ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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392話

 

 

二宮の顔を見たとたん、鳩原は堪えきれなくなった涙をポロポロと零しながら肩を震わせて言った。

 

「ごめんなさい。本当にごめんなさい…」

 

ひたすら謝る鳩原に対し二宮は呆れてしまった。

ツグミに案内されてこの部屋へ来るまでにアバウトだが鳩原の行動について聞かされていて、人を撃てるようになったことを知った彼は「鳩原も成長したのだな」と感慨深く、密航事件のことを責める気は一切なかった。

それなのにこの反応によって「全然変わっていない」ことがわかってしまった。

別にそれを否定するわけではないが、1年半ぶりに会ってお互いに「元気だったか?」と確認するのが自然の流れだというのに、今まで見せたことがないような泣き顔で謝罪するだけであるから怒りよりも呆れてしまったのだ。

 

「相変わらずだな、鳩原。おまえが謝罪するのは勝手だが、俺はおまえを責めに来たのではないぞ」

 

「……」

 

「俺はあの時に起きた事実が知りたいだけだ。まあ、霧科が仮説を立てていろいろ話してくれて、それがほぼ事実だったらしいがな。だが俺はおまえの口から直接話が聞きたい」

 

「わかりました…」

 

鳩原はハンカチで涙を拭うと呼吸を整えてからすべてを正直に告白した。

遠征参加が決まったというのに自分だけ不合格にされてふさぎ込んでいた時、麟児が近付いて来て心の隙間に入り込んだ。

弟を探しに行きたいといってボーダーに入隊してそのチャンスがやっと巡ってきたというのに、あと少しで近界(ネイバーフッド)へ行けるという直前にハシゴを外されてしまったようなもの。

そこに麟児から弟の智史を探しに行こうと声をかけられたら冷静な判断などできるはずもなく飛びついてしまうに決まっているのだが、彼女は()()()()()()密航とそれに伴う訓練生用トリガーの窃盗を行ったと断言した。

そして麟児の連れて来た()()()と共にエクトスへと向かったのだった。

この時点で麟児は自分がエクトスから来た近界民(ネイバー)であることを告白しており、それを承知で積極的に協力をしていた。

エクトスで麟児はふたりの協力者の男たちを()()、自分が教えたボーダーの情報を報告したことで功績を認められ、約400人の三門市民の行方の情報を手に入れることのできる立場となったことで智史がレプトにいることが判明した。

麟児が探している青葉がヒエムスにいるということで、先にヒエムスへ行ってからレプトへ向かったのだが、レプトに智史はいなかった。

最終的にほぼ自力で三門市に帰還した智史と再会し、これでもう自分がどんな罰を受けてもかまわないと言って口を閉じたのだった。

 

二宮としてはこれで十分であった。

特に近界(ネイバーフッド)のことが知りたいとか、行方不明の市民の居場所など個人的に知りたいとは思わないからだ。

ボーダーの任務として潜入調査でヒエムスへ行くことは決まっているものの、彼女に聞いたところでほとんど役には立たないとわかっている。

ただ単に彼女がどのような経験をしたのかを本人がどのように語るのかを知りたかっただけで、彼女が暢気に物見遊山で行ったのではなく自分の身に何があってもかまわないから弟を連れ戻したいという一心だったのがわかればそれでいいのだ。

 

鳩原が懺悔のような告白を終えると、今度は二宮が鳩原のいない二宮隊の推移について話した。

彼女の密航事件の責任をとる形でB級に降格されたがアフトクラトル遠征の後にA級に返り咲いたことと、まだ二宮隊には新たなメンバーを加えずに犬飼と辻と氷見の4人で()()()()()()()()()()()日々の任務を淡々と行っていたこと。

そのどちらも鳩原にとっては嬉しくもあり辛くもあった。

後先考えずに愚かな行為に走った自分のことを恨みもせず、今でもチームメイトとして迎える気持ちがあるのだと思うと心の底から嬉しくてすぐにでも戻りたいと思うのだが、それが不可能であり罪滅ぼしができない事実が彼女を打ちのめすのだ。

 

(せっかく人と撃てるようになってみんなの役に立てるようになったのに、もうあたしの居場所はここにはない。自業自得だし、こうなることはわかっていたけどやっぱり辛いな…)

 

密航事件のことは公になっていないが、公式に鳩原は隊務規定違反によって除隊という処分を受けたことになっている。

だから今さらどう足掻いても復帰することはできない。

そもそも弟を探すという目的が果たされた以上はボーダーにいる理由はなくなり、自分が二宮隊に未練さえなければ丸く収まることなのだ。

二宮もそのことは十分承知しているから鳩原の復帰は諦めている。

 

「弟が無事に帰って来たのだ、おまえもボーダーや近界民(ネイバー)のことなど忘れて普通の幸せを掴むために新しい人生を始めろ。俺もこれで心の整理ができた。おまえの私物はまだ隊室に置いてある。あとで家に届けておいてやろう」

 

「最後まで面倒をかけてすみません」

 

「気にするな。それにボーダーを辞めても俺や犬飼たちはおまえの友人としてそばにいる。携帯の番号は以前のまま変わってはいない。だから何かあればいつでも俺に連絡をしろ」

 

「ありがとう…ございます」

 

「俺はもうこれ以上は何もできないが、霧科の奴が悪いようにはしないはずだ。あいつはおまえのことを友人だと信じていたからあの時はずいぶんと悔しかったらしいぞ。今度はもうあいつを裏切るようなマネはするなよ」

 

「はい」

 

「……」

 

「……」

 

「…そろそろ時間だな。俺は帰る。犬飼と辻と氷見にも面会できるよう城戸司令に頼んでみるが、あまり期待をしないで待っていろ」

 

そう言い残して二宮は鳩原の部屋を出た。

ドアが閉まったその直後、鳩原は誰もいない部屋の中で嗚咽するのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

二宮が去ってしばらくすると、B級ランク戦・昼の部を終えたユズルがツグミに連れられて鳩原の部屋を訪問した。

これはツグミが気を利かせて城戸に面会を頼み込んだことで叶ったものである。

城戸はツグミの「鳩原元隊員と絵馬隊員は師弟関係にあり、絵馬隊員の将来を考えるなら会わせるべきである」という進言を認めたのだ。

ユズルは鳩原が近界(ネイバーフッド)へ密航したことすら知らずにいたから彼女の帰還を信じられずにいたのだが、実際に会って話を聞くと自分の知らない鳩原未来の姿が見えてきたのだった。

狙撃手(スナイパー)の先輩で師匠だった彼女のことを慕っていたものの、彼女のことを何も知らなかったユズル。

弟を探すために入隊し、人が撃てないというのに近界(ネイバーフッド)へ行きたいがために死に物狂いで訓練をして武器のみを破壊するという超技能を身に付けた。

それでやっと遠征部隊に選ばれたと思ったら人を撃てないからと失格になり、近界民(ネイバー)に誘われて近界(ネイバーフッド)へと密航したという彼女の気持ちを自分は何も知らずにいて、ただ上層部の発表を鵜呑みにして彼女を追い詰めた人間を恨んでいただけであったことを恥じたのだった。

 

「鳩原先輩、オレ…何も知らなかった。ゴメン」

 

今さらながらとは思いながらもユズルは自分の無知を恥じて鳩原に謝った。

それに対して鳩原は穏やかな笑みを浮かべながら答える。

 

「ユズルは全然悪くないよ。悪いのはあたしなんだから。あたしがもっと他人との付き合いが上手くできたら誰かに相談しただろうし、もちろんユズルにも話をしてどうしたらいいのかひとりで悩むなんてことはせずに済んだ。…違う。きっと相談したらおまえは人を撃てないんだから近界(ネイバーフッド)へ行けば死ぬって止められるのがわかっていたから誰にも言えなかったんだ」

 

近界(ネイバーフッド)遠征は「(ブラック)トリガーに対抗できる」と判断された隊員のみが参加を許されるもので、人を撃つことができない彼女が参加を取り消されたのは仕方がなかったこと。

鳩原は自分でも人が撃てないことで近界(ネイバーフッド)へ行く資格がないことは十分承知していたからこそ誰にも言えなかったのだ。

たとえ近界(ネイバーフッド)遠征に参加したとしても智史を探す手がかりを掴むことなどできなかっただろうが、あの時の彼女には近界(ネイバーフッド)へさえ行けば手がかりを得られると盲信していた部分がある。

だから何が何でも近界(ネイバーフッド)遠征に参加したかったのだが自身の弱さのためにそれが叶わないと確定してしまい、そこに麟児が近界(ネイバーフッド)へ一緒に行こうと声をかけてきたものだからその誘いに乗ってしまったというわけだ。

 

「みんなに迷惑や心配をかけてしまったけど、この1年半の近界(ネイバーフッド)の旅はあたしに必要なことだった気がするんだ。あたしがこんなことをしなくても智史は帰って来ただろうけど、あたしが智史を探して旅をしたことは無駄じゃなかった。そう思いたいだけなのかもしれないけど、少なくとも人が撃てないという弱さからは脱することができたから」

 

その言葉は単なる負け惜しみや思い違いではなく本心からのものだということがユズルにもわかった。

 

「鳩原先輩が納得しているのならオレはそれでいい。それに…人が撃てるようになったとしても先輩は戦うことに向いてないから、もうボーダーや近界民(ネイバー)とは関わらない方がいいかもね」

 

「あたしもそう思う。智史が帰って来てくれたからもうあたしには戦う理由がないもの。それにあたしがボーダーに残りたいと希望したってダメなものはダメ。これでいいんだと思う。…それよりもユズルのことを教えて。今でも影浦隊で頑張ってるんでしょ?」

 

「うん。ここに来る前にB級ランク戦で戦ってきたんだ。今日は12戦目で、生駒隊と鈴鳴第一との三つ巴で勝ったよ。影浦隊は初戦から1位をキープしている」

 

少し自慢げに言うと鳩原が微笑んで言った。

 

「やっぱりすごいね、ユズルは」

 

「そんなことはないよ。影浦隊が勝てたのはオレだけの力じゃないし。それに師匠が素晴らしい狙撃手(スナイパー)だったから」

 

鳩原は弟子の成長が嬉しくて涙が出そうだがグッと堪えた。

 

「あたしには何もしてやれないけど、もう大丈夫だね?」

 

「…うん」

 

まだ指導してもらいたいという気持ちはあるが、鳩原に心配はかけたくはないものだからユズルは曖昧な返事をするしかなかった。

 

 

◆◆◆

 

 

ひと通り面会を終えた麟児、鳩原、青葉の3人。

この中で青葉だけは拉致被害者であり、健康に問題がないと判断されたために家族と一緒に帰宅することになった。

ただし智史のケースと同じように近界(ネイバーフッド)から帰還したことが周囲に知られると大騒ぎになるということで、しばらくの間は定期的に白峰医院へ通う以外は外出をせずに家の中で過ごすよう指示されている。

そしてボーダーが手配した家庭教師を家に派遣し、近界(ネイバーフッド)にいた約6年間の遅れを取り戻すことになる。

学力の面で追いつくことができれば中学3年に編入して卒業できるようにしたいと青葉自身が願っているので心配はいらないだろう。

 

問題を起こした麟児と鳩原についてはまだ自宅に帰ることは叶わず、上層部の会議で処分を決めることになるからあと数日は本部基地に滞在してもらうことになる。

特に麟児の扱いについては非常に難しい。

本人は積極的にボーダーに情報提供する意思があるからそれを利用しない手はないのだが、そうなれば彼に対してそれ相応の「対価」は支払うべきである。

場合によってはボーダーに入隊してもらって今後も継続的に協力をしてもらうという道も選択肢にはあり、近界民(ネイバー)で敵であったとしても協力者となるのであれば受け入れる体制が整っている。

さらには城戸の近界民(ネイバー)に対する感情もだいぶ和らいできたので特に心配はないとツグミは考えていた。

しかしひとつだけ問題が生じてしまった。

千佳がボーダーに入隊した理由が兄と友人を探すために近界(ネイバーフッド)へ行きたいというものであった。

だが麟児と青葉が戻って来たのだから彼女がボーダー隊員を続ける理由がなくなるわけで、彼女が辞めてしまうとこれからの遠征計画を大きく変更しなければならなくなるのだ。

千佳のトリオン能力に頼る部分が大きいから、彼女がいないと遠征艇を元の大きさに戻して少人数での遠征となってしまう。

そうなった場合は計画を変更して行うことになるが、ボーダーとしては彼女を失うのはダメージが大きいとして引き止めることになるだろう。

さらに修が千佳を守るという意味もなくなり、ボーダー隊員を辞めてしまう可能性もある。

もし遊真の身体を元に戻す手段が近界(ネイバーフッド)のどこかの国にあるのではないかと考えたなら、ボーダーを辞めて遊真と一緒に独自の行動をするに違いない。

修はともかく千佳と遊真が抜けてしまうと近界(ネイバーフッド)遠征だけでなく三門市防衛にも大きく影響することになるのは確実で、ツグミは麟児を上手く利用してこの問題の解決を企んでいたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

家族と対面した翌日、鳩原は帰宅を許されてひとりで自宅へと帰って行った。

本来なら記憶封印措置をされてボーダーに関する記憶をすべて失うことになるのだが、今回は特例として記憶はそのままということになっている。

理由は彼女が記憶を保持していてもボーダーにとってマイナスにはならないというものである。

彼女が昨年の5月に除隊された時にはA級隊員であったが、現在はタダの民間人でトリガーも持っていないのだから()()()()()()にとって何の価値もない。

B級であっても現役の隊員ならトリガーとセットで価値はあるが、今の鳩原にはそれはないのだから諜報員たちの標的(ターゲット)になる可能性はほぼゼロだ。

さらに鳩原家は智史の件もあって親戚のいる四塚市へ転出することに決まっていて、そうなれば鳩原家の家族は誰にも気付かれずに静かに暮らしていくことができるはずである。

記憶封印措置が行われるほどの重罪を犯したのは事実だが、ボーダーで経験したこと ── 二宮隊のメンバーやユズルたちとの交流 ── は鳩原にとって宝物のようなもので、それを彼女から奪ってしまうことは密航事件の罰としては重すぎるとツグミは進言したのだ。

可能であればボーダー隊員だった頃の記憶はそのままにしてほしいと鳩原が言い、ツグミはその気持ちを尊重したのだった。

上層部メンバーの多数決により1年半前の「隊務規定違反により除隊」がそのまま適用されるものの記憶封印措置は行われないことに決まった。

以前の城戸であったならこのような()()()()()()()は考えられなかったが、彼の気持ちに大きな変化があったことが理由であるのは間違いない。

 

 

そして10月31日の早朝、ゼノンを隊長とした太刀川・風間・二宮・遊真・レプリカの調査隊がヒエムスへと向かって旅立ち、同じ日の昼には鳩原一家が四塚市へと引っ越して行った。

鳩原一家が発つ日はツグミしか知らず、鳩原との面会を許されなかった犬飼、辻、氷見の3人を連れて行き、4人で鳩原の旅立ちを見送ったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

11月に入ってもまだ麟児の()()が決まらずにいた。

それよりも優先すべきことがたくさんあって彼のことは後回しにされていたのだが、さすがにいつまでも本部基地の地下にある「独房」に閉じ込めておいては人権問題にも発展しかねない。

彼は捕虜ではないのだし、青葉を連れて帰って来てくれた()()でもあるわけで、陽の光の当たらない建物の奥の一室に閉じ込めておくことは理不尽だということになり、いつものようにツグミが彼の身柄を預かることになった。

修や千佳のいる玉狛支部という案もあったが、そうなると「玉狛支部が()()近界民(ネイバー)を擁護して何かを企んでいる」と痛くもない腹を探られると林藤が拒否したために弓手町の寮のミーティングルームを麟児に使わせることになったのだ。

こうして新たなエクトスの近界民(ネイバー)が入居することになり、先住の近界民(ネイバー)たちは「玄界(ミデン)暮らしの先輩」として麟児を歓迎することになる。

そうなったのもすべては「近界民(ネイバー)であっても友好的な人間であれば受け入れる」という玉狛支部の思想のさらに上を行くツグミの考え方によるもので、キオンの3人にとって彼女は恩人であり、エリン家の家族やヒュースにとってもディルクを救ったという実績があって全面的に信頼されているから彼女のやることに賛成してくれるのだ。

こうして「レジデンス弓手町」の住人がひとり増えることになったが、一時的な滞在者を含めれば6ヶ国目の近界民(ネイバー)となる。

麟児は原則としてボーダー隊員や市民との接触を避ける規定(ルール)ではあるが、修や千佳がツグミや迅に用事があって寮を訪ねて来ることがあって()()にも麟児と顔を合わせてしまうのは仕方がないこと。

それに世間から隔離された寮内で何があったところでツグミと迅さえ目撃していなければ、住民の近界民(ネイバー)たちが寮内であったことを上層部メンバーに告げ口をすることもない。

さらに麟児に関することは口外無用であり、修と千佳には玉狛支部のメンバーに対しても絶対に話をしないようにときつく口止めをしていて、このルールを破ったら()()だと言ってあるので心配はいらないとして監視もしないことにしている。

さっそく麟児が入寮した翌日に修と千佳が()()()()()()()()()()()、修と千佳と麟児は誰にも邪魔されずにゆっくりと3人で積もる話をしたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

上層部メンバーと一部の隊員たちしか知らない事件が次々に起きていた間、一般隊員たちは()()()()を続けていた。

B級ランク戦も順調に進んでいて、上位グループの7部隊(チーム)は混戦状態である。

スタート時は1位から順に影浦隊、生駒隊、王子隊、東隊、那須隊、弓場隊、鈴鳴第一であったのだが、那須隊の狙撃手(スナイパー)の日浦茜が抜けてまだチームメイトの補充ができていないものだから順位を下げてしまい、その代わりに荒船隊と香取隊の2部隊(チーム)が上位グループに入ったり落ちたりしていた。

それが10月のC級隊員昇格試験で出穂がB級に昇格したということで、彼女を新しいメンバーとして加えることになった。

途中での加入は認められているものの、やはり昇格したばかりでまだチームメイトとの連携にも慣れていないためになかなか上位グループには復帰できずにいる。

今期は11月29日が最終ラウンドになるため、那須隊が上位グループに復帰するとしたら来期になりそうだ。

 

 

10月26日に行われた昇格試験では攻撃手(アタッカー)89人、射手(シューター)61人、銃手(ガンナー)78人、狙撃手(スナイパー)33人が受験した。

前回の時よりも受験者の数は4割ほど増えており、合格者は54人となり合格率は約45パーセントで前回が約41パーセントであったからわずかだがアップしている。

そして10月で辞めていくC級隊員が約200人出た。

今回で受験資格を失ってしまい除隊が決定してしまった者、2回続けて不合格で自信を失った者、新規で入隊してくる後輩たちと比べて自分がボーダー隊員として相応しくないと気付いた者など、ボーダーを去っていく者が現れるのは仕方がないことだ。

なにしろ19日の入隊式からたった1週間で試験を受けて合格したC級隊員がふたりもいて、才能の差というものを見せ付けられてしまえば自信を失うのも無理はない。

これで入隊してから半年以上経っても正隊員になれなかったC級隊員が全員除隊になったため、C級隊員の数は以前の半分以下にまで減った。

こうしてC級隊員の数が増えすぎてしまった問題は一旦解決したのだが、除隊となった()C級隊員の中には三門市民を守りたいという熱意だけは十分認められる者がおり、そういった約半数の90人には救済措置のようなものが設けられた。

ボーダーが有事と判断した時に召集に応じて市民の避難誘導等の任務に携わるいわゆる「予備役」である。

もちろん武器(トリガー)の使用はできず、敵と戦うのではなく市民の安全を守ること()()を目的としたものだから戦闘能力は特に必要はない。

アフトクラトルによる大侵攻で民間人への被害がなかったのはC級隊員による避難誘導があったからだと上層部も認めており、戦闘員だけでなく民間人を守るための隊員は必要だと考えていたところにツグミが提案をしたという経緯がある。

そこで予備役の隊員たちはシールドのチップがセットされただけのトリガーホルダーの所持が認められることになった。

緊急時以外に使用すれば即刻没収されてしまう厳しい規定(ルール)だが、本気で市民を守ろうという気持ちさえあればこの条件であっても十分なのだ。

そして()()()にトリガーホルダーを開けようとするとホルダーに収められているチップ等が自動的に破壊されるシステムになっているので、万が一トリガーホルダーが奪われたとしても機密事項が外部には漏れないはずである。

 

 

こうしてボーダーは少しずつだが変化を見せており、三門市民からの期待を一身に受けて隊員・職員たちの士気も高まっていくのであった。

 

 

 

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