ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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422話

 

 

キオンではテスタが議会で議員たちに説明をしていた。

ここでも議員たちは「人権」という概念が理解できず、エウクラートンよりも強い「支配する者とされる者」の考え方が彼らの()()であるから、ツグミの不在ではなかなか話が進まない。

キオンでは明確な身分制度があり、議員たちは一等市民と呼ばれる貴族や裕福な商人、多大な戦功によって昇格した軍人たちの中から選ばれる。

だから議会に集う議員たちは自分が二等・三等市民と同じであると認められるはずがなく、これまでが力で押さえ付けるやり方で成功してきたから今さら変更したくないと考える。

なにしろキオンは軍事国家としていくつもの弱小国に対して武力で制圧して勢力を拡大してきた国で、一等市民は先祖の戦功によって現在の地位を保持しているのだから「強者=支配するもの」「弱者=支配されて()()()もの」という考えが「真理」となるのは当然のことなのだ。

それにテスタ自身が軍人出身の政治家で、彼もまた戦功によって一等市民になった軍人だから支配階級と非支配階級双方の気持ちが良くわかる。

そして総統という絶対的な権力で議員たちを押さえ込むことができるのにその権力を振りかざせば「人は生まれながらにして平等である」という思想に反する行為となってしまうとジレンマを抱えてしまっていた。

こうなることはツグミも想定していたのだが、エウクラートンを先にしたのは女王の健康問題と次期女王候補という立場があれば簡単に片付くと承知していたからで、結果的にキオンの説得は後回しにしたのだった。

そしてツグミの狙いは「テスタですらできなかった議員たちを説得した」という実績を得ることである。

もしテスタが議員たちを説得して意見をまとめてくれたのであればそれでなんら問題はなく、そのまま三門市へ帰還するだけで済む。

楽はできるし時間を短縮できたのだから万々歳。

テスタが説得できなかったことを彼女が成し遂げたなら、彼女の株が上がるわけだ。

どちらに転んでも彼女にとっては「得」になるのだが、ここで重要なのは彼女に手強いキオンの議員たちを説得できるだけの「武器」を持っていて、それを上手く使えるかどうかである。

エウクラートンでは彼女が王家の血筋であるという()()のおかげで事がスムーズに運んだのだが、キオンにおいてはそれがない。

キオンの議員たちにとって彼女は「近界(ネイバーフッド)の事情も知らない玄界(ミデン)の小娘」で、テスタのお気に入りであるから「総統の愛人」と陰口を叩く者もいた。

それをゼノンから聞かされたツグミは怒るどころか「どこの世界にもセクハラオヤジはいるものなのね~」と苦笑する余裕があるくらいで、すでに勝ち筋は見えていたのだった。

エウクラートンを発ってキオンに到着したのが夕方であったため、議会への出席は翌日の午前と決まった。

 

 

◆◆◆

 

 

キオンでは選挙権を持つのは二等市民以上の成人の納税義務を果たした者で、被選挙権は一等市民の男子のみであるという貴族制と不完全な民主制を合わせたシステムとなっていて、国会議員はこの「制限選挙」によって選ばれる。

登壇席に案内されたツグミは扇状に広がる議場をゆっくりと見渡すと、そこには明らかに生まれつきの貴族だとか軍人上がりだとわかる顔つきの男たちが興味本位の視線を向けている様子が確認できた。

 

(わたしがスカルキ総統の愛人ですって? 二度とそんなバカな想像をできなくしてやるわよ。わたしは正々堂々とあなたたちと言葉で戦って勝ってやるんだから!)

 

深呼吸をひとつしてからツグミは口を開いた。

 

「はじめまして。わたしは玄界(ミデン)の界境防衛機関ボーダーの防衛隊員、霧科ツグミと申します。この度は貴国キオンと友好国エウクラートンと玄界(ミデン)の3国で同盟締結を進めることになり、わたしがボーダーの最高司令官城戸正宗の代理としてまいりました」

 

ここまで言っただけで議場内はザワザワとしてきた。

玄界(ミデン)は大事な同盟締結の話だというのに小娘を送り込んできて何をしようというのだ? 本気なのか? それともキオン(我が国)のことをバカにしているのか?」とでも言いたげな顔…ではなくツグミには実際に隣の議員とそんなことを喋っているように見えた。

 

(まあ、そりゃそう思うのは無理もないわよね…。そもそも女性を大切にしているといってもそれは単に子供を産んでもらうための大事な()()だからで、自分たちと対等な人間だとは考えていないんでしょ、きっと。だって女性に参政権はないし、見た目で判断しようとする旧態然としたオジサンたちだもの、これからわたしが国の未来に関わる大事な話をしようというんだから忍田本部長か唐沢部長のような人を寄越すのが道理だと思ってるんでしょうね)

 

ツグミはそんなことを想像しながら話を進める。

 

玄界(ミデン)にはいくつかの国があり、その国のひとつである日本国にボーダーは属しております。政治機関ではなく、近界民(ネイバー)による侵略から国土と人民を守るための防衛組織で、現在はボーダーが玄界(ミデン)の窓口であり近界民(ネイバー)との交渉役を任されておりますので、ボーダーの意思が玄界(ミデン)の意思だと考えていただいて結構です。なお、先ほどボーダー最高司令官の代理だと申しましたが、近界(ネイバーフッド)との交渉についてはわたしが全権委任されております。ですのでどうかわたしの言葉は玄界(ミデン)の代表の言葉だと思って聞いてください」

 

ここで議員たちはツグミが書類を届けに来た単なる「子供の使い」ではなく、正式な外交使節として任命された大使であることを知った。

だからこそテスタが相応の態度で接し国会に招聘したくらいなのだから、内容はともかく話を聞かなければ礼を失すると考えて口を閉じる。

 

「ようやく議場内が静かになりましたので、わたしの声も一番離れた席の方まで充分に届くと思います。では、本題に入らせていただきます」

 

ツグミは用意した書類を開き、それを見ながら議員たちに説明をした。

あとはエウクラートンの議会でやったことと同じで、彼女の話を聞いた議員たちの反応も同じものであった。

近界(ネイバーフッド)の国々の歴史や文化は玄界(ミデン)のそれに似ているところもあればまったく違うところもあり、ツグミの話は近界民(ネイバー)である彼らには理解しがたいことなのだ。

しかし人間は平等であるという基本を理解してもらえないとキオンとエウクラートンを対等に扱う内容の条文に賛同してもらえない。

エウクラートンではツグミが自分の次期女王候補という立場を利用して脅しをかけたわけだが、この方法はキオンでは通用しない。

 

(人はすべて強者と弱者に分けられ、弱者は強者に従うのが当然という考え方がここでの大原則だというなら、あの人たちに納得できる形で認めさせるには他に手段はないわよね)

 

話は聞いたが理解はできないという議員たちを前にツグミは仕方がないという顔で言う。

 

「みなさんのお気持ちはわかりました。これまで数百年もの間ずっと『強者が弱者を支配する』ことで支配範囲を広げてきたのですから、今さら人は誰でも平等であると言っても理解してもらおうというのは無理ですよね。ですがわたしはここで引き下がるわけにはいきません。そこでわたしがみなさんよりも強者であることを示し、その上で弱者となったみなさんにはわたしの…いえ、玄界(ミデン)の考え方を受け入れてもらいます」

 

ツグミの大胆で怖いもの知らずの発言に議員たちからはブーイングの嵐が巻き起こった。

なにしろ突然やって来た玄界(ミデン)の小娘が暗に「わたしの方が強いんだから、あなたたちはわたしに従いなさい」と言ったようなもので、せっかく一国の正式な外交使節なのだから話くらいは聞いてやろうと考えていた議員たちの気持ちを逆撫でしたのだからこの反応は当然だ。

 

「わたしはトリガー使いです。わたしと戦って勝つ自信のある方はいらっしゃいませんか? 力でわたしをねじ伏せてキオンから追い出してやろうという気概のある方がいたら何人でもかまいません。わたしはどんな方とでも戦いますよ」

 

「……」

 

ツグミの発言を聞いて議場は水を打ったように静まり返った。

キオンは軍事大国で、武器(トリガー)開発でも近界(ネイバーフッド)有数の先進国である。

一方、玄界(ミデン)はトリオン文明に触れてわずか20年ほどしか経っていない後進国であるから、キオン側が圧倒的に有利なのだがこの議場にいる人間の大多数は貴族の出身で武器(トリガー)を握ったこともない非戦闘員であり、軍人出身者もいるのだがトリオン器官が衰えて戦うことができなくなった40代以降の()トリガー使い。

そうなると現役トリガー使いのツグミと戦えるような人間はひとりもいないのだ。

それを承知していて彼女はわざと議員たちを挑発したのである。

しかしこの場にたったひとりだけだが彼女の挑戦を受けて立つ者が現れた。

 

「儂が相手になろう」

 

その声のした方へ全員の視線が向けられた。

過去に何度も大きな戦争を経験し、その度に武勲を上げてきたことで国軍最高司令官となった御仁が立ち上がってツグミに向けて言う。

 

「儂の名はサーヴァ・コンプソス、キオン国軍の最高司令官だ。相手として申し分なかろう」

 

ツグミはゼノンからサーヴァの武勇は聞かされている。

ノーマルトリガーしか使わないが、そのトリガーの威力は(ブラック)トリガーをはるかに超えるという。

だから議員たちは「この勝負は見るまでもない」と判断し、さっきの切羽詰まった表情から余裕たっぷりのものに変わっている。

しかし彼らはサーヴァがツグミのことが大のお気に入りで、彼女の祖母であるミリアムとは生前に面識があって「彼女の味方」であることは知らない。

国会議員ではないサーヴァが議場にいたのは国軍総司令として知っておきたいという公式な理由はあるが、実はツグミとテスタと彼の3人で打ち合わせをした結果なのである。

これまでの2回の訪問は公式なものとされていないために彼女の存在は限られた者しか知らないため、テスタだけでなくサーヴァまで彼女に()()()()()()()()などとは想像もしていないのだ。

 

「コンプソス総司令、()()()()()()。あなたのお噂はかねがね伺っております。高名なトリガー使いであるあなたがお相手をしてくださるなど光栄の至りでございます。さっそくですがお相手願えますか?」

 

「よかろう。軍の練兵場まで来てもらえるかな? 広い場所でなければ周囲へ被害が及ぶからのう、ハハハ…」

 

ここでテスタが許可を出し、急遽ツグミたちは練兵場へと移動することになった。

 

 

 

 

ここ数年は他国へ攻め入ったり逆に攻め込まれるようなことはなかったものだから、サーヴァも何年ぶりかに()()()()武器(トリガー)を手にした。

御年68の最高齢現役のトリガー使いとして名を馳せている彼の名を知らない者はキオン国内にはひとりもおらず、他国でも彼の名は広く知れ渡っている。

「ギガース」と呼ばれた豪傑の勇姿が再び見られるとあって、議員たちだけでなく練兵場にいた若い兵士や訓練生たちも興味津々で模擬戦が始まるのを待っていた。

 

(キオンの伝説のトリガー使いと手合わせすると聞いたら太刀川さんなんて羨ましがるだろうな…)

 

そんな余裕たっぷりのツグミが持つのはボーダーのノーマルトリガー。

サーヴァもノーマルトリガーを使うというが、ツグミの方が圧倒的に不利である。

キオンに限らず近界民(ネイバー)の使うトリガーは使用者の特性に合わせた一点ものが多く、ヒュースの蝶の楯(ランビリス)やランバネインの雷の羽(ケリードーン)のようにノーマルトリガーでありながらも圧倒的な威力を発揮するものがざらにあるのだ。

キオンはトリガー研究においては他国の追従を許さず、リヌスが所持している(ブラック)トリガーから()を抜いてノーマルトリガーに移植したハイブリッドタイプのトリガーはキオンならではのもの。

その国の最高司令官が現役トリガー使いとして使用するものなのだから、相当の覚悟で挑まなければ勝ち目はない。

 

(アフトでいえばヴィザみたいな存在…。どういう仕組みかわからないけどトリオン器官が衰えず、60過ぎてもまだ現役で通用するだけでなく最強のトリガー使いでいられるのはやっぱり経験値が高いからなんだろうな。だけど相手の手の内がわからないとなると対策のしようがない。…でも未知の武器(トリガー)とはいってもある程度は想像できるのよね)

 

ツグミはこれまでに得た情報からサーヴァの武器(トリガー)がどのようなものか推理した。

 

練兵場(ここ)の広さはサッカーコートとほぼ同じくらい。長い方の一辺が約100メートルで短い方が約60メートルってところかな。つまりそれくらいの広さがなければ周囲に被害が及ぶ可能性があるという射程があるってこと。それともし射程の短い(ブレード)トリガーであったなら、わざわざここまで来なくても議事堂前の広場で済むはず。この広場は一辺が30から40メートルくらいはあるんだもの。もしくは星の杖(オルガノン)のように広範囲にわたって大きな被害が出てしまうとしたら…。練兵場の周囲をシールドを張って影響が出ないようにして訓練をするのかもしれないけど、ここに全面シールドを張るととんでもない大量のトリオンを消費するからそれはないな。広域に影響を及ぼす武器(トリガー)の訓練なら郊外に別の練兵場を造るだろうし。だからここで行うのは半径約30メートル以下の広さで充分な近・中距離型のトリガー使いと判断して良さそう)

 

普段のツグミならこうしてサーヴァとの模擬戦に挑むのであれば彼の武器(トリガー)の詳細を調べて充分な対策を練ってから対戦するのだが、今回に限ってはそうではない。

単に想定外のことであったというのではなく、これも彼女のシナリオに沿ったものだからまったく慌ててはおらず、むしろ未知の武器(トリガー)に対してどのような能力を持つのかを推理し、自分よりもはるかに強いトリガー使いと戦えることが楽しくてワクワクしているのだ。

それにここで負けたところで失うものはなく、勝てば楽に事が進み、負けても少々説得に時間がかかるだけで当初の目的は達成できるのだから、純粋に模擬戦を楽しもうという心に余裕がある。

 

現在のトリガーセットはメインに通常弾(アステロイド)、弧月、旋空、カメレオンで、サブにはスコーピオン、レイガスト、スラスター、バッグワームとなっている。

戦闘状態にならないように努めているものの、万が一の場合に命を守るための戦闘をし、かつ安全に逃走できる装備としてこの8つを選んだ。

ただし通常のトリガーではなく緊急脱出(ベイルアウト)を外したもので、その分トリオンを戦闘に使えるためにカメレオンをセットしている。

近界(ネイバーフッド)では緊急脱出(ベイルアウト)は使用できない可能性が高く、カメレオンは戦況が悪化した場合には無理に戦わずに逃走をするためとして()()()()()()()()()のだった。

そしてバッグワームは通常のマントタイプではなくアフトクラトル遠征用に準備した現地の近界民(ネイバー)がごく普通に着ている衣装になるものなので、カメレオンで戦場を離脱したらすぐにバッグワームに切り替えて現地の人間に紛れてしまうことで安全な場所にたどり着ける。

そしてツグミ専用トリガーのスラッシュがないのは、潜伏して敵を遠距離から攻撃しなければならない状態、つまり狙撃手(スナイパー)用トリガーを使う必然性がないから外しているのだ。

 

(キオンとは本格的な戦闘をしたことがないから()()()()()()()()()()はレーダーで把握できない。カメレオンを使えばわたしの位置はわからないから一旦はカメレオンで居場所を察知できないようにして奇襲をかけるのがセオリーよね。でもカメレオン状態ではあまり長くはいられない。決断を急がなければならないけど、判断を間違えれば一発でアウト。さて、サーヴァさんの武器(トリガー)の能力はどんなものかな…?)

 

 

戦闘体に換装したツグミが練兵場に登場すると、若い兵士や訓練生と思われる少年たちが歓声を上げた。

キオンでは原則として戦闘員になれるのは男性だけで、女性は後方支援の職員のみである。

それも職員全体の1割弱しかいないので彼女のような若い女性のトリガー使いはとても珍しい。

女性が少ない組織において女性の扱いは極端にふたつに分かれる。

何かにつけ「女だから~」と言って否定する言葉を発し、蔑む差別の対象として。

そしてもうひとつは貴重な異性だからとても大切に扱われ、男性たちのマドンナとしてちやほやされるというもの。

ツグミに向けられる視線と声はあきらかに前者ではないようで、アウェイ感はあまりない。

 

(キオンでは若い女性が極端に少ないというから、物珍しさで見物しようというのね。それにサーヴァさんも最近では滅多に武器(トリガー)を使わないというからそっちでも珍しいんだわ。そしてもちろんサーヴァさんが勝つって確信しているんだろうけど、試合なんてものは終わってみなければわからないものよ)

 

ツグミが練兵場の中央へ向かって歩いていると、彼女とは反対側から遅れて登場したサーヴァに歓声が向けられた。

キオンの英雄が久しぶりに模擬戦を行うとあって期待は大きい。

サーヴァはその歓声に応えるように手を振りながら、ツグミと同じように中央へとゆっくりと歩いて行く。

そしてお互いの距離が30メートルくらいになったところで足を止めた。

 

「ツグミ、きみが(ブレード)トリガー使いなら儂も(ブレード)トリガーでお相手した方が良かったかのう?」

 

ツグミが腰に差してある弧月を見たサーヴァが訊く。

 

「いいえ、けっこうです。ですがその言い方ですとコンプソス総司令が弾トリガーを使うのだとネタばらししているようなものですよ」

 

「ああ、なるほど。そう言われればそうだな。だがバレたところで儂はかまわんぞ」

 

「さすがはキオン最強、伝説のトリガー使いですね。でもわたしだって生半可な気持ちで挑戦しているのではありませんから」

 

「よかろう。全身全霊を込めてお相手しよう。…光の鎧(インドゥエリス)、起動!」

 

サーヴァがトリガー「光の鎧(インドゥエリス)」を起動すると、一辺が5センチ四方のトリオンキューブが数百個浮かび、彼の周囲を球状に取り囲んだ。

それはハイレインが卵の冠(アレクトール)で魚の形状にしたトリオンを自身の周りを周回させ、トリオンによる攻撃を防御したものと良く似ている。

ただし光の鎧(インドゥエリス)は動き回っていないし、普通にトリオンキューブの状態だ。

 

(トリオンにしか効かない…ってことはなさそう。たぶん普通の弾トリガーのように攻撃ができて、同時に敵の攻撃に対してはシールドのように防御ができる攻防一体型ってカンジかな? ああやって全方位対応できるならすごく便利だけど、背後の敵に対しても適切に対応できるとすればよほど訓練を重ねたか、実戦で修羅場をくぐり抜けてきたかのどっちかでしょうね。…旋空弧月ならトリオンキューブの隙間を狙ってイケるかも?)

 

ツグミは弧月に手を掛けると駆け出し、射程に入った瞬間に弧月をさっと抜いた。

 

「旋空弧月!」

 

狙いは正確であったが、サーヴァの正面に浮かんでいたトリオンキューブのいくつかが板状に変化してシールドになったために刃を弾かれてしまった。

サーヴァの反撃に備えてレイガストを(シールド)モードで起動し、呼吸を整える。

 

(キューブの形が変形してシールドになるのね…。弧月が無事ってことは卵の冠(アレクトール)のようにトリオン由来の物質をキューブ状に変化させることはできないことがこれでわかったわ)

 

サーヴァはシールドになったことで消失した分のトリオンキューブを追加で生成し、何事もなかったかのように平然としている。

 

「伸びる(ブレード)とはなかなかに面白い。それに踏み込みから抜刀への流れも滑らかで姿勢も良い。優れた師匠にしごかれたのだろうな」

 

「ええ。わたしが世界で一番敬愛しているボーダー最強のノーマルトリガー使いですもの。10年も師匠の教えを守って鍛錬を続けてきましたから」

 

「ほう…儂も光の鎧(インドゥエリス)を手にするまではずっと(ブレード)トリガーで戦ってきた剣士だ。できることなら一度その師匠と手合わせしてみたいものだ」

 

「同盟締結が無事に行われたら、同盟国内では自由に行き来できるようになります。高名なトリガー使いでいらっしゃるコンプソス総司令でしたら大歓迎です」

 

「ならばその前に儂に勝たねばならぬぞ。さあ、次はどうだ? 来ぬのならこちらから行くぞ」

 

サーヴァはそう言うとトリオンキューブをツグミに向けて撃った。

ツグミはそれをレイガストで防御。

すべての弾を防ぐことができたツグミだが、サーヴァはまた消費した分のトリオンキューブを生成して元の状態に戻ってしまう。

 

(サーヴァさんのトリオン量がどれくらいかわからないけど、これだけ贅沢にトリオンキューブを出せるってことはかなり多いんだろうな。防御に徹してトリオン切れを狙っても無駄ね。それにそんなことをして仮に勝ったとしても誰もわたしを認めてくれないし、そもそもサーヴァさんに失礼よ。やっぱダメ元でも挑んで一矢報いなきゃこの模擬戦をやった意味がない)

 

それからツグミはレイガストをスラスターで加速して一気に間合いを詰めて弧月で斬りかかるとか、通常弾(アステロイド)と旋空弧月の時間差攻撃など思いつくだけの戦術を駆使してサーヴァに向かっていった。

 

 

 

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