ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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427話

 

 

ランバネインのおかげでハイレインとの面会は2日後の10日の午後と決まった。

この対応は異例の早さであり、それだけハイレインがツグミとの面会を重要視している証拠でもある。

ただし面会の際にはキオンの人間が同席することを認めず、ツグミの護衛にはヴィザを指名してきた。

護衛というよりは監視であり、おかしな真似をすればどうなるか心しておけという意味なのだろうが、これもツグミにとっては想定内のことだ。

そもそも王城どころか首都にキオンの諜報員を入れることなどできるはずがなく、ディルクは玄界(ミデン)での滞在が長かったためにボーダーに取り込まれている可能性がある。

ランバネインも親ボーダーの態度であったから、ハイレインにとって残る()はひとつしかないということで、ヴィザが引っ張り出されることになったのだ。

ハイレインは国王の座に就いた時、彼のことを快く思わない四大領主の3人は共闘して彼とベルティストン家を追放しようと企んだ。

しかし3人の仲が良いものではなく単純に「敵の敵は味方」というレベルであるから足並みが揃わず、おまけにハイレインを追い落とした後の国王に誰がなるかで揉めてしまい、結局のところクーデターは成功どころか決行もされなかったのだった。

そしてクーデターを画策していたことはハイレインの耳に届いており、3領主は国家反逆罪でを処分される。

首謀者3人は斬首、さらにそれぞれの家の次期当主は人質としてハイレインの監視下に置かれるようになり、これでハイレインとベルティストン家の一強体制が整うこととなったのだが、同時にアフト新王(ハイレイン)の苛烈さを世に知らしめることとなった。

3領主の家臣や領民たちからは憎しみの対象となり、王城の護りを固める家臣はベルティストン家直属のトリガー使いしか残らなかったために警備体制は非常に手薄な状態となっていて、ハイレインにとっては一番の悩みとなっている。

ヴィザはハイレインにとって最強で最後の「駒」なのである。

少なくともハイレインはそう考えていて、いざという時にはツグミを確保してボーダーとの取引に利用しようと企んでいるのだが、それすらも彼女には想定済みのことなので慌てたり不安になることはない。

なにしろヴィザは()()()()()()()()()()()()()()()トリガー使いである。

そしてハイレインはそんなヴィザを登場させなければならない状況に自分で自分を追い詰めたのであり、本人はまだ勝てるつもりでいるようだが実際にはヴィザが舞台に上がったところでツグミの勝利が確定したようなものなのだ。

ただし相手は近界(ネイバーフッド)の軍事大国アフトクラトルの国王であるから、気を抜けば即「死亡エンド」が待ち受けている。

それもで余裕があるのはランバネインからハイレインのプライベートに関する話を聞いているからである。

 

(あの男だってわたしたちと同じ人間だもの、話を聞いてくれさえすれば道は開ける。それに強者が弱者を支配することを当然だと考える人間だから、自分が強者ではなく他の人間と同じく弱者側の人間なのだと気付いていない。それがわかっていないから崖っぷちまで追い詰められてしまい、そのことにまだ気付けないでいるんだもの、ここでわたしがハッキリ証明してみせるわよ!)

 

 

◆◆◆

 

 

当日の朝、ツグミが滞在しているエリン家の屋敷にヴィザが現れた。

もちろん彼女を護衛(監視)する役目を果たすためで、トリオン体に換装はしておらず穏やかな笑みを浮かべる物柔らかな態度であってもその生身の身体からも歴戦の勇士のオーラが溢れ出していて気が抜けない。

 

「初めまして、玄界(ミデン)のお嬢さん。私はヴィザと申します。王城まで私があなたを無事にお送りしましょう」

 

「初めまして、ヴィザさん。わたしはボーダーの代表としてまいりました霧科ツグミと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 

お互いに和やかな雰囲気で挨拶をするが、実際にふたりがこうして顔を合わせるのは初めてであり、相手のことは伝聞でしか知らないのだからふたりの間には独特な空気が漂っている。

 

「南門の外に乗り物を用意してあります。御足労ですがそこまで徒歩で行くことになりますが、よろしいですかな?」

 

「ええ、もちろんかまいません」

 

「では、まいりましょう」

 

 

 

 

ツグミはディルクとマーナとヒュースに挨拶をすると屋敷を出て、ヴィザと並んで街の中を歩いて行く。

すると通りすがりの住民たちは珍しそうな顔をしてツグミたちを見送り、何やら噂話をしているようであった。

 

「地元の名士が見慣れない他所者の娘と歩いているわけですから気になりますよね…」

 

ツグミが正直に言うとヴィザが糸目をさらに細くして笑う。

 

「それもあるでしょうが、彼らの多くはディルク殿を慕う領民で、彼が玄界(ミデン)に連れ去られたと聞いた時には憤慨し悲しんでいましたが、戻って来て事情を知るとその怒りも消え、逆に玄界(ミデン)で手厚い保護を受けていたと聞いて玄界(ミデン)やボーダーに対する悪い感情はなくなりました。そして玄界(ミデン)での楽しかったことや興味深い文明の話を聞かされていて、今では玄界(ミデン)に対して憧れを抱いている者もいるようです」

 

「そうなんですか…。まあ、玄界(ミデン)に良い印象を持っていただけたなら安心です。実はエリン家のご家族を拉致するよう指示された時にはとても迷いました。昨年のハイレイン隊による三門市への侵攻にまったく関与していない方を巻き込むなんて非道なことが許されるはずがありません。ですがそうしないとエネドラからアフトの情報を得ることができないために仕方がないと割り切りました」

 

ここでも「エネドラがボーダーに情報を流し、ヒュースはエリン家に忠誠を尽くして何も言わなかった」という()()()で通している。

 

「エネドラの角をラッドに移植し、その角に刻まれた生前の記憶を引き出すなど玄界(ミデン)の技術レベルも近界(ネイバーフッド)に近付きつつあるようですな。ミラ嬢が始末したと聞いていましたので、まさかエネドラから情報が漏れるとは想像もしていませんでしたよ」

 

「ヒュースが非協力的でしたから。アフトの情報どころか自分に関わる個人的なことも一切言わないので苦労しました。でも食事でポトフを出したら『主の家で食べたスープに似ている。懐かしい味だ』と言って、やっと自分のことを少しだけ話してくれたんです。そして幸せそうな顔をして何杯もおかわりしました」

 

「彼が引き取られた頃のエリン家の料理人の中に煮込み料理を得意としている者がいたので、生まれて初めて美味いと思えるものを食べた時の感動が今でも鮮明なのでしょう」

 

「美味しいものを親しい人と一緒に食べるという一番の幸せな記憶がよみがえってきたのね、ってその時感じました。それ以来、彼の態度はいくらか緩和されたのですが、やっぱり何も言わないのでエリン家のご家族には玄界(ミデン)に来ていただきました。申し訳ないので精一杯お世話させていただき、玄界(ミデン)での暮らしを楽しんでもらえるよう最大限の努力をしました」

 

「それはディルク殿から聞かされました。そしてレクス坊ちゃんがあなたに良く懐いていて、医師になりたいと言って玄界(ミデン)に残って勉強するのだと聞いて驚きました。あの人見知りが激しくなかなか人前に顔を出さない気弱な少年が自分の意思を強く主張できるようになったのですからね」

 

「彼はとても賢い子供で、同じ年齢の子供と比べてもはるかに知的レベルが高くて感受性が豊かです。今が精神的にも肉体的にも一番成長する時期ですから玄界(ミデン)で多くのことを学んで、将来はアフトの民を導いてくれる大人になってくれるでしょう」

 

「それは楽しみですな。もっとも私がそれまで生きていられたらの話ですが」

 

「そんな縁起でもないことを言わないでください。わたしの国では65歳以上を高齢者として扱いますが、人口の約3割が高齢者です。玄界(ミデン)では近界(ネイバーフッド)よりもはるかに医療関係の技術が発達していて、食料事情も悪くありませんから長生きできるんです。もっとも3割もいると彼らを支える現役世代は苦労しますが、それでも家族や友人が長く生きてほしいと願うのです」

 

「ですが私はあなたの家族でも友人でもありませんよ。それなのに私の健康を気にするのですか?」

 

「たしかにわたしには初対面のあなたのことを気にする理由はありません。ですが友人のヒュースが師と仰ぎ、エリン家のご家族が親しくしているあなたのことを身近に感じるのはおかしいでしょうか? わたしは彼らが哀しむ顔を見たくはありません。わたしの幸せは家族や友人たちの笑顔があってこそなんです」

 

ツグミがそう断言するものだから、ヴィザは大きく頷いて言った。

 

「ディルク殿から聞かされていた話とまったく同じですね」

 

「え?」

 

「彼は玄界(ミデン)で過ごした日々をとても愛おしそうに話すものですから、その中で何度も登場する玄界(ミデン)の少女に興味を持っていたのです。それが実際に会ってこうして話をしていると彼の話が大げさなものではなく事実だったのだと確信が得られました。ランバネイン()があなたにご執心なのも頷けます」

 

「はあ、そうなんですか…」

 

「ご自身では気が付いていらっしゃらなくともそれが事実なのですよ。だからこそボーダーはあなたのような若い女性に全権を与えて使者として()()に送り込むこともできるのでしょう」

 

「敵かどうかはハイレイン陛下のお心次第です。ボーダーは昨年の侵攻によって人的被害を始め多くの被害を受けました。ですから犠牲者の遺族や友人はアフトのことを絶対に許せませんし、近界民(ネイバー)はすべて悪だから殲滅すべしと考える隊員がいることは事実です。ランバネインさんが謝罪しましたが、それだけで帳消しにすることはできません。しかし()()()()()()()アフト側がボーダーとの関係を修復するきっかけを作ってくれたのですから、ボーダー側もそれを利用して陛下に償いをしてもらおうと考えています」

 

「償いとは具体的に何を求めるのですかな?」

 

「もちろん同盟を結んでボーダーと不戦の約束をしていただくことです。現在のところキオンとエウクラートンとはほぼ99パーセント同意しており、近いうちに玄界(ミデン)で同盟締結の式典を行う予定でおります。そこにハイレイン陛下もしくは全権委任されている代理人の方に同席してもらい、わたしたちの平和な未来を築くための第一歩を見届けてもらいたい。そもそもボーダーという組織の創設理念は『近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)の友好の架け橋になる組織を作りたい』というものでしたが、近界民(ネイバー)玄界(ミデン)の人間をさらうという蛮行を黙って見過ごすことができないために現在のような界境防衛機関となっているのです。ですから近界民(ネイバー)が悪意を持って玄界(ミデン)へやって来るのでなければ防衛を主体とした組織ではなくなり、無駄な争いはなくなります。ボーダーは近界(ネイバーフッド)への軍事的進出など考えておりませんから、近界民(ネイバー)が攻めてこなければそれで充分なのです。わたしたちはキオンとエウクラートンとボーダーという3者による同盟を結び、これを始まりとして今後は考え方を同じくする国と交渉をして同盟国を増やしていく計画です。キオンという軍事大国が戦争をなくそうと動き始めるとなれば、逆に戦争によって近界(ネイバーフッド)を統一しようとするアフトを危険視する国が()()()()()()()()()()()同盟加入を申し出てくると思われます。単独ではアフトに敵わないとしても同様の国が団結して、おまけに背後にキオンがいるとなればアフトもそう簡単に手出しはできなくなります」

 

「ふむ…」

 

「ボーダーはアフトと敵対することを望んでいるのではなく、むしろキオンとアフトの両国が武力に頼らない近界(ネイバーフッド)の安定を目指すなら大歓迎。もちろん近界(ネイバーフッド)の国々と玄界(ミデン)はそれぞれ違う次元にあり、別々の文明を築いてきたのですから同じ人間といっても考え方や価値観が違って当然です。したがってボーダーは玄界(ミデン)のやり方を強制するつもりはありませんが、玄界(ミデン)の優れた技術や近界(ネイバーフッド)にはない知識など役立つものがあればできる限りお譲りする用意があります。逆に近界(ネイバーフッド)のトリオンとトリガーの技術は玄界(ミデン)で軍事目的以外に利用したいと思うものがたくさんありますので、お互いに相手が欲しいと思うものを提供し合って共有すれば今よりもずっと豊かな暮らしができるようになるとわたしは信じて行動しています。そしていずれはトリガーを武器としてだけでなく人間の生活全般をより良いものにする技術として研究を重ねていきたい。わたしはトリガー使いですが兵士としてよりも近界民(ネイバー)との交流の窓口やトリガー研究をしたいと思っています。…そして一番避けたいのは近界(ネイバーフッド)の戦争に巻き込まれること。アフトを敵に回して戦うなんて二度と御免です」

 

「ですがハイレイン陛下は一筋縄ではいかない方ですよ。あなたの話を聞く態度は見せても理解しようとするかどうか…。あの方には確固とした信念があり、その点ではあなたと同じです。ですがこれから向かう王城にあなたの味方はおりません。それでも勝てる自信があるのですか?」

 

そうヴィザに訊かれたツグミは首を横に振った。

 

「いいえ。勝つ自信はありませんが、負けるつもりもありません。それに味方がいないとしても敵だっていませんよ。敵か味方かなんてわたしの考え方次第ですから。それともあなたはわたしの敵なのですか?」

 

「そんなことはありませんが…」

 

「ならば大丈夫です。わたしは勝とうとするのではなく負けないために強く語りかけるだけです。ボーダーの提示する条件はアフトにとって得か損かのどちらかというのなら間違いなく得になる話です。だからこそあのキオンのスカルキ総統が興味を示し、こちらが誠意を持って説明をしたところ賛同してくれたのです。若くて柔軟性のある思考力と未知のものに対する好奇心、そしてなによりも国民のことを一番に考える方ですから。キオンにできてアフトにできないことなんてないですよね?」

 

ツグミはそう言って意味深な笑みを浮かべた。

 

「とにかくあなたが護衛であろうと監視であろうとどちらでもかまいません。わたしはあなたやランバネインさんにご迷惑をおかけする気はありませんからご安心を。ただし同席していると心臓に悪いと思える状況になるかもしれませんので前もってお伝えしておきます。覚悟しておいてくださいね」

 

ヴィザはランバネインからツグミのことを聞かされていたが、その時に「大胆不敵」だとか「物怖じしない」などと彼女のことを称していた。

そして直接話をしてみてまさにそのとおりだと認めることとなった。

 

(面白い娘だと聞いていたが、私の想像以上だ。…かつて対戦した相手と今度は武器(トリガー)ではなく言葉で戦う。前回の戦いではこの娘に翻弄されたようだが、今回もそうなりそうな予感がする。ランバネイン様(我が主)があのように余裕たっぷりなのはこの娘がハイレイン陛下と対等にやり合えるという確信があるからなのだな)

 

そしてこれまでの会話の中で得た情報から推測する。

 

(この娘は砲撃でイルガーを倒し、ラービットさえも単独で撃破するほどのトリオンの持ち主のトリガー使いでもある。陛下とミラ嬢のふたり同時に相手しても怯まずにいた。そんな優秀な兵士だというのに遠征隊の中にこの娘の姿はなかった。これほどの駒を使わないでいられるほどの余裕はなかったはずだ。そして我々が城外で戦っている最中に城の塔を砲撃によって破壊されている。おそらくこの娘が城内に潜伏していてやったのだろう。そうなると雛鳥たちの居場所を把握して遠征隊との連絡役をしていたとも考えられる。敵の本拠地に潜入して工作員まがいのことを平気でやってのける豪胆さ。それなら陛下の御前で堂々と意見を披露することもできるに違いない。…そしてこの娘は怖いもの知らずなのではなく、怖いと知っているからこそ強い精神力で立ち向かっているのだな。これは面白い見世物に…いや、当人にとっては真剣勝負。この国の将来が変わるかもしれない重要な場面に立ち会うのだから、若者()()が己の信じるもののために戦う姿を真摯に見守ってやろう)

 

ヴィザがそのようなことを考えているとは気付かないツグミは市場の脇を歩きながら中の様子に興味を示していた。

前回の訪問の際は「神」の寿命が近付いていて品数が少なくて質もあまり良いものではなかったのだが、新しい「神」のおかげで本来の国の姿が戻ってきているために国内産の野菜や果物が多く並んでいる。

そして商売をしている婦人と客の表情に大きな変化が見られた。

季節は初夏であるから服装も軽やかで色彩も明るいし、なによりもその様子は長い冬の期間を耐え忍んだ彼女たちが復活した太陽の恵みを全身で楽しんでいるといった感じだ。

 

(ここにいる人たちは新しい『神』を()()()ハイレインに対して感謝をしているのは間違いない。だけど彼女たちがハイレインの考え方ややり方に賛同しているのではないと思いたい。あの男が軍事力による近界(ネイバーフッド)統一に乗り出すとなれば、ここにいる無辜の民の家族や友人が戦場となる国へ連れて行かれてやりたくもない戦争をしなければならなくなる。誰だって祖国から遠く離れた場所でまったく縁もゆかりもない人間と戦うなんて望んではいない。攻め込まれる国の人間だって他所の国の暴君のせいで自分と家族と同胞を守る戦いに駆り出されてしまう。誰も戦争なんてしたくないのに、どうして最前線で無理やりに戦わされるの? その答えはひとつ。ハイレインだけでなく多くの近界民(ネイバー)が『強者が弱者を支配する』ことが真理だと思い込んでいるから。あらゆるものにおいて強者と弱者がいることを否定はしないけど、強者だからといって弱者の人権や尊厳を足蹴にするような行為は絶対に許せない。なにしろ近界民(ネイバー)には人権の概念すらないのだから、庶民階級の人間が貴族階級の連中に好き放題されても我慢するしかないって諦めちゃう。だから貴族階級の専横を許してしまい、ますます自分たちの暮らしを追い込んで苦しい思いをすることになる。そもそも生まれ落ちた身分によってその人間が強者か弱者か決まるなんてこと自体がおかしい。自分が弱者の側の人間なのだからと諦める癖がついてしまった人たちは哀れだわ。自ら家畜である生き方を選んでしまうんだもの)

 

そして視線を戻して正面を見据える。

 

(ここにいるのはわたしにとって赤の他人ばかり。会話も交わしたことのない彼女たちの心配をする必要なんてないのに、こんな気持ちになるのは彼女たちがエリン家の領民たちで、ディルクさんやマーナさんが大事にしている領民のことを赤の他人だからといって見過ごすことができなくなってしまったから。自分自身の幸せのために行動しているだけだったのに、いつの間にかこんなにも多くの人間の幸せを望むようになってしまった。近界民(ネイバー)が三門市民の日常を脅かさないようにするために始めたことなのに、近界民(ネイバー)のことにまで心を砕くようになってしまっていた。でも彼らのことが重荷に感じるかというとそんなことはない。彼らの人生のすべて関わることはできないのだし、わたしはきっかけを与えるだけでその行動には責任を持つけど、後は全部彼らが考えて、判断して、その先にある行動の結果は彼らに責任を持ってもらうことになるんだもの。わたしは自分のやるべきことをやるだけよ!)

 

 

気合を入れたツグミが南門までやって来ると顔なじみのタルサとカトゥスが彼女に向かって敬礼をする。

 

「じゃあ、行ってきま~す」

 

まるでこれからピクニックにでも出かけるように朗らかな笑顔で手を振るツグミ。

そんな彼女の姿が眩しいものであるかのように、ヴィザは細い目をさらに細めるのだった。

 

 

 

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