ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

471 / 721
452話

 

 

ツグミとテスタとハイレインの3人が「会談」をしていた頃、リベラートの部屋では彼と城戸と忍田の3人がツグミのことについて話をしていた。

内容は当然のことながら「エウクラートンの女王後継問題」についてだ。

ツグミはリベラートの孫、つまり王家の人間であって唯一の女王後継者であるために彼女にはエウクラートンに戻って()()を果たしてもらいたいと考えているリベラート。

玄界(ミデン)で生まれ育ち、これからも普通の娘として成長し、当たり前の幸せを手に入れてほしいと考える城戸と忍田。

女王になるということはすなわち玄界(ミデン)を去り、死ぬまで(マザー)トリガーの()()()をしなければならないわけで、父親代わりのふたりには本人が望まぬ限り絶対に渡さないという構えである。

本来ならここにツグミがいて両者の言い分を聞いた上で自分の意見を述べるという形が理想だが、まずは三者で話をしようということになったのだ。

ツグミの幸せが最優先という点では3人の気持ちは一致しているのだが、リベラートにはエウクラートン国民すべての生活を保証する義務を負っているために彼女にはエウクラートンに来てもらわなければならないし、城戸と忍田は彼女を近界(ネイバーフッド)へ送り出すことを承知できない。

ツグミには女王が(マザー)トリガーを操作しなくても済む手段を考えていて、その案をリベラートにも伝えてはあるのだが近界民(ネイバー)である彼にはそれが無茶なことだとしか思えないのだ。

おまけにツグミの結婚相手はエウクラートンの男性が理想だと考えているので、彼女が迅と婚約していることが不満である。

城戸と忍田は彼女が選んだ男性が迅だということはある意味幸いだと考えていた。

何処の馬の骨かわからない野郎よりも子供の頃から可愛がってきた迅の方が安心して彼女を任せられるからだ。

こうして完全に意見が対立してしまっているため、こちらの会談は1時間ほどで物別れに終わってしまった。

日を改めてもう一度話し合うことを約束し、その時にはツグミを加え、さらに場所をエウクラートンの神殿として女王も含めた5人で行うこととなったのだった。

 

 

ホテル内のカラオケルームでは林藤、鬼怒田、根付、唐沢、サーヴァ、ヴィザ、フーガのグループと、迅、レイジ、ゼノン、リヌス、テオ、レクス、ウェルスのグループがそれぞれ二次会を楽しんでいた。

林藤を中心とした「オジサングループ」は酒の好きな者は人目を気にせず酒盛りをし、唐沢と下戸の鬼怒田は烏龍茶をチビチビとやっている。

迅たちの「若者グループ」は会食の料理だけでは足りないようで、ピザやフライドチキンなどの料理 ── 二次会用に事前に用意してあった ── を大量に持ち込んで盛り上がっていた。

しかし迅とリヌスのふたりはツグミがテスタとハイレインという男ふたりと一緒にいると思うと気が気でなく、こともあろうかレクスに「ツグミなら心配いらないよ」などと言われてしまう始末。

彼女に()()()()とはわかりつつもやはり気にはなるのだ。

 

 

それぞれが複雑な思いを抱えた状態で夜は更けていったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

1月28日、玄界(ミデン)(ボーダー)・キオン・エウクラートンによる三国同盟締結式典当日がやって来た。

近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)の恒久的な平和を目指すための第一歩となる記念行事であるから本来ならもっと大々的に行い、三門市だけでなく国内外にも広く知らしめるべきものなのだが、まだ時期が早いということで関係者のみでのささやかな式典となる。

いずれ時期を見て上手く誤魔化しながら発表することになるだろう。

会場はボーダー本部基地内の講堂で、ボーダー側からはA級部隊(チーム)の隊長たちも出席してこの歴史的なイベントを見届けることになっている。

設営は前日の内にC級隊員たちが動員されて忍田の指示によって行われていて、警備関係はB級隊員たちを中心に通常よりも厳戒態勢を敷いた巡回任務に就いている。

A級隊員たちは朝から本部基地詰めで、近界(ネイバーフッド)のVIPに万が一のことがないよう待機をすることになっている。

同盟締結が行われることは事前にC級を含めた全隊員と職員には知らされていて大多数の人間は賛成しているのだが、中には納得できないという者もいた。

やはり物理的にも心理的にも第一次近界民(ネイバー)侵攻の傷跡が深く残っている現状を鑑みるとまだ早いのではないかとも思えるが、その拉致被害者を早期に救出するためには近界民(ネイバー)の協力者を増やすことが重要だということも理解している。

だからボーダーが三門市防衛という大原則はこれまでどおりに行い、同時に近界民(ネイバー)と友好的な交流を進めると方針を一部変更したことによってボーダーを去ろうという者は現れなかった。

家族や友人を亡くし、家や財産を失ってこれまでの生活が一変してしまった者にとって近界民(ネイバー)は仇だと思いたいのは無理もない。

しかし失ったものは元に戻らなくとも、今も近界(ネイバーフッド)で苦労しながら救出を待っている拉致被害者を無事に帰国させることは十分に可能であってしかも一刻を争う案件である。

ボーダーを辞める人間がいなかったということは、個人の恨み辛みよりも多くの人間の幸福を優先すべきであると自らに言い聞かせて耐えることができる()()()隊員や職員ばかりだったということだ。

外部に情報が漏れることが一番の懸念であったが城戸によって箝口令が敷かれていたために問題は起きずに済んでいる。

もっとも彼の命令よりも迅や東が「万が一情報漏えいがあった場合は犯人を探して記憶封印措置を行って家族もろとも三門市外へ()()される」という噂を流したことで効果が上がったようだ。

 

 

式典開始は一四〇〇時で、午前中は会場において関係者によるリハーサルが行なわれていた。

ここでツグミが式典に直接関係する必要はないが、彼女は城戸の指示によって近界民(ネイバー)の接待役を任されているために同席するということになっている。

この同盟締結に関して彼女は誰よりも重要な役割を演じてきたというのに()()公にできないため論功行賞を与えることはできない。

ならばせめてもと城戸はボーダー隊員の中で最も近くで歴史的イベントを見物できるように計らったのだった。

ツグミ本人は「別に褒めてもらおうと思ってやったことじゃないのだから論功行賞なんていらない」と言っているものの、城戸としては高校を中退してまでボーダーのために働いてくれたという思いがあるものだから何かをしてやらなければならないと考えている。

なにしろ織羽と有吾の「近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)の友好の架け橋になる組織を作りたい」という願いが20年経ってようやく第一歩を踏み出したのだから朋友の城戸としては感慨深いものがあり、この場にふたりがいたらどれだけ喜んだだろうかと考えると涙さえ浮かんでしまう。

 

(これくらいで涙腺がゆるくなるとは私も年を取ったということか…)

 

休憩時間にひとりで佇んでいた城戸は物思いに耽っていた。

 

(織羽…有吾…最上…皆この世を去ってしまって私ひとりが取り残されてしまったな。最上が逝ってもう6年も経つというのに私はまだ近界民(ネイバー)への恨みや憎しみが消えずにいる。あいつらが死んだのは間違いなく近界民(ネイバー)のせいだ。近界民(ネイバー)どもがくだらぬ戦争を止めないために私の大切な…家族以上の存在だったあいつらを喪った。もちろん頭ではわかっている。すべての近界民(ネイバー)が悪いのではない。事実、織羽は近界民(ネイバー)で、良き友人として私たちの隣にいてくれた。…私が近界民(ネイバー)を憎むのは奴らを血も涙もない悪党に仕立て上げ、怒りの矛先を奴らに向けなければ胸が押し潰されて死にそうだったからだ)

 

城戸が視線をずらすと忍田と林藤が談笑している光景を見付けた。

 

(あれからしばらくして私とあのふたりは考え方の違いによってそれぞれ別の道を歩くことになった。三門市防衛を優先する忍田、近界民(ネイバー)との融和路線を進めようとする林藤。私はふたりの考えを甘いと感じ、近界民(ネイバー)敵視政策を進めた。『共通の憎しみほど人間を団結させるものはない』…これはチェーホフの言葉だったか? 新体制になったボーダーに入隊した隊員たちの中には家族や友人を喪った者も多く、彼らの気持ちが痛いほどよくわかり、彼らもまた私の思想に共感してくれた。ボーダーが数年でここまでの組織に成長したのも近界民(ネイバー)に対する憎しみがそれだけ強いものだったということ。しかしそれだけで一歩も前には進んでいなかった。ただ私だけでなく忍田と林藤のふたりも結果的に現状維持に留まっていて、誰も前には進めなかったのだ。私は近界民(ネイバー)を憎み続け、忍田は三門市民を脅かす近界民(ネイバー)を排除するだけ。林藤は近界民(ネイバー)と仲良くしようなどと言いながらも敵意のない近界民(ネイバー)を利用しているだけで、かつてのボーダー創設時の理想を叶えようとするどころか忘却の彼方へ押しやっていた。そんな私たちを諌めるように、ツグミは誰に言われたのではなく自分の正しいと思うことをやろうとしてついにここまで来た)

 

城戸の視線は会場スタッフとして働いているツグミに向けられた。

 

(ミリアムの(ブラック)トリガー強奪未遂事件をきっかけにあの子は変わったな…。いや、アフト侵攻の直後からか。それまでは玉狛支部に引きこもって本部の連中と積極的に交流することはほとんどなく、現状維持を最優先に生きているような子だった。それがB級ランク戦に参加するようになり、それまで彼女の存在すら知らなかった隊員たちにもその存在感を知らしめ、中には彼女の影響を受けた者もいる。無理をして身体を壊したこともあったが、それすらもあの子は自分の成長の糧に変え、玉狛支部という家と家族から巣立つまでに育った。もっとも巣立ったはいいが、近界(ネイバーフッド)にまで飛んで行くとは織羽の娘らしいな)

 

織羽はエウクラートンがキオンに侵攻された時、(ブラック)トリガーを託されて国を離れたことになっている。

キオンに(ブラック)トリガーを奪われたくはなかったからだという理由だが、はたしてそれだけだったのだろうか?

城戸は織羽がエウクラートンの王家の血を引くことを知るとひとつの推論に達した。

 

(ミリアムが織羽を産んだ時、彼女から生まれたばかりの赤子を引き離したのは先代の女王であったということだが、非嫡出子とはいえ孫である。もしかしたら万が一の時のためにと織羽の存在を守ろうとしたのではないだろうか? そして現女王はその事実を知っていて、彼に(ブラック)トリガーを持たせて逃がしたのも彼に希望を託したからで、玄界(ミデン)へとやって来たのは争いの絶えない近界(ネイバーフッド)に平和をもたらすための仲間と力を得るためではなかったかと思えてくる。玄界(ミデン)出身の有吾と交流があったことでトリオンを使用しない独自の文明によって発展した世界があると知れば興味を持つだろうから、逃亡先を玄界(ミデン)にしたのは当然だ。有吾にしてみれば近界民(ネイバー)に対して悪意も偏見もない上に友人が助けを求めているのなら手を差し伸べないはずがない。そうして三門市に戻って来た有吾が仲間を…私と最上を仲間に引き入れてボーダーを立ち上げた。ボーダーという組織は三門市防衛を目的としてつくられたものではなく、近界(ネイバーフッド)でのトリオン不足を原因とした戦争をなくすために玄界(ミデン)の文化や技術を取り入れる前線基地だったと考えれば辻褄が合う。もちろん有吾は近界民(ネイバー)の手が玄界(ミデン)に及ぶことも承知していて防衛拠点としても整備した。公にせず極秘で進めていたのは対話によって気持ちを通わせることのできる同じ人間の近界民(ネイバー)を『人類の敵』にはしたくなかったからだろうな。もし手の施しようのないトリオン兵のような怪物だけを相手にするなら個人で何とかしようなどと考えず政府に働きかけたはずだ。文蔵氏ならそれが可能だったからな)

 

織羽の養父である霧科文蔵は表の世界だけでなく裏社会にも大きね影響力を持つ人物であった。

没後もその力は続いており、ボーダーを陰から支えてくれている組織や企業も多い。

城戸が考えるように近界民(ネイバー)が人類にとって脅威となる存在であれば個人の組織で対応できるはずがなく、民間人には知らせずとも日本国政府を巻き込んでボーダーをもっと大きな()()()()としていただろう。

それをしなかったのは近界民(ネイバー)()()()()()()()()()()()()()()であったからで、いつか近界民(ネイバー)の存在が公になった時の民間人への心理的影響を考えてのことだったに違いないのだ。

しかしボーダー(組織)がまだ不完全な状態で織羽が逝き、有吾も近界(ネイバーフッド)に家族を持ったことで頻繁に三門市へ戻って来ることはなくなってしまい、とうとう戦場で(ブラック)トリガーになるという最期を迎えた。

こうなると残された城戸たち()()では組織を維持することはできず、トリガー使いとして有能な子供たちを仲間に加えることとなる。

当時小学生や中学生だった子供を巻き込むことに抵抗はあったが、トリオン兵による民間人の拉致事件が発生している以上は人手が必要で、城戸たち大人が主戦力であっても巡回任務に未成年を参加させなかれば活動ができなかったのだ。

おまけに成人するとトリオン器官の成長が止まるとなれば、子供を育てて将来の主力にしなければ組織を維持できない。

それは現在でも続いており、防衛隊員の多くは中高生である。

ボーダーの存在を秘匿しなければならなかった理由に「労働基準法に抵触する」からというものがあったのは否めない。

様々な苦労と悲劇を乗り越え、ボーダーは織羽と有吾の目指した組織に近付きつつあった。

 

玄界(我々の世界)のためだけではなく近界民(ネイバー)たちのために尽力しようとした織羽と有吾の願いはツグミの手によって叶えられようとしている。いや、まだ第一歩を踏み出しただけでこれからどうなるかはわからない。だが私にできることはあの子を信じることと、ボーダー最高司令官としてあの子に権限を与えることだけだ。好きなようにするがいい。『もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ』…ツグミ、おまえにこの言葉を贈ろう。おまえのことだからもう知っているかもしれないが、これは魯迅の言葉だ。おまえが歩けばそこに道ができる。いずれその道を大勢の人間が歩くようになるだろう。私と忍田と林藤はそれぞれひとりずつ別の道を切り拓こうとしたが、結局3人とも違う方向を見ながら立ち止まっていたに過ぎない。私のように近界民(ネイバー)()()()()()()しかできない道、忍田のようにただ攻め込んでくる近界民(ネイバー)から三門市民を()()()()の道、林藤のように敵意のない近界民(ネイバー)()()()()()()でその先がまったく見えない道。自分のやっていることが正しいという確信がなかったからこそ、その場でひとり立ち竦んでいただけだった。そんな我々の背中をおまえはどんな目で見ていたのだろか? …そうか、そんな不甲斐ない大人を見ていたからこそ自分で道をつくろうとしたのかもしれないな)

 

ツグミが城戸たちの背中を見ながら育ってきたのは間違いないが、一度たりとも不甲斐ないとは思ったことはない。

強い風の吹きすさぶ荒野を羅針盤もなく進むことがどれだけ難しいかを良く理解しており、風雨がツグミ(子供)たちの身体を痛めつけないようにと城戸(大人)たちが命懸けで守ってくれたことに対して感謝もしている。

だからこそ誰も不幸にならない道を模索し、城戸たちの理解と協力を求めて同志とともに道を切り拓いているのだから孤独だと思ったことはない。

城戸が考えているほどツグミは辛いとは思わないし、命懸けの危険なことであっても信じられる仲間がいるから怖いと感じていない。

むしろ未知のものに対する知的好奇心と探究心、そして適度なスリルを満たしてくれる近界(ネイバーフッド)という新世界は彼女にとって宝の山である。

さらにトリオンとトリガーの技術は玄界(ミデン)の人間にとって真に「宝の山」となるはずで、使い方さえ間違えなければ人類の文明に大きく貢献することだろう。

 

(あの子がやろうとしていることは近界(ネイバーフッド)(ことわり)すら変えてしまうかもしれない。だがあの子が願うのは家族や友人たちに囲まれて穏やかな日々を過ごすことで、世界の支配者や神になりたいわけではない。普通に生きたいから自分にできることを精一杯やっているだけの平凡な少女で、あの子の姿を見ていると平和で穏やかな日々を過ごすということがどれだけ大切で維持することは難しいのかを改めて考えさせられる)

 

城戸は自分が10代の頃を思い出していた。

あの頃は近界民(ネイバー)近界(ネイバーフッド)などというものの存在すら知らず、竹刀を振り回していたやんちゃ小僧であった。

 

(私には親がいて、気の合う仲間がいて、高校生として適当に勉強をしながら好きな剣道に夢中になっているだけで毎日が楽しくて充実していた。それなのにあの子や同世代の子供たちはそんな普通の日々を守るために侵略者と戦わなければならない。本来なら大人である私たちが守ってやらなければならないというのに、今まで何をしていたのだ? …いや、何もしなかったからこうなったのだ。ならば今からでも遅くはない。私は私にできることを精一杯やるしかない。ツグミが準備してくれたこの舞台の主人公として見事に演じきってやろう)

 

ツグミが携帯電話で誰かと通話し、短い会話が終わると彼女は城戸のいる場所に駆け寄って来た。

 

「城戸司令、お弁当が届いたようですので応接室へ移動をお願いします。その後は本番までゆっくりと寛いでいてください」

 

「ああ、わかった」

 

そう返事をして立ち上がる城戸にツグミが声をかける。

 

「なんだか朝の時よりも顔つきがやる気満々といったカンジになってきましたね。何か心境の変化でもありましたか?」

 

「ん? どういう意味だ?」

 

「リハーサルを始める時にはなんとなく自分にこの大役が務まるの不安だという顔だったのに、今では『やってやろうじゃないか!』っていう自信たっぷりな表情をしています」

 

「おまえにはそう見えるのか?」

 

「はい。でも同盟に関する事務局はボーダーに内に置くことになるわけで、現状ボーダーの最高司令官のあなたが同盟内のリーダーとなります。ですから不安な顔をしていては困ります。それに今はまだ公にはしませんが、いずれ公表する時にスカルキ総統とリベラート殿下のふたりと比べて見劣りするようではみんなが残念がると思うんです。スカルキ総統はまだ20代で若くてハンサムですが国のトップとしての貫禄があり、リベラート殿下はさすがに上流階級の出身で貴族っぽいオーラが溢れて上品な男性として印象深いです。城戸司令はそんなふたりに挟まれてしまうのでビジュアル的には不利な条件ですけど泰然自若とした態度が好感度と信頼度を増します。だからもっと堂々としていてくれたらと思っていましたが、もう大丈夫そうですね」

 

「ふむ…」

 

「なんか良くわからないって顔ですけど、テレビ映りって重要なんですよ。それに今後近界(ネイバーフッド)の国々が加盟を希望してきた場合には相手国に舐められてはいけません。正直言って城戸司令のお顔はフレンドリーではありませんが、歴戦の強者感が漂っていて威厳があります。その大きな傷も三門市民とボーダーの隊員たちを命懸けで守ってきたという証で、ボーダーがこれまで辿ってきた歴史を言葉ではなく無言で語りかけています。…ということなので本番では緊張せずに()()()()城戸司令でいてください。じゃあ、わたしは他の方にも声をかけてきますね」

 

そう言ってツグミは講堂の中をぐるりと見回し、忍田の姿を見付けるとパタパタと走って行く。

城戸はそんな彼女の後ろ姿を見ながら思った。

 

(意外性のある思考や行動力は織羽そっくりだが、ああしていつも誰かのために走り回っている様子を見ると美琴そっくりだ。命懸けであの子を守ったふたりに心から感謝する。ありがとう、織羽、美琴)

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。