ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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470話

 

 

これまでにもツグミは何度か幹部会議には参加していたが、総合外交政策局局長としての仕事の報告をするのは今回が初めてである。

ロの字型の机を囲むように席が配置されていて、上座に城戸がいて、彼の右側の辺に鬼怒田・根付・唐沢が腰掛け、左側の辺に忍田・林藤・沢村という席次になっていて、下座の席に召集された隊員や職員が就く。

これまではこの下座の席にツグミは座っていたのだが、これからは幹部として常に出席することになるので別の席を用意されることになるのだが、それがどこになるのかはまだ知らされていない。

したがって早めに会議室へ着いても自分の席がわからずに立って待たなければならないのだ。

かといって上層部メンバーが先に着席している中、後からのこのこと入室することも遠慮したいので沢村のいる「本部長補佐室」へと向かった。

ここで沢村と一緒に会議室へ行くことにすれば早すぎも遅すぎもなくちょうど良いタイミングとなると考えたからだ。

しかし沢村から意外なことを聞かされてしまう。

 

「わたし、もう幹部会議には出なくてもよくなったのよ」

 

「どうして会議に出ないことになったんですか!?」

 

「だってこれまでが特別扱いだったんだもの。わたしって本部長補佐でしょ? でも鬼怒田さんや根付さんのところの補佐役、つまり副室長が出席することはないし、唐沢さんの補佐をやっていたあなただってその立場で会議に出席したことはないはず。だから補佐のわたしは幹部会議に出席すること自体がイレギュラーだったのよ。ついでに林藤さんも玉狛支部の支部長という立場で出席していたけど、鈴鳴や他の支部の支部長は一度も出席したことはない。まあ、旧ボーダー時代からのメンバーだってことで()()()()()顔を出していただけなものだから、あの人は自分から『俺は出なくてもいいんじゃね?』って言い出して今日の会議からは出ないことになったってわけ。だからあなたの席は本部長の隣りになると思うわ」

 

「…そうだったんですか。でもそうなると忍田本部長と一緒にいる時間が減って残念なことなんじゃありませんか? でもなんかあまり気落ちしていないように見えますけど」

 

忍田に片思いをしている沢村であるから一分一秒でもそばにいたいと思うものだが、会議に出ないのならその分時間が減ってしまうことになる。

それを残念に思っていない様子の彼女にツグミは少々違和感を思えたのだ。

 

「ああ、それね。実は本部長がわたしに気を使って城戸司令に進言してくれたの。ただでさえ忙しいのに特に出席しなければならないというものでもない会議に引っ張り出しては休む暇がない。その分を休憩時間に回して、本来の仕事に専念してもらいたいんですって。優しいわよね、本部長って。だから会議が終わったら美味しいコーヒーを淹れて労わってあげようと思うの」

 

「たしかに沢村さんっていろいろ雑務でお忙しいですものね。毎月入隊試験と入隊式、それに昇格試験があって、忍田本部長はそれに多かれ少なかれ関わっていますから休む暇がない。それをフォローするのが沢村さんのお仕事ですから、忍田本部長もあなたの大変さがわかっているので城戸司令に進言してくれたんでしょうね」

 

「ええ。だから残念というよりも本部長の気持ちが嬉しくて、会議に出なくて済む時間は本部長のために何かをしてあげようって決めたのよ。そういうわけだから会議室へはひとりで行ってちょうだい」

 

「わかりました」

 

ツグミはひとりで部屋を出るが、そのタイミングで隣の本部長執務室のドアが開いて忍田が出て来た。

 

「ツグミ、おまえも会議室へ行くのだろ? 一緒に行こう」

 

「はい」

 

艇が三門市に到着した時に忍田に帰還の報告はしてあったが、顔を合わせるのは2週間ぶりなのでふたりとも嬉しそうな顔をしている。

しかし並んで歩いているうちに忍田がツグミに妙なことを言い出した。

 

「その制服、良く似合っている」

 

「え? …あ、ありがとうございます」

 

「…今さら言うのもおかしいが、私はおまえが幹部メンバーに名を連ねることに反対だった」

 

「そうだったんですか? それは知りませんでした」

 

「反対をすればまた父親としての感情を仕事に持ち込んでいると言われると思って賛成側に回ったが、幹部になるということの重責を未成年のおまえに負わすのが忍びないだけで、娘でなく他人の誰かであっても同じ気持ちになっただろう。総合外交政策局局長という役職に就くということは今後のボーダーの活動で三門市防衛と並んで近界民(ネイバー)との外交という市民やマスコミから注目を浴びる部署の責任者になるということ。まだ誰も経験をしたことのない近界民(ネイバー)との外交において教科書やマニュアルなど参考になるものはない。すべて自分の力で切り開いていかなければならない未知の世界に飛び込んでいくようなものなんだ。だから私はこのような仕事の責任者となるのでればせめて成人にすべきだと考えていた」

 

「……」

 

「しかし誰かがやらなければならない仕事であり、おまえ以外に適任者がおらず、そしてなによりもおまえ自身がやりたいと望むのだから反対はできない。これは私だけでなく城戸さんも同じ考えで、いざという時には最高司令官である自分が全責任を負うという覚悟でおまえを局長に任命した。そのことだけは忘れずにいてもらいたい。おまえが選んだ道はこれまで以上に険しいものとなる。覚悟はいいな?」

 

「はい! でもお言葉ですがわたしが城戸司令に権限を与えてほしいとお願いしたのですし、近界民(ネイバー)との外交なんて誰も経験していないことだとちゃんと理解した上で拝命したのですから心配はご無用です。それにわたしはひとりではありません。協力してくれる頼りがいのある近界民(ネイバー)の友人や、わたしの帰る場所を守ってくれる仲間たちが大勢いるんですから、わたしは自分のできることを全力でやるだけです。わたしが間違った道に進みそうになっても引き止めてくれる人がいますから、何も恐れずに前に進むことができます。これまで出会った人との絆と経験がわたしの新しい武器(トリガー)なんです」

 

ツグミの言葉には忍田を納得させる「力」があった。

幹部用の制服を着てそれまでよりも大人びて見えることも効果を上乗せしているのだろうが、なによりも近界民(ネイバー)を含む大勢の人間と出会い、彼らと良き縁を結んできたおかげなのだ。

中でもゼノン隊の3人は出会いこそ最悪であったものの、今では一番信頼に足る仲間となっている。

彼らのおかげでアフトクラトル遠征は完全勝利ともいえる成功を収め、ボーダー内部に限定されるが近界民(ネイバー)である彼らも仲間として受け入れられている。

もしツグミの拉致事件の際に彼らを捕虜として扱ったのであれば、アフトクラトル遠征が成功したかどうかわからないし、さらに三国同盟締結など絶対にありえなかったはずだ。

敵であった人間すらも味方にし、さらに危険を伴う敵地へも赴いてさらに多くの人間を味方に引き入れてしまう豪胆さは父親である織羽に似たのだろう。

そして相手の気持ちを理解して歩み寄るどころか自分の懐に抱え込んで守り慈しむ姿は母親の美琴そっくりである。

忍田は姉夫婦の忘れ形見であるツグミを世界中の誰よりも愛して大切に育ててきた。

しかしボーダーという組織の活動に()()()()()しまったことを深く後悔したものの、彼女が両親から受け継いだ素晴らしい資質を開花させたのはボーダーでの経験だということを確信し、自分が普通の父親にはなれなかったが彼女にとっての良き父親になれたことを心から喜んでいた。

 

(成長したな、ツグミ。普通の父親のように休日には遊びに連れて行ってやることができなかった私におまえは『剣の稽古でいつも一緒にいてくれたからとても楽しかった』と言ってくれたし、学校とボーダー活動の両立が難しくて苦しんでいた時には私に辛い顔を見せずに笑顔を絶やさなかった。たぶん私は世間の目から見たら父親失格なのだろうが、おまえにとっては良き父親でありえたのだな。…いや、おまえが私を父親にしてくれたと言い変えよう。最高の娘のおまえが私を世界で一番大好きな人だと言ってくれるのだから、きっと私は最高の父親に違いない。そしてこれからもそうありたい)

 

忍田は無意識にツグミの頭に手を伸ばし、続いて優しく撫でた。

 

「忍田本部長、何をやっているんですか?」

 

「いや、私の弟子で元部下で最愛の娘がこんなに立派に育ったのだと思うと感慨無量でな、つい嬉しくなって頭を撫でてしまったんだよ」

 

「頭を撫でるって…子供じゃないんですから。別に嫌じゃありませんけど、誰かに見られたら恥ずかしいのでやるならプライベートの時にしてください。これでもわたしは本部長と同格の総合外交政策局局長なんですからね」

 

ハムスターのように頬を膨らませて怒るツグミ。

 

(まだまだ子供だな。20歳になるまでは忍田ツグミでいると約束してくれたこの子は紛れもなく私の娘で17歳の子供だ。この子だけでなくまだ守られる立場の子供を戦場へ送り込まなければならない不甲斐ない大人()たちにできることは少ない。しかし少ないながらもこの子たちが目指す未来を現実のものとするために手伝えることは何かあるはずだ)

 

会議室のドアの前までやって来た忍田はドアをさっと開けてツグミに言う。

 

「霧科局長、お先にどうぞ。きみの総合外交政策局局長としての初仕事の報告、楽しみにしているぞ」

 

「はい。ご期待を裏切らないよう頑張ります」

 

そう言ってツグミは会議室へと足を踏み入れた。

 

 

◆◆◆

 

 

一三〇〇時、定例幹部会議が始まった。

これは毎週金曜日の午後に行われるもので、それぞれの部署の活動報告が基本であるから小一時間もあれば終わる会議である。

この日も鬼怒田が遠征艇のエンジン改造作業の現況、根付がメディア対策室に寄せられた市民の声について、唐沢が新規スポンサーとの交渉と成果、忍田が今期のB級ランク戦の途中経過と市民救出計画における遠征参加隊員の()()()()()()についての報告をした。

そして最後にこの会議のメインイベント的なツグミによる報告が行われた。

 

「お手元にお配りした報告書に詳細は記してありますので、ここではわたしが直接目で見て聞いて感じたヒエムスという国の印象と、この国の政府とどのように付き合っていくかべきかの()()()()意見をお伝えしたいと思います」

 

ツグミはそう前置きしてからヒエムスで経験した数々の出来事を説明し、それぞれで自分が感じたことを城戸たちに伝えた。

昨年11月に行われた調査隊の報告では潜入できる場所が限られていて王都と王宮の様子は噂レベルの情報しか得られなかったが、今回はツグミたちが正式な使者として訪問したために国王を始め政に携わる人間と直接話をすることもできたために得られる情報の量と正確さは格段に上回った。

特に彼女がひとりひとりを隅々まで良く観察し、同時にテオという別人がサイドエフェクトを使って対象者の人間性を調べていることでツグミひとりの独断や偏見ではない正確な情報だという保証までついている。

その中で国王が対外的には元首ということになっていても現実には王族のトップである巫女と彼女の愛人である宰相が中心となっていると知ったことは大きな収穫であった。

 

「フランコ王が御身の危険を承知でわたしの部屋まで忍んで来てくださったことが最大の収穫となりました。世間から完全に隔離されて情報統制下にありましたが国民の現状を知るためにたったふたりの味方の協力を得て自ら街へ出かけるなどして、巫女や宰相よりも国民のことを良く知り、国の将来を憂いている賢くて優しい人だと確信を得ています。既得権益を守ろうとして疲弊している国民のことを顧みない政庁の人間たちは人として信頼に足る人物ではありません」

 

ツグミがここまで話したところで鬼怒田の手が挙がった。

 

「おまえの言い分はわかるが、わしらはヒエムスにいる三門市民を救出できればそれで十分で、ヒエムス国民がどうなろうと知ったことではない。作物の種でも太陽光発電システムでもかまわん、向こうが欲しがるものを渡して市民を返してもらう。それで取引はおしまいだ。そもそも内政干渉は許されないとおまえ自身が言っていたのではなかったのか?」

 

「若輩者のわたしがこのようなことを言うのは憚られます。しかしながら総合外交政策局局長として意見をさせていただきます。たしかにボーダーの目的が市民の救出だけでしたらそのとおりでしょう。ですが悪意を持つ近界民(ネイバー)が三門市にやって来ることがなくなれば本来の三門市防衛も楽になるのではありませんか? キオンのように玄界(ミデン)に対して友好的な国を増やすことは将来の面倒事を減らすことにつながります。別に内政干渉しようというのではなく、為政者としてその資格のある人物と正しい国交を結びたいと思うのは当然のことです。自分たちさえよければそれで良いという考え方ではいつまで経っても変わりません。先ほど説明したようにヒエムス政府はエクトスから購入した三門市民を購入価格よりも若干上乗せして国民に払い下げし、その差額を自らの懐に入れるような連中によって政が行われていると知って腹が立ちませんか? 人間…三門市民を商品のひとつとして売買しているだけでも腹立たしいというのに、政府が国民に対して高く売りつけ差額で儲けるという人を人と思わない鬼畜な所業。そんな連中に虐げられている名ばかりの国王に肩入れしたくなるのは人として当たり前の感情です」

 

「しかし我々がヒエムス政府を否定して関係を悪化させてしまえば市民救出どころではなくなるだろ? そこはどう考えているんだ?」

 

根付が呆れた様子でツグミに訊くが、彼女にとってその反論ですら想定内のことで平然と答えた。

 

「別に政府批判をしようとかクーデターを起こそうなどと物騒なことをするつもりはまったくありません。わたしは元首であるフランコ王と直接交渉をして、お互いに納得できる条件でボーダーは三門市民を救出し、ヒエムスは国民の生活がもっと楽になるような手段を手に入れるだけ。セルジョ宰相はあくまでも国家元首はフランコ王であると断言し、その言質は取ってあります。ならばボーダーはフランコ王と交渉するのが正当な手段です。()()()()()()()()()()()()など何の価値もありませんよ。実際に国を動かしているのが彼らであっても、最終決定権を持つことになっているのがフランコ王です。これまでは宰相たちの言いなりになって意に沿わない内容でも署名させられていましたが、一緒に戦ってくれると約束してくださいました。わたしはあの方の誠実な気持ちに寄り添いたい。それだけです」

 

すると唐沢が助け舟を出すというか、ツグミの意見に賛成であるという意思表示をした。

 

「たしかに国家元首がフランコ王だというのなら我々が交渉すべき相手は彼しかいない。当然宰相たちはそれを邪魔しようとするだろうが、こちらはあくまでも元首としか交渉しないと言い張ればいい。まさか国王はお飾りで何の権限もないなどとは口が裂けても言えるはずもなく、またあからさまに国王批判もできないだろうから、ここでフランコ王が()()の声を無視して毅然とした態度で我々と交渉の席に着くことができれば上手くいくと思いますよ。ただしそれが難しいんですけどね」

 

ツグミとフランコが内通していることはまだセルジョたちは知らないはずだが、ボーダーとフランコが接近しようとすれば妨害をするに決まっている。

現に謁見の際にはフランコを体調不良と偽ってツグミたちから引き離したのだから、明らかにセルジョたちには都合が悪いからだ。

 

「いえ、次回は城戸司令がわざわざ足を運ぶと伝えてありますので、玄界(ミデン)側トップのお出ましにヒエムス側がフランコ王を出さないというわけにはいきません。もしかしたらまた体調不良を理由にしてセルジョ宰相が全権委任されているということにして話を進めようとするかもしれませんが、城戸司令がNOと言えばそれで十分。ヒエムスを発つ時、彼を少々脅しておきましたからボーダーに対してふざけた態度を取ることはないでしょう。それに手は打ってありますのでご心配なく」

 

ツグミの自信満々の態度に鬼怒田と根付はこれ以上何も言えず、ヒエムスとの交渉については彼女に一任するという城戸のひと声で定例幹部会議は終了となった。

 

 

◆◆◆

 

 

「ツグミ、少し話がある。あとで私の部屋へ来なさい」

 

会議室の片付け ── これまでは沢村の役目であったが、彼女が会議に参加しなくなったためにツグミの役目となった ── をしていると、最後まで残っていた城戸がおもむろに立ち上がってツグミに声をかけた。

 

「あ、はい。…では5分後に執務室へお伺いします」

 

「わかった」

 

それだけ言うと城戸は会議室を出て行った。

会議終了後にツグミひとりが呼び出されることは度々あったが、今回の城戸の様子はいつもと違っている。

ツグミは直感で彼が大事なことを教えようとしていることを察し、急いで片付けを済ますと総司令執務室へと向かった。

 

 

「城戸司令、霧科ツグミが参りました」

 

「入れ」

 

城戸の許可を得て執務室の中へ入ると、部屋の主は部屋の隅にある金庫の前にいた。

その金庫とはボーダー内での最重要機密を厳重に管理するもので、以前にはミリアムの(ブラック)トリガーもここに保管されており、現在は特定の所有者のいない風刃が納められている。

鍵は城戸が常に所持していて、彼以外には開けることはできない。

そんな金庫の中から彼は()()()()を取り出していて、ドアの前に立っているツグミのそばに近付くと低い声で言った。

 

「これからおまえにボーダーの『秘密』を見せることになる。実際に見たことのある者は忍田と林藤と私だけで、存在自体は鬼怒田室長も知ってはいるが彼に現物を見せたことはない。これだけ言えば勘のいいおまえなら秘密というものが何なのかわかると思う」

 

「はい、わかります。旧ボーダー時代からのメンバーだといってもその存在すら明らかにしていないトップシークレットとなれば(マザー)トリガーのことだと想像できますから」

 

「以前に存在についてのみ話はしてあったが、幹部となった上におまえ自身がエウクラートンの(マザー)トリガーを見たことがあるのだから、この機会におまえにも見てもらおうと考えたのだ。言わなくてもわかっているだろうが、これから見るものは他言無用。たとえ迅であっても話してはならぬ」

 

「はい。これ以上彼に精神的な負担を与えないようにするには、知らなくても良いことは知らせずにいた方が彼のためだということですね?」

 

「そのとおりだ。これまでおまえに見せなかったのもそれが理由だが、おまえを取り囲む状況が大きく変わった以上は知っておくべきだと考えた。私の独断だが、おまえには拒否する権利がある。見たくないものを強制的に見せられて我々と同じ責任を負わせるなど、まだ若いおまえには酷だとは思う。たぶん忍田なら反対するだろう。だから嫌なら今ここで断ってくれ」

 

城戸は忍田と同じようにボーダーの人間としてだけでなくツグミの父親的な立場もあり、総司令としては幹部となった彼女に見せるべきだと判断しているが、父親としては娘に辛い思いをさせたくはないと考えているのだ。

そんな城戸の気持ちを察したツグミは真っ直ぐに彼を見つめて答える。

 

「本部基地の地下に(マザー)トリガーがあることは知っているんですから『毒を食らわば皿まで』といったところです。実物を見ることによって重い責任が伴うことになろうとも後悔はしません。むしろその責任から逃げたいがために見ないことにしてしまえばそちらの方が後悔すると思うので、ぜひ見せてください」

 

「いい覚悟だ。では、行こうか」

 

ツグミは城戸と一緒に廊下に出ると、これまで一度も使用したことのないエレベーターの前までやって来た。

すると壁にあるタッチパネルに城戸が右手をかざすと微かにブーンという音がして()()が昇ってくる。

これは登録された指紋の人間でないと利用できないタイプのようで、ドアが開くとふたりはカゴに乗り込み、地下深くへと降りて行った。

 

 

 

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