ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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480話

 

 

ヒエムス訪問は予定外のことがあったものの大きな収穫 ── 篠山と田崎というふたりの拉致被害者を保護しての帰還となった。

田崎は17歳で篠山は19歳、どちらもエクトスへ連れて行かれた後、半年ほどトリガー使いとしての訓練を受けてから()()され、レプトに売られたそうだ。

レプトまでの旅では一緒であったが、軍に引き渡された後は一度も顔を合わせることはなく、脱走してボーダーの艇にたどり着いた時に久しぶりに再会したという。

レプトはヒエムスに攻め込まれて劣勢となり、その激しい戦いの中で篠山と田崎はヒエムスの捕虜となり、捕虜交換でもレプトは自国民の捕虜を優先的に返還するよう申し出たため、玄界(ミデン)の人間であった彼らは人数の関係でヒエムスに取り残されることとなった。

ヒエムスではトリガー使いとしてよりも繁忙期の農家の手伝いをさせられることが多く、逃げようと思えば逃げ出せたようだが精神的に限界だったらしく、ただひたすら牛や馬のように働いて、食べて、寝るということの繰り返しだったと言う。

そこにセルジョの部下がふたりの前に現れて玄界(ミデン)から迎えの艇が来ていると告げたものだから彼らは()()に出た。

上手く逃げて艇までたどり着くことができれば玄界(ミデン)に帰ることができるが、途中で捕まれば脱走の罪で処罰される。

彼らは迷うことなく脱走する道を選び、無事ボーダーに保護されたのだった。

 

そしてこれは偶然のことだが田崎はツグミの小学校時代の同級生であった。

当時からボーダー活動に熱心だったツグミは事情を知らない同級生からイジメの対象となっていた。

田崎もまたそのイジメに加わっていたメンバーのひとりで、ツグミとは第一次近界民(ネイバー)侵攻の前日に学校で会ったきりであったからお互いにすぐには相手のことがわからなかった。

しかし本人確認と事情聴取をしている時にツグミの方が先に気付き、霧科ツグミを名乗ると田崎もようやく昔自分がいじめていた少女であったことに気が付いた。

彼はトリガー使いとしての訓練を受け、戦いたくもないのに敵が攻めて来るからといって無理やり最前線に放り出され、いつまで続くかわからない戦争の中で心身ともに衰弱していく。

そんな経験をしたからこそツグミの気持ちが理解できたらしく、素直に謝罪して彼女もその謝罪を受け入れて和解をした。

 

資料によると第一次近界民(ネイバー)侵攻当時、篠山は両親と妹との4人暮らしであり本人以外の3人は死亡が確認されている。

田崎は祖父と両親と兄との5人暮らしで、祖父と両親が死亡し、兄は行方不明者リストに載っている。

つまりこのふたりには三門市に家族はおらず、それぞれ三門市外に住む遠縁しか頼る者がいないという。

しばらくの間はボーダーの施設に滞在することになるが、いずれは身の振り方を考えなければならない。

しかし6年近くも近界(ネイバーフッド)で暮らしていたとなれば元の生活に戻るにも苦労するだろう。

第一次近界民(ネイバー)侵攻で拉致された三門市民は約400人。

それぞれの事情が異なるのだから400通りの対応が必要だということになる。

総合外交政策局局長のツグミとしては単に帰国させればそれでおしまいというものではなく、彼らひとりひとりに寄り添った支援を行うには「各方面の専門家(プロ)」の助けが不可欠。

そこで城戸は総合外交政策局とは別にプロジェクトチームを組織することを決め、ツグミへの負担を減らすよう働きかけることにしたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

これまでに第一次近界民(ネイバー)侵攻()における拉致被害市民で無事に三門市に帰還したのは3人。

昨年の8月に鳩原智史がヒエムスから脱出してメノエイデスまでたどり着き、ウェルスが三門市へと送り届けてくれた。

同年10月には麟児と鳩原未来がヒエムスで春川青葉を発見して連れ戻した。

同年12月には調査隊が水戸涼花とその家族を保護し、家族を含めて三門市へと連れて来た。

このうち鳩原智史のケースのみ公表されているが、他はまだ公にはされていない。

彼のケースでは近界民(ネイバー)にも友好的な人間がいて、わざわざ玄界(ミデン)まで連れて来てくれるほど親切であると宣伝することで、民間人の近界民(ネイバー)への意識を変えるために効果があると判断したからだ。

しかし青葉のケースでは近界(ネイバーフッド)へ密航した民間人と元ボーダー隊員が救出しているために()()()()()()非難されるだろう。

それに彼女は第一次近界民(ネイバー)侵攻ではなく、それ以前のまだボーダーの存在がまったく知られていなかった頃の行方不明者で、警察が単なる行方不明事件として扱っていたために、ボーダーはあえて事を荒立てることもないとして近界民(ネイバー)絡みの事件ではないことにしてしまった。

そのおかげですぐに家族の元に戻り、千佳と同じ高校に通って普通の生活を送っているから、今さら彼女の行方不明事件が近界民(ネイバー)による拉致だったと認める必要はない。

むしろ騒ぎになれば本人のためにならないと、彼女のケースにおいてボーダーは無関係を装うことにしていた。

涼花のケースでは配偶者が近界民(ネイバー)で、彼と娘が亡命を希望しているため扱いは慎重にしなければならない。

近界民(ネイバー)に対して嫌悪感を持つ者は多く、遺族ともなれば無関係とはいえ近界民(ネイバー)が近くに住んでいると思うだけで耐えられない気持ちになるというもの。

それに涼花はともかくカルーロや娘に危害が加えられる恐れがあると考えられるため、まだ内緒にしておいた方が彼女たちのためにも良いと判断したのだった。

そして今回の篠山郁太郎と田崎翔のふたりである。

彼らは親戚を頼らずに三門市内にあるボーダーの施設に仮住まいをし、アルバイトをしながら学校に通いたいという希望を申し出ていた。

ならば彼らのためにも帰還したことを公式に発表し、三門市民としての生活ができるようにしなければならない。

そこでツグミは城戸と相談し、またもや一芝居打つことにしたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

5月2日の「こちらボーダー広報室」は内容を変更して放送することとなった。

嵐山隊の登場を心待ちにしているファンには申し訳ないが、アフトクラトル遠征の計画発表からずっとボーダーの活動で大きな動きがあった時にはそちらを優先して放送しているのでそこは我慢してもらうしかない。

毎度のことながらツグミがシナリオを書くことになるのだが、今回はヒエムスで救出した篠山と田崎のふたりには番組に出演してもらうことにした。

鳩原智史の時には匿名で本人の出演はなかったが、篠山と田崎については本人の了解を得ており、自分の言葉でその過酷な経験を語ってもらう予定だ。

ただし顔出しはNG。

彼らがマスコミに追いかけられるのは目に見えていて、報道協定などというものもあるが守られなかった時のことを考えれば身元がバレないようにしておいた方がいいと判断されたのだった。

今回の番組では拉致被害者市民救出計画が本格的に動き出したことをアピールする必要があり、ボーダーが積極的に近界(ネイバーフッド)へ行って拉致被害者を探していると言えば近界民(ネイバー)の協力者の存在も公にできるというものだ。

そこでキオンという国の名を出し、ゼノン隊の3人が今回の遠征の成功の立役者であることを発表することにした。

ボーダー内部では知れ渡っていることだが、民間人にはこれまでずっと彼らの存在は明らかにしていたものの、その正体は秘密にしている。

アフトクラトル遠征の記者会見では別動隊として潜入調査や破壊工作などボーダー隊員には危険すぎる仕事をやってもらい、ツグミが本隊との連絡係であったことになっていた。

しかしいつまでもゼノンたちのことを隠しておくよりもタイミングを見計らって公表する方が賢明だと判断し、ちょうど帰国者がいることから彼らの協力があって成功したのだということにする。

そうすれば彼らが三門市民に受け入れられやすくなり、これまでのように街へ出る時に変装トリガーを使用して素顔を隠す必要もなくなる。

すでに艇の中でシナリオを書き終えており、ゼノン、テオ、篠山と田崎を交えてリハーサルを行っている。

彼らはツグミや城戸と違ってテレビ番組への出演は初めてなので念入りに練習をしておかなければ()()を出してしまう恐れがある。

収録・編集をすれば視聴者にはバレないが、テレビ局スタッフには知られてしまうことになり、それはできる限り避けなければいけない。

そしてゼノンとテオも三門市に到着する頃にはツグミから合格点がもらえるようになっていた。

さらに寮のミーティングルームではリヌスも交えてリハーサルを行って、あとは本番の収録日を待つだけとなった。

 

 

◆◆◆

 

 

「みなさん、こんばんは。『こちらボーダー広報室』、本日は内容を変更してお送りしています」

 

今回の司会侵攻は嵐山にやってもらうことになった。

いつもならメディア対策室長の根付の役目なのだが、最近では嵐山隊の露出度が減ってきているために視聴者サービスが必要と判断され、嵐山隊の代表として彼に頼んだのだ。

これで少しはファンの気持ちが和らぐはずである。

 

「前回の3月15日の放送で総合外交政策局局長に就任した霧科ツグミさんが近いうちに近界(ネイバーフッド)へ行って情報収集をするようなお話でしたが、拉致被害者市民救出計画においてその『結果』がさっそく出たというのです。なんと男性ふたりを救出し、無事に帰国させることができました! 本日はそのお話を城戸司令と霧科局長、そして帰国した篠山郁太郎さんと田崎翔さんをお招きしてお伝え致します!」

 

そこで画面はツグミと篠山と田崎の3人がスタジオの中央で弧を描くように並んで椅子に腰掛けている光景となった。

篠山と田崎の前にはすりガラスのパーティションが置かれていて顔がわからないようになっている。

 

「こちらのおふたりが奇跡の生還を成し遂げた篠山さんと田崎さんです。なお、おふたりは出演にOKはしてくれましたがこれからも三門市内で暮らしていくため、マスコミ関係者に追われたくはないということで顔出しはNGとなりました」

 

嵐山が紹介すると、続いて本人が簡単に自己紹介をした。

 

「篠山郁太郎、19歳です」

 

「田崎翔、17歳です」

 

「彼らは第一次近界民(ネイバー)侵攻の際に拉致された被害者で、約6年ぶりに三門市へ帰って来ました。6年という長い時間、彼らは異世界で筆舌に尽くしがたいご苦労をされてきたことでしょう。思い出すのも辛いことかもしれませんが、ご本人が自らの経験を語ってくださるということです。ですがその前に霧科局長から今回の救出劇に関する経緯を説明していただきます」

 

嵐山がそう言うと、カメラはツグミに向けられた。

 

「みなさん、こんばんは。ボーダー総合外交政策局局長の霧科です。前回の放送の収録の時にはまだ近界(ネイバーフッド)へ行くという漠然とした計画でしたがその直後にメノエイデスへ行くことが決まり、近界民(ネイバー)の協力者と共に向かうことになりました。その協力者とはアフトクラトル遠征で別動隊として本隊のために働いてくれた方々です。遠征直後の記者会見では彼らの存在だけは明かしましたが、彼らがどのような人物であるかはお話できませんでした。ですが彼らは本国から許可を得てまでボーダーに協力をしてくれる非常に友好的な近界民(ネイバー)です。ならば彼らにもこの三門市でわたしたちと同様に暮らしていくことも可能だと思うのです。そこでこの番組の後半では本人に出演していただき、彼らの三門市民に対する気持ちや、わたしたちが今後どのように近界民(ネイバー)と交流をしていくべきかなどのお話をしたいと思います」

 

次の瞬間、スタジオの照明が落とされて真っ暗になり、ツグミたちのいる場所の中央にかつてボーダーが使用していた惑星国家の軌道配置図が浮かび上がった。

 

「これは近界(ネイバーフッド)の地図です。近界(ネイバーフッド)の国々にはわたしたちが知っている宇宙空間に浮かぶ惑星のように決まった軌道で周回している『惑星国家』と決まった軌道を持たずに自由に動き回る『乱星国家』と呼ばれる国があります。この地図は以前に城戸司令がボーダー創設の経緯についてお話をした時に登場した近界民(ネイバー)と思われる青年が所持していたもので、当初は何かわからなかったのですが調査していくうちにこれが近界(ネイバーフッド)という異世界の地図だということが判明したのでした。ですがこれはアバウトなものだということが後にわかりました」

 

続いてその地図に重ねるようにレプリカが提供してくれた惑星国家の軌道配置図が浮かび上がった。

「星」の数が数倍に増え、誰が見てもこちらの方が詳細なものだとわかるはずである。

 

「こちらが協力者によって提供されたものです。ご覧のように数多くの国が存在することがおわかりになると思います。中央で一際大きくて明るい()のように見えるものは近界民(ネイバー)たちが玄界(ミデン)と呼ぶわたしたちの住む世界です。まるで太陽を中心として軌道を描く太陽系の惑星のように見えますね。…さて、わたしたちは最初に投影された軌道配置図を手がかりとして無人探査船を送り込み、それが成功すると有人機による往還を行いました。その件につきましては昨年お話していますので割愛させていただきます。そしてその有人機による往還の途で、わたしと迅隊員は近界民(ネイバー)と接触しました。場所はメノエイデスで、出会ったのが後ほど紹介させていただく方々です」

 

軌道配置図の()のひとつが赤く点滅を始める。

 

「この赤い点がメノエイデスです。ご覧のようにわたしたちの世界に非常に近い場所を周回していることがおわかりになると思います。この国は近界(ネイバーフッド)を旅する際には必ず立ち寄る国です。わたしと迅隊員がこの国を初めて訪れた時、ウェルスさんという近界民(ネイバー)の妹さんを助けたことがきっかけで彼とは友人になりました。そしてこれまで三門市民のみなさまに内緒にしていましたが、この時にキオンという国の諜報員である3人の近界民(ネイバー)にも出会ったのです。彼らはボーダーがアフトクラトルによる侵攻を最小限の被害に留めたという噂を聞き、その真偽を確かめるために本国から派遣されたのだそうです。同時にボーダーが彼らの国にとって敵となる国かどうかも確かめる目的もあったのです。そこでボーダーが近界(ネイバーフッド)の国々からの侵攻から防衛するためだけに武装している組織であることをその目と耳で確認してもらうために彼らには三門市に来ていただくことにしました。そして彼らがボーダーに対して敵意がないことを証明し、ボーダーがキオンの敵とならないことを確約しましたので、彼らはアフトクラトルにさらわれたC級隊員の救出計画に協力をしてくれることになったのです」

 

続いて軌道配置図のヒエムスの位置が赤く点滅をする。

 

「協力者の存在はボーダーの活動に欠かせないものとなっています。ボーダーは敵と戦うための訓練はしてきましたが、他国に潜入して情報を探るという諜報活動は特別な訓練を受けていませんから誰にもできません。アフトクラトル遠征でも情報収集に長けた彼らがC級隊員の居場所を突き止めてくれて、遠征隊本隊との()()()を務めてくれました。おかげで本隊は危険な敵地に潜入するというリスクなしにC級隊員を全員無事に救出できたのです。この赤い点は篠山さんと田崎さんが囚われていたヒエムスという国です。この国に第一次近界民(ネイバー)侵攻で拉致された市民がいるという情報を掴んだのも彼らのおかげです」

 

ゼノンたちの登場はまだ先ではあるが、アフトクラトル遠征の成功などここまで彼らの存在なしにはボーダーの活動が成り立たないとまで思わせることでツグミの計画の()()()は完了である。

三門市民にとって近界民(ネイバー)が侵略者であり、殺戮者であり、家族や友人を奪った憎き仇であるという事実は認めざるをえないのだが、第一次近界民(ネイバー)侵攻の加害者はエクトスであり、他の国は関係ないことも事実である。

ツグミは惑星国家の軌道配置図を視聴者に見せることによって近界(ネイバーフッド)には数多くの国があり、その中にボーダーと三門市にとっての敵はいるが、そうではない国、そしてボーダーや三門市のために手を貸してくれる友好的な国があることを伝えたかった。

現に視聴者の多くは自分たちの抱いている近界民(ネイバー)のイメージが崩れつつあった。

当初はトリオン兵のことを近界民(ネイバー)だと考えていたから近界民(ネイバー)が人間だと知ってショックを受けたが、人間だからこそ対話によって問題解決を試みることができるという希望も見えてきた。

そして自分たちとは縁もゆかりもない近界民(ネイバー)が力を貸してくれているということに対して単純に「近界民(ネイバー)にもいい人がいるんだな」と思う人がいれば、「あいつらが何の見返りもなく手伝うはずがない。何か企んでいるにちがいない」と考える人もいる。

まあ、後者の人間の方が多いのが当然であるから、ツグミもゼノンたちのことを無条件でいい人だと紹介するつもりはない。

 

「彼らの祖国キオンは広大な面積を持つ大国ですが、地球にある某国と同様に広くても人が住むことに適していない荒地が多く、1年のうちの4分の3は雪で覆われるために食料の自給率が低い貧しい国です。近界(ネイバーフッド)の国々には似たような国が多く、さらに労働人口が少ないためにますます食料生産が人口に追いつきません。別に非労働力人口が多すぎるというのではなく、むしろわたしたちの世界と比べて圧倒的に人口は少ないという現実があります。それは近界(ネイバーフッド)がわたしたちの世界の数百年昔の技術レベルしかなく、特に医療面では驚くほどひどいものです。これはわたしが現地の庶民の暮らしを見て感じたもので、適切な医療を受けられるならば助かる命がたくさんあることも知りました。そこでボーダーは彼らと彼らの国と取引をすることになったんです」

 

そこまで言ったツグミはひとつ深呼吸をする。

 

「その取引内容については極秘事項ですのでまだお伝えできませんが、いずれお話できる時が来ると思いますのでそれまでお待ちくださいませ。…では前置きが長くなりましたが、ヒエムスであったことのお話をいたしましょう。ヒエムスに三門市民がいるらしいという情報を得たわたしたち調査隊はメノエイデスからヒエムスへと向かいました。この国は他国との交流はほとんどないのですが、こちらは玄界(ミデン)の公式な使節ということですので無碍にはできないと、国王自ら応対してくださいました。それもボーダーがアフトクラトルの侵攻を退け、アフトクラトル本国まで遠征して仲間を救出したという噂がヒエムスにも届いていたことが理由です」

 

ここからが重要なのだと言いたげな表情でツグミは続けた。

 

「ヒエムスは隊商国家エクトスと交易をしており、この国から65人の玄界(ミデン)の人間を購入したことを認めました。すなわち第一次近界民(ネイバー)侵攻の真犯人はこのエクトスという国だったことなのです! 約6年前にわたしたちの三門市を蹂躙し、多くの被害を出した加害国の正体が判明したわけですが、この国に残りの市民が囚われているのではありません。ヒエムス側の話ですと、エクトスは約400人の玄界(ミデン)の人間をすべて売り払ったと証言しているということでしたから。どの国に売られたのかはわかりませんが、少なくとも残りの人たちもどこかで生きている可能性が高いという確信が持てました。と言いますのも、ヒエムスでは65人の購入に国内総生産つまりGDPの約50%を支払ったということですから、そう簡単に死なせてしまうことができないと一般国民よりは優遇された生活を送っていたと篠山さんと田崎さんは証言しています」

 

ツグミがそう言うと、カメラが篠山と田崎が頷いている様子を映し出した。

すりガラス越しであるから表情はわからないが、肯定して頷いていることはハッキリとわかる。

 

「ですからまだどこにいるのかわからない市民のみなさんも大事に扱われていると思われますので、ボーダーでは一日でも早く全員の救出と帰国を目指しております。さて、話が逸れましたが、わたしがヒエムス国王と交渉をするために王宮に滞在していた頃、遠征艇で留守番をしていた総合外交政策局の局員が篠山さんと田崎さんを保護しました。その連絡を受け、わたしは国王と約束をしました。まず今回はふたりを玄界(ミデン)へ連れて行く許可をもらい、次回の訪問ではヒエムス側の要求しているものを引渡し、残りの市民を全員帰国させるという流れとなる予定です。次回の訪問の時期は未定ですが、準備が出来次第直ちに向かうつもりでおります」

 

「では一旦CMに入ります」

 

嵐山がCM入りを告げ、()()()は終了した。

 

 

 

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