ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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514話

 

 

拉致被害者女性たち全員が家族とともに三門市に帰りたいと希望していることはゾラの耳にも届いていた。

ツグミが彼女たちの現状と希望を事細かに聞き、レプトでの暮らしは悪くないものの玄界(ミデン)と比べれば生活レベルが低くて辛いという意見ばかりであったことを知った。

ゾラは女性たちを大事にしているつもりであったから彼女たちに不満はないと考えていたが、自分が玄界(ミデン)()()の一端に触れてしまったことで当然かもしれないと思うようになっていた。

たとえばシャンプーだが、レプトではただ髪を洗うことができれば十分だということで身体を洗う石鹸をそのまま使用する。

しかし石鹸はアルカリ性なので、髪のキューティクルが強制的に開いてしまってダメージに直結してしまうのだ。

また石鹸は石けんかすが髪の毛や頭皮に残りやすいため、時間をかけて丁寧にすすがなければいけないが、水道がないために水は井戸で汲まなければならず大量に使うことはできない。

そして頭皮に良くない石鹸を使い続ければどんどん髪の毛は傷んでいって切れ毛や抜け毛の原因になり、キューティクルを傷つけて髪のパサつきやハリのなさまで招いてしまうため見た目も悪くしてしまうことになる。

さらに風呂に入ることができるのは夏場で4-5日に1回、冬ならば7-8日に1回が限度であるから特に女性には辛かったはずだ。

ところが玄界(ミデン)では肌や髪に優しい成分でできていて、なおかつ良い香りのする髪専用の洗剤があり、身体を洗うためにはまた別の洗剤があるという。

実際に使用してみてあまりの爽快感にゾラは驚いた。

そして6年前までそれが当たり前だった生活から一変し、拉致された女性たちには不便を強いていたことに気が付いたのだった。

ゾラは女性たちのためにといろいろ考えて政策を実行していたつもりでいたが、それが本人に正しく伝わっていなかったことも初めて知った。

子供を多く産んだ女性には報奨金を、子供を無事に成人させた夫婦には年金を与えるという規則を彼女は妥当なものだと考えていた。

頑張った女性を褒めるのは当然であると彼女は思うのだが、しかしそれは女性側からすると子供をたくさん産むように政府が命令をしているように感じられたのだ。

ゾラにはそんなつもりはなくとも国民はそう感じる何らかの理由があったことは間違いない。

彼女は自分の政策が正しいと信じていたから国民から意見を求めるということはなく、国民も政府に訴えるようなことはなかったために双方に()()が生じていたのだった。

ここで自分が勘違いをしていたことに気付かされたゾラは「レプト国民にとって最善の道」を考え、15人の女性とその家族を無理やり引き止めてボーダーと対立することは賢明な選択とは言えず、むしろボーダーに恩を売って玄界(ミデン)の物資や技術を得るルートを築いた方が得策であると判断をした。

 

さっそくゾラは15人の女性とその家族の希望を叶えるという旨を正式な文書として記し、それを翌日の朝一番でツグミに届けさせた。

その内容からはゾラが女性に対して心から大切にしたいという気持ちが伝わってきた。

そして自分が彼女のことを誤解していたことを申し訳なく思った。

 

(自分の勘違いを素直に認め、多くの国民のために何が最適なのか判断できるのはさすが宰相を務める人間なだけはある。まだ交換すべき代価がどれくらいになるかはわからないけど、全員を一度に帰国させてくれるというのだから大盤振る舞いってカンジ。だったらこちらも予算オーバーになっても礼を尽くす義務はあるわね。長期戦をせずに済んだのだから従来の計画よりも早く次の3つ目の国の選定に移ることもできるし、レプトの人たちも物資の援助によって生活が楽になるのであれば戦争をして他国から奪おうという考えは捨てるはず。まあ、今の戦力ではどの国と戦っても勝てる見込みはないけどね。…それにしてもあの人のことを誤解していた。初音さんの話だと傲慢で自分勝手な人だということだったけど、それは庶民の間で広まっている悪意のある噂だった。というよりも受け取る側が大きな勘違いをしていたってことなのね。自分の気持ちを相手に正しく伝えるってことは難しい。特に直接話すのではなく勅書によって上から下へ一方的に伝えられるだけだからこうした誤解も生じてしまうんだわ。わたしも一方の意見だけを聞いて知った気になってしまったのは間違い。ごめんなさい、宰相閣下)

 

 

◆◆◆

 

 

翌日の朝、ツグミは忍田と修の3人で政庁へ向かった。

これは交渉ではなくゾラの提案をボーダー側が快諾したことの確認と、それに伴う条件のすり合わせのための会談で、修を同行させたのはそばで見て学んでもらうためである。

まずはボーダー側がレプト政府に支払う()()は例のごとく医薬品や栄養補助食品などに加え、インフラ面での支援を行うこととした。

インフラとは首都内に公共浴場を建設することである。

ヒエムスには公共浴場が存在するのだが、レプトにはそれがなく個々の家でタライや大きな桶に湯を張って行水のような入浴するのが通例だ。

そこで公共浴場を建設し、誰でも低価格で使用できることにして、その建設にはゾラに見放された捕虜の兵士たちを充てる。

そのために一時的に三門市へ来てもらって工事現場で機械の操作を学んでもらい、覚えた技術と建機を持ち帰って祖国のために働いてもらういわゆる技能実習生として受け入れるというものだ。

そうすれば銭湯だけでなく学校や病院などの建設にも役立つことになるだろうし、なによりも玄界(ミデン)の技術を身につけた男性たちならレプトのために大いに貢献できるはずだ。

 

そして帰国する女性たちについては今すぐにというわけにはいかないので、1ヶ月後に再び迎えに行くということになった。

26人のトリガー使いの男性たちはすでにトリオンキューブとなって倉庫で()()()()()のだが、15人の女性とその家族が子供を含めて27人も乗れば定員オーバーとなってしまう。

成人男性にはトリオンキューブとなってもらうのは良いのだが、妊娠中や乳幼児を抱えている女性のフォローは難しく、彼女たちや子供をトリオンキューブにした時の影響はまだ確認されていないために健康面を配慮して不可となった。

そういった理由で今回は男性26人だけを連れて帰り、後日女性とその家族を迎えに行くということに決まったのだった。

その時には産婦人科の医師にも同行してもらい、安心して三門市に帰ることができるようにする。

1ヶ月後というのは妊娠中の女性3人が全員安定期に入っているか出産を終えているかで、タイミングとしてはそれが最適であったからだ。

 

ツグミとゾラが「契約」の書面にサインをして、拉致被害者市民救出計画レプト遠征は山場を越えたことになる。

ただし双方の信頼関係が揺らぐことがないという確証が必要で、このあとツグミとゾラはプライベートな立場で昼食をとることになった。

年齢は少し離れているものの同性であることは互いに相手を理解しやすいはずで、特にこのふたりは性格が似ている。

レイジの主観ではあるが、他人の期待に応えるために無理をしてしまうところや他人に頼らないで何でもひとりでやろうとするところが似ているという。

ツグミはその「欠点」に気付き、自分にしかできないこと以外のことは仲間に頼ることを覚えた。

そんな彼女だからゾラの気持ちも理解でき、ふたりが心を通わせればレプトの未来にとって意味のあるものとなるだろう。

 

 

◆◆◆

 

 

夕方にはレプトを発つという慌ただしい中、ツグミはゾラとふたりで王宮の庭を歩きながら歓談をしていた。

王宮へ招かれるということは国賓として認められたという証で、ようやくツグミはゾラに対等な関係であることを認められたということになる。

バラの咲き誇る庭園はきれいに手入れがされていて、その一角にゾラが自ら育てた淡いピンク色のバラが咲き誇っていた。

 

「私は幼い頃から女王であった母から強くあれと教えられ育ってきた。将来宰相となることを定められ、他人に弱みを見せればそれが命取りになるとまで言われていて、私は常に誰よりも高い場所にいてその高みから国民を見下ろしていた。これまでそれが悪いことではなく、高いところにいるからこそ遠くまで、そして大勢の国民のことを知ることができるのだと信じていたのだ。国民の声が聞こえるもっと近い場所にいれば彼らの希望や不満を知ることができたはずなのだが、私は政庁の奥にいて部下の報告を聞くだけで知った気になっていた。私は若い女性たちを優遇し、子を産めば報奨金を与えて喜んでもらっていると信じていたがそんなに単純なものではなく、彼女たちは自分が子を産むため()()に存在する道具や家畜同様に扱われていたと考えていたのだな。そんなつもりはまったくなかったというのに、私の気持ちは正しく伝わっていなかった。それが私は哀しかったと同時に申し訳ないことをしていたと心から反省している」

 

ゾラはバラの花びらに触れ、寂しげな表情で言う。

初対面の時のゾラの居丈高な振る舞いはツグミに舐められまいと虚勢を張っていただけで、特に玄界(ミデン)の人間であるということで警戒心を抱いていたからの態度であった。

強がっているのは弱い自分を守るためで、特に彼女の場合は一国の宰相としての立場ゆえに絶対に弱みは見せられない。

悩みを相談できる相手もなく、どうしたら良いのかわからないからこそ自分を強く見せるくらいしかできないのだ。

そして強く見せようとすればするほど周囲の人間から誤解され、ついには誰も彼女の本当の姿を知らないという状態になってしまっていた。

 

「私はどうしたら国が豊かになって国民が幸せに暮らせるのかを真剣に考えていたが、結局私の空回りでしかなかった。それに気付かせてくれたのがツグミ、そしてレイジだ。私はお主らに感謝をしている。感謝の言葉を贈りたいのだが、私はそういったことが苦手だ。だからこんなことしかできない」

 

ゾラはそう言うとバラの花を1本手折り、それをツグミに手渡した。

 

「これが私の気持ちだ」

 

するとツグミは微笑みながら言う。

 

近界(ネイバーフッド)にも花言葉というものがあるのでしょうか?」

 

「花言葉? いや、そんなものは聞いたことがない。それは何だ?」

 

玄界(ミデン)には花などの植物に対し象徴的な意味を持たせるため考えられた言葉があるんです。科学的な根拠に基づいたものではないんですが日常的に使われていて、花を贈る場合に相手にはその言葉の意味も含めて選ぶんです。そしてピンクのバラの花言葉は『感謝』。わたしは閣下からとても素敵なものをいただきました。どうもありがとうございます」

 

そしてひと息おくと、ツグミはゾラに頭を下げた。

 

「わたしは閣下にお詫びをしなければならないことがあります。実はわたしは閣下とお話しをせずに他の人からの一方的な言葉だけを聞いてそれを信じてしまったために、閣下のことを誤解しておりました。こうして心を開いてくださった閣下とお話しをすれば閣下が心優しく国民のことを必死になって考えている宰相であることがわかるというのに、それを知らないままに閣下が国民の気持ちに寄り添えない暴君かのように感じてしまったのです。本当のわたしは閣下に感謝されるような人間ではなく、むしろ ──」

 

「そこまでだ、ツグミ。もう何も言わなくて良い。お主の言いたいことは十分わかった。私もお主のことを軽んじており、小娘を使いに寄越した男どもを軽蔑していたのだからな。しかしレイジと話をすることで私が愚かだったことに気付かされた。彼は私がこれまでに会った男の中でもっとも優しくて敬意を払う価値のある人物だ。お主がレイジを私に引き合わせたくて配慮したのだとわかっておる。レプトでは女性がどのような男に惹かれるのかを知り、その条件に合うのが彼だったのだろ?」

 

「はい。ですがそれだけではありません。彼は誰よりも弱い者を守りたい助けたいという気持ちが強く、優しくて頼りがいがあってトリガー使いとしても優秀な男性ですから。女性の扱いには慣れていませんが、それ以外のことは器用で何でも無難にこなす兵士としても人としても尊敬できる人だとわたしは信じています」

 

「ああ。私はその一端に触れただけだが彼は魅力的だ」

 

「彼に惚れましたか? もうすぐ彼も玄界(ミデン)に帰ってしまうんですよ、引き止めるなら今のうちです」

 

ツグミが冗談半分に言うと、ゾラは寂しげな笑みを浮かべて答えた。

 

「…そうだな。彼がレプトの人間であれば誰にも渡したくはない。しかし私はレプトの王族の一員であり、実を言うと婚約者がいるのだ。王族は血統を重んじるから、個人の感情は関係ない。…だが、やはり私も人間だ。好きでもない男と結婚するのは抵抗があり、今までいろいろな理由をつけて先延ばしにしてきた。そんなことをしているから私は男嫌いだという噂が流れてしまったのだろうな」

 

王族の一員であることによって個人の人生が縛られてしまう。

それはツグミにとって他人事ではなく、ゾラの気持ちもわからないではない。

そういったものとは無縁の庶民の人間であれば苦労はしたとしても自由に生きることは可能だ。

だからゾラが誰にも理解できない苦しみの中にあり、それを癒すことができる人間に出会えなかった不幸がレプトの不幸にもなっていた。

しかし彼女の心境の変化とレプトという閉鎖された国が玄界(ミデン)に向けて扉を開いたことによって、今後はもっと風通しの良い女性だけでなく男性にも()()()国になるであろう。

1ヶ月後の再訪では玄界(ミデン)から医薬品等の物資を運んで来る予定で、それが国民へ配給されることになれば少しずつではあるが彼らの生活も楽になるというもの。

それによって国民の政府への信頼度は高まり、ゾラの政策によっては政府と国民の距離は近付く。

政府が他国から奪うという愚かな方法ではなく、他国と友好的な交流を積極的に行い対等かつどちらにも利益となる道を模索しようとしている「努力」を国民が認めれば、彼らは自分自身の努力によってもっと良い国にしていこうと考え、そういった循環が国力を高めて暮らしやすい国を造っていく。

こうして近界(ネイバーフッド)から戦争が減っていけば三門市が近界民(ネイバー)によって脅かされることも減っていくという負のスパイラルからの脱却が結果的に三門市と三門市民の安寧を得ることになる。

ツグミの壮大な計画がまた一歩前に進んだのは間違いなさそうである。

 

 

◆◆◆

 

 

ヒエムスに亡命者として受け入れられることになっていた兵士46人は恩赦となり、妻子のいる4人は軍に復帰し、42人はヒエムスで暮らすのではなく三門市へ行くことを希望した。

彼らは玄界(ミデン)で勉強をして身に付けた知識や技術を祖国のために役立てたいと言い、レプトで必要とされる()()となることを選んだ。

もちろんボーダー側は歓迎しており、遠征部隊はヒエムスで救出した男性26人とレプトの兵士42人を連れて帰国することになった。

遠征部隊本隊の遠征艇は直接三門市へ向かい、ツグミたち総合外交政策局の艇はニクラスをヒエムスへ送り届けるために数日遅れで帰還することになる。

したがって拉致被害者救出の報告記者会見は総合外交政策局員の三門市到着の翌日以降になるので、それまでに健康診断や家族との面会を行ってもらう予定だ。

ヒエムスの時の経験があるからボーダー側の受け入れ態勢は整っているために心配はなく、すべては忍田に任されている。

 

そして修は総合外交政策局員ではあるが特にすべきことはないということで、ツグミは本隊の艇でひと足先に帰ってもらうつもりでいたのだが本人が同行したいと言うので一緒にヒエムス経由で帰ることになった。

ツグミは遊真たちと一緒の方がいいだろうと気を遣ったつもりなのだが、どうやら修には何か理由があるらしい。

その理由はレプトを発った日の夕食後に判明した。

 

 

「霧科先輩、話があるので少し時間をいただけますか?」

 

修がそう言ってツグミの部屋を訪ねて来た。

 

「ええ、かまわないわよ。わたしも少し休憩しようと思っていたところなのよ。そこに座っていて。お茶を淹れてくるから」

 

デスクワークをしていたツグミは書類の束を整頓すると机の向かいにあるベッドを指さした。

そして部屋を出て行くとしばらくしてふたつの紙コップを持って戻って来た。

 

「眠る前だからノンカフェインのルイボスティーにしたわ。ちょっとクセがあるけどわたしはこれが好きなの」

 

そう言って紙コップをひとつ修に手渡した。

 

「ありがとうございます、先輩。…それでお話なんですけど、実はヒエムスで自由時間があった時に空閑と千佳と麟児さんにぼくの気持ちと考えを打ち明けて、玉狛第2のこれからについて話し合ったんです」

 

「玉狛第2のこれから、って?」

 

「ぼくは先輩の仕事を見ていて総合外交政策局の局員を続けたいと思うようになったんです。それはぼくがトリガーを使う防衛隊員よりもこっちの方がぼくのそうするべきことだと感じたからです。トリガーを使わない戦いという先輩の言っていた意味がわかった気がします。まだぼくにできるかどうかはわかりませんが、やってみたいという気になったのは確かです」

 

「うん、うん」

 

「ですがそうなるとぼくは玉狛第2の隊長ではいられなくなるので、空閑たちにそのことを相談しました。空閑に隊長になってもらって3人で続けるべきだと言うと、みんなは反対しました。ぼくが隊長だからこそ玉狛第2なんだって。ぼくが隊長でなければ玉狛第2は解散するのが当然だとも言われました。なのでどうしたらいいのかをみんなで考えた結果、ひとつの答えが出たんです。でもそれが可能かどうかわかりませんので、ここはまず総合外交政策局の局長である先輩に訊いてみようということになったんです」

 

「それであなた()()はどうしたいの?」

 

「ぼくは玉狛第2という部隊(チーム)を解散したくはありません。ですが拉致被害者市民の救出計画が本格化すれば遠征艇を動かすためのトリオンが大量に必要となり、そのために千佳が欠かせないことは理解できます。空閑や麟児さんも遠征部隊として参加するでしょうからB級ランク戦も今期のように途中でリタイヤすることになってしまう。ならば初めから参加せずにA級昇格を諦めるしかありません。もっともぼくたちがA級を目指していたのは遠征に参加する資格が欲しかっただけで、千佳の願いが叶った今はもう意味のないことです。そこで4人で話し合った結果、B級ランク戦には参加しませんが玉狛第2という部隊(チーム)は解散しません。そしてぼくは総合外交政策局員と掛け持ちで、拉致被害者市民の救出計画に加わり、空閑たちは遠征の時だけ臨時に局員となって参加するというものです。こんなやり方が認めてもらえるのかわからないので、先輩に相談をしてからもう一度どうするかみんなで考えようということにしたんです」

 

「つまりオサムくんは正式に総合外交政策局員となるけど玉狛第2の隊長を続け、ユーマくんたちは防衛隊員の仕事を続けながら遠征の時には総合外交政策局員として参加してもらうというのね? いいんじゃないかしら。ううん、むしろこちらは大歓迎だわ。たぶん今後の救出計画は戦闘に及ぶ可能性はかなり低くなる。今回はレプトがヒエムスに侵攻するという話だったから戦闘員を派遣したのであって、通常はヒエムスの時のように交渉で済ませることになるはずだから。それでもこっちだってある程度は武装しておかないと不安。だからゼノン隊長たちやジンさんに戦闘員として参加してもらっているのよ。それにユーマくんたちが加わってくれるのなら鬼に金棒。チカちゃんも撃つことにためらいはなく、仲間のためなら引き金(トリガー)を引くことができるようになったから安心して背後を任せることができるしね。…わかった。三門市に帰ったら城戸司令と忍田本部長と林藤支部長の3人にわたしからお願いをしてみる。たぶん大丈夫よ。彼らにとっても悪い話じゃないし、近界(ネイバーフッド)のいろんな国を回っていくうちにユーマくんの延命に役立つ情報や技術を見付けられるかもしれないから関係者全員にとって得になることだもの。期待して待っていてね」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

修は嬉しそうに笑みをたたえてツグミに礼を言う。

しかしそれ以上にツグミの方が嬉しいらしく、自分の修への接し方が正しかったことを確信していた。

かなり厳しく接していたことは本人も認識していたし、誤解をされるような言動も多かったとわかっている。

それでも「修を死なせない」という香澄との約束を守るためには必要なことであったのだ。

A級昇格と遠征参加にこだわりB級ランク戦で勝つ戦術ばかり追って焦っていた頃とは違い、修にも()()()()が見られるようになった。

今後は彼本来の才能や力が評価されることになるだろう。

 

 

 

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