ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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517話

 

 

遊真には「任せておきなさい」などと自信ありげに言ったものの、近界(ネイバーフッド)へ行くのだから城戸たちに認めさせるにはそれなりの理由が必要である。

拉致被害者市民救出計画は総合外交政策局が主体となって進めており、現在は次の遠征先を決めるためにゼノンたちが調査に向かっている。

だから諜報員が帰還してその結果が出なければ計画は進まず、ツグミにとって今は休息を取ることが最優先であった。

長期にわたって近界(ネイバーフッド)に滞在して各国の元首や首脳陣と交渉を行うということは唐沢のようなベテランの大人であってもストレスが溜まるのだから、まだ年若い彼女ともなればそれは計り知れないものとなる。

本人はそれほど感じてはいないのだろうが、周囲の大人たちにとっては彼女の健やかな成長を見守る責任があるために気が気でないのだ。

したがって今のツグミの仕事は「何もせずに次の遠征のために鋭気を養う」というものなのだが、彼女がおとなしくしていられるはずがなく、何かをしようと考えた結果が「遊真の延命の手段」を探すことであった。

レプリカの提案でトロポイのトリオンテクノロジーに賭けてみることにしたのだが、城戸たちにトロポイへ行くことは内緒にしなければならず、別のもっともらしい理由をでっち上げなければならない。

 

(有吾さんが城戸司令にすら教えなかったトロポイという国…。過去の過ちを反省し戦争という短絡的な道を捨てて、トリガーを国民の日常生活を豊かにするために限定した。たしかにそうすればトリオンだって無駄遣いせずに済むし、なによりも家族や友人が傷つくこともない。でもいくらこの国が戦争を放棄しようとしても他国が黙って見ているはずがなく、攻め込んでくる好戦的な国の軍隊から身を守るにはハリネズミのように武装するしかないというのに、この国は関わった他国に人間の記憶を消すという方法でトロポイという国の場所だけでなくその名前すら隠そうとする。強い覚悟で戦争放棄を決めたのね。でもそうなると他国との関わりを一切捨て、完全な鎖国状態となっているということ。他国との交易がないなら全部自国で供給しなければならないんだから大変そう。それでも近界(ネイバーフッド)の中でひっそりと生きているのは間違いない)

 

トリオンを奪い合う戦争が繰り広げられている近界(ネイバーフッド)において高度な技術力を持つ国であればアフトクラトルやかつてのキオンのように武力によって多くの国を支配することもできるだろう。

しかしそれをせずに他国との関わりを絶つことで自国民の暮らしを豊かにしようとする道を選んだ。

どのような指導者がいかなる手段によって「道」を切り拓いていったのかツグミは非常に興味を抱いていて会ってみたいと考えている。

 

(普通に公式訪問したところで会ってはもらえないだろうけど、レプリカが認めた人間ってことになれば無碍にもできないと思う。軌道配置図によると今のタイミングならユーマくんの小型艇を使って往復で約40日。現地での滞在を含めても十分時間はある。だから今がチャンスというよりもユーマくんの身体のことを考えたら一刻も早く動かなきゃいけないんだから今しかないと思うべきね。…ただしトロポイへの往路でユーマくんに()()()()()()があればオサムくんたちとは今生の別れにもなりかねない。だけどそこまで心配していたら何もできないわよ。人は誰だって自分が明日生きているとは断言できないんだもの。だからこそ今やれることをやるだけ。そしてわたしのやるべきことはきっとトロポイにある!)

 

高度なトリオンテクノロジーを持つトロポイがトリガーの平和的利用の道を進んでいるということをレプリカから聞かされ、この国が近界(ネイバーフッド)の「(ことわり)」をも変えることができる可能性を秘めているとツグミには感じられた。

 

玄界(ミデン)の人間にとって近界(ネイバーフッド)がどのような道を辿るかなんて関わりはないけど、彼らがトリオン目当ての戦争を放棄してくれるのならボーダー(わたしたち)はもう戦わずに済む。わたしの推測が正しいなら、トロポイへ行くことで未来を変えることができるはず。…そう信じたい)

 

ツグミの「トロポイが自国の思想を正しく汲み取ってくれる人間を探している」という仮説に根拠は乏しい。

しかし行って確かめてみたいという彼女の強い意思はたとえその結果が自分の勝手な思い込みであったとしてもトロポイへ行ったことを後悔はしないだろう。

彼女は常に後悔をしない生き方を心がけてきた。

それは過去に読んだ中島敦の「光と風と夢」という作品の中にある言葉に深く感銘を受けたからである。

「昔、私は、自分のした事に就いて後悔したことはなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた」という言葉はボーダーも新体制になって間もない、そして彼女が中学生になったばかりの頃に読んだものだから特に印象に残っていたようだ。

そして「頭は間違うことがあっても、血は間違わないものであること。仮令(たとえ)一見して間違ったように見えても、結局は、それが真の自己にとって最も忠実且つ賢明なコースをとらせているのであること。(中略)我々の中にある我々の知らないものは、我々以上に賢いのだ」という言葉も深く胸に刻まれていて、自分の「勘」を信じて行動をすることも多い。

なぜトロポイへ行くのかと問えば、行かなければそれは必ず後悔することになり、トロポイへ行くと決めたことは自分の頭で考えたことではなく「血」がそうさせたのだと彼女は答えるに違いない。

 

(城戸司令たちに嘘はつきたくないけどトロポイのことを話すわけにはいかないんだからこればかりは仕方がない。でも理由がなければいくら総合外交政策局長だからといっても自由に近界(ネイバーフッド)へ行くことはできないんだから何かしら妥当な理由を考えなければ…)

 

近界(ネイバーフッド)へ赴くということは多くのトリオンを消費するだけでなく多額の経費が必要となる一大事業だ。

現在は市内防衛と並行して拉致被害者市民救出計画を進めており、それに直接関係することであれば大目に見てもらえるだろうが関係のないことであれば許可が出るとは思えない。

おまけに城戸たちはツグミを休ませようと考えているから、近界(ネイバーフッド)へ行きたいと言い出せばNOと言われるのは想像できる。

そこで彼女はひとつの理由を考えた。

それはボーダーの幹部として近界(ネイバーフッド)へ行く理由としては弱く、彼女の私的欲求でしかないのだから難しいと思われるのだが、あえて城戸にぶつけてみることにしたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

ツグミは城戸のためにきゅうりとハムのサンドウィッチを作り、それを土産に昼食時間に合わせて総司令執務室を訪ねた。

土産は城戸の心象を良くするためというよりも、単に一緒に食事をするきっかけを作るためである。

自分の執務室で淹れたブラックコーヒーも良い香りを漂わせていて、忙しい城戸を少しでも癒してあげることができればという彼女の気遣いの効果を高めていた。

 

「いつもながらおまえの作るサンドウィッチは美味いな」

 

城戸は満足そうな笑みを浮かべて言う。

 

「サンドウィッチだけじゃありませんよ。()()()()()()に美味しいものを食べさせたくて料理の腕を磨きましたから。城戸司令は立場上難しいかもしれませんが、いつでも弓手町の寮へいらしてください」

 

「ああ、今の仕事が一段落したら頼む」

 

普段はパワーランチやテイクアウトの弁当で済ませてしまう城戸の昼食。

それでもまだ食べる時間があれば良い方で、昼食を抜いてしまうことも度々あるためにツグミは彼の身体のことを心配していた。

自分自身も近界(ネイバーフッド)へ行くことが多いために食生活は乱れがちだが、それでも可能な限りは栄養バランスを考えて食べるようにしている。

城戸にも身体の心配をしてサポートしてくれる家族がいれば良いのだが、一度大切なものを奪われてしまうと臆病になってしまうのは仕方がない。

家族を亡くす辛さや哀しみを経験しているツグミは「新しい家族を作ればいい」という言葉を彼に言うことはできずにいた。

 

 

プライベートな会話を楽しみながら食事を終えるとツグミは()()に入った。

 

「城戸司令、実はお願いがあってまいりました」

 

そう言うと城戸は「そうだろうな」という顔をして訊く。

 

「総合外交政策局長としての仕事であればこんな遠回しなことはしないだろうからな。それで私に何をしてほしいと言うのだ?」

 

「はい、拉致被害者市民救出計画が中断している今、わたしは今後の自分の人生のことも含めてやりたいと思っていたことを実行しようと決めました」

 

「やりたいと思っていたことだと? それは何だ?」

 

「わたしが近界民(ネイバー)との混血(ハーフ)であることを知ってから、いつか自分自身のルーツを探るための旅をしたいと考えていました。父の故郷であるエウクラートンへ行ってそこで父の素性はわかりましたが、父がどのような人間であったかはほとんどわかりませんでした。祖母のミリアムさんから聞いたエウクラートンのオリバ。城戸さんや真史叔父さんから聞いた霧科織羽のことはある程度知ることはできましたが、父に関わるミッシング・リンクの部分を知りたくなったんです」

 

「……」

 

「そこでゼノン隊長たちが帰還するまで時間がかかるでしょうから、その間に父が有吾さんと共に旅したルートを辿ってみようと決めたんです。20年以上も前のことですから情報は限られたものでしょうけど、それでも何もしないでいるよりは知ることができるでしょうし、なによりもわたしが満足できると思うんです。やることをやった結果であれば納得せざるをえませんから」

 

すると城戸が眉を顰めた。

 

「しかしどうやって辿るというのだ? 私ですら彼らから詳しい話は聞いていないのだぞ」

 

「それなら大丈夫です。レプリカという力強い味方がいますから。有吾さんと旅したデータは復元できましたし、惑星国家の軌道配置図で当時の位置関係を再現すればどの国を経由したのかはわかります」

 

「なるほどな…」

 

「ですからレプリカを同行させるとなると空閑隊員も同行してもらわなければなりません。彼からは承諾の返事はもらっていますので、あとはわたしたち()()()()()()()()()()()()()()()()()()の許可をもらえればOKなんです。いかがでしょうか?」

 

自分のルーツを探るための旅としたのはトロポイへ行くということを伏せるためだけでなく、本心でいつかはオリバの旅した国へ行ってみたいと考えていたからである。

レプリカの話では有吾とオリバがエウクラートンを脱出して玄界(ミデン)までやって来たルートはトロポイへ行くルートと一部重なっており、少々遠回りになるが双方の国へ行くことは可能であるというのだ。

したがって往路でトロポイへ直行し、そこで()()()()()()()のちにエウクラートンへ行き、復路は有吾とオリバが旅したルートを辿るというものになる。

 

「……」

 

難しい顔で黙ってしまった城戸にツグミは言う。

 

「空閑隊員とレプリカという力強い案内人と護衛がいるんですから心配はいらないと思います。それに拉致被害者市民救出計画とは直接関係のない国のことを知る良い機会でもありますのでどうか許可をください」

 

ツグミが一度言い出したことは簡単に諦めないということを城戸は良く知っている。

そして彼女が先のことを考えずに思いつきだけで実行する人間ではなく、あらゆる状況を想定して万が一のことを考慮して行動をすることも承知しているから、頭からダメだとは言えないのだ。

 

「…よかろう。理由はプライベートなことで休暇を取って行くというのだから私がダメだと言うことはできない。さらに近界(ネイバーフッド)への渡航に関してはボーダーの人間であり私の承諾を得ているとなれば密航ではないのだからこちらは問題ない」

 

「ありがとうございます」

 

「しかしそうなると艇はどうする? 任務ではないのだからボーダーの遠征艇は使用できないぞ」

 

「それなら空閑隊員の個人所有の艇を使いますので問題はありません。そこでお願いがひとつ。以前にキオンのスカルキ総統からいただいた艇の設計図にあった新しいエンジンならば期間を短縮できますので、城戸司令から鬼怒田室長に改造の依頼をしてもらえませんでしょうか? もちろんボーダの業務としてではないので無理にお願いはできませんが、今後の拉致被害者市民救出計画を順調に進めるためには必要だと思います」

 

少々強引な物言いだが、キオンの新しいエンジンを使うか使わないかで旅程は大きく違ってくるのは事実だ。

 

「よかろう、彼には私から頼んでおく」

 

「ご配慮感謝します。準備が出来次第出発させていただきますので、留守の間はどうぞよろしくお願いします」

 

「ああ。…ところで忍田には話してあるのか?」

 

「それはこれからです。城戸司令の許可を得たと言えばボーダーの任務だと思い込むでしょう。今のわたしは忍田本部長の指揮下にはなく、城戸司令直轄ですからね。…それに父のことを知りたいと言えば自分が父親として力不足ゆえにわたしが実父の面影を追っているのだと勘違いしかねませんから、このことは黙っていた方がいいと判断しました」

 

「なるほど、その方がいいかもしれんな。あとで結果だけ報告しておけばそれでいいだろう。それと私にできることがあるならできる限り協力をする。遠慮なく言いなさい」

 

「はい、ありがとうございます」

 

これでトロポイの名を出さずに近界(ネイバーフッド)渡航の許可を得たことになる。

この渡航はボーダーの業務とは直接関係せず、ツグミが休暇をもらって個人的に旅をするということになっているためボーダーの幹部であるという肩書きは使えないが、そもそもそんなものは必要ないとツグミは考えていた。

もちろんあれば便利だが、ないからといって困るものではない。

特にトロポイで会う相手は彼女をボーダーの幹部だから会うとか、ただの小娘だから会わないということはしないはずで、「レプリカが選んだ」という一点が重要であると信じている。

この旅でどのような()()があるのかはわからないが、少なくとも彼女にとって精神的な成長を促すことになるだろう。

城戸はそれを期待して彼女の思うがままにさせようと決めたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

その頃、遊真は修と千佳に事情を説明していた。

といってもトロポイへ行くことは伏せ、ツグミの護衛で近界(ネイバーフッド)を旅することになったと伝えるのみだ。

当然のことながら修たちは納得できないという表情で聞いていたが、反対はせずに遊真を笑顔で送り出すことにした。

遊真の身体のことをどうにかしようと相談していた矢先のことであるから、薄々勘付いているに違いない。

 

 

迅はツグミから何も聞かされてはいないが、近いうちに彼女が近界(ネイバーフッド)へ渡航することだけは城戸から伝えられた。

ツグミ本人の口から直接ではなく城戸から聞かされたことは彼にとってショックだったようだが、これまでのツグミとの信頼関係によって「直接言うことはできない何らかの事情」があると察し詮索はしないことにした。

本来なら護衛として迅が同行すべきであるから、彼にはこの渡航に真実を公表できない秘密があるのだと理解できる。

ただツグミのことを信じて見送り、無事に帰って来ることだけを祈るのだと心に決めたのだった。

 

 

遊真の艇のパワーアップは鬼怒田が最優先で行ってくれたおかげで滞りなく進み、城戸の許可を得て1週間後には出発が可能となっていた。

しかし定員が3名という小型艇であるから燃費が良くなってもトリオンタンクが小さいままなので多くのトリオンを積むことはできない。

そうなると出発時には満タンにしておいてもすぐに空となってしまい、そこからはツグミのトリオン頼りとなる。

遊真には可能な限りトリオンを使わせず、時間がかかったとしてもツグミのトリオンだけで航行するとなれば彼女の身体的負担は計り知れない。

もっともその点については何の犠牲もなしに得られるものなどないと考える彼女にとって元から承知の上だ。

ただしこのことを告げれば周囲の人間が心配するだろうし、忍田が知れば絶対に止めるという確信があるため内緒にしている。

 

 

ツグミたちの渡航に関して対外的には総合外交政策局の仕事で、城戸以外の幹部にはエウクラートンの女王への表敬訪問だということにしてある。

その城戸ですら真相は知らず、ボーダーの人間は()()()()()()と思い込んでいる。

それはツグミと遊真にとって都合が良い。

彼女たちが嘘をつかずに済んでいるのは真実を告げずにいると周囲の人間が勘違いをしたり、ふたりのことを信頼して深く追求せずにいてくれるからだ。

後ろめたい気持ちがまったくないわけではないが、今は遊真の延命の手がかりとなるチャンスを逃したくはないと形振りかまってはいられない状態である。

だから平静を装って準備を進めていたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

旅立ちの朝、ツグミと遊真とレプリカは友人たちの見送りを受けて(ゲート)の向こう側に消えていった。

残された修と千佳と迅の3人は(ゲート)が消えた朝焼け空を見上げながらしばらく立ち尽くしていた。

 

「大丈夫だ。あいつらなら無事に帰って来る。今の俺にはもう確定した未来しか視えなくなっているからあいつらがどうなるのかはわからない。だけど悪い未来が視えるわけじゃないから希望はある。ツグミなら…いや、遊真とレプリカがいれば最善の未来を勝ち取って帰って来るさ」

 

迅が物憂げな表情の修と千佳の肩に手を置いて言う。

 

「はい、それはわかっています。…ただ今のぼくたちの世界の医療技術と近界(ネイバーフッド)のトリオン技術のどちらでも空閑の命を救うことはできず、延命の手段ですらあるかどうかわからない。イルガーやラービットみたいなトリオン兵を造ったり、ものすごく高性能の武器(トリガー)を作ることができても人の命を救うことができないなんて、人間ってどうして戦いをやめられないんでしょうかね…」

 

修は遊真とのしばしの別れを寂しがっていたのではなく、戦争さえなければ遊真が普通に生きられるはずだったと思うと悔しくて、さらに自分には何もできないという無力さに苛まれていたのだった。

 

「たしかに人間は愚かな生き物だから戦争をやめることはできないんだろうな。トリオンが足りないから他所の国から奪おうという短絡的な考えを持つ連中や、戦争をすることで私腹を肥やす連中がいるから。でも俺たちのように戦争なんて望んでいない人間の数の方がはるかに多い。そしてツグミみたいにあんな細腕2本で強大な敵に立ち向かおうとしている奴もいるんだから、希望を捨てることはないんじゃないか。少なくとも俺はあいつが玄界(ミデン)近界(ネイバーフッド)というふたつの世界を変える引き金(トリガー)を引き、どちらの世界にもわずかだが良い変化があったと考えている。なぜこのタイミングであいつが遊真と近界(ネイバーフッド)へ行こうとしているのかは例の件もあるからなんとなく想像できるんだが、それを俺たちにも隠しておかなければならないってことはそれだけの理由があるんだって理解している。今の俺たちはあいつらが無事に帰って来ることを信じて祈るだけでいい。それで足りないと思うなら俺たちでできることを探してやってみよう」

 

「ぼくたちにできることって何ですか?」

 

「さあ、それは俺にもわからない。だから探すんだ。3人寄ればなんとかって言うじゃないか」

 

「迅さんの言うようにこの3人なら何かできそうな気がします」

 

「じゃあ、とりあえずトリガーの訓練をしようか」

 

迅の提案に修は驚く。

 

「え? どうしてですか? ぼくたちはもうB級ランク戦には参加しませんし、A級昇格も目指してはいないんですよ」

 

「その考えは感心しないな。たしかに三門市に現れるトリオン兵の数は激減しているし、総合外交政策局の仕事をするのなら武器(トリガー)は必要ないだろう。しかしツグミが毎日の稽古を欠かさないのはいざという時に自分の身を守るために必要だと考えているからさ。これからメガネくんたちも近界(ネイバーフッド)へ行くことが増えるだろう。だったら訓練をして備えるのは当然だろ?」

 

「はい、わかりました」

 

「そうと決まれば今日から始めるぞ! 千佳ちゃんも覚悟はいいな?」

 

「はい!」

 

修と千佳にはツグミたちを見送った時の表情はなく、覇気のある顔をしていた。

そして迅もまたツグミたちが帰還した時に胸を張って会うことができるようにと覚悟を決めたのだった。

 

 

 

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