ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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6話

 

 

レイジたちは新人たちの師匠となったわけだが、防衛任務や学業などで忙しく時間に余裕があるわけではない。

特に京介はいくつものバイトを掛け持ちしている高校生だから、修の訓練に充てる時間は十分とはいえないのだ。

レイジや小南も同様で、そういった場合はツグミや栞が新人たちの面倒をみることになる。

 

 

 

(ブラック)トリガー強奪未遂事件からちょうど1週間後、修たちは朝から玉狛支部へ来ていた。

それぞれが訓練の支度をしていると、京介の携帯電話にバイト先から緊急連絡が入った。

 

「ツグミ、悪い。今、店長からバイトのシフトを代わってほしいって連絡があった。これからすぐに行かなきゃならない。修のこと頼む」

 

京介はそう言ってバイト先のスーパーマーケットへ出かけてしまった。

そして残された修は申し訳なさそうな顔でツグミに頭を下げる。

 

「霧科先輩、よろしくお願いします」

 

「わかったわ。でもわたしがキョウスケを差し置いて指導するわけにもいかないから、今日は参考にするっていう意味でわたしの戦い方を見せるわね。その後は軽く模擬戦。それでいい?」

 

「はい…。お手柔らかにお願いします」

 

階級こそB級だが実力はA級レベルのツグミ。

師匠の京介ですら「本気を出した彼女には通常(ノーマル)トリガーでは敵わない」と言う。

そんな彼女が相手となれば修が気弱になるのも仕方がない。

 

「心配しなくて大丈夫よー。()()()本気出したりしないから」

 

ツグミはそう言って笑う。

さらに彼女は修の参考になりそうな戦いを見せるためにトリガーのセットを少し変更した。

メインに通常弾(アステロイド)、イーグレット、弧月、旋空、サブにレイガスト、スラスター、通常弾(アステロイド)、シールドをセットする。

そして訓練室に入ると「やしゃまるレインボー」を出現させた。

姿はモールモッドそのままだが、レインボーというだけあって7色の横縞柄だ。

これは黒くてテカテカしている()()のイメージを払拭するために、ツグミが栞に頼んで作ってもらったものである。

 

「これはわたしが普段の訓練に使ってる『やしゃまるシリーズ』の中で一番の強敵『やしゃまるレインボー』よ。ノーマルなモールモッドに比べて装甲や耐久力、攻撃力や速度の数値が約3倍なの」

 

「3倍…」

 

修はこれまでに相対したことのない強力な敵を前に息を呑む。

 

「そんな不安そうな顔をしないで。別にあなたにこれを倒せっていうんじゃないから。あなたはまだ新人だから正隊員がどういう戦い方をしているのかあまり見たことがないでしょ? 今からこれをわたしが倒すから見ててね」

 

ツグミはそう言うと(シールド)モードのレイガストを左手に握り、スラスターを起動させてその勢いでやしゃまるレインボーに体当たりした。

もちろんそれくらいのことでやしゃまるレインボーはびくともしない。

続いて弱点の目に狙いをつけて右手で通常弾(アステロイド)を撃つ。

ゼロ距離射撃で弱点を突いたものだから、彼女にブレードを立てる間もなくやしゃまるレインボーは活動停止した。

その時間わずか3秒。

 

「すごい…」

 

修は見たことのない戦い方に感心している。

 

「オサムくんの武器(トリガー)はレイガストだったわよね? レイガストは重たいし攻撃力もイマイチ。だからあまり人気がないのよね…。でも(シールド)モードの時のSSクラスの耐久力は捨てがたい」

 

「はい…」

 

「で、オプショントリガーのスラスターを起動すると…今みたいに体当たりして距離を詰めたり、逆に敵から逃げる時にも使えるわ。わたしはこうしてレイガストを(シールド)モードに固定して、利き手に弧月を持って戦うこともある。こんな感じ」

 

ツグミは新たなやしゃまるレインボーを出現させると、右手に弧月を握った。

突撃してくるやしゃまるレインボーのブレードをレイガストでさっと受け流し、左脚を弧月でなぎ払う。

バランスを崩したやしゃまるレインボーの隙を突いて、彼女は弧月で目を一気に貫いた。

これも4秒という短時間で終了。

ツグミのハイレベルな戦い方に修は見惚れてしまった。

 

「ボーダー隊員は攻撃手(アタッカー)の割合が多いんだけど、これってどうしてか知ってる?」

 

ツグミに訊かれて修は答える。

 

「えっと…攻撃手(アタッカー)の使うトリガーは他のポジションのトリガーと違ってトリオン量の消費が少なくて済む、からですか?」

 

「正解。でもそれだけじゃなくて、単に戦闘好き(バトルジャンキー)()()という確かな手応えが得られる攻撃手(アタッカー)がいいっていう人もけっこういるのよね。そういうことだからあなたが攻撃手(アタッカー)一本でいくのはちょっと難しいと思う。他の人の方がはるかにハイレベルで先を走っているから追いつくのが精一杯。特にレイガストは攻撃手(アタッカー)用トリガーといっても防御寄りだから、それだけでは無理がある」

 

「……」

 

「そこで工夫をしてより効果の出る技を生み出すのが重要となるわけ。射手(シューター)とか銃手(ガンナー)と組み合わせるって手もあるわ。たとえば嵐山隊の嵐山さんやキトラちゃんはスコーピオンを使いながらも銃手(ガンナー)用トリガーで通常弾(アステロイド)炸裂弾(メテオラ)を使う万能手(オールラウンダー)よ。だからあなたもレイガスト以外にも何か別のトリガーを使うことも念頭に入れるべきね。まあ簡単なことじゃないけど、あなたならできないことじゃないと思う。あのキョウスケがあなたのことを褒めていたもの。真面目で自分の弱いところを自覚している。そして弱さを理由に逃げない強い意思と覚悟。努力を惜しまず、諦めずに上を目指す姿勢は立派だって」

 

「本当ですか…?」

 

半信半疑の修。

 

「あはは…わたしはキョウスケと違ってふざけた嘘言わないわよ。ただしトリオンを弾として撃ち出す射手(シューター)とか銃手(ガンナー)はトリオン量に余裕のある人間がなるものだからあなたじゃ苦労すると思うけど、そこは知恵と工夫でカバーすればいい。いくらでも方法はあるわよ。まずは先輩たちの戦い方を見て、自分に合う武器(トリガー)を見つける。そしてそれをいかに上手く使いこなすか…はキョウスケから学び、あとはあなた自身の努力次第。わたしも応援するから頑張ってね」

 

「先輩…ありがとうございます!」

 

「お礼を言われるまでもないわ。本当のことを言っただけだし、先輩として当然のことだもの。…じゃあ、何か質問ある? なかったらさっそく模擬戦でもしようか」

 

すると修はここぞとばかりに食いついてきた。

 

「質問ならいっぱいあります! …でもこういうことを訊いてもいいのかわからないんですけど、先輩個人のことについて訊いてもいいですか?」

 

「わたし? 内容にもよるけど、何?」

 

「先輩はボーダーに入ってどれくらいなんですか? 千佳から聞いた話だと、先輩も小さい時に近界民(ネイバー)に襲われて、ボーダー隊員に助けられたことがきっかけで入隊したそうですけど」

 

「うん。入隊したのはわたしが9歳の時だったからボーダー歴7年ってとこね」

 

「9歳!?」

 

驚く修。

 

「まあ、その年齢で入隊はしたけど今で言うC級隊員扱いで、実戦に参加させてもらったのは第一次近界民(ネイバー)侵攻の時で11歳だったわ。現在の防衛隊員でわたしより先輩なのはコナミ先輩とジンさんだけ。レイジさんとわたしはほぼ同時期の入隊で、このあたりまでが旧ボーダーって言われている時代からの古株よ」

 

「はあ…すごいですね」

 

驚いたり感心したりと修は忙しい。

 

「先輩にも師匠がいると思いますが、どんな人ですか?」

 

「狙撃はこの前話した東さんっていう現在B級6位東隊の隊長。ボーダーで初めて狙撃手(スナイパー)になった人で、レイジさんも東さんの弟子なのよ」

 

「霧科先輩とレイジさんの師匠…。なんか凄そうな人ですね」

 

「もちろん。それに狙撃だけではなくて戦術についての師匠でもあったの。今でこそB級の隊長だけど昔はA級1位の隊長で、大勢の隊員から尊敬されている立派な人よ。わたしが旧東隊にいた時のチームメイトだった三輪隊の三輪さんとか、B級1位二宮隊の二宮匡貴(にのみやまさたか)さん、わたしが辞めた後に入ったA級6位加古隊の加古望(かこのぞみ)さん、といった現在隊長を務める人たちの隊長(リーダー)だったんだから」

 

会ったことはなくともA級6位やB級1位の隊長を率いていたと聞けば優秀な隊員であると想像できる。

さらにツグミの言葉に修は驚嘆する。

 

「わたしのサイドエフェクトが『強化視覚』だったから、狙撃とは相性がいいのよね」

 

「先輩にもサイドエフェクトがあるんですか!?」

 

驚く修にツグミが答える。

 

「そっか…オサムくんにはまだ話してなかったわね。実はそうなのよ」

 

「その『強化視覚』っていうのはどういうものなんですか? 目がいいってことなんですよね?」

 

「そう。普通の視力の基準でいくと20.0くらいだと思う」

 

「20.0!? 想像つかない…」

 

「まあ当然よね。視力検査の時に使う視力表のランドルト環…アルファベットのCみたいなアレの1.0のヤツが100メートル離れた場所から見えるっていうレベルだから」

 

「……」

 

「サイドエフェクトと認定されたのは9歳の時。強化五感といわれるタイプのサイドエフェクトは生まれつきのものだから自分自身では全然わかってなくて、他の人も同じように見えるってずっと思ってたわ。だから他人から指摘されてやっと『ああ、そうなんだ』ってことになるのよ」

 

「でも先輩は普段はメガネをかけてますよね?」

 

「うん。日常での生活の中では見えすぎるのを抑えるために特別製のメガネをかけているの。それをかけておけば2.0くらいになるから」

 

「わざわざ視力を落とす必要があるんですか?」

 

「見えすぎるのも問題があるのよ。人間が五感で得る情報量の約8割が視覚からと言われている。だから良く見えるってことは普通の人よりはるかに大量の情報が入ってくるってことで、目を瞑っている時以外は常に情報が入ってきて、脳内での処理がオーバーワーク気味になる。便利なようでけっこう厄介なのよ、この力って。日常生活の中でなら2.0で十分。でもこの能力は戦闘の時にはものすごく役に立つわ。だから戦闘体の時には今みたいにメガネを外して、その代わりにゴーグルをする。目を保護するのと同時に、テレポーターを使用する時に視線を悟られないようにするためにね。まあ、わたしのトリオン能力とサイドエフェクトを合わせればイーグレットで1000メートルくらいまでの狙撃は楽勝。わたし専用のスラッシュっていう狙撃用トリガーなら1500から1800メートルくらいなら問題ないし、動かない的なら2000メートルもいけるかな。これは東さんでもできない技術なんだから」

 

「すごいですね…」

 

「で、剣術の師匠はなんと忍田本部長よ」

 

「忍田本部長…? あの人って戦闘員だったんですか!?」

 

「そう。旧ボーダー創設時のメンバーの中で忍田本部長と林藤支部長はバリバリの戦闘員だったのよ。本部長は『ノーマルトリガー最強の使い手』って呼ばれていて、A級1位太刀川隊の太刀川さんも本部長の弟子。太刀川さんというのは個人(ソロ)総合1位で攻撃手(アタッカー)でも1位のツワモノ。10000点を超えれば超一流とされるボーダーの中で、彼の弧月のポイントは45000点を超えているわ。ジンさんとは攻撃手(アタッカー)としてのライバル関係にあって、ジンさんが風刃じゃなくて弧月を使って戦った場合は太刀川さんが勝つし、スコーピオンなら五分五分というところかしら。わたしは7歳から剣術を習っていたから太刀川さんの兄弟子ならぬ姉弟子なんだけど、なかなか彼には勝てないのよね…。そんな太刀川さんでも弧月を装備した本部長には勝てない。それくらい本部長って強いんだから」

 

「……」

 

修は高密度のデータを一気に入力されたようなもので、次第に脳が処理できなくなっていった。

 

「ちなみに射手(シューター)の師匠はいないわ。アレってなんとなくできちゃったものだから」

 

「なんとなく…?」

 

「たぶん他の射手(シューター)も同じようなことを言うかもしれないけど、アレって感性というか…センスが重要なのよねぇ。それに射手(シューター)って考えながら戦うポジションだから多角的にものを見る目が必要。特に変化弾(バイパー)とか合成弾なんかは戦況に応じて瞬時に判断・行動しなきゃならないから難しい。だから理屈じゃなくて、何て言うか…ひらめき? インスピレーション?」

 

「そうなるとぼくじゃ無理そうですね…」

 

うなだれる修にツグミが言う。

 

「わたしはそんなことはないと思う。むしろあなたに向いているかも」

 

ツグミはノーマルなモールモッドを出現させた。

 

「ちょっとこれと戦ってみて」

 

「はい!」

 

修はレイガストを構えるが、モールモッドの一撃を受けて跳ね飛ばされてしまった。

 

「じゃあ、今度はわたしがやるわね」

 

やしゃまるレインボーを出現させたツグミは左手にレイガストを(ブレード)モードで持ち、右手にトリオンキューブを浮かべる。

 

「威力75、射程20、弾速5に設定して…通常弾(アステロイド)!」

 

細かく分割された遅い弾を撃ち出すと、ツグミの前方約20メートルに通常弾(アステロイド)の弾幕が浮かんだ。

そこにもの凄いスピードで突っ込んでくるやしゃまるレインボー。

当然、弾に衝突しダメージを受けるが致命傷にはならず、スピードを落としながらもツグミに突進する。

そこへ彼女がスラスターで勢いをつけたレイガストで目を突き刺した。

弱点を突かれた やしゃまるレインボー は沈黙する。

それを見ていた修は目を見張った。

 

「速度がある敵を倒すにはこうやって対象の勢いを落として戦うというのもひとつの戦法よ。射手(シューター)の放つ(トリオンキューブ)はまるごと一発でもいいし、今のように細かく分割して撃つことも可能。…まあ、たしかに射手(シューター)は難しいポジションだけど、やり方によっては攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)にはできない効果を出すこともできる。でも自己流だと限界があるのも事実。二宮さんは当時射手(シューター)1位の座にあったというのに自分に足りない部分を補うために後輩の出水公平(いずみこうへい)さんに頭を下げて教えを乞うたくらいだもの。出水さんというのは太刀川隊の射手(シューター)ね。つまり師匠というのはそれくらい重要だから、今はキョウスケの教えを大事にすること。まあ、基本さえきちんとマスターしておけば、あとは使う人間の裁量に任せられる面白いポジションだから、射手(シューター)って。もしやってみる気があるならキョウスケに相談してみるといいわ」

 

「はい、わかりました」

 

「いずれランク戦に参加して他の隊員の戦闘スタイルを見ていくうちに自分で技を開発できるようになるわ。…じゃ、他に質問は?」

 

「えっと…さっき先輩のトリガーを見せてもらった時に、イーグレットがセットしてあるのにバッグワームが入っていなくて変だなって思ったんですけど」

 

「ええ。使わないから入れていないわよ」

 

狙撃手(スナイパー)はバッグワームで身を隠して狙撃するものだと聞いてますけど、なぜ先輩は使わないんですか?」

 

ツグミは修の質問に笑いながら答えた。

 

「だって一回狙撃すれば狙撃ポイントがバレバレになるんだし、居場所がバレたからってわたしには何の不都合もないから」

 

「そういうもの…ですか?」

 

信じられないという顔の修。

 

「通常狙撃手(スナイパー)は接近戦に持ち込まれたらおしまいだけど、わたしは弧月や通常弾(アステロイド)で反撃できるから特に問題ないのよ。むしろ来い来いってカンジ? もちろん場合によってはバッグワームをフル活用して戦うけど。このトリガーセットは本部にいた頃の防衛任務用の組み合わせ。ランク戦だと相手のトリガー構成によって毎回変えるわ。イーグレットを外して、代わりに炸裂弾(メテオラ)やスコーピオンをセットするとか。…あー、そういえばずっとランク戦してないからバッグワームはもう2年近く使ってないんだ」

 

「はあ…」

 

ポジションが狙撃手(スナイパー)なのにバッグワームを使わないとか、射手(シューター)がゼロ距離射撃をするとか、修にはツグミの戦い方が理解し難い。

しかしなぜだかその戦い方に魅力を感じ、自分にはできそうにないがもっと知りたいと思うようになっていた。

 

さらにツグミのレクチャーは続く。

 

「さっきわたしはあなたに他の隊員の戦闘スタイルを見ていくうちに自分で技を開発できるようになるって言ったけど、わたし自身は他人の戦い方を見て、その技に対抗する技を編み出す…という趣味があるのよね」

 

「趣味…ですか?」

 

「そう、趣味。本部時代の個人(ソロ)ランク戦ではいかに効率的でスマートに、そして他人が驚くような戦いができるか…というのを常に考えていたわ。わたしが通常弾(アステロイド)のゼロ距離射撃を好むのは射程が短ければ短い分を威力に回せるから。火力押しでガンガン敵を倒すのって楽しいもの。でも射手(シューター)は敵と適当に距離を保ちながら戦うことができるという点が特徴だから、わたしみたいにゼロ距離射撃をするのは邪道だし危険を伴うんだけど、自分の戦闘スタイルに自信があるからやめられないのよね。近距離なら弧月を使えばいいんだけど、破壊力の点では通常弾(アステロイド)の合成弾である徹甲弾(ギムレット)の方が高いから、装甲の厚いトリオン兵でも徹甲弾(ギムレット)を叩き込むことによって一発で完全に活動停止できる」

 

そう言ってツグミは100メートル級バムスターを出現させた。

その圧倒的な大きさに修は腰が引けてしまう。

 

「でかい…」

 

「大きいだけじゃなくて、装甲もノーマルなバムスターの3倍はあるからものすごく堅いわよ。弧月でも傷を付けるのがやっとなくらい。見てて」

 

ツグミはそう言って弧月を握りバムスターに斬りかかった。

しかしトリオン兵の中で最も堅い装甲を持つバムスターの3倍の硬度を持つから、弧月で何度も斬りつけても傷は付くがダメージは見受けられない。

 

「そこで徹甲弾(ギムレット)の出番よ。…こうしてふたつのキューブを…ギュッとくっつけて、ムニュ~って引っ張って、もう一度ギュッってすると…ほらできあがり!」

 

ツグミは両手の通常弾(アステロイド)の弾を合成して、いとも簡単に徹甲弾(ギムレット)を作り上げた。

並の射手(シューター)なら十数秒かかるものだが、手練の彼女なら2-3秒でできてしまう。

それをバムスターの腹の部分に叩き込むと、徹甲弾(ギムレット)は腹から背中に突き抜け、バムスターは轟音を上げて活動を停止した。

 

「……」

 

凄まじい威力に修は開いた口が塞がらない。

そんな彼にツグミが言う。

 

「もっとも合成弾っていうのは合成に時間がかかるから、実戦で使う人はほとんどいないわね。わたしと二宮さんと出水さんと那須隊の那須さんくらいかな。わたしも徹甲弾(ギムレット)以外の合成弾は使ったことないし。 …じゃあ、次の質問は? いくらでもいいわよ」

 

「まだ聞きたいことはたくさんあるんですけど、今日はこれくらいにしておきます。先輩の話を聞いていると驚くことばかりで…」

 

「うん、そうかもね。玉狛支部(ここ)はわたし以外のメンバーも個性的だから面白い話は尽きないわよ。興味があるなら時間のある時にもっと話してあげる」

 

「その時はよろしくお願いします」

 

その後、修はツグミに模擬戦の相手をしてもらうが、トリガーを弧月しか使わない彼女にひとつも攻撃を当てることができず、20連敗したところで修は精魂尽き果ててしまったのだった。

 

 

 

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