ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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611話

 

 

トゥーリオ・アウデーンスは年齢が55歳と老齢の域に入るはずなのだが実年齢よりもずっと若く見え、息子に玉座を譲ったことで現在は悠々自適な生活を送っていた。

神殿の真上に建つ別邸で数人の使用人と共に暮らしていて、王位を退いた後はずっと公の場に出ることはないという。

そんな彼が家族以外誰かに会うということはなく、玄界(ミデン)から来た少女に自ら会いたいと言い出すなどとは息子のオルフェオですら想像もしていなかったようだ。

かつて一度は滅びかけた国を救った救国の英雄が自分に何の用があるのだろうかと考えながら、ツグミはオルフェオの案内で別邸へと向かう。

 

「陛下、わたしが先王陛下から呼び出されるのは陛下のご結婚に関することが理由だとしか思い当たりませんが、先王陛下は賛成していらっしゃるのか反対なのかおわかりになりますか?」

 

しんと静まり返った別邸の廊下を歩くツグミは2歩先を行くオルフェオに訊ねた。

 

「う~ん、事情を話した時には驚いていたが、反対だという雰囲気ではなかったな。身分や生まれ育った世界が違うという点でレイコは私と立場が大きく違うが、だからといってダメだと頭ごなしに言うような父ではない。明日の午後にレイコと会ってもらう予定なのだが、楽しみにしている様子だったからその時の印象で答えを出すのではないかと思っている」

 

「だとすればいきなりお叱りを受けることはなさそうですね」

 

「当たり前だ。父は厳しく正義感の強い真っ直ぐな人で、人の評価は他人の言ではなく自分の目で見て話しをして判断する。だからまだ会ってもいないきみのことを私の言葉だけで判断するようなことは決してない。もちろんきみが父の眼鏡に適う人物でなければ少々気分を悪くするような言動があるかもしれないが、あの人は対象の人物を出自や年齢性別などによる偏見はないからそう緊張しなくてもいい」

 

「それを聞いて安心しました。…それにしてもこんな格好で良かったんでしょうか? 先王陛下にお会いするのですから平服ではなく正装を ──」

 

「そんなことを気にするような人じゃないよ、あの人は。むしろ畏まった姿よりも普段のきみの様子がわかるその服の方がずっといい」

 

「そうおっしゃるのならそうなんでしょうね…」

 

「父がどんな人間なのか…それは私が20から25歳くらい年を取った姿を想像すればいい。中身はほぼ同じで容姿も似ている。違うのはあの人が私よりも年老いているというだけで、気持ちや考え方は昔と全然変わってはいないからね。…さあ、着いたぞ。ここがトゥーリオ・アウデーンスの部屋だ」

 

オルフェオにそう言われてツグミは戸惑った。

 

「まさか先王陛下の私室というのでは…」

 

「そうだよ。これは非公式なもので、ごく一部の関係者しか知らない内密の面会だ。それにこの館は父の私邸で、あの人が必要だと考える時以外は誰も訪ねて来ることはないのだから客間などない。あるのはあの人が日がな一日のんびり過ごす居間と寝室だけだから。ここはその居間で、私室だともいえるわけだ」

 

そう説明し、オルフェオは重厚な扉をノックした。

 

「父上、オルフェオです。ツグミ・キリシナ嬢をお連れしました」

 

「中へ入りなさい」

 

部屋の中から艶っぽいバリトンボイスが聞こえてきた。

 

「さあ、入ろう」

 

オルフェオが右手で扉を開き、左手でツグミの背中を軽く押す。

 

「失礼いたします」

 

ツグミはそう言ってから静かに部屋の中へと入った。

そんな彼女の視界に飛び込んできたのは安楽椅子に腰掛けた紳士だ。

中年とかオジサンといった言葉が全然似合わず、あえて呼ぶなら「オジサマ」が相応しいと思われ、とてもスマートで年を経てもその身体からは若々しさが滲み出ているようにツグミには感じられた。

トゥーリオは彼女の姿を見るとさっと立ち上がって近付いて来た。

 

「ようこそ、ツグミ嬢。こんな夜分に若い女性を呼び出す失礼をお許しください。私がトゥーリオ・アウデーンスです」

 

ツグミは急いで姿勢を正し、お辞儀(カテーシー)をした。

 

玄界(ミデン)からまいりました霧科ツグミと申します。この度は先王陛下のご尊顔を拝しまして恐悦至極に存じます」

 

するとトゥーリオは何を思ったのか笑い始めた。

 

「ハッハッハ…そんな堅苦しい挨拶は私には無用だ。さあ、こちらに来なさい」

 

「はい」

 

部屋の奥にある安楽椅子に再び腰掛けたトゥーリオはその向かいにあるソファにツグミを座らせ、オルフェオはふたりの会話を邪魔しないようにと少し離れた椅子に腰掛けた。

間もなく女中が3人分のハーブティーを運んで来て、彼女が部屋を出るとトゥーリオがツグミに謝罪をする。

 

「ツグミ、この度は愚息の個人的な問題にきみたちを巻き込んでしまい誠に申し訳ない」

 

そう言って頭を下げるトゥーリオにツグミは慌ててしまう。

 

「頭をお上げください! オルフェオ陛下が事情をどのようにお伝えしたのかわかりませんが、今回のことはわたしが自ら申し出たことであって、むしろ貴国の内政に干渉してしまっているのではないかと危惧しているところです。本来ならこのようなことはしないのですが、同胞の女性が幸せになれるか否かの重要な局面ですから。皆が納得して上手くまとまるよう働きかけることが貴国のことだけでなく玄界(ミデン)にとってもそれが最善の道だと信じているからわたしは()()()一大事に手を貸すことにしたのです。お気になさらないでください」

 

「オルフェオのことを友人と言ってくれるのか…」

 

トゥーリオはそう呟くように言うと目を細めた。

 

「このようなことを言うと不敬だと思われるかもしれませんが、オルフェオ陛下が身分の上下など関係なく人として接してくださるからこそ、わたしは陛下を同じ道を進むことのできる同志として、そして個人的にも上手く付き合っていくことのできる友人だと思っているのでございます。そんなわたしに結婚という慎重に対応すべき微妙な問題を相談してくださった陛下もまたわたしを友人と認めてくれているということ。何年付き合っても友人にはなれない人間もいれば出会って数日でも生涯の親友になれる人間もいます。陛下はその後者で、わたしがこれまでに出会ってきた近界民(ネイバー)は大勢いますが親友になれると思えた人は数えるほどしかいません。ですからわたしはとても嬉しく感じました。こういう時にわたしはこの仕事をしていたことを感謝し、そのおかげで結ぶことのできた絆を生涯大切にしたいと思うのです」

 

そんなツグミの正直な気持ちに触れたことで満足したトゥーリオは大きく頷いて言った。

 

「きみがそう考えているのであれば、間違いなくきみは我が国(アウデーンス)の友人となってくれるであろう。したがってきみの提案に心から感謝し、それを受け入れることにする。予想外のことだというのによく計画の大幅な変更をしてくれたものだ」

 

「あらゆることに想定外はつきものです。その際に慌てず冷静に対処をできるよう日々努力をしておりますから、多少のことでしたら動揺しません。これまでにもいくつかの国で想像もしていなかったことに遭遇しました。伝染病が蔓延していて多くの無辜の民の命が失われていた状態の国を訪問したこともありますし、ボーダー(わたしたち)が拉致被害者市民を救出するために訪問したことがきっかけで2ヶ国間の戦争を終結させたこともありました。そして自分自身の人生に大きく関わる事実を知らされたことも一度や二度ではありません。貴国へは我が同胞を救出するために訪問をしただけでしたが、オルフェオ陛下と玄界(ミデン)の女性の婚姻が実現したならば、貴国と玄界(ミデン)は親戚のような関係になれるのではないでしょうか? そういった理由でわたしたちは全員一致で陛下の最も望む結果を出すために努力するという判断を下したのです」

 

夕食後にツグミは自分の計画を全員に披露した。

当然のことながら反対する者もおり、彼女は丁寧に説得してこれがボーダーと玄界(ミデン)にとって最善の結果をもたらすのだと理解してもらって全員一致で賛成となったのだった。

 

ボーダー(わたしたち)玄界(ミデン)に住む人々が平和で豊かに暮らすことができるよう働いております。この場合、近界民(ネイバー)に不利益を与えて玄界(ミデン)側にだけ利益となる結果へと導くこともできますが、それをしないのは長い目で見れば双方が納得する結果を出してこそより多くの人々が利を得られると考えるからです。このお考えは聡明な先王陛下ならおわかりいただけると信じています」

 

「ああ。…玄界(ミデン)の若者はなかなか賢い考えを持っているものなのだな。宰相に取り立てたトールという青年も先進的な考えを持っており、ひとりの人間が100の富を蓄積しているよりも、100人の人間がそれぞれ1の富しか持っていなかったとしてもその方がずっと()()を高めていく。そして国民を増やすことは大事だがそれよりも先に現在いる国民の生活の質を上昇させることこそ最優先事項であると言っていた」

 

「わたしには玄界(ミデン)の青年を宰相に取り立てたオルフェオ陛下こそ先進的な考えを持っていると思います。何かひとつのことに固執して視界を狭めてしまうととんでもない結果が待ち受けていることもあります。それが国の指導者であった場合は国民すべてを巻き込んでしまうのですから立場上慎重に行動をしなければならないのが国王というものです。その際に信頼できる相談相手がいることで間違った道に入り込んでしまうのを防ぐことができると思います。それが同じ考えを持つ人間よりも別の思考を持つ人間であった方がいい。それは一面しか見えないよりも多角的な見方ができるようになるからです。トール閣下は生まれ育ちや立場がまったく違いますが、目指すものは陛下と同じものであったからこそ共に歩んで行けるのです。ただオルフェオ陛下がトール閣下に何も相談しなかったのは信頼度が足りないからというのではなく、仕事上の相棒であるからこそ個人的な悩みを打ち明けることができずにいたのではないかと思います」

 

「オルフェオ、そうなのか?」

 

トゥーリオがオルフェオに視線を移して訊くと、オルフェオはそのとおりだという顔で頷いた。

 

「はい、父上。ツグミの言うとおりです。トールは私にとって戦友で、私の目の届かないところまでしっかりと見てくれます。頼りがいのある男ですが彼もまだ独り身ゆえに私の個人的なことで相談を持ちかけることが躊躇われたのです。彼は祖国に帰る機会を得て玄界(ミデン)で家族と共に生きることもできるというのにアウデーンスに骨を埋める覚悟をしてくれました。私は彼が故郷に戻りたいと言うのではないかと不安でいましたが、彼は迷いもせずに『アウデーンス発展のためにこれからも働きます』と言ってくれて、その時の私は感謝の気持ちを何とかして形にしたいと思いました」

 

そう言ってからオルフェオはトゥーリオの前まで進み出て床に膝をついた。

 

「トゥーリオ先王陛下、私はこの機会にボーダーの主宰する同盟に加入したいと考えております。今回の玄界(ミデン)渡航ではキドという総司令官と同盟加入を前提とした会談をする予定です。それに関してはツグミたちが手配をしてくれるそうなのでトールと共にアウデーンスの利益となるような結果を持ち帰りたいと思います」

 

「ふむ、そうなると国王という立場のおまえが玄界(ミデン)へ行くのは当然のことだな。結婚という個人的な理由だけでは国王が国を離れるのはマズいと思ったが、同盟加入の打診であればやむをえない。…仕方ない、おまえが留守をしている間は私が国王代理として腰を上げるとしようか」

 

「ありがとうございます、先王陛下」

 

「感謝などいらぬ。その代わりに条件がある」

 

「条件…ですか?」

 

オルフェオが頭を上げるとトゥーリオがニヤリと笑った。

 

「おまえがトールを()()()()()のだ、私にも宰相代理となる人間が必要だろ? そこでその宰相代理をツグミにやってもらおうと思う」

 

「「ええっ!?」」

 

オルフェオと同時にツグミも驚きの声を上げてしまった。

しかしすぐに平静を取り戻して言う。

 

「失礼いたしました。先王陛下が突然とんでもないことをおっしゃるものですから少々驚いて動揺してしまいました。いくら私的な場であるといっても一度口に出したことを嘘や冗談で済ませるような方ではないと理解しております。…本気でわたしを宰相代理にと考えていらっしゃるのであれば、わたしに異存はございません。ですがこの国にはトール閣下以外にも優秀な閣僚がいらっしゃるはずで、その方たちが納得しなければ不可能なのではありませんか?」

 

するとトゥーリオが断言した。

 

「それは国王が説得して公の場で私の国王代行ときみの宰相代行を認めさせるに決まっている。そうでなければ本人が国王という役職を放棄して玄界(ミデン)へ渡航することになってしまうのだ。なに、閣僚どもが反対すれば自身が玄界(ミデン)へは行けないのだから必死になって説得をすることだろう。私ときみは黙って待っていればいい。明日中に答えは出る。その結果できみは忙しい日々を送ることになるかもしれないし、自由気ままに過ごすことになるかもしれない。ただ少なくとも退屈はさせないと私が保証しよう」

 

「はあ…。先王陛下がそうおっしゃるのであれば他に道はありません。わたしはこの国にいる以上は国王陛下及び先王陛下のお心のままにお任せいたします」

 

ツグミはそう言ってトゥーリオの前に跪いた。

これでオルフェオは自分の力で閣僚たちを説得しなければならないことになり、彼は頭を抱えた状態となってしまった。

 

 

「ところでひとつ訊きたいことがある」

 

トゥーリオはそう言ってツグミに尋ねた。

 

「その首にある青い石はサファイア(サッピールス)と見た。それが本物であるとすればきみはとある王家の縁者であるという証になるのだが、それについて支障がなければ話を聞かせてもらいたい。どうだろうか?」

 

ツグミは無意識にチョーカーについているサファイア(サッピールス)に手を伸ばしていた。

 

「先王陛下はこの(ぎょく)についてどれくらいお知りなのでしょうか?」

 

「だいぶ昔…私がまだ青年だった頃に某国の友人がそれと同じような(ぎょく)をブローチにして常に身に付けていた。彼の(ぎょく)は無色透明で神秘的な輝きを秘めたものだった。それと同じ種類のものだと感じたものだから興味を持ったのだ」

 

「その友人とおっしゃる方はトロポイのエルヴィン国王陛下のことでしょうか?」

 

「そうだ」

 

「でしたら内緒にしておくことはできませんね。隠しておくつもりはなかったのですがボーダーの人間として訪問をしたのですから特に話す必要はないと考えていただけですのでご容赦くださいませ」

 

「ああ、わかっている」

 

「わたしには霧科ツグミという玄界(ミデン)での名前の他にもうひとつ名があります。わたしはツグミ・オーラクル、エウクラートンの王族の一員です」

 

ツグミがエウクラートンの名を出すとオルフェオは驚いていたが、トゥーリオは納得した様子で頷いた。

 

「エウクラートンか…。ならばトロポイと縁があるのもうなずける。エウクラートンは近界(ネイバーフッド)の中で最も古い国のひとつで、王家は数百年前にエウクラートン家からオーラクル家に引き継がれたと聞く。…しかしオーラクル家の人間が玄界(ミデン)で生まれ育ったというのは不思議だ。何か事情がありそうだな。もしかしたらオリバという男性と関わりがあるのではないか?」

 

オリバの名を出されたことで、ツグミは自分がオリバの娘であると同時に皇太子であるリベラートの孫であり、現在のところ唯一の女王候補であることを話した。

 

「キオンの大軍勢を一度はほぼ壊滅させて撤退に追い込んだ(ブラック)トリガーが存在することは知っていた。それをオリバという青年が所持していてユーゴという玄界(ミデン)の友人の手引きで亡命したという話をエルヴィンがしてくれたよ。もう15-6年くらい前のことだがな。オリバとユーゴは無事に玄界(ミデン)に着いて、オリバは家族を作ることができたようだな。ユーゴも家族ができたのかな?」

 

「詳しいことは知りませんが、わたしと一緒に来た空閑遊真という少年が有吾さんの息子です。そしてふたりともそれぞれ近界民(ネイバー)との戦いの中で命を失いました。近界(ネイバーフッド)での戦争が個人のささやかな幸せさえも打ち砕いてしまう。だからわたしは戦争をなくすために武器(トリガー)を使わない戦いに身を投じることを自ら選んだのです」

 

「ツグミ…きみは…」

 

「わたしひとりでは無力な存在ですが、家族や友人、仲間といった人たちがいれば不可能だと思えることでも叶うという()()があります。だからひとりでも多くの同志を求めていて、近界(ネイバーフッド)を旅しながら少しずつ力を蓄えてきました」

 

「その同志とやらに私も加えてもらえるかな? 今は隠居した身だが、いざとなればアウデーンスの先王という立場を利用して多少なりとも役に立てるはずだ」

 

トゥーリオはそう言ってツグミに握手を求める。

 

「ええ、喜んで」

 

微笑みながらツグミはトゥーリオの手を握り返した。

するとオルフェオが割り込んできて言う。

 

「私はすでに友人なのだから同志でもあるよな?」

 

「もちろんですとも。これでまた(ブラック)トリガー以上に強力な武器を手に入れることができました。ならばわたしはその代わりにオルフェオ陛下とトール閣下がお戻りになるまでこの国を陰からお守りすると約束します」

 

ツグミはオルフェオとトゥーリオのふたりに向かって深く頭を下げた。

そしてこの夜の秘密の会談はおしまいとなり、翌日の午前中に臨時国会が開かれた。

そこで()()()()()()()()()()()()()()()審議されて、それは過半数の賛成となったことでオルフェオの玄界(ミデン)渡航の正当な理由ができた。

まさか恋しい女性の両親に会って結婚を許してもらうのだと正直に話せば場が混乱することは目に見えていて、オルフェオの結婚に関してはまだ内緒にしておくことになっている。

同盟加入という話をする()()のために国王が赴く必要などないという意見もあったが、そこにタイミング良くトゥーリオが登場し「同盟加入という話をするの()()()()()国王が赴く必要はあると反対派の人間を諭した。

救国の英雄であり先王の意見にはツグミが想像していた以上に重みがあったようで、反対をしていた大臣たちも渋々ながら承諾したのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

そして修たちがアウデーンスを発つ日の朝がやって来た。

以前の修ならこの期に及んでもまだ不安そうな顔をして迷っていただろうが、今の彼にはそんな過去の面影はない。

自分に「力」ないことを自覚していた彼だがツグミにその重要な役目を任されたという事実が自信となり、自分だけではできないことも仲間がいればどんなことでも大丈夫だという確信が彼に「力」を与えることとなった。

 

「霧科先輩、以前のぼくならきっとこの状態なら不安で震えていたでしょう。でも今のぼくは胸を張って言えます。先輩の期待に応えて堂々と迎えに来ます、と」

 

「ええ、待っているわよ。今回のことは全部手紙に書いておいたから城戸司令に渡せばいい。何か問題があってもわたしが全責任を負うと明記してあるし、あの人ならきっと理解してもらえる。拉致被害者の人たちが三門市に着いてからのことは前4回のケースと同じ流れで問題ないし、記者会見のことなら根付室長が上手くやってくれるから大丈夫よ。ラグナの時だってわたしがいなくてもあなたが全部やってくれたからわたしは全然心配なんてしていないわ」

 

「はい、任せてください」

 

「いい返事だわ。じゃあ、オルフェオ陛下とトールさんのことをくれぐれもよろしくね」

 

「はい。では行ってきます」

 

遠征艇に最後に乗り込む修に手を振りながら、ツグミは感慨深げに微笑むのだった。

 

 

 

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