ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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614話

 

 

修が実家で香澄のクリームコロッケを堪能していた頃、雨取家でも久しぶりの家族団らんの光景が見られた。

千佳と麟児は揃って数ヶ月ぶりに実家へと向かい、雨取夫妻は子供()()の帰宅を心から歓迎していた。

麟児はあまり気乗りしない様子ではあったが、それは雨取夫妻の気持ちを考えてのことで本人は昔の家族だった頃に戻りたいと思っていた。

そんな彼の気持ちを察して千佳が両親を説得してふたりでの帰宅となったのだ。

麟児が記憶を操作して偽の家族として暮らしていたとしてもその時間は本物であり、彼が千佳や雨取夫妻に対して愛情を抱くようになったことでそれが第一次近界民(ネイバー)侵攻で雨取家の家族を守ることに繋がった。

そう考えると麟児は雨取家の人間にとって命の恩人となるわけで、今の幸せな日常は過去の偽りの家族としての日常の上に成り立っているということになる。

雨取夫妻はそれを理解し、麟児が自分たちを騙したことよりも助けてくれたことに感謝ができるようにできるようになったことで、以前は二度と顔も見たくはないと言っていたというのに今では昔のように笑顔で出迎える覚悟ができたのだった。

対外的には麟児が雨取家の長男であり、しばらく三門市外で働いていたが現在ではボーダーにスカウトされて総合外交政策局で働いているということになっている。

拉致被害者市民を救出する計画を担当する部署で働いているとなれば三門市民にとってヒーローのようなもので、近所の住民から「雨取さんはお子さんがふたりともボーダーの総合外交政策局で働いているなんてすごいですね」なんて言われたら鼻が高いというものだ。

だから雨取夫妻には麟児の過去についてはこれ以上責めることも詮索することもさせないという約束で千佳は麟児を連れ帰った。

雨取家の麟児の部屋は3年半前に彼が出て行った時のままになっていて、その夜は久しぶりに自分のベッドでゆっくりと眠ることができた。

もちろん千佳も家族が再びひとつになったという実感を得て、この上ない幸せの中で家族4人が共に暮らす夢を見ていたのだった。

 

 

 

 

遊真は玉狛支部で過ごすつもりでいたところ影浦から「今すぐウチに来い」という連絡が入ったものだから愛用の自転車で出かけて行った。

影浦の言う「ウチ」とは「お好み焼きかげうら」のことで、夕食の少し前というタイミングぴったりの時間に呼び出されたのは偶然ではない。

実は修は実家に帰ることになった時に遊真を誘ったのだが、遊真は修に遠慮して自分は玉狛支部で陽太郎たちと過ごすと答えた。

そこで修は遊真と仲の良い影浦に電話をして事情を話し、影浦は「俺に任せろ」と言って電話を切った。

遊真は修たちと共に玉狛第2の解散と同時に防衛隊員を辞め、総合外交政策局の局員へと転身している。

表向きは前述のとおりだが、実際には身体のこともあってトリオンを消費する戦闘員を続けることが難しくなったからだ。

しかし子供の頃から10年以上もトリガー使いとして生きてきた彼にとって武器(トリガー)を取り上げてしまうのは酷というもので、防衛隊員ではなくなったが近界(ネイバーフッド)へ行くことが多いということでツグミのように従来使用していた武器(トリガー)の携帯を許可されている。

そして訓練をしないでいると腕が鈍るという理由で個人(ソロ)ランク戦ブースを使用した防衛隊員との模擬戦も認められているため、時間に余裕のある時には影浦だけでなく村上や緑川といった正隊員を相手に模擬戦を行っていた。

仮想戦闘モードならトリオン消費がないので思う存分戦うことはできるし、なによりも彼にとって戦闘は生きるために必要なものであり、同時に自己表現の手段でもあった。

それを延命のためで仕方がないと言っても彼から生きる楽しみをも奪うことになりかねない。

そこで原則として(ブラック)トリガーの使用は禁止で、近界(ネイバーフッド)においてはノーマルトリガーのみ使用が許されているものの、それも本人が必要だと判断した時のみということに決まった。

したがって遠征から帰って来て三門市にいる時には影浦たちが遊真を誘って模擬戦を行っている。

彼が正隊員ではなくなったためにポイントの移動はないし攻撃手(アタッカー)ランキングにも影響はないものの、単純に「強いヤツと戦いたい」という欲求は満たされるのでそれで十分なのだ。

そして遊真が帰国したことは知っていたものの拉致被害者市民に対するケアや記者会見の準備等で忙しいだろうとすべてが終わるまで我慢をしていた影浦たちだったが、修から電話をもらって「よっしゃー!」とばかりに誘い出したというのが遊真の知らない真実であった。

遊真が店に到着するとすでに北添、村上、荒船といった遊真と親しいメンバーが集まっており、後から狙撃手(スナイパー)の合同訓練が終わった当馬とユズルが加わってワイワイと賑やかなパーティーとなった。

もちろんアウデーンス遠征の()()()が済めば次の遠征先も決まっていないということでしばらくは暇になるだろうからと、模擬戦の約束をして解散をしたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

話は遠征部隊が帰国した当日、つまり29日の午後に遡る。

拉致被害者市民は全員が健康診断を終えて問題ないと判断されたことで、ひとまず全員が三門スマートシティ内にある集合住宅に案内された。

今回は近界民(ネイバー)の家族連れで帰国した者はなく、滞在期間中は2LDKの部屋に男女別でふたりずつ入って生活をしてもらうことになっている。

しかし例外もあって、オルフェオと側近のトールは()()()()があるために別行動となる。

オルフェオのために用意した3LDKの戸建て住宅にオルフェオとトールが滞在し、そこに玲子とその家族を呼んで対面することにしたのだ。

玲子だけ半日早く家族と対面できるのは特別な事情があるためで、他の拉致被害者には申し訳ないのだが彼女の両親に考える時間を与えるためには仕方がない。

 

坂元夫妻は7年半ぶりに再会した娘の姿を見た途端に大粒の涙を流した。

玲子がエクトスに拉致されたのは彼女が高校1年の時で、それから生きているのか死んでいるのかわからないという状態が続いていた。

無事に帰国するという連絡があったのは3日ほど前のことで、その時の彼らの喜びは言葉で語ることはできないだろう。

そしてようやく本人の顔を見て喜ばしい報せが本物で、目の前に愛娘がいるという現実に胸が打ち震えてしまったのだ。

もちろん玲子も両親に会えて感無量で泣き出してしまい、3人が抱き合っている姿はこれまでに何度も見られた光景だが修には特に感慨深く思えた。

しかし感動の親子対面は続く衝撃の事実への序章でしかない。

玲子はアウデーンスに戻って結婚したいと言うと、涙と笑顔でぐちゃぐちゃだった顔の坂元夫妻は固まってしまった。

それは当然のことだ。

娘が帰って来てこれからまた一緒に暮らせるのかと思っていたら再び近界(ネイバーフッド)へ戻り、こともあろうか国王と結婚するというのだから驚かないはずがない。

おまけにその国王が自分たちに会うためにわざわざ玄界(ミデン)に来ているとなれば心の準備もできていない状態でも会わなければならない。

さらにオルフェオが国王という肩書を抜きにしてもほぼ完ぺきな好青年であり、畳の上にきちんと正座して挨拶をして「娘さんをください」と言えば余程の理由がないがない限り「NO」とは言い難い。

娘が結婚したいと言っている相手のことを「近界民(ネイバー)だからダメだ」と言えば彼女の思想や考え方を否定することになる。

近界(ネイバーフッド)では会いたい時に会えない」というのであれば、日本国内であっても同じようなことだ。

皇室に嫁いだ娘に実の両親だからといってもそう簡単に会えるものではない。

また「近界(ネイバーフッド)は戦争が多くて危険だ」といってもアウデーンスでは100年以上侵攻されず、他国への侵攻もしていない平和な国であることはトールという第三者が証言している。

なによりも玲子がオルフェオを愛していて、オルフェオも彼女のことを愛している。

そして彼女は伴侶として最も相応しい男性を自分自身で見付けてきたのであり、今後どんな人生を歩むとしてもそれは彼女の責任であってそれを覚悟の上で紹介したのだから、親としては彼女の気持ちを尊重すべきなのだ。

ただすべてが突然のことであり、久しぶりに会った娘が再び近界(ネイバーフッド)へ行ってしまうという寂しさが坂元夫妻から笑顔を奪ってしまっているのが事実。

そこでオルフェオは「人生に関わる重大な決断である以上は事を急いではいけない」と言って玲子に三門市に残るよう勧めた。

彼女に両親の元へ帰るように言い、自分はアウデーンスでいつまでも待つと言う。

ここは無理強いせずに時間をかけて坂元夫妻に納得してもらうべきだと判断したのだ。

当初は帰国するまでの数日中にハッキリさせる予定であったが、それはあまりにも性急であるし彼らの気持ちを尊重するのであれば自分の都合に無理やり合わせることを強いるのはフェアではない。

オルフェオのこの判断は坂元夫妻にも良い印象を与えたようで、お互いに最善の結果を出そうと歩み寄る気配を見せた。

国王という権力を振りかざすことはなく相手の気持ちに寄り添う姿を見せたことが好感を得たようだ。

 

そして坂元夫妻が最終的に決断を下した理由はオルフェオの人間性であった。

翌日の昼に本部基地の中庭で行われた帰国祝賀パーティーの会場で、彼が他の拉致被害者市民からも慕われていて半数以上の人間がアウデーンスで暮らしたいと言っていることを知ると娘を託す相手として相応しいのではないかと考えたのだ。

アウデーンスには「未来」があり、自分たちの力で国を豊かにしていきたいという若者の熱意が感じられた。

そんな彼らが王と認めるオルフェオの計り知れない魅力の一部を坂元夫妻も垣間見たのだろう。

そこで坂元夫妻はオルフェオと玲子の婚約を認め、半年間だけ親子3人で過ごさせてほしいと言った。

もちろんオルフェオは快諾し、彼が三門市に滞在する間は坂元夫妻と玲子との4人で行動することになったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

帰国報告会当日の朝、修は実家から直接会場の三門市体育館へと向かっていた。

拉致被害者市民の送迎はゼノンたちに任せてあり心配はいらないという自信があるからだ。

帰国してすぐに移動用のバスや当日の昼食用弁当の手配は済ませて前日の夜に確認もしてある。

会場の設営も前日に実家へ帰る前に立ち寄って確認をしてあるし、もうこれ以上修にできることはない。

そして香澄の手料理を十分に食べた後、彼女は「記者会見には私も行くから観客席の私をがっかりさせない仕事をしなさい」と言って修を送り出していた。

それがプレッシャーではなく声援として受け止められるようになったのだから短い間に精神的に成長したという証であろう。

 

修たちが会場に到着するとすぐに遊真たちが合流し、予定時間どおりにゼノンたちが拉致被害者市民37人とオルフェオを連れて来た。

オルフェオは玲子が調理する玄界(ミデン)の料理が気に入ったようで、前夜は坂元夫妻と共に鍋料理を囲んだという。

またビールが特に気に入ったらしく少々二日酔いらしい姿であったが、玲子が甲斐甲斐しく面倒をみているところは微笑ましく見える。

そのうちに城戸たちボーダーの関係者が現れて定時にリハーサルが始まった。

拉致被害者市民の帰国記者会見も5回目ともなると誰もが一連の流れを把握しており、リハーサルを行うのは主役である拉致被害者市民が安心して「本番」に臨むことができるようにするためである。

今回も根付が司会進行を行い、三門ケーブルテレビスタッフとの打ち合わせも完璧であるため修が心配することはひとつもない。

しかし今回はサプライズがあるため、記者や観客たちの反応によってはアドリブもありうる。

ツグミならそういう事態でも自然体で難なくやってしまうが、修にはまだそのスキルがないため周りの人間のアシストは必要だ。

そしてその適任者は麟児で、いざという時には彼が修の援護をすることになっている。

 

 

 

 

定時の午後2時になったところで根付が舞台の下手から姿を現した。

 

「ただいまから第一次近界民(ネイバー)侵攻における拉致被害者市民の帰国報告会を始めます!」

 

根付の一声で帰国報告会が始まった。

観客席には記者が約60人、観客の市民が約400人とヒエムスやレプトからの帰国者の報告会と比べてだいぶ減ってきてはいるものの、それでも帰国者37人の家族や友人たちが過酷な近界(ネイバーフッド)での生活を耐え抜いてきた「英雄」を称えるために集まってきたのだ。

この日は平日だから仕事や学校を休んで来ているはずで、三門市民にとっては拉致被害者が帰って来るということはそれだけ重要で注目を浴びているということになる。

 

「まず初めに総合外交政策局拉致被害者市民救出計画班主任の三雲修がご挨拶させていただきます」

 

根付がそう言うと舞台上で着席していた修が立ち上がってマイクを取った。

 

「総合外交政策局の三雲修です。これまでは局長の霧科ツグミが拉致被害者市民救出計画の責任者でしたが、今回からぼくが拉致被害者市民救出計画に関しての現場の全責任を負う主任となりましたので、今後はぼくがみなさんのご家族や友人を責任を持って帰国させることをここにお約束いたします。なお局長は同盟締結等近界民(ネイバー)との友好的交流を目指す仕事に専念してもらうことになりました。現在はアウデーンスにおいて王家の方々と親交を深めていて、現地で暮らすことを決めた20人の市民の方が不便を強いられないよう環境を整える準備をしています。どうか市民のみなさまにおかれましては一層のご理解とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします」

 

修はそう言い終えて深く頭を下げると観客たちから大きな拍手と歓声が沸いた。

これまではツグミの補佐や代理という立場であった彼がようやく「主任」という肩書を得て責任ある仕事を任せられるようになったという事実。

三門市民の多くは彼がアフトクラトルの大規模侵攻の被害を拡大した戦犯という認識であったことはもう過去のこととなった。

今の彼はそんな汚点をまったく意識させないほどの「結果」を出しており、嵐山隊メンバーに並ぶほどの人気者になっている。

かつて修がちやほやされると機嫌が悪くなる木虎であったが今ではそんな素振りは見せない。

それは彼がトリガー使いとしては未熟であるのに周囲が彼を甘やかして実力以上に評価していたためで、総合外交政策局に異動になってからの彼の働きに関してはそれが()()であるために素直に認めているのだ。

 

「では、着席させていただき、今回のアウデーンス遠征についての経緯について説明いたします」

 

修は書類を見ながらアウデーンスという国について説明をした。

国王オルフェオ・アウデーンスが正しい政治を行っていることで戦争とは無縁の平和な国であり、農作物の収穫量も他国に比べて多いために食糧事情は良く拉致被害者市民の健康状態も良好であったことを伝えると観客席から安堵のため息が漏れた。

さらに今回は37人のうち20人がアウデーンスで暮らすこと ── 当初は19人であったが玲子が加わったのでひとり増えた ── を望んでいるのはそれだけ国情が安定していて未来に期待ができる国だからと説明すると観客席は少しざわめいたがすぐに静まった。

これまでも近界(ネイバーフッド)に戻りたいという人間はいたのだが、37人中20人がその決断をしたのだからすでに説明を受けている家族は驚くことはないが、そうではない市民や記者たちにすれば動揺するのは無理もない。

そこですぐに帰国者の代表によるアウデーンスでの経験について話してもらうことになった。

本人の口から現地の様子を聞けば納得できずともボーダーの発表が嘘ではないことはわかってもらえるはずなのだ。

まずはトリガー使いだった男性と農家で働いていた女性がひとりずつ自分の経験を話し、最後に田上徹という玄界(ミデン)の人間が国王に認められて宰相になりトールとして一生をアウデーンスのために捧げる覚悟をしたことを話すと観客席から「頑張れ」とか「応援しているぞ」という励ましの声が上がり拍手が沸いた。

これでアウデーンスという国が拉致被害者市民にとって辛い場所ではなかったどころか一生を過ごしてもいいと思える良い国であることはわかってもらえただろう。

 

いつもならここで記者による質疑応答の時間になるのだが、今回の報告会では特別ゲストによるサプライズがある。

根付は観客席を見渡して静まっていることを確認するとおもむろに口を開いた。

 

「えー、ここで特別ゲストを紹介させていただきます。アウデーンス国王オルフェオ・アウデーンス陛下です!」

 

次の瞬間、舞台上の照明が消え、上手から進み出た正装のオルフェオにスポットライトが当たる。

そして舞台中央まで歩み出るとそこに城戸が近付いて来て握手をした。

観客席からはまだ理解ができていないという状態でありながらも拍手が沸き上がり、握手の時点で最高に盛り上がった。

するとオルフェオは右手を軽く挙げて観客席の三門市民や記者に笑顔で挨拶をする。

 

「みなさん、初めまして。私はアウデーンスの国王オルフェオ・アウデーンスです。このような形でみなさんにお会いできることは私にとって最上の喜びであり、この機会を与えてくれたボーダーのみなさんに感謝するところです」

 

そう告げると隣にいる城戸にも微笑んだ。

 

「今回の私の訪問は長い間辛い思いをされたご家族や友人のみなさんにお詫びを申し上げるためでございます。我が国では数十年前に大飢饉が起きたことで人口は5分の1にまで減少してしまい、人口の回復には他国から人間を買うという非人道的行為をしなければなりませんでした。37人のミカド市のみなさんは家族と離れ離れになりながらもアウデーンスのために働いてくれました。こちらも彼らのために可能な限り暮らしやすい環境を提供してきたからなのか、彼らは我が国を第二の故郷として親しんでくれていたようです。先ほどのミクモくんの話にあったように20人が戻って私と一緒にアウデーンス発展に尽力してくれるということで、私は感動に胸が打ち震えております」

 

オルフェオは嬉しそうに言うのだが、ここで口を閉じて目を伏せた。

 

「…しかしそのせいで20人の若者のご家族には再び哀しい思いをさせてしまうことが心苦しく、どうしたらみんなが幸せになれるのかをミクモくんに相談したところボーダーが主宰する同盟に加わってもらえたらいずれ自由に行き来ができるようになるはずだと教えてもらいました。そこで私は同盟加入を前提としてボーダーの責任者と会談をすべく参上したのです」

 

それに続いて城戸がマイクを受け取って観客席に向かって言う。

 

「私とオルフェオ陛下はすでに会談を行い、お互いの事情を理解したうえで双方に利益となる形で付き合っていきたいという結論に達しました。幸いなことにアウデーンスは三門市…玄界(ミデン)から約10日から15日くらいの距離にありますので、年に1-2回くらいであればアウデーンスにいる方々を里帰りさせることも可能です。同盟に加わっていただけるのなら航行の安全も保障され、アウデーンス側からこちらに来ることもできるようになります。この同盟に関する件はヒエムス、レプト、ラグナ、リコフォスにも打診してありますので、その4ヶ国にいらっしゃる方々も同様に里帰りができるだけでなくいずれは民間人でも自由に旅行ができるようにしたいと考えております。そのためには近界(ネイバーフッド)の治安が安定することが最優先事項ですので、拉致被害者市民救出計画全般は三雲くんに任せ、近界民(ネイバー)との安全保障や技術・文化面における交流などを霧科局長に任せたいと考えたわけです。三雲くんはヒエムス遠征からずっと霧科局長の元で学んできましたし、前々回のラグナ遠征及び今回のアウデーンス遠征ではこうして結果を出して証明してくれましたので心配は不要でしょう」

 

「今頃はツグミは私の父、先王であるトゥーリオと近界(ネイバーフッド)の未来について語り合っていることでしょう。55歳の父と19歳のツグミは生まれた世界や年齢性別など共通点が一切ないというのに馬が合うというか、お互いの気持ちや考え方に共感できて一緒にいると居心地が良いらしいんです。父も現在の近界(ネイバーフッド)で延々と戦争が続く状況を良しとはせず、できることなら自分の力で平和に導きたいと常々言っていたのですが一国の王としてではできることは限られていて、おまけに祖国の復興を優先していてはどうしようもありませんでした。この度ボーダーのみなさんがいらっしゃったことで新たな一歩を踏み出すことができました。それにつきましてもこの場でお礼を申し上げたい。ありがとうございました、キド司令」

 

オルフェオが礼を言うと城戸は彼と握手をして言う。

 

「礼を言うのはこちらです。こちらが差し出した手を快く握り返してくださったのですから。陛下が我々ボーダーの理念をご理解くださって足踏みを揃えるのであれば近いうちに先王陛下の願いも叶えられるでしょう」

 

観客席の市民たちは近界民(ネイバー)が戦争ばかりしている危険な人物ではなく、自分たちと同じように平和を愛する者もいるのだとわかったのかオルフェオと城戸の言葉に惜しみない拍手を送った。

そして最後にオルフェオが拉致被害者女性と婚約したことを発表する。

ここで玲子の名を出せばアウデーンスに帰国するまでの間ずっと彼女がマスコミに追い掛け回わされることが明らかであるため匿名・顔出しNGとした。

しかしそれだけでもセンセーショナルな内容であったため、その後の質疑応答の時間はオルフェオと玲子への質問ばかりになってしまった。

これは想定内のことであるから質問の内容と答えについて想定問答集を用意しており、それに沿って答えるようにしたのでトラブルは生じなかった。

ただいつまで経っても終わらない気配だったため、アウデーンスで結婚式を挙げた時の映像を提供し、その時に改めて会見をするということで記者たちを納得させて質疑応答は終了したのだった。

 

 

 

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