ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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624話

 

 

続いて向かった先は小学校で、レクスの在籍する5年生の算数の授業を参観する。

この日はこれまでの授業内容の総まとめの小テストで、30分のテストが終わると残り時間は担任教師が回答とその解説をするというものだ。

エルヴィンたちが参観をするということは前もって児童に知らされており、授業の開始前に彼らは元気に挨拶をした。

この学校の児童にとって外国人は珍しい存在ではなく、近くに三門スマートシティがあることから近界民(ネイバー)ですら容易に受け入れることができる。

だからエルヴィンたちが教室の後方にいても緊張することはなく、いつもどおりに授業を受ける準備はできていた。

もっともふたりとも変装をしていて正体がバレずにいるからであり、素のままであったらツグミは子供たちにサイン攻めにあったかもしれない。

なにしろ彼女は人類で初めて近界(ネイバーフッド)へ行った人間として周知されているわけで、その後も度々テレビ出演をしているから三門市民の間では超有名人だ。

だからエルヴィンと彼女はトリオン体に換装して変装し、某国の教育大臣とその案内役ということになっている。

 

担任教師の「始め」という声を合図に32人の児童は一斉に問題に取りかかった。

分数の足し算と引き算、三角形や四角形の面積や角度を求める図形問題のほか、割合を求める文章題が2問ある。

1問目は2種類の量の異なる菓子の値段の安い方を選ぶもので、2問目は面積の違う畑で育てたジャガイモがどちらの畑がより良く収穫できたのかを選ぶ問題だ。

児童が黙々と問題を解いている間、ツグミとエルヴィンは担任教師から問題用紙を分けてもらって挑戦をしてみる。

とりわけ難しいものではなく普通の公立小学校5年生なら解けるレベル問題で、普段から真面目に授業を受けて基本さえ押さえていれば制限時間30分内で最後まで余裕でできる内容だ。

 

 

「ツグミ、玄界(ミデン)の11歳の子供は誰でもこんな難しい問題ができるのかい?」

 

テストの時間が終了して答案の回答と解説が始まるまでの少しの時間、エルヴィンがツグミの耳に口を寄せて小声で言った。

 

「誰でもとは言えませんが、ほとんどの子供ができる内容です。分数の計算は分母を揃えるという基本を守れば難しいものではありませんし、図形の面積や角度の問題も公式を覚えていれば解けます。文章題は少しだけ難しいですね。計算はできても文章の読解力がなければダメですから。でもこの問題はそう難しくはないですし、比べる基準が異なっているだけですから1問目は100グラムあたりの値段を比べ、2問目は1ヘクタール当たりどれくらいの収穫量になるのかを考えればいいんですから簡単です。さあ、答え合わせが始まりますよ」

 

担任教師が第1問目から回答を言うと、児童たちの間から「やった!」とか「マジかよ…」と一喜一憂する声が漏れる。

そして回答を言うだけでなくその答えに至る計算方法や間違えやすい点を指摘し、随時児童の質問を受け付けるとわかりやすく黒板に書きながら説明した。

最後に解答用紙を回収し、担任教師が採点をしてから返すということだ。

 

「丁寧に説明をしている…。これは1年間の総仕上げの試験だということだが、まだわからない子がいて次の学年で困らないように完全にできるようにするためのものなのだな」

 

「ええ。あとひと月もすれば進級して新しい学年の勉強が始まります。その時には前年度までの勉強の土台がしっかりしていないといくら丁寧に教わっても理解できません。だから今のうちにしっかりと身に付けさせるんです」

 

ツグミは児童たちに聞こえないような小声でエルヴィンに答えた。

事前に日本の子供は5歳になると小学校に入学し、9年間は誰でも教育を与えられて基本的なことを学ぶことができると説明してある。

近界(ネイバーフッド)ではこのようなシステムはないため近界民(ネイバー)の中には文字が読めない書けないとか計算ができないという大人も多いという。

商売をやっていれば計算ができないことは致命的なので親が子供に教えるということはあるらしいが、そうでなければ庶民が教わる機会などまずない。

 

「日本人は昔から数学が好きで400年くらい前には『和算』という算術体系が存在し、庶民階級の人たちも数学を()()()()()()ということです。貧しくても身分が低くても学びたいという意欲があれば誰でも成長するんですよ。難しい問題であればあるほど正解を掴んだ時の快感は増しますからね。ですがこれは数学に限ったものではないと思います。この子たちと同じくらいの頃のわたしは本を読むことが好きで、剣術の稽古がない時間にはいつも本を抱えていて読んでいました。当時のわたしは知識欲の塊で、常に新しい情報を頭に詰め込もうとしていて止まらなかったんです。だから他の人よりは多くの知識があって、それが日々の中で活かされているのは確かです。ですから子供の頃にどのような毎日を過ごしていたかによってどんな大人になるのかが決まると言っても過言ではないでしょう。そういう意味で可能な限り子供たちが欲しがるものを与えられる環境を整えてあげてほしいと思います」

 

「ああ。子供は国の宝だ。その子供たちが健やかに育つ国にしなければいけない。それは大人の役目であり、国王としての私の責務なのだ。改めてそう感じたよ」

 

 

 

 

4時間目の算数の授業が終わると誰もが楽しみにしている給食の時間だ。

この日のメニューはカレーライス、コールスローサラダ、オニオンコンソメスープ、そしてデザートには三門ミカンが出る。

班ごとに机を集めて食事をするのだがツグミたちは彼らと一緒に食べることになっていて、レクスのいる班に加えてもらうことにした。

そして児童と会話をしてどんな遊びをしているのか、また大人になったら何になりたいかなどを訊く。

すると児童は「ドッチボール」とか「鬼ごっこ」が好きで、「看護師さん」「プロサッカー選手」になりたいという児童の他に「ボーダー隊員」になりたい子が何人もいてツグミは苦笑した。

ボーダーは子供たちにとってのヒーローであり、だからこそ絶対にそのヒーロー像を壊してはならないのだ。

 

 

 

 

昼休みになるとレクスの話を聞くということでツグミとエルヴィンは音楽室へと向かった。

ここなら内側から鍵をかけることができるし、なによりも防音効果は抜群で外に音が漏れることはないので秘密は守られる。

レクスには前もってエルヴィンがトロポイの国王で同盟締結の手続きの他に三門市内の視察をしているということを説明してあり、音楽室に入るまでは普通の小学生の姿であったのだが、入室するやいなや様子が豹変した。

一瞬にして無邪気で愛らしい少年が礼儀正しい立ち振る舞いをする貴族の子息に戻ったのだ。

 

「お初にお目にかかります。アフトクラトルのエリン家のレクスと申します」

 

そう言ってボウ・アンド・スクレープという貴族式の挨拶をした。

玄界(ミデン)での暮らしがもうすぐ3年になるといっても彼は紛れもなくアフトクラトルの貴族エリン家の子息で、常に自分の置かれた立場や義務などについて意識して生活をしているようだ。

そんなレクスに対しエルヴィンは優しく手を差し出した。

 

「私はトロポイ国王、エルヴィン・トロポイだ。しかし私はきみの忌憚ない意見を聞きたいと思っている。だから私の肩書のことなど意識せずに親戚のおじさんだとでも思って気軽に話をしてくれないか?」

 

「わかりました。では何からお話ししましょう?」

 

それから昼休みの30分を目いっぱい使ってエルヴィンの質問に答えた。

なぜひとりで玄界(ミデン)に残って医師になるために勉強をしているのかといったことはツグミがすでに話をしていることから、レクスは自分がどんな気持ちで毎日を生きているのかを楽しそうに話す。

以前はサイドエフェクトで他人の気持ちがわかってしまうことから周囲の大人の顔色を窺って人の前に出るのを嫌がっていた弱くて小さな子供だったこと。

そんな自分が玄界(ミデン)で親の手を離れて生きていることがまだ信じられない。

ツグミと初めて出会った時に他の大人のように否定せずに素の自分を無条件に受け入れてくれたことがきっかけで、両親共に一時的に玄界(ミデン)に亡命することとなったが、自分だけ残って自分がやりたいことをやれるようにいろいろ配慮してくれて感謝をしているとも話した。

 

「医師になるためにはたくさんの勉強をして難しい試験に合格し、それから何年も現場で研修をしなければ正式に医師として患者さんたちのために働くことはできないそうです。だからぼくがアフトクラトルへ帰るまでまだ20年近くかかることでしょう。その頃には近界(ネイバーフッド)ももっと平和になって怪我や病気をする人は減っていると思います。だけどぼくの努力が無駄になることはないと信じています。医師になるためには長い時間がかかるのですし、医師が不要になる時代は絶対に来ません。人がその営みを続けるのであれば医師は必ず必要となる職業です。我がエリン家は代々トリガー使いとして祖国のために働いてきた家系です。ですから本来ならアフトクラトルに戻ってトリガー使いになるための訓練をするべきなのですが、ぼくには貴族とかトリガー使いというものよりも医師の方がずっと人のために役立つ仕事で、そしてやりがいのある仕事に思えました。アフトクラトルに戻っても勉強はできますが、それはぼくのやりたいことと違うので玄界(ミデン)に残りました。故郷を離れて寂しいなんて感じる暇がないほど毎日が充実していて楽しいです」

 

11歳の子供とは思えないほどしっかりとした考えを持っていて、自分の願いを叶えるためにやるべきことをやっているレクスにエルヴィンは感銘を受けた。

トロポイの次期国王となるエルヴィンの孫のイザイアは15歳で、年齢差が4歳もあるふたりを比べることは単純にできないことなのだが、少なくとも精神面ではレクスの方がはるかに大人であると感じて自分の孫に対する教育が不十分であることを思い知らされた。

王族の人間は尊い身分であってかけがえのない存在なので不慮の事故や病気で死んでしまうことはあってはならないと、原則として王宮や神殿の中だけで暮らしていて、国王になっても王都の外にはなかなか出ることはない。

女性は女王もしくは巫女になる可能性があるということで、限られた使用人の女性以外との接触さえできないというほど外界から隔離されてしまっている。

だから子供のうちは外の世界を知る手段は使用人や家臣からの伝聞でしかなく、世界の広さを知らずに大人になってしまう。

トロポイに限らず近界(ネイバーフッド)の国々の王族は似たようなもので、それが当然であって特に問題を抱えていないので改めようとはしなかった。

それが近界(ネイバーフッド)の「停滞」を生んだ一因なのかもしれないとツグミは考えている。

そしてエルヴィンは60歳を過ぎてやっと「外の世界」を見るチャンスを得て玄界(ミデン)へやって来た。

彼は人生の終わりに近付いてようやく自分のなすべきであったことに気が付いた。

トロポイという国と国民を守るためという理由は真っ当なものだし、かつて戦争に投入していたトリオンと技術を国民の生活のために転用する道を選んだことは正しい判断だ。

しかしその技術の外部流出を許さず、国内だけでその恩恵を享受していた。

そのために鎖国を行い、他国との交流を避けて隠れるように生きてきた。

戦争をなくしたいという同じ願いを持つ国々と手を結ぶという考えには至らず、自分たちさえ安全ならそれでいいというエゴでしかなかった。

ツグミと出会ったことでエルヴィンはトロポイ国王としては間違っていないが人としてどうであったかを考えて迷いが生じてしまったのだ。

 

レクス(この子)は貴族の子供として生まれ恵まれた暮らしをしていたというのに広い世界を見たことで自らの宿命から脱し、何をすれば祖国のためになるのかを考える機会を与えられた。この子は医師になることが自分のなすべきことだと信じ、幼いながらも親を頼ることなく異国の地で頑張っている。アフトの貴族として生きることでもその役目を果たすことはできただろうが、貴族の役目よりももっと大切でやりがいのあるものを見付けたのだ。それをこの子の両親は認め、息子の成長を遠く離れた場所から祈っている。それもボーダーとツグミのことを信頼しているからこそで、そうでなければ大事なひとり息子を預けるはずがない。かつてアフトは玄界(ミデン)に侵攻してミカド市に大きな被害を与えた。玄界(ミデン)の人間にとってアフトの人間は憎むべき仇だが、彼らはアフトが同盟に加わることを許した。ツグミの話では市民がアフトを許したのではないが、共存することで新たな争いの火種とならないようにという措置だという。過去の遺恨…アフトへの憎しみよりも未来の平和のためにこの道を選んだということなのだ)

 

エルヴィンとレクスの会話は続いていた。

トロポイとアフトクラトルの人間はどちらも白人系の面立ちをしているので雰囲気が良く似ている。

容姿がそっくりということはないが年齢的に祖父と孫が楽しそうに話をしている光景にツグミは見えた。

 

(レクスくんのサイドエフェクトの能力は衰えていない。ということは自分に向ける感情を読み取ることができるわけで、最近はその力のことで悩んだり辛い思いをすることは()()()と言っていた。それはこの子の周囲の人間に偏見や興味本位など奇異の目で見ることがないということ。でも減ったという言葉からゼロではないことはわかる。明らかに外国人顔だから珍しいと思う人がいてもおかしくはない。悪意や敵意はないにしても自分とは違うものに対して警戒したり拒絶する人間は一定数いて、その人たちのことを批難することはできない。それをこの子も理解して、自分の気持ちに折り合いをつけられるようになったんだわ)

 

自分と違う人間 ── 他人には自分と同じ考えや価値観を持つ者もいればそれを否定する人間もいる。

すべての人間が同じではない以上意見が対立することは当たり前で、揉め事があった場合に双方が歩み寄ってお互いに妥協点を見付けることが大事だということはツグミたちの仕事を見ていれば聡明なレクスには理解できる。

自分の価値観こそが絶対でありそれ以外を認めないというのであれば永遠に平行線となって話し合いがつくはずはないし、暴力によって解決しようとする短絡的な輩は一定数いるのが事実。

それが争いの原因となり、お互いに不幸になるのは目に見えている。

レクスも自分の女装姿を他人が奇異の目を向けたのは彼らが「男が女の恰好をするのはおかしい」という価値観を持つからで、そんな連中に理解をしてもらう必要などないと考えた。

女装してもそれを認めてくれる人間もいるのだから気にすることはないのだと考えることで気持ちが楽になった。

ところが玄界(ミデン)で同じ世代の子供たちと遊ぶようになり、ひらひらのフリルのついたワンピースでは動きにくいと実感したことでシンプルなシャツや短パンを好むようになっていく。

同時に自分の姿形でしか判断しない人間がいる以上は見た目で誤解されないように()()()()()()()()()()を選ぶようにしているそうだ。

ただ女装が嫌いになったのではないので、玉狛支部では栞やゆりが自分の子供の頃の服を持って来て着せ替え人形として楽しんでいるという。

3年弱の間に彼は自分の価値観を認めてくれる人間の存在、他人は他人で彼らに迎合しなくてもいいのだということ、他人の価値観を認めることはできなくても理解しようとする努力は必要だということを経験から学んでいった。

これはアフトクラトルの貴族として生きていたら得られなかったことだろう。

 

 

そしてあと5分で昼休みが終わるという時点で名残惜しいとは思いながらもレクスは5時間目の準備のために自分の教室へと戻って行った。

ツグミとエルヴィンも続いて音楽室を出て廊下を歩きながら会話をする。

 

「レクスくんは見た目はどこにでもいる少年ですけど胸の中には確固たる信念を持って生きているんです。わたしがエリン夫妻から責任を持って預かると約束したんですが、わたしが総合外交政策局長なんて立場なものですから近界(ネイバーフッド)へ行ってばかりで彼の面倒をみてあげることが全然できていません。でも()()()()()()()が常に彼のそばにいてくれて、生活の世話だけでなく勉強をみてくれたり遊び相手にもなってくれて不自由はさせていないようです。ボーダーは昔から子供と大人が一緒にいて、血のつながりはなくとも家族同様に暮らしていました。それが玉狛支部では今でも続いていて、その絆はどんなことがあっても失われることはありません」

 

そして目を伏せてエルヴィンに懺悔をするように言う。

 

「以前にわたしはその家族から不要とされてしまったら行く当てがないと怯えていた時期がありました。実際にはそんなはずがないというのに、心が弱っていた時にキオンのトリオン兵によって心の隙につけ込まれて不安が疑念を生んでしまったんです。自分の心の弱さが生んだ愚かな妄想で、家族や仲間を信じ切れなかったことが原因です。でも今となってはそれすら良い経験をしたんだなと言えます。他人の理想とする完璧な人間になろうとしたって無駄…というか不可能なんです。人間はいくつもの立場や役割を持っていて、わたしならボーダー総合外交政策局長、忍田真史の娘、エウクラートンの次期女王、迅悠一の妻…といろいろあり、そのどれも完璧にやり遂げることはできません。今はボーダー総合外交政策局長の仕事に力を入れていますので、忍田真史の娘や迅悠一の妻の役目は果たせているとは言えません。それにいずれエウクラートンの次期女王の次期の部分が外れて女王となる日が来ます。そうしたらボーダー総合外交政策局長ではいられませんし、忍田真史の娘でもいられなくなります。迅悠一の妻であることは変わりませんが、女王の役目に重きを置かなければなりませんから彼には不自由をかけることになるでしょう。だからわたしはこう考えたんです。今できることを精一杯やって、その結果は甘んじて受け入れる。後悔しない人生を送ることができればそれでわたしは幸せなんだ、と。そうしたら気持ちがとても軽くなって、ありのままの自分でいられるようになりました」

 

「…!」

 

エルヴィンはツグミの言葉を聞いてハッとした。

 

(そうか…レクスはツグミの()()()すぐそばで見ていて、自分もそうありたいと願ったのだ。他人がどう考えようとも自分の道は自分で決め、何かを犠牲にしなければならない時にはいずれかを切り捨てる覚悟を持つ。そしてそれを後悔しないように選んだ道をしっかりと踏みしめて生きていく。まだ子供だというのに大人顔負けの生き方をしているのはツグミを見習っていたのだな…。いや、誰からも教わらずに自分で自らの真理にたどり着いたツグミも子供だった。…遠い昔、彼女と同じ歳の頃の私は次期国王として大切に育てられていた。当時はまだトロポイも戦争の真っただ中にあり、他国よりも効率良く敵を倒すことのできる高性能のトリオン兵を開発していたのだが、そんなことすら知らされずにいてトロポイは近界(ネイバーフッド)で最も古く尊い家系の王が率いる最も優れた国なのだと教えられていた。現実を知ったのは王になってしばらくしてからで、不毛な戦争が続き国民は疲弊していたという現実を突き付けられたのはショックだった。だというのに私はそれと同じことをしている。王として必要な資質を持っていなくても宰相やその他の家臣たちが何でもやってくれるのだから初代トロポイ王の血筋さえ引いていればいいと考えて、孫のイザイアには王とはどうあるべきかなど必要なことを何も教えていなかった。それでは私のように世界のことを何も知らないちっぽけな指導者にしなかれないだろう。イザイアにはもっと広い世界を見せてやらなければいけないのだ)

 

エルヴィンは遠い祖国の神殿の奥でひっそり暮らしているイザイアの顔を思い浮かべた。

世の中の汚いところや人の醜さなどまったく知らず、清らかな魂を持ちながら気高い王として生きることを強いられていた歴代の国王たち。

自分のそのひとりでありながら孫にも同じ思いをさせようとしていたことをエルヴィンは深く反省した。

 

 

 

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