ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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626話

 

 

続いてツグミはエルヴィンに向かって言った。

 

「こちらは陛下にお願いしたいことなんですが、ひとつよろしいでしょうか?」

 

「私にできることなら何でもするが、そのお願いとは何だい?」

 

「たいしたことではありません。実は…」

 

ツグミは少しだけ申し訳なさそうな顔をして続けた。

 

「どうしてもみなさんにお見せしたいものがあったんですけど、それをすっかり失念しておりました。明日の早朝でしたらお三方をご案内できるので、もう一泊して出発を明日の朝にしていただきたいんです。帰国が半日遅れることになりますが、可能であればどうかお願いします」

 

「半日くらい遅れたところで大したことはないが、何を見せたいと言うんだい?」

 

「それは明日の朝までお待ちください。今言ってしまったら楽しみが半減してしまいますから」

 

「楽しいもの…なのか。それなら秘密でもかまわない」

 

「ありがとうございます、陛下」

 

ツグミが深々と頭を下げて礼を言うと、エルヴィンはここぞとばかりに無茶を言い出した。

 

「その代わりに私の願いも叶えてもらおうか」

 

「はい、なんなりとおっしゃってください」

 

「今夜はホテルではなくツグミ、きみたちの家に泊めてもらいたい」

 

「え?」

 

「庶民の暮らしを体験するにはそれが最善ではないか。これまではボーダー側が用意をしてくれたホテルに宿泊してきたが、今夜くらいはいいんじゃないかな?」

 

レジデンス弓手町の寮の部屋は現在3部屋空いているので泊める部屋はある。

国王に相応しい部屋ではないが、本人の希望なら問題はない。

しかし受け入れ準備ができていないとなるとこれから急いで準備をしなければならないわけで、ツグミはその準備にかかる時間や作業工程を頭の中で計算し「大丈夫」という答えに至った。

 

「はい、承知しました。これからショッピングセンターへ寄って買い物をし、それからわたしたちの住む寮へとまいりましょう。…そうだ、城戸司令もご一緒にいかがですか?」

 

ツグミが城戸に訊くと、彼は首を横に振った。

 

「残念だが今夜はスポンサーとの会食で予定の変更はできない。申し訳ないが遠慮させてくれ」

 

「わかりました。用事も済んだようですのでこれで失礼させていただきます。城戸司令、この『箱』と『鍵』のことをどうぞよろしくお願いいたします」

 

「ああ、わかった。陛下のこと、頼んだ。くれぐれも粗相のないよう…っと、おまえのことだから心配はいらないか」

 

「はい。明日の朝、きちんとお見送りをしてから本部基地(ここ)にまいります」

 

「では、私は駐車場まで行って、そこでお見送りをさせてもらおう」

 

城戸は「箱」と「鍵」を金庫の中に戻し、3人揃って総司令執務室を出た。

 

 

◆◆◆

 

 

助手席に座るツグミは車を運転する迅に言う。

 

「報告が遅くなりましたが、実は今晩エルヴィン陛下とトリュスさんとイェルンさんが寮に泊まることになりました」

 

「え? マジ?」

 

「ええ、マジです。そこでショッピングセンターに寄って今晩の夕食と明日の朝食の買い出しをします。メニューは勝手ながらわたしが『鍋』と決めましたので、鍋料理にします。食材の他に3組のシーツと枕カバーを買って、他に歯ブラシやタオルとか必要なものを買いますから手伝ってください」

 

迅は「やれやれ」という顔だし、初めて話を聞いたトリュスとイェルンは驚いている。

 

「それはかまわないが、なぜ陛下一行がもう一泊することになったんだ?」

 

「それはまだとても大切なものを見ていただいていなかったことに気が付いたからです。詳しいことは後でお話ししますので、ひとまず買い物を済ませて早く寮へと戻りましょう」

 

そう言ってツグミは車窓の夕焼けを見ながら「明日はいい天気になりそう」と呟いた。

 

 

◆◆◆

 

 

翌朝、まだ日が昇らない暗いうちにツグミはエルヴィンたちを連れ出した。

向かう先を知っているのはこの計画を企んだツグミと運転手の迅だけで、人通りがほとんどないというのに街灯の明かりやコンビニの照明だけがやたら明るい街を抜け、着いた先は目の前に大きな海原の広がる砂浜であった。

水平線は薄い紅色に染まり、上空に浮かぶ雲の底も紅く染めている。

大部分を青色で占めていた空は底の方から赤みを増していき、その色は薄紅色から朱色に変わり、そのうちに水平線から太陽が姿を現した。

砂浜に寄せる波の音しかしない静寂の世界で、太陽が徐々に昇っていくとその様子を黙って見守っていたツグミたちはその眩しさに目を細める。

日本人のツグミや迅にとっては海からの日の出は特に珍しいものではない。

「初日の出」を見るために元旦の朝には暗いうちから家を出て、昇っていく太陽に願いをかけるのは年末年始の風物詩のひとつだ。

しかし海を見たことのない近界民(ネイバー)にとってこの光景は衝撃的なものであったにちがいない。

その証拠にエルヴィンだけでなくトリュスとイェルンも言葉も出ず、ただその神秘的な光景を見つめているだけで、終いには両目に涙を浮かべて唇を震わせていた。

前日にトリュスが「海が見たい」と言ったことでツグミはぜひ見てもらいたいと考えたのだが、その時点では海を見に行くにしても暗くなってしまっているために出発を半日遅らせて早朝の海の景色を見てもらうことにしたのだった。

その効果は絶大で、神々しい太陽に照らされてオレンジ色の光を放つ海の光景は彼らの頭と心に一生消えない記憶として刻みつけられたことだろう。

 

「なんともふさわしい言葉が見つからないほど素晴らしいものを見せてもらった。トロポイでも毎日朝になれば太陽は昇り、暖かく母の愛にも似た光を投げかけてくれる。玄界(ミデン)の太陽も同じだが、私はこれまでこれほど荘厳な光景を見たことがない。…そして何と言うか…この鼻をくすぐる匂いと砂浜に寄せる波の音にはえも言われぬ懐かしさを感じる」

 

エルヴィンが感慨深げに言う。

 

「それは近界民(ネイバー)の故郷が玄界(ミデン)だからですよ。はるか昔に玄界(ミデン)を旅立った5人の王と5人の妃、そして500人の民が現在の近界民(ネイバー)のご先祖さまなんですから、この潮の香りが代々受け継いできた玄界(ミデン)の記憶を呼び覚ましたんだと思います」

 

ツグミが答えると、エルヴィンが尋ねた。

 

「これが潮の香りというのか?」

 

「はい。わたしはあまり気になりませんが、この匂いを嫌う人は多いようです。なにしろ匂いの元がプランクトンの死骸の匂いで、決して良い香りとは言えませんからね。日本の海は栄養豊富なためにプランクトンが多く、それを食べる魚がたくさんいるので新鮮な魚を使った料理がこの国には多いんですよ」

 

「ほう…」

 

「地球上、つまりの玄界(ミデン)の生命は約40億年前に原始の海で誕生したと考えられています。そして原始生物が進化をし、陸上に上がることができたのが今から約4億年前だそうです。地球の歴史は約46億年で、生命は約36億年の間海の中だけで生きてきたということです。だから海のことを生命の故郷だと言う人もいます」

 

「我々の先祖もこの海で生まれた生命から始まったのか…」

 

「ええ。近界(ネイバーフッド)の国で海を持つ国はとても珍しいそうですね。海洋国家と呼ばれるリーベリーのような国が稀な存在なのは(マザー)トリガーによって海を創造し、管理することが難しいからではないかとわたしは想像しています。単に水生生物に生きる場所を与え、人間がそれを食料とするだけではコストが割に合いません。魚介類を食べるために広い海を管理するよりもそこを畑にして穀類や野菜を育てた方が費用対効果はこちらの方が圧倒的に高いですからね。それに池や湖、川でも魚は育ちますから海は絶対に必要な存在ではないんです。きっとリーベリーを創った王は誰よりも海への憧憬が強く、自分の国に海が必要だと考えたんでしょう」

 

「なるほどな…」

 

「そして人体の成分と海水の成分には共通点が多い…というよりもほぼ一致していると言っても過言ではないのだそうです。人類…生命をトリオンで再現することは不可能。ほぼ同じ成分の海を創ることができてもそれに命や魂は存在しませんからね。…わたしもエウクラートンの女王になればきっと海を恋しく思うようになるでしょう」

 

「……」

 

水平線を見つめて話すツグミの横顔は陽の光に照らされて赤みを帯びていた。

それは未来への希望や夢を抱く彼女の心が表れているように思えるが、その表情はどこか寂しげであった。

 

 

太陽が昇り切ってしまうと一行は三門市の国際港へと向かった。

そして倉庫に入りきらないほどたくさんの「お土産」を積んだトロポイの艇は準備万端でエルヴィンたちを出迎える。

これで本当にエルヴィンたちの全行程は終了し、あとはトロポイへ帰るだけだ。

特にエルヴィンにとってはこれが最初で最後の玄界(ミデン)への旅となることから、彼は後ろ髪引かれる思いでいることだろう。

国王がいつまでも国を離れているわけにはいかず、たった半日だが延長できたことは勿怪の幸いであった。

しかし早く帰って玄界(ミデン)で学んだことを国民のために役立てたいという気持ちもあり、複雑な気持ちを抱きながら祖国への帰途に就いたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

エルヴィンからトロポイの「箱」と「鍵」を預かったことでツグミにはやるべきことができてしまった。

近界民(ネイバー)の始祖となる「5人の王と5人の妃、そして500人の民」の「遺産」の一部を預かってしまったからにはこの問題を解決しなければ安心してエウクラートンの女王になることはできない。

そもそも5人の王のうちのひとりが初代エウクラートン王となっているのだからツグミにも大いに関係のあることで、エクトスが良からぬことを企んでいるとなれば全力で止める()()があるというもの。

エクトスを除く4ヶ国の「箱」と「鍵」とボーダー本部基地に集めることでエクトスに対して愚かな行為をやめさせる「切り札」とすることに決めたツグミ。

まずはエウクラートンとキオンとリコフォスの王家に事情を話して「箱」と「鍵」を預けてもらえるよう頼むことから始める。

本来は門外不出の秘宝のようなものだから国外に持ち出すことはありえないのだが、エルヴィンが()()を作ってくれたことで「古き(ルール)」を打ち壊す勇気さえあれば可能になると示した。

そこでツグミは距離的な点を考慮してエウクラートンとキオン、そしてリコフォスの順で回ることにした。

随行員は迅だけでかまわないと考えたのだが、城戸に計画を説明するとダメだと却下され、彼から最低でもゼノンとリヌスのふたりを連れて行くよう指示された。

もしツグミが関係各国を回って「箱」と「鍵」を集めていることをエクトスに知られたとなれば、近界(ネイバーフッド)を移動している時に襲撃を受ける可能性が生まれる。

神殿の奥にある時には手出しが難しかったものだが、遠征艇の中にあるとなればどこかの国に寄港している間に狙われるだろう。

ゼノンとリヌスのふたりを指名したのは空間操作に特化した「タキトゥスの(ブラック)トリガー」と使用者の半径約30メートル以内に干渉して敵のトリガーが起動できない状態にする武器(トリガー)の「カテーナ」の使用者であるからだ。

敵にトリガー使いがいても(ブラック)トリガーでなければ「カテーナ」で武器(トリガー)を無効化できるし、(ブラック)トリガーがいたら「タキトゥスの(ブラック)トリガー」で遠征艇ごと安全な場所に転送してしまえばいい。

それにゼノンとリヌスのトリオン量があれば行程を短期化できるので、ツグミには拒否する理由が見当たらなかった。

拉致被害者市民救出計画の方はチーム玉狛だけでは不安になるため、ゼノン隊が不参加の場合には本部所属のA級部隊(チーム)が護衛任務に就くこととなった。

これは玉狛第1が部隊(チーム)を解散したためで、隊長のレイジが解散届を提出したのは3月3日で、毎月第1金曜日の隊長会議の際に自ら隊長たちに公表した。

それは以前から噂として流れていたので驚かれることはなかったが、やはりそれが現実となると残念だという気持ちでその場にいた各隊の隊長たちは言葉がなかったのだそうだ。

レイジと京介はボーダーを辞めることになり、レイジはレスキュー隊員になるための一歩を踏み出し、京介は県警本部長の推薦ということで警察学校へ入学して警察官となる道を歩み始めている。

いずれボーダー隊員としての経験を活かし、トリオン体を使用した危険を伴う任務を行う特別チームのリーダーになることだろう。

なお小南は将来自分が何をなすべきなのか決まるまでボーダー隊員を続け、フリーのA級隊員として過ごすことに決めたのだった。

そして「第6次拉致被害者市民救出計画ベニニタス遠征」でゼノン隊が参加できなかった場合には風間隊が参加してくれることになっている。

もっとも速攻で仕事を終わらせて帰って来る気満々のツグミだから、風間隊には出番がないかもしれない。

 

 

ツグミたちがエウクラートンへ向けて旅立ったのは3月12日で、8日後の20日の早朝にエウクラートンに到着した。

以前なら10日から2週間くらいかかっていたのだが、キオンの最新型のエンジンの設計図を貰い受け、さらにボーダーの技術者(エンジニア)の血の滲むような努力によって強化されたエンジンを搭載した遠征艇は近界(ネイバーフッド)を少しだけ狭くしたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

久しぶりに孫が訪ねて来てくれたことをリベラートは喜んだが、訪問の理由が「箱」と「鍵」のことであると知ると顔を強張らせた。

前回の訪問でエクトスが怪しい動きをしていることを知らせて警戒を強めていたのだが、今回は門外不出の「箱」と「鍵」を預けてくれと頼みに来たのだから驚いたのは当然だが、エクトス以外の4ヶ国の「箱」と「鍵」を1ヶ所に集めてそれを()()として戦おうというのだから賛成だとは言えるはずがない。

なにしろツグミは次期女王であり彼女の代わりになる人材はいないのだから、彼女に何かあった時にはエウクラートンの国の存続にも影響がでる可能性があるのだ。

さらに彼女の事情を知っていながらトロポイのエルヴィンが自国の「箱」と「鍵」を託したというのだから、エルヴィンに対してもリベラートは怒りの矛先が向いてしまう。

しかしリベラートは反対をするがエレナは「条件付き賛成」だと言う。

その条件とはキオン、トロポイ、リコフォスの3ヶ国がそれぞれ王族の中で誰かひとり選び、エウクラートンの代表のツグミと合わせて4人でエクトスを訪問し、彼女の意思が4ヶ国の総意であると宣言するというものだ。

ようするにツグミひとりに危険と責任を負わせるのは納得できないということで他の3ヶ国からも代表を出させるということ。

もちろんツグミはその条件をのみ、キオンとリコフォスの承諾を得ることを約束してリコフォスからの復路で「箱」と「鍵」を受け取る手立てとなった。

 

 

 

 

事情が事情だけにツグミたちは滞在時間たった半日でキオンへと向けて出発し、到着するとすぐにテスタを通じて女王ライサに面会を申し出た。

半年前に個人的にも親しくなっているため、ライサとの面会はすんなりと許可されたのだが、そこでツグミは驚くべきことを知らされたのだった。

 

「事情はわかった。私はそなたのことを全面的に信頼しておるから『箱』と『鍵』についてはそなたに託してもかまわない」

 

ライサはツグミに話を聞き終えると即答してくれた。

 

「ありがとうございます、陛下。しかし王族のどなたかにわたしと同行していただかなければならないのですが、キオンの王族は陛下おひとりですから、陛下がどなたかご自身の名代を選んでいただきたいのです」

 

するとライサはツグミの想像もしていなかったことを口にした。

 

「我が夫を王族の代表として遣わそう」

 

「おっ…と…? それは配偶者という意味のそれ…ですか?」

 

「当たり前ではないか。夫とは私の配偶者、テスタ・スカルキ・キオン。そなたも良く知っている我が国の総統だ」

 

「ええっ!? 閣下からそんな話を聞かされてませんけど!」

 

気が動転して女王の前であることさえ失念してしまうツグミ。

しかしすぐに冷静になり、謝罪した。

 

「失礼いたしました。あまりにも唐突なお話でしたので場を弁えずに大きな声を出してしまいました」

 

「まあ、驚くのも当然か。以前にそなたが我が夫テスタをここに連れて来てくれた時、あの者は私に一目惚れをしたのだそうだ。そしてそれ以来あの者は事あるごとに私に会いに来てくれて、花や菓子などで私を喜ばせようと必死になってくれた。そうなると私もあの者に惹かれるようになり、ついには互いの気持ちを確認して契りを結んだのだ」

 

「……」

 

「私にはもう子供を生むことはできぬからあの者との愛の結晶をこの腕に抱くことは不可能だが、今の私はあの者の愛に包まれて生きる喜びを感じている。そのきっかけを作ってくれたことを感謝しているぞ、ツグミ」

 

ライサはそう言ってツグミの手を取って頭を下げた。

 

「陛下…もったいないお言葉です。ですがお幸せになれたとおっしゃるのならわたしも嬉しいです。スカルキ閣下…ではなく殿下がキオンの代表として同行してくださるとなればとても心強いです。これはリコフォスへ行って事情を話す時にも追い風になるはず。まだいつになるのかは決まっていませんが近いうちに陛下の最愛の旦那さまをお借りいたします」

 

「ああ、好きなように使ってくれ」

 

そう言ってライサは笑ったのだった。

 

 

 

 

リコフォスでも女王カロリーネに面会を申し出てすぐに許可が出た。

ツグミがキオンの時と同様に事情を説明すると、カロリーネはエクトスの企みについては激昂していたから彼女も即答でツグミの計画に賛成してくれた。

しかし王族の代表として娘のイェリンを同行させると言う。

 

「イェリン王女は先天性白皮症(アルビノ)で神殿の外には出られないということではなかったでしょうか?」

 

「ああ、たしかにそうじゃ。しかしトリオン体になれば外へ出ても大丈夫だと言うのなら、これまでの慣習に逆らってでも本人の希望を叶えてやりたいと()()()()そう思ったのじゃ。門外不出の『箱』と『鍵』を神殿の外に持ち出すのじゃから、慣習などというものは破ったところで大したことではないということにならぬか? もちろん本人の命に係わることであの子が嫌だと言うのであれば無理強いはしないが、きっとそなたがこのような話を持って来たとなれば食いつくのは間違いない。…なあ、イェリン?」

 

カロリーネは柱の陰で聞き耳を立てていたイェリンに訊いた。

するとイェリンは恥ずかし気に顔を出して言う。

 

「立ち聞きなどするつもりはなかったのですが、ツグミがいると聞いて来てしまいました。わたしがお役に立てるのならぜひお母さまの名代としてわたしを遣わしてください。危険を伴うということですが、同い年で同じ立場のツグミができることなんですからわたしもやってみたいです。そしてこの神殿の外の世界をこの目で見てみたいんです。お母さま…いえ女王陛下、わたしにそのお役目をお命じください」

 

カロリーネの前に膝をついてイェリンは言った。

 

「よかろう、そなたにすべてを託そう。しかし外の世界はそなたには厳しいものとなる。よってツグミや従者の言葉には必ず従うのじゃ。よいな?」

 

「はい、わかりました!」

 

イェリンは元気に返事をした。

 

 

これでキオンとリコフォスの「箱」と「鍵」を預かり、エレナの条件も満たすことができたので、ツグミは意気揚々とエウクラートンへと戻って行ったのだった。

 

 

 

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