ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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651話

 

 

シーラは神殿の奥深くで暮らしているものだから肌は透けるように白く、手足は細く華奢で、見事な長い金色の髪を持つ熟女である。

ツグミがこれまで出会った女王や巫女と呼ばれる(マザー)トリガーの管理者のほとんどがシーラ同様に美しいのだが日の当たらない場所で暮らし、栄養バランスの悪い食事しかできず、そして運動をしないことで筋力が衰えてしまうものだから不健康で病的な美しさだといえる。

それが彼女たちにとって望むものであれば無関係な人間がとやかく言うものではないが、国民のためという理由で自由を奪われて一生を(マザー)トリガーの()()()を強制されるのだから、いずれ同じ運命を辿るツグミにとって他人事ではない。

 

 

「姉上、エウクラートンからツグミ・オーラクル殿下がお越しくださいました。姉上にぜひ会っていただきたいと思い、お連れいたしました」

 

ヌンツィオがシーラに声をかけ、ツグミはシーラの前でお辞儀(カテーシー)をする。

 

「お初にお目にかかります。わたしはエウクラートンから参りましたツグミ・オーラクルと申します」

 

するとカウチに横たわっていたシーラはゆっくりと立ち上がり、ツグミに近付いて言った。

 

「お主がツグミか。ヌンツィオからは玄界(ミデン)のキリシナ・ツグミという娘が新しい『神』を連れて来るかもしれないと聞かされていたが、これはどういうことなのだ?」

 

「わたしはエウクラートン王家の血を引く父が玄界(ミデン)へやって来て、現地の女性…つまりわたしの母となる女性と結婚をしたことで生まれたものですから霧科ツグミであり、同時にツグミ・オーラクルでもあるのです。前回の訪問ではボーダーの人間としてでしたので霧科ツグミを名乗りました。ですが今回の訪問は『5人の王』の末裔であるキオン、トロポイ、リコフォスの代表と共に『箱』と『鍵』の件で参りましたのでツグミ・オーラクルを名乗っています。そして近界(ネイバーフッド)(ことわり)を大きく変えることになるかもしれない実験を行うお許しをいただきたくて、こうしてお願いに参上した次第でございます」

 

「話はわかった。しかし実験とはどういう意味だ?」

 

「それにつきましてはただ今から詳しくご説明いたします」

 

ツグミは挨拶も早々に本題に入った。

トリオン能力の高い動物を人間の代わりにするというこれまで誰も考えたこともない方法を披露し、その根拠となる数々のデータを含めて納得してもらえうように懇切丁寧に話した。

初めのうちはそんなことができるはずがないという態度でいたシーラだが、ツグミが玄界(ミデン)育ちとはいえ近界(ネイバーフッド)の国の王族としての責任と矜持を持ち合わせているとわかると、人間を犠牲にしないで済む手段を必死になって考えて行動する彼女を信頼しても良いかもしれないと思うようになっていった。

しかしツグミの計画には不安な点も多い。

 

「話はわかった。しかし(マザー)トリガーが人間以外の生き物を受け入れるのだろうか?」

 

シーラがツグミに問う。

これは非常に重大な疑問で、シーラだけでなくツグミが自分の計画を説明する時に必ず質問される点だ。

そこで不安や疑念を抱かれると話が進まない。

だからここは自信を持って断言するのがベストだとツグミは考えている。

 

「わたしは(マザー)トリガーが元は人であったことで受け入れると信じています。()()()()が好んで『神』を求めているとは思いません。『5人の王』の妃が民のために犠牲になって生まれたのが(マザー)トリガーですから、彼女たちが自分と同じような人間を犠牲にするやり方を望むとは考えられず、むしろ人間の代わりとなるものを()()()方が彼女たちにとっても好ましいのではないかと判断しました」

 

「たしかに(マザー)トリガーは『5人の王』の妃であったのは確かで、それから増えていった国の(マザー)トリガーも同様に多くの女性たちの犠牲によって生まれたものだ。しかしこれまでずっと『神』は人間であったのだぞ、それは人間しか受け付けないからではないのか?」

 

「いいえ、わたしは違うと思います。たぶん最初に人間が『神』となったことで、以降はそれに倣って人間を生贄にしてきただけなのではないかと考えています。 当時は牛や馬などの家畜にトリオン器官があるということは知られていなかったでしょうから、トリオンを生み出すことができるのは人間だけだと思い込んでいたことで代々『神』が人間でなければならないと決めつけていたのだとわたしは考えました。現代の技術では動物にもトリオン器官が存在し、トリオンを生み出していることが判明したのですから、動物でもトリオン能力が高ければ『神』の代わりになるとのではないかと仮定していろいろと研究を重ねてきました。まだ十分とは言えない状況ですが、貴国の状況が一日でも早く『神』を必要としているのでヌンツィオ陛下と話し合って決めました。もちろん成功するとは限りません。だからこそ早く行動すべきなのではありませんか? 仮に動物では(マザー)トリガーが拒否して人間以外はダメだというのであれば、それはわたしたちでは手の施しようがありません。これまでどおりに人間を犠牲にするしかないです。その場合でも早く『神』を探さなければならないのですから、とにかくダメであったとしても仕方がないと割り切って実験をさせていただけませんでしょうか? わたしは(マザー)トリガーには元になった女性の意思がまだ残っていると思います。そんな彼女たちの心を信じてわたしはこの悲劇の連鎖を断ち切りたいんです!」

 

「……」

 

「わたしの住む玄界(ミデン)には人間が大勢いることとトリオンやトリガーの技術がないために、近界(ネイバーフッド)の国々がわたしの同胞をさらっていくという蛮行が繰り返されていました。貴国も同様で、貴国によって1200人を超える人間が死亡し、400人以上の人間が拉致されて近界(ネイバーフッド)の9ヶ国に売られてしまいました。現在ボーダーではまだ生存している同胞を救出すべく活動をしており、その中でリコフォスで起きた事件を知りました。それをきっかけとしてわたしはボーダーの霧科ツグミとして、またエウクラートンのツグミ・オーラクルとして貴国を訪問することになったのです。このまま近界民(ネイバー)がトリオンを欲して玄界(ミデン)の同胞に危害を加えるというのであればボーダーは全力で敵対する近界民(ネイバー)と戦う道を進むでしょう。しかしそれはお互いにとって不幸でしかなく、ボーダー(わたしたち)近界民(ネイバー)と対話という手段で友好関係を築き、平和的な手段で近界(ネイバーフッド)の問題を解決していこうと動き始めています。キオンやアフトクラトルといった軍事大国でも武力によって他国を侵略するという()()()手段を捨て、玄界(ミデン)とは技術交換によって国力を高めています。玄界(ミデン)ではトリオンを使わない技術が発達しましたから、同盟国で必要としているのであればボーダーはいくらでも協力します。逆に敵対する国が現れたなら、同盟国が一致団結してその国を排除するという覚悟です。それは貴国であっても例外ではありません」

 

ヌンツィオがリコフォスに対して行った蛮行についてはあえて伏せておいた。

そのことを教えるとしたらそれはツグミではなくヌンツィオがするべきだからだ。

いずれ「5人の王」の末裔が「箱」と「鍵」の()()について話し合いを行うのだから内緒にしておくことはできない。

ヌンツィオがシーラにどう説明するのかはわからないが、説明責任は彼に果たしてもらうのが道理である。

今のツグミの役目は「神」問題の解決策を見付けることなのだから。

 

「話を元に戻しますが、この『神』の実験は強制ではありません。最終的にどうするかを決めるのは貴国…つまりシーラ様ご自身です。もし貴国が拒否するのであれば、リコフォスで行うことになっております。彼の国でも『神』の寿命は近付きつつありますので、リコフォスのカロリーネ女王陛下とサルシド宰相閣下はエクトスで拒否されたならぜひ自国でとおっしゃってくださっています。…ただしリコフォスでの実験が成功したことを確認してからぜひエクトスでもやりたいとおっしゃってもすぐには『神』となるに相応しい動物を用意できないでしょうから数ヶ月…いえ数年後になるでしょう」

 

ツグミの言葉の意味するところは「今ここでやらないと間に合わないぞ」ということで、強制はしないと言いながらも脅迫はしていることになる。

そう言われては無碍断ることはできなくなるというもの。

しかし史上初の実験であり成功するとは限らない。

 

「必ず成功するという保証はあるのか?」

 

シーラは不安そうに尋ねる。

 

「いいえ、失敗の可能性はございます。しかし(マザー)トリガーと融合させるに当たって(マザー)トリガーが拒否をすれば融合できないのですから単に現状維持となり、悪化することはまず考えられません。融合したのであればそれは(マザー)トリガーの意思であって悪い影響が出るとは考えにくいとわたしは思うのです。これ以上悪化するというのでなければ試してみようという気になってくださればすぐにでも実験を始めます。ご一考くださいませ」

 

そう言ってツグミは微笑んだ。

ここは頭を下げて頼むのではなく、選択権がエクトス側にあってリスクとリターンのふたつを受け入れる覚悟があるかどうかをシーラに委ねているのだからこれで十分なのである。

 

「少し考えさせてくれ。返事はヌンツィオにさせる」

 

それだけ言ってシーラは黙り込んでしまった。

 

「承知いたしました。それではわたしはこれで失礼させていただきます。良いお返事をお待ちしております」

 

ひとまずボールをエクトス側に投げたのだから、あとはどういう球が帰って来るかを待つだけである。

ツグミは自分にできることはやったという感触を得て、仲間たちの待つ迎賓館へとひとりで戻って行った。

そして神殿の中で感じたことを思い返す。

 

(マザー)トリガーの力がとても弱々しくて神殿の中に漂うトリオン粒子の量もキオンや他の国と比べるとものすごく少ない。それにシーラ様の体調も良好とはいえない状態なのはわかる。無理には進められないけどお医者様にきちんと診てもらって治療しないとそう長くは生きられそうにない。キオンのライサ陛下のように自分の体内にトリオンを取り込んで健康を回復するという手もあるけど、あのトリオン粒子の量ではそれもできないんだろうな…)

 

キオンを訪問した時にライサから(マザー)トリガーを操作できる者には訓練次第で(マザー)トリガーから生み出されるトリオンを視認できるだけでなくそれを使って無機物を創造することができるのだと聞かされた。

さらに使わずにいると自然に蒸発するように消えてしまうトリオンを体内に留めることで食事をせずに肉体を維持できるとか、その経験を積めば神殿内に漂うトリオンを吸収して肉体の時間を止めて老いることもなくなるという驚くべきことも教えられた。

ツグミにはその才能があったようで、ちょっと練習しただけでトリオンを体内に留める方法を身に付けた。

防衛任務で常にトリオンを消費する防衛隊員から原則として戦闘を行わない総合外交政策局に異動となって以来、彼女は毎日の早朝稽古以外ではトリオンを消費するような活動はしなくなった。

そうなるとせっかく鍛えたトリオン器官から生まれる大量のトリオンを無駄にしてしまうと、ツグミは体内に留める方法を覚えることにした。

ただしトリオンを消費することを怠ればトリオン器官が衰えてしまうので、体内に留めたトリオンを消費する形で稽古をする。

これを繰り返すことで非常に効率的にトリオン器官を鍛え、無駄になるトリオンを減らすことができるようになったのだった。

 

(女王や巫女といった女性の健康管理は最優先事項ね。彼女たちの健康がその国自体の健康そのものなんだから、病になれば国も病気になっちゃう。お医者様の育成ももっと推し進めなきゃいけない。子供の頃から医療に興味を持たせるだけでなく、知識や技術の未熟な近界民(ネイバー)のお医者様を玄界(ミデン)に招いて学んでもらうことももっと積極的に進めなきゃ。リコフォスからは何人かのお医者様が三門市立病院で研修医として勉強しているんだから、その規模を拡大できればいい。とにかく命を守る態勢を整えなきゃ。そうしないと人口は増えないし、まだまだトリオンに依存する近界(ネイバーフッド)の国々を支えるのが国民ひとりひとりなんだもの)

 

拉致被害者市民救出遠征でリコフォスへと赴いた際、拉致された当時三門市立大学医学部4年だった荒戸が復学を希望しており、彼と一緒に数名の医師を()()させることに決めた。

リコフォスの医師では麻疹(はしか)の大流行に対処できず大勢の国民を死なせてしまった経緯があるため、なによりも医療レベルの向上を最優先と判断したからである。

留学した医師たちは当初レベルの格差の違いでショックを受けてしまったが、同じ医療を志す研修医の若者たちに囲まれて日々研鑚しているという。

 

(まあ、すべてはシーラ様のご決断にかかっている。ボーダーや三門市民にとってエクトスは許しがたい仇のようなもので複雑な想いを抱いている人は多いけど、気持ち次第で乗り越えられないことじゃない。現に家族を失っても逞しく生きようとしている人をわたしは見てきているもの。これからのボーダーはそういった人たちを支え、近界民(ネイバー)に対する憎しみや恨みを和らげて穏やかな気持ちで暮らせるようフォローできる組織になってほしい。そのために今のわたしにできることは…)

 

そう考えようとした次の瞬間、ツグミは気が付いた。

 

(ううん、そうじゃない! 今できることを考えるんじゃなくて、今やるべきことだけを考えて必ず成功させることが大事なのよ! だから『神』の実験を成功させ、5者会議で互いに最善の道を考えて()()の方針で一致させることがわたしのやるべきこと。余計なことを考えずにそれだけに集中しなきゃ!)

 

気合を入れ直すとしっかりとした足取りで前に進んで行くツグミであった。

 

 

◆◆◆

 

 

ヌンツィオ主催による歓迎晩餐会が開かれ、そこで「5人の王」の直系の末裔である5つの王家の代表が勢揃いした。

厳密に言えばテスタは王配であるから血のつながりという点では外部の者となるが、キオンという「5人の王」の長男の国の女王が認めた人物なのだから誰も異論はない。

ひとまず和やかな雰囲気の会食となり、5者会談は翌日の午後に王城内で開かれることで全員が納得した。

迅とゼノン隊の3人はアロイス主催の歓迎会に招かれていて、イゴールやイリジーたちといった前回の訪問で親しくなった面子との会食に参加している。

いくら親しいといっても「5人の王」に関わる件は部外者に知られることはマズいということでこうした形の歓迎会となったわけだが、「箱」と「鍵」の処分が済めば公にしてもかまわないし、むしろ公にすべきだとツグミは提案するつもりでいる。

近界民(ネイバー)に自分たちの起源が玄界(ミデン)にあるということ、別々の世界で別々の進化を遂げてきた「きょうだい」であると知ることは彼らの意識改革に必要なこと。

それは玄界(ミデン)の人間にとっても同様で、相互理解のためには不可欠なことだ。

そのためにも危険な「箱」と「鍵」をどう扱うかを当事者間で話し合いによって決める。

それが今回のエクトス訪問の一番の目的なのだ。

 

ツグミたちの歓迎会は2時間弱で終了して客は迎賓館へと戻ったが、迅たちが戻って来たのはそろそろ日付が変わろうとしている深夜になってだった。

かなりの酒を飲んだはずのゼノンとリヌスはそんな素振りは全く見せず、翌朝は普通に朝食をとっていた。

しかし迅とテオは二日酔いなのか少々お疲れ気味のようである。

ツグミはテスタ、イェリン、イザイアと共に城下の視察を行い、昼食の時間までに王城へ戻ると彼女をヌンツィオが待っていた。

そして彼女だけが別室に呼ばれ、そこでシーラの出した答えを聞くことになった。

その答えは「実験をしてもらいたい」というもので、迅たちに準備を進めてもらってツグミは5者会談が終わり次第彼らと合流して(マザー)トリガーとの()()作業を行うことに決めたのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

昼食を済ませたツグミは5者会議の前に駐艇場へと赴き、そこで何も知らずに餌を食べている牛に最後のブラッシングをする。

牛の他に数頭の動物を連れて来ているが、その中でトリオン能力、寿命、健康状態などを総合して一番適していると思われたのが牛であったため、この牛を「神」の代わりにすることに決めていた。

人間は牛肉を食べるために牛を育て、その牛が育ったところで屠殺して食肉用に加工する。

この牛もそのように育てられてきたのだから「神」にされなくてもいずれは屠られる運命ではあった。

だから哀しんだり憐れんだりすることではないのだが、数日でも共に過ごしたとなると愛着がわく。

迅たちは彼女が哀しまないようにとできるだけ接触させないようにと考えたのだが、彼女は何度も世話をしてやった。

牛は気持ち良さそうにしていて、トリオンたっぷりの美味しい飼料を満足いくまで食べさせてやったからきっと幸せだっただろうと迅がツグミを慰めるように言うが、ツグミは首を横に振った。

 

「これはこの子が満足しているかどうかではなくわたし自身の罪の意識によるもの。お肉を食べる時に『いただきます』と言って食べるのも感謝の気持ちと同時にその子の命を奪わないと生きていけない人間のひとりとして、せめて魂が安らかでいてほしいという自己満足でもあるんです。だからブラッシングだってこの子のためにやっているのではなく、自分の気持ちの整理のため。自分のエゴでやっていることなんです」

 

「それでもこいつはおまえと一緒にいられて幸せだったと思うぜ。おまえのエゴだとしてもこいつが幸せだと思えるんならそれで十分じゃないか。怖いとか苦しいという思いをせずに済み、肉になるよりも多くの人間のためにその命を捧げるんだから、きっとこいつの魂は天国へ行けるだろう。それに(マザー)トリガーと融合することが肉体的にも精神的にも苦痛を味わうことはないだろうと判断したからおまえは動物を人間の代わりにするって決めたんだろ? その決断に迷いはないはずだ」

 

「…ええ、そうでした。わたしは後悔のない人生を送りたいと考えて行動してきました。この子を人間の代わりにと最終決断した時だってそれが最善の道だと思ったからで迷いはなかった。でもやっぱり少しだけごめんなさいという気持ちがあって心が乱れてしまいました」

 

「それは仕方がないさ。おまえにとって人間も動物も同じで、手に届く範囲にいるものすべてを慈しむ優しい人間なんだから。こいつのことで悩んだり苦しんだりするくらいなら、こいつの命に恥じない生き方をすればいい。それで十分だと思うぜ」

 

迅はそう言ってツグミの頭を優しく撫でると、ツグミはムッとした顔で怒鳴った。

 

「悠一さん、さっきこの子のう〇ちの片付けをして、まだその手を洗っていなかったでしょ! 髪にう〇ちが付いたらどうしてくれるんですか!」

 

「あ、悪ぃ。そんなことすっかり忘れてた。ゴメンゴメン、このとおり謝るから許してくれ!」

 

そう言って両手を合わせて謝る迅。

 

「もう…この後にすぐ5者会談があるんですよ。こうなったら遠征艇のシャワールームで頭を洗って、乾かしたらすぐに迎賓館に戻らなきゃ。トリオン体になって走って行けば十分間に合うはず。じゃあ、あとの片付けはお願いしますね」

 

そう言ってツグミはケージを出て行こうとするが出入り口で迅に振り返って言った。

 

「でも悠一さんのおかげで落ち込んだ気持ちが吹っ飛びました。ありがとうございました」

 

清々しい表情でそう言い残してツグミは去って行き、迅は安心したのか大きくため息をついた。

 

「元気になったのはいいが、若い女の子がう〇ちう〇ちと連呼するのはどうかと思うがな…。まあ、これも怪我の功名というのかな?」

 

迅はそうひとり呟いたのだった。

 

 

 

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