ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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664話

 

 

12月になると「レジデンス弓手町」で共同生活をしていたツグミたちは引っ越しをすることになった。

現在の住人はツグミと迅、ゼノンとリヌスの4人だけで、この4人は12月末でボーダーを辞めることになっているので出て行くしかない。

もっともゼノンはキオンへ、残りのツグミたち3人はエウクラートンへ行くのだから寮は無人となってしまう。

ボーダー隊員及び職員のための寮であるから希望者がいれば入居してもかまわないのだが、今のところ住居を必要としている人間がいないらしい。

付近に日常の買い物ができる店舗がなく、公共交通機関が整っていないので住みづらい場所だからだ。

敵性近界民(ネイバー)の襲来が激減したことによって警戒区域となっていた場所も少しずつ解除されていて、新年度にはボーダー本部基地を中心とした一部地域を除いて警戒区域及び隣接した地域には市民が戻って来ることも可能となる。

弓手町の住宅は建物改修や内装リフォーム等で再び居住可能になるものが多いので、一時的に離れていた住民が戻って来るだろうが以前ほどではないだろうとのこと。

三門市営鉄道も第一次近界民(ネイバー)侵攻後に開通した新線で運行されていて、旧弓手町駅は再開しないということだから仕方がないのかもしれない。

そこで行政はボーダーと協力して旧弓手町駅周辺を再開発しようという計画を立てているそうで、その中には「三門研究学園都市」の建設というものもある。

現在三門市立大学とボーダーで行われているトリオンの研究や新しいトリガーの開発などの規模を拡大するには大規模な施設を新設する必要があるため、その用地としての候補に旧弓手町駅周辺地域が上がっているのだという。

その研究施設を含めて私学や関連企業の誘致を行い人口増や税収アップを狙っているということで、そうなると寮の建物は解体されるか別の用途に転用される可能性が高いとのこと。

ツグミたちにとっては思い出深い場所だが住人がいなくなればその意味がなくなり、所有者であるボーダーが取り壊すと判断すればそれに従うしかない。

寮がどうなるのかはともかくツグミの荷物は忍田家の空き部屋 ── かつてツグミが使用していた子供部屋 ── に運び込み、エウクラートンに発つまでは客間で寝泊まりさせてもらうことになっている。

そして残りの時間は忍田の世話をすることにした。

迅はというと義父となった忍田との暮らしが気恥ずかしいらしく、玉狛支部のかつての自分の部屋に転がり込んだ。

幼くして両親を亡くしている迅にとって城戸たちボーダーの大人が親代わりだったがやはりどこか他人という距離感があったのだが、いざ戸籍上とはいえ忍田が父親となるとどう接していいのかわからずに戸惑ってしまう。

もちろん忍田のことを嫌っているわけではなく、だからといって特別親しくするのも不自然だと感じて逃げ出してしまったのだろう。

忍田の方も迅の気持ちがわかるらしく、迅の行動には何も言わないでいた。

それでも週1-2回は「晩飯でもどうだ?」と家に呼んで3人で団らんを楽しんで、残り少ない時間を家族として過ごした。

それは忍田や迅にとってというよりもツグミへのサービスであったことは明らかである。

なにしろ「世界で一番大好きな真史叔父さん」と「世界でただひとりの最愛の男性である悠一さん」というふたりと一緒に楽しく過ごすことができるのだからツグミにとって最高の時間であり、それができるのもあとひと月弱となれば彼女を愛するふたりの男たちにとってできることは他にない。

しかしにわかの親子であるし不器用なふたりであるから仲良く見せようとしてもなんとなくぎこちない。

ツグミはそんなふたりの様子を微笑ましいと思いながら、大好物の料理を心を込めて作ったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

12月15日、ボーダー本部基地の会議室ではその年最後の幹部会議が行われた。

これは毎月1回行われている定例会議で、緊急の場合には城戸が必要なメンバーを招集することになっている。

各部署の責任者がそれぞれのプロジェクトの進行状況を報告することがメインで、総合外交政策局からは局長のツグミが出席していた。

しかし今回は修も同席している。

それはこの会議で修の局長就任を審議して、彼を新たな局長として認めると同時にツグミの局長退任及び12月末日まで顧問に任命する()()を行うためである。

審議をするといっても修の局長就任は既定事案であって審議などする必要もないのだが「審議して決まった」という既成事実が必要なのだという。

そして引き継ぎが年を跨ぐと面倒だという理由で12月16日に修が局長就任をすることになるため、ツグミは顧問という形にして12月31日に退職する。

これも局長が平職員になるということは降格というイメージになるため、名目だけの肩書であるから特別に何かをするということではない。

ツグミに言わせれば「まったくもって大人の世界は面倒くさい」なのだが理解できる部分もあるのでおとなしく事の成り行きを見守るだけだ。

 

 

そして会議終了後にツグミは最後の局長としての仕事のために総合外交政策局の執務室へ行き、そこで待っている局員たちにこれまでの礼を言う。

 

「みなさん、これまでわたしのような理想だけ高くて未熟な人間の行動に付き合っていただいて本当にありがとうございました。近界民(ネイバー)と戦って三門市を守るというボーダーの目的とは大きく違う『近界民(ネイバー)との平和的交流』を目指し、拉致被害者市民救出計画という可及的速やかに完了させなければならないプロジェクトも同時に進めていくのはとても大変なことです。それができたのはみなさんがいたおかげであり、この感謝の気持ちは言葉に表せるものではありません」

 

ツグミがそんなことを言わなくても修たち局員全員がわかっていることで、彼女の心の中を察すると熱いものが込み上げてくるようだ。

そして志半ばでボーダーを辞めてエウクラートンへ行かなければならない彼女の境遇に心を痛めてしまうが、そんなことを彼女が望んでいないことも知っているから顔に出さないでじっと彼女の言葉に耳を傾けている。

 

「拉致被害者市民救出計画も残り2ヶ国となり、ちょうど100人の市民を無事に帰国させれば第一次侵攻による拉致被害者は全員戻って来たことになります。わたしもこの目で全員が帰国した様子を見たかったのですがその願いは叶いませんし、敵性近界民(ネイバー)による侵攻がゼロになって市民が何も憂う必要のない平和な三門市の光景もしばらくは見ることができないでしょう。まだボーダーと総合外交政策局はその役目を果たすために働かなければならないというのに、その中にわたしはおりません。それが残念でなりませんが、それでも希望がここにあると思うと()()()()()()()()()()があって、それを胸にエウクラートンでわたし自身の役目を果たして帰って来る所存です。とはいえ今日でおしまいではなく31日まではわたしも総合外交政策局の一員ですので、最後までできることをやりたいと思っています。いちおう顧問という肩書ですのでみなさんのお手伝いをさせてください。少々面倒なことや城戸司令への()()()などありましたらわたしにお任せを」

 

そう言ってツグミは微笑んだ。

すると修が手を挙げる。

 

「霧科先輩、さっそくなんですがお願いがあります」

 

「はい、オサムくん、何でしょうか?」

 

「実はぼくが局長に就任するということで空閑や千佳たちがお祝いをしてくれると言うんです。それで急ではありますが明日の夜に玉狛支部でパーティーをすることになっていて、それに先輩と迅さんにも参加していただきたい。お忙しいところ恐縮ですがどうかお願いします」

 

「そんなに畏まらなくてもいいわよ。明日の夜ならふたりとも空いているし、オサムくんのお祝いなんだから出席しないという選択肢はないもの。ね、ジンさん?」

 

ツグミが隣にいる迅に訊くと、迅もそうだと言わんばかりに首を縦に振る。

 

「ああ。メガネくんの働きが城戸さんたちに評価されたってことなんだから大いに喜ばしい。城戸さんだけでなく鬼怒田さんや根付さんに睨まれていた時期があったことが遠い昔のことのように思えてくるぜ」

 

「アハ…その節は大変お世話になりました。迅さんが玉狛支部に誘ってくれたおかげでぼくだけでなく空閑や千佳もボーダーでやっていくことができたんです。そこから先は大勢の先輩方に助けていただいて、今こうしてみんなから支持されています」

 

「それはメガネくんが頑張ったからさ。その努力する姿はここにいるみんなが見ている。いや、ここにいる連中だけでなくレイジさんや小南たちも同じで、メガネくんの力になりたいと心から思うからこそ助けたくなって、その期待にメガネくんが応えてくれたということさ。こっちこそおかげでボーダーのことを心配せずにエウクラートンへ行けるというもの。ありがとな、メガネくん」

 

「そんな…迅さんにお礼を言われるなんて照れくさいですよ。とにかく明日はおふたりとも出席してくれるということで嬉しいです。それで今はここにいないゼノンさんたちにも声をかけてもらえたらありがたいんですけど…」

 

「わかった。俺とツグミも後で3人に会うから話をしておく。たぶん出席すると言ってくれるだろうから頭数に入れておいてくれ」

 

「はい」

 

 

その後は拉致被害者市民救出計画の会議となり、残るフスクムとピュトンという2ヶ国のどちらから先に遠征するかを決めることにした。

どちらの国も第三国との戦争中ということはなく、玄界(ミデン)からの距離もほぼ同じ。

拉致被害者市民の数がフスクムに56人でピュトンに44人という違いがあるだけで条件は変わらないため、先にフスクム遠征を行うことに決まった。

そして遠征は来年1月中旬出発を目安として計画を進め、6月の第一次近界民(ネイバー)侵攻の慰霊祭には関係者全員で参加できるようにしたいと修は自分の希望を述べた。

彼の思いは彼だけのものではなくツグミや迅にとっても同様で、できることなら自分の手で成し終えたかったと悔しい気持ちもあり、その意思を継ぐ修には期待をしている。

それは自分たちの旧ボーダー隊員としての責任を修に押し付けている形になるのだが、修はそれが「自分がそうするべきと思ったこと」だと考えている。

もしここで「申し訳ない」という気持ちでいれば、それは逆に彼の気持ちを否定することになってしまう。

だから修に対しての気持ちは「申し訳ない」ではなく「期待している」とか「感謝している」になるのだ。

その気持ちを目に見えるような形あるものにすることは不可能だが、そんなことをせずともツグミと迅の心は相手に届いていたようであった。

 

 

◆◆◆

 

 

「なあ、ツグミ。メガネくんもずいぶんと逞しくなったよな?」

 

総合外交政策局での会議を終えたツグミと迅は廊下を並んで歩いている。

 

「ええ。オサムくんに出会って4年…出会った頃は何もできないタダの危なっかしいC級だったから、いつまで続くのか不安でしたね。でも真面目で自分のことよりも他人のことになると一所懸命になれる性格なものだからチカちゃんのために遠征部隊に選ばれるようA級になるんだ、ユーマくんのために生きる目的を与えたいとか、形振りかまわず無茶ともいえることを平気でやってました」

 

「ああ。そもそも入隊試験に落ちてしまったことに納得できなくて不法侵入をして城戸さんに直談判をしようとしたし、アフト遠征のためにヒュースを部隊(チーム)に引き入れようとするくらいの無茶なヤツだからな、見ていてハラハラすることが何度もあった。もっとも俺が未来視(サイドエフェクト)で視た最善の未来のためにはメガネくんを入隊させる必要があったわけだけで、そして俺の選択は間違っていなかった」

 

「最善の未来って…その時どんな未来が視えたんですか?」

 

「城戸さんが昔のように笑っている顔が視えたことを覚えている。…最初は入隊試験に来ていたメガネの少年がトリオン兵に襲われる様子が視えたもんだから助けなきゃって。それで助けた時に彼がボーダーの隊服を着ている未来が視えて、それと同時に城戸さんが満足げに笑っている光景が視えた。それでメガネくんを入隊させることで城戸さんが笑顔を取り戻す未来につながるのだと確信した」

 

「それで例の()()を使って入隊させたけれど、オサムくん本人が半年近く何もせずにいた。そこにユーマくんが現れて、ふたりの出会いがきっかけ(トリガー)となって未来が大きく変わるとわかったので風刃を手放してでもユーマくんをボーダーに入隊させたんでしたね」

 

「ああ。でもメガネくんと遊真が直接未来を変えるのではなく、彼らの存在が別のキーパーソンを目覚めさせるとわかったんだ」

 

「キーパーソン?」

 

「そう。それがおまえだ。おまえがメガネくんたちが目的としている近界(ネイバーフッド)遠征に耐えられる隊員にしようと行動を開始したことでボーダーという組織が舵を大きく切ることになる。おまえは意識していないだろうが、おまえはメノエイデス遠征で城戸さんに逆らった時から停滞してしまっていた。城戸さんへの信頼を失い、あの人の心の底にある辛い気持ちと重い責任を察してやろうともしなくなっていたんだ」

 

「…そう言われたら否定できません。わたしは昔の近界民(ネイバー)と仲良くしていた頃の城戸さんのままだとばかり考えていて、それで捕虜となった近界民(ネイバー)に対して思いやりのないことを言うからつい逆らってしまいました。あんなことのあった後だから近界民(ネイバー)を憎む気持ちがあって当然ですが、私情を挟むなんて大人げないとも思ったんです。それでわたしもつい…」

 

「おまえの気持ちも城戸さんの思いも俺は理解できる。今だから言うんだが、あの時の俺にはおまえと城戸さんが対立する未来が視えていた。そしてその対立も必要なことだと感じていて、あえておまえの捕虜を逃がすという大胆な行動を見逃したし、城戸さんの厳罰に対しても詫びを入れずにいたんだ。それがきっかけでおまえは玉狛支部に転がり込むことになり、それこそが俺の遠大な計画のひとつでもあった。ただし2年近くもおまえが停滞してしまっていたもんだから少し不安にもなったな」

 

玉狛支部(あそこ)はとても居心地の良い場所で、あの状態がずっと続けばいいと願ったくらいですから。実際にあの2年間でわたしには成長らしいものはあまりありませんでした。でも玉狛支部にいたからこそオサムくんたちとは深く関わることになったわけで、彼らとの交流が自分自身をも変えることになったことは間違いありません」

 

「おまえがメガネくんたちの先輩として彼らを育てようとしたことでおまえだけでなくボーダー全体が動き出したと俺は感じている。おまえがB級ソロでランク戦に参戦しようとしたのは玉狛支部での日々を守ろうとしたことがきっかけだが、おまえの活躍はC級だけでなくA級B級の正隊員にも大きな影響を与えた。おまえが一目置く存在になったからこそ、アフト遠征の時にもおまえの計画に従ってくれたんだ。おまえがB級ランク戦に参戦する以前はおまえの存在自体を知らない隊員ばかりだったし、おまえも狙撃手(スナイパー)の合同訓練以外で本部基地へは行かなくなった。そのままだったら誰もおまえの言葉に耳を傾けようとはしなかっただろう。そしておまえなしではアフト遠征は成功しなかったのは事実。だからメガネくんと遊真の出会いがおまえを動かすきっかけ(トリガー)となって、ボーダーは創設時の理念を取り戻す組織になったというわけだ」

 

「なんだか『風が吹けば桶屋が儲かる』的な話ですね。でもすべての人間は必ず誰かと繋がっていて、あらゆる事象もまた無関係ではいられない。そしてずっと眠っていたようなわたしが目を覚まして全力で走り出したものだから、あなたを含めて付いて来るのが大変だった…なんて言うんでしょうね?」

 

「まあな。…おまえが目覚めて4年になるが、ボーダーが新体制になってからの4年と比べると全然違う組織になっただろ? もちろん状況が違うと言えばそうなんだが、()が揃っただけでなくそれを動かして勝利に運ぶ優秀なプレイヤーがいたからこそだ。そのプレイヤーというのがおまえのことなんだが、おまえにやる気を出させたのがメガネくんたち後輩の存在だ。だからメガネくんと遊真の出会いはボーダーを変えるきっかけ(トリガー)となったが、変えたのはおまえだ。霧科ツグミという人間が近界民(ネイバー)の父親と玄界(ミデン)の女性である母親の間に生まれたことで、その瞬間に近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)の友好の架け橋となることが決まっていたのかもしれない。だって織羽さんがエウクラートンの王族の血筋だなんて本人すら知らなかったんだし、おまえ自身もボーダーに入ったのは自分の身を守るためで近界民(ネイバー)と仲良くしたいだなんて思っていなかった。それがいろいろな人間と触れ合い、いくつもの選択肢に対して正しい選択をしたからこそ行き着いた『結果』がこれだ。おまえの存在を生んだのが運命の神であったかもしれないが、おまえがこの()()()のプレイヤーとしてゲームオーバーにならず『Good End』へと導いた。そしておまえ以外の人間がプレイヤーであったらこの結果にはならなかっただろう。メガネくんがプレイヤーとなっていたら()()()()()()()()レベルアップをしてもゲームクリアできたかどうか怪しい。おまえがプレイヤーであって彼をレベルアップさせたからこそクリアできたものだと俺は思う」

 

迅はそう断言するが、ツグミは少し考えてから答えた。

 

「わたしはそうとは限らないと思います。それにあなたはわたしがプレイヤーだと言うけれど、わたしだって()のひとつであってどこかにいる神様がわたしという駒を動かしていたのかもしれませんよ。…そうですね、神様が自分の分身となるプレイヤーのキャラメイクをする時に霧科ツグミというキャラを設定し、ボーダーに入隊させて戦闘力のレベルアップをする。そして第一次侵攻やアフトによる大規模侵攻をどうクリアするのか、さらにこのゲームクリアの条件『近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)の和平』へどうやって進んで行くかを考える。わたしたちがひとりひとり一所懸命に生きているこの世界ももしかしたら神様によるRPGかもしれません。ウォーシミュレーションゲームと育成シミュレーションゲーム、そしてアドベンチャーゲームを組み合わせたマルチエンディングゲームで、そのエンディングのひとつがこの『結果』。悠一さんはこれを『Good End』と言いますけど、霧科ツグミをプレイヤーの分身としたからで、もしプレイヤーの分身を三雲修という少年で設定したら別のルートがあって、違う『結果』が『Happy End』とか『Bad End』として存在しているのかも。そう考えるとオサムくんがプレイヤーの分身であった場合は難易度が高くても別のルートでのゲームクリアがあった…と想像するとそれはそれで面白いかも?」

 

「へえ…そういう考えもあるんだな。それでメガネくんがプレイヤーの分身であった場合はどんなストーリーになるのかな?」

 

「そうですね…たぶんわたしたちが歩んできたものとはまったく違うものになったでしょう。たとえばわたしの父が近界民(ネイバー)であったようにオサムくんのお父さんも近界民(ネイバー)で、オサムくんのトリオン能力が低いのはあえて高い能力を隠すため。本当はチカちゃん以上のトリオンを持っていてそれが知られるとボーダーに利用されるから秘密にしておく。でもそうなるとこのゲームとは無関係なキャラになってしまうので、トリオン能力が低くても入隊できるようにするため未来視(サイドエフェクト)の能力を持つ先輩キャラ、つまり迅悠一と絡ませる。そしてボーダーでいろいろな経験をしているうちに覚醒してとんでもないレベルのトリガー使いとなって近界(ネイバーフッド)から襲来する近界民(ネイバー)相手に無双して、最終的にはボーダーが近界(ネイバーフッド)の支配者となるエンディングが三雲修をプレイヤーの分身とした場合の『Good End』…なんていうのはどうでしょう? どちらも三門市に平和が訪れてめでたしめでたしですが『結果』は大きく違います」

 

「なるほどな。そうなると人の数だけルートがあって、さらにそれぞれに複数のエンディングがある。そして俺たちが歩んできた道は霧科ツグミルートの『Good End』か」

 

「はい。でももしかしたら『True End』というのも別にあって、それにたどり着くには他の選択をして別ルートで進む必要があったのかもしれません。でもわたしにとってはこれが神様のゲームであろうとそうでなかろうと関係ありません。わたしは操られていたのではなく自分自身で勝ち抜いてたどり着いたという認識でいるんですから」

 

ツグミはそう言って胸を張る。

そんな彼女を横目に見ながら迅は思った。

 

(こいつは俺が想像もしないことを考えるし、誰もが怖じ気づくようなことでも立ち向かう。だからこんな面白いことを思いついて楽しそうに話すんだろうな。もし俺がプレイヤーの分身であったならどんなエンディングになったんだろう? やっぱりこいつの隣にいて笑える『Happy End』であればそれで十分だ。俺には近界(ネイバーフッド)がどうなろうと関係ない。こいつが泣かない、いつも笑顔でいられる世界になればいいんだからな)

 

 

 

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