ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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VS. case1 香取葉子の場合 2話

 

 

◆ Yoko’s monologue 3

 

アタシは華と、華の従兄の三浦雄太と、華の兄さんの友達の若村麓郎の4人で部隊(チーム)を組んだ。

もちろんアタシが隊長の「香取隊」で、この4人ならA級も夢じゃない。

なんせ天才のアタシがいるんだから、みんながこのアタシに従っていれば問題ないのよ。

そして近いうちにあの女にひと泡吹かせてやる。

…って華に言ったら「まだ早い」だって。

アタシは華に言われたように我慢していたんだけど、そのタイミングを失ってしまった。

詳しいことはわからないけど、あの女が隊務規定違反をしたとかで、その罰でポイント10000点没収、B級降格、玉狛支部へ左遷になったのだ。

その話を聞いた時、アタシは誰もいないことを幸いに踊ってしまったほど嬉しかったわ。

ざまあみろってカンジ。

でも考えてみたらあの女に逃げ道を与えてしまったようなものじゃない。

あの女はポイント没収で完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)ではなくなり、タダの狙撃手(スナイパー)という肩書きになってしまったからだ。

狙撃手(スナイパー)は戦い方が攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)と違うからという理由で個人(ソロ)ランク戦はできない。

そういうルールになっているからだけど、そんなのアタシには関係ないわよ。

そんなことであの女は狙撃手(スナイパー)の合同練習で週2回しか本部に来ないし、来た時にも「狙撃手(スナイパー)用トリガーしか持ってないから」とか言って逃げる。

最近では無視するようにもなった。

こうなれば部隊(チーム)戦でカタをつけるしかないんだけど、あの女は部隊(チーム)を作ろうともしない。

ああ、ホントにムカつく。

こうなったらアタシがA級になって、B級のあの女を見下してやるしかないわね。

 

 

 

◆ Tsugumi’s monologue 3

 

わたしが玉狛支部に転属となったことで、執念深いヨーコの追っかけはなくなって清々している。

でも本部に行くと必ずっていうくらい姿を見せてわたしの個人(ソロ)戦の申し込みをする。

今のわたしは狙撃手(スナイパー)だと言って断っても効き目がない。

なぜそこまでわたしのことを目の敵にするのかわからないが、理由はどうであってもそんなものは無視するに限る。

お互いにいい関係になって切磋琢磨すれば両得なんだけど、彼女にその意思がないからダメなのよね…

 

 

 

◆ Yoko’s monologue 4

 

今のアタシはあの女のことなんてどうでもいい。

烏丸京介さん…A級の万能手(オールラウンダー)で、防衛隊員の中ではダントツのイケメン。

いつもクールで、声を掛けるのもためらうくらいステキな男性で、アタシは彼に一目惚れ。

彼のファンは大勢いるけど、特定の彼女さえいなければまあ許せるかな。

…って考えていたのに、何でかわからないけど、烏丸さんが()()玉狛支部に転属になってしまった。

支部への異動だなんて、彼が何か不始末でもしたって言うの?

あの女みたいに隊務規定違反なんてしそうにないんだから、この人事はおかしいわよ!

これで彼と本部で会える機会がほとんどなくなってしまったし、玉狛にはあの女がいるのよ、絶対に許せない!!

そしてアタシは我慢の限界に達した。

というのも、あの女が烏丸さんと一緒に本部に来たんだから。

見せびらかすように仲良く話しているってことは、もうこれはアタシへの挑戦状よ!

 

 

 

◆ Tsugumi’s monologue 4

 

本部に来るとロクなことがない。

だからできるだけ来ないようにしていたんだけど、今日はどうしても外せない狙撃手(スナイパー)の訓練があったから渋々やって来た。

同じタイミングでキョウスケも本部に用事があったものだから、レイジさんの運転する車で一緒に来たのだが、それが事件の発端となってしまったのだ。

本部の中には熱狂的な烏丸ファン ── ファンクラブもあるらしい ── がお互い抜け駆けしないように見張っているとのウワサもある。

そのうちのひとりがヨーコで、わたしとキョウスケの間に割って入って「アンタには絶対に渡さないから!」とか言うものだから、大騒ぎとなってしまった。

わたしとキョウスケは同じ玉狛支部の仲間なんだから仲良く話をしていたところで何の問題もないはず。

それにキョウスケとはタダの仲間だと言っても、頭に血が上った恋する乙女にはその言葉は届かない。

さらに彼女はわたしのことを嫌っていて、日頃から個人(ソロ)戦での雪辱を果たしたいと虎視眈々と狙っていたからもう止まらない。

彼女の暴走を止めるには戦って勝つしかないのだ。

 

 

 

◆ The second battle

 

ツグミと葉子の個人(ソロ)ランク戦を見ようと、大勢の観客がモニターの見える場所に集まって来た。

なにしろ葉子がツグミに絡んだのがロビーであり、このふたりが烏丸京介を取り合っているのだと勘違した隊員たちが大騒ぎをし、「女の戦い」が始まるというウワサが流れたのだから。

そして無責任な連中のウワサは尾ヒレが付いて、勝った方が京介のカノジョになれるという話にまでなり、烏丸ファンクラブのメンバーが我も我もと集まって来てしまったというわけである。

 

 

「キョウスケ、あなたが事情をきちんと説明しないからこんなバカ騒ぎになっちゃったのよ! あなたが責任取りなさいよ」

 

ツグミは京介に文句を言うが、彼は相変わらずのポーカーフェイスだ。

 

「俺のせい?」

 

「俺のせい? じゃないわよ! その無駄にイケメンな顔で彼女に説明してちょうだい。わたしとあなたが無関係だって」

 

「無関係じゃないだろ。俺たちのことは支部長(ボス)も認めてくれていている」

 

「な、何言ってんの!? それになぜそんな意味ありげな顔して言うのよ! さっきのポーカーフェイスはどこいった!?」

 

「俺は真実を言っているだけだ。俺たちは支部長(ボス)に『一緒に行って来い』と言われただろ。それを無関係だなんて、酷いじゃないか…」

 

「その誤解を受けるような言い方はやめて! わざと言ってるでしょ?」

 

「この俺がおまえを困らせるようなことをするわけがないだろ? ほら、俺がここで見守っていてやるから安心して戦ってこい」

 

明らかに京介はこの状況を楽しんでいた。

京介にからかわれ、葉子からは刺すように痛い視線を送られて、さらにファンクラブの女子隊員たちにはツグミと京介の会話が痴話ゲンカのように見えるらしく、彼女たちに悔しがられたり羨ましがられたりというツグミとっては悪夢のような状態となっていた。

そしてとうとうツグミは我慢できなくなった。

 

「ああ、もういい! さっさと終わらせて、このバカ騒ぎをおしまいにするわよ! わたしは忙しいんだから!」

 

ツグミはブースへと入って行き、戦闘準備にかかった。

 

 

マップは以前と同じ「市街地A」。

しかしふたりとも戦いに臨む理由や熱意が大きく違っている。

 

[霧科ツグミ 対 香取葉子、試合、開始!]

 

前回と同じくお互いが200メートルほど離れた場所に転送されたツグミたちは行動を開始した。

葉子はバッグワームを起動し、マップを確認しながらツグミのいる児童公園へと近寄って行く。

バッグワームなどツグミの強化視覚(サイドエフェクト)の前では何の意味もなさないのだが、そのことを葉子は知らない。

 

(今日はあの時みたいにはいかないわよ。今のアタシは銃手(ガンナー)。バッグワームで射程まで近付いて、一気に拳銃(ハンドガン)通常弾(アステロイド)を撃ちまくる。でも念の為にシールドは張っておいた方がいいわね。あの女、甘く見たらひどい目に遭うから)

 

一方、ツグミは…

 

(ヨーコが攻撃手(アタッカー)から銃手(ガンナー)に転向したことくらい知ってるわよ。拳銃(ハンドガン)を使うらしいけど、彼女の弾なら特に問題なさそう…。さて、何か使えそうなものはあるかな、っと…)

 

ツグミは公園内を見回した。

この公園は東西約70メートル、南北約40メートルの長方形で、西側と北側がコンクリートの塀で、東側と南側は樹木の植え込みで周囲と隔離されている。

出入り口は南北2ヶ所。北側はやや東寄りで、南側はやや西寄りにある。

東側の植え込み沿いに遊具が配置され、敷地の南西の隅に公衆トイレの建物を見つけた。

 

(うん、これなら…)

 

ツグミは葉子が姿を現すであろう出入り口と公衆トイレの位置、そのふたつの位置関係から自分の待機する場所を決めた。

そして十数秒後、葉子は児童公園へとやって来た。

公衆トイレの横にある南側の出入り口から入ろうとしているのはツグミの想定どおりで、突入のタイミングを計っているらしく葉子はなかなか姿を見せない。

公衆トイレの後ろに隠れているのだ。

しかしツグミにはその動きは全部見えている。

彼女はレイガストを(シールド)モードで起動して、いかにも「敵はどこから来るのか?」といった感じでキョロキョロ周囲を見回す芝居をした。

ツグミの位置は南側の出入り口の真正面の北側の塀の前。

彼女が逃げようとするなら北側の出入り口を使用することになるので東側へ移動をしなければならず、逆に西側に追い詰めれば周囲はコンクリート製の塀で逃げ場がないという状況だ。

あえてこの「袋のネズミ」状態になる場所を選んだのもツグミの作戦である。

 

(公園に入ったらバッグワームを解除したタイミングでシールドを起動。そのまま走って拳銃(ハンドガン)を乱射する。東側に逃げられないようにして、公園の北西の角に追い詰めればイケる。あの女はレイガストで防御するつもりみたいだけど、反撃される前に火力で押し切ればアタシの勝ちよ!)

 

葉子のトリオン量はボーダーの基準で「6」。

一般的な銃手(ガンナー)のレベルなのだが、彼女には「自分は天才だから」という自信があり、ツグミに火力で勝てると思い込んでいる。

しかしツグミは葉子のトリオン量をはるかに上回る「16」で、レイガストの(シールド)モードは使用者のトリオン能力によって耐久力が大きく変わる。

だからツグミが(シールド)モードの状態でレイガストを使えば防御は完璧なのだ。

それを葉子は知らない。

彼女は器用であり、天性の戦闘のセンスを持っていて、()()()()に強いから挫折というものを知らないでいる。

だから努力を怠り敵を侮るという悪い癖があって、前回もそのためにツグミに惨敗しているのだが、その反省が生かされていない…というか反省すらしていなさそうだ。

 

葉子は大きく深呼吸をしてから公園に突入した。

 

「アンタにはとことんムカつくのよ!!」

 

そう言って飛び出した葉子はツグミに向けて拳銃(ハンドガン)型トリガーで通常弾(アステロイド)を撃つ。

それをツグミはレイガストの(シールド)モードで防御しながら西側へと移動。

 

(バカなヤツ。そっちに逃げたら袋のネズミよ。勝った…!)

 

葉子は自分の胸部をシールドで保護しながら拳銃(ハンドガン)型トリガーを撃ち続けるが、ツグミのレイガストを破ることはできない。

それでもツグミを北西の角に追い込んで撃ち続ければ勝てると思い込んでいるのだ。

 

ツグミは自分の罠に引っかかった葉子を見てほくそ笑んだ。

 

(わたしの勝ちね)

 

「スラスター、起動(オン)!」

 

ツグミは左手から柄を離し、スラスターで加速をつけた状態で葉子に向けてレイガストを放った。

 

「何!?」

 

レイガストを使う攻撃手(アタッカー)は非常に少ない。

だから葉子はオプショントリガーのスラスターを使えばレイガストそのものを飛ばすことで離れた距離の敵にも高い威力の攻撃ができることを知らなかった。

しかし(シールド)モードであるから攻撃力はほぼゼロで、このままでは葉子を押し返すことはできてもダメージを与えられない。

 

「ぐっ…押し返される…」

 

葉子はレイガストを止めようとするが、そのままズルズル押されて公衆トイレの外壁まで来てしまった。

 

「何なのよ!?」

 

レイガストと公衆トイレの外壁に挟まれた状態の葉子はツグミが何をしようとしているのかわからずにパニックになっていた。

スラスターはまだ生きているから、葉子は押し付けられた状態で身動きできずジタバタするだけだ。

そんな彼女にツグミは近付いて行く。

 

「これ、どかせなさいよ!」

 

わめく葉子にツグミは言った。

 

「負けを認めて緊急脱出(ベイルアウト)すれば?」

 

「そんなことできるはずないじゃないの!」

 

「でもこの状態から反撃して逆転勝ちするのは無理じゃない?」

 

「やってみなきゃわからないわよ!」

 

「う~ん、それもそうね。じゃ、外してあげるわ。…レイガスト、解除(オフ)!」

 

ツグミが素直にレイガストを解除(オフ)…するはずもなく、続けて叫んだ。

 

両攻撃(フルアタック)!」

 

レイガストを解除(オフ)することで両手が空き、通常弾(アステロイド)両攻撃(フルアタック)が可能となる。

 

両防御(フルガード)!!」

 

葉子も慌ててシールドを2枚展開するが、トリオン能力6の葉子の両防御(フルガード)ではトリオン能力16のツグミのゼロ距離両攻撃(フルアタック)に勝てるはずもない。

葉子の戦闘体は木っ端微塵になり、緊急脱出(ベイルアウト)

 

[勝者、霧科ツグミ]

 

2度目の戦いもツグミの圧勝で終わった。

 

 

屈辱的な負けを2度もしてしまった葉子はいつまで経ってもブースの中から出て来なかった。

 

(悔しい…。どうしてアタシがあんな女に勝てないのよ!?)

 

ふてくされた彼女はベッドの上でうつ伏せになり、に握りこぶしでベッドをバンバンと殴りつける。

そんなことをしても敗者が勝者になるわけでもなく、彼女は自分でも愚かしいとは思いながらも握りこぶしを振り上げずにはいられないのだ。

 

(どうせ今頃あの女は烏丸さんに「よくやったね」とか言われていい気になっているはず。アタシなんて声をかけてもらったことすらないっていうのに…。どうしてみんなあの女にばっか優しいのよ!?)

 

ツグミが大勢の人間に囲まれてチヤホヤされている姿を見たくないと、葉子はベッドの上で膝を抱えて肩を落とした。

ひとしきりベッドに八つ当たりしたものだから、少しは落ち着いたのだろう。

そしていつまでもここにいるわけにもいかないとブースを出ようとしたタイミングで、ドアをノックする音がした。

 

「葉子、そろそろ出て来なよ」

 

「華…」

 

親友の声を聞き、葉子は反射的にドアを開けた。

ドアの外には華がいるが、その背後にはツグミと京介もいる。

 

「ちっ…」

 

せっかく気持ちを落ち着かせたというのに、ツグミが京介と並んでいる姿を見てしまったものだから、憎しみの気持ちが再燃してしまった。

 

「そんなとこで何見てんのよ…? アタシの惨めな姿を嘲笑いに来たの?」

 

ふてぶてしい態度でツグミに言う葉子。

そんな彼女にツグミは訊いた。

 

「どうしてあなたはわたしのことをそんなに嫌うの? わたしはあなたに嫌われる心当たりがないんだけど」

 

ツグミのそんな疑問にさえ陽子は癪に障るようだ。

 

「アンタ、第一次近界民(ネイバー)侵攻の時、ボーダー隊員として戦ったそうじゃない」

 

「ええ、そうだけど」

 

「あの時、アタシの家は近界民(ネイバー)にぶっ壊されたのよ。華なんて家を壊されただけじゃなく家族全員死んじゃったのよ!」

 

「葉子、やめて! 今更そんなことを ──」

 

華は葉子を止めようとするが、彼女の怒りは収まらない。

 

「アンタたちがもっと頑張れば華の家族は死ななかったんじゃないの!? いいえ、華の家族だけじゃなくもっと大勢の人が死なずに済んだのよ!」

 

「……」

 

ツグミは黙って葉子の憤懣を受け止めていた。

 

「何か言ったらどうなの! それともアタシたちに申し訳なくて言葉がないって? 言葉がないなら土下座でもしなさいよ!」

 

ここぞとばかりにツグミに暴言を投げつける葉子。

ツグミは静かに口を開いた。

 

「あの戦いでご家族を亡くしたり、家を失ったっことはとてもお気の毒だと思うけど、だからといってわたしの行動に非はないから謝罪はしないわ」

 

「何ですって!?」

 

葉子が目を吊り上げる。

 

「たしかにボーダーの力不足のせいで多くの犠牲が出たのは事実。でもあの時の隊員たちは全員が自分の持つ力と技術を全部投入して戦った。手を抜いたわけじゃないし、いい加減に戦ったのでもない。だからわたしが()()()()謝罪する必要はない」

 

「家族を亡くした人に対して自分は悪くないから謝罪しないですって!? よくそんな酷いことが言えるわよね!」

 

「葉子、やめてって言ってるでしょ!」

 

華は葉子を止めようとするが、興奮状態の葉子は聞く耳を持たない。

 

「華は悔しくないの!? 大切なものを失ったことのないヤツにはこの辛さや哀しみなんてわからないんだから言ってやらなきゃ!」

 

パシッ

 

華は葉子の頬を平手打ちした。

 

「華…」

 

「わたしは霧科さんに謝ってもらいたいなんてひと言も言ってないわよ。それに自分の不幸自慢してどうするのよ? 三門市に住んでいれば誰だって多かれ少なかれ何かを失っているものよ」

 

「だけど ──」

 

「おい、ひとつ訊いていいか?」

 

それまで傍観しているだけだった京介が葉子に声をかけた。

すると彼女は態度を豹変させて京介の顔を見た。

 

「はい、いいですけど、何か?」

 

「おまえ、近界民(ネイバー)に家を壊されたって言ったけど、だったら憎いのはトリオン兵だろ。ボーダーの末端にいるツグミ(こいつ)に謝罪させて胸がすっとするっていうのおかしくね? ボーダーに責任取らせたいなら、城戸さんや忍田さんに頭下げさせるのが筋ってもんだろ?」

 

「……」

 

「じゃ、おまえは何でボーダーに入ったんだよ? おまえにとってボーダーは何なんだ? おまえから大事なものを奪った憎しみの対象? だったら入隊するわけねえよな。…とにかく何も知らねえくせにツグミ(こいつ)に暴言吐いてんじゃねえよ。…行くぞ、ツグミ」

 

京介はそう言うとツグミの手を引っ張ってロビーを出て行った。

 

 

「キョウスケ、あなたらしくないことを言ったわね?」

 

手を引っ張られながらツグミが言う。

 

「じゃ、もし俺が同じことを言われたら、おまえはどうした?」

 

逆に問われたツグミ。

もちろん答えはひとつだ。

 

「やっぱわたしも同じことを言ったわね。仲間があそこまで言われたら、ものすごく腹が立って我慢できないもの」

 

「だろ? あの時、おまえが市民を守るために死にかけたって話、レイジさんから聞いた。命懸けで戦った連中のことも知らずに自分のことばかり言うヤツ、俺は嫌いだな」

 

「だからキツく言ったのね?」

 

「ああ。だが、そもそもおまえが『わたしの行動に非はないから謝罪はしない』なんて言うから騒ぎがデカくなったんだぜ。それを収めた俺に少しは感謝してもいいんじゃないか?」

 

「はいはい。このお礼は何らかの形でするわ。例えば今日の夕食のメニューをトンカツにするとか」

 

「いいね、それ」

 

「では、今夜はトンカツに決定。…ありがとう、キョウスケ」

 

 

この後、京介が女子隊員に暴言を吐いたというウワサが流れたのだが、それくらいで彼のファンクラブの女子が離れていくはずもなく、むしろ「ヒロインの危機を救うために颯爽と現れた白馬の王子」として人気が高まったのだった。

 

 

 

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