健康診断が直前に迫った時、女子は主にアレを気にする
連休もようやく終わり、五月は中旬に入ろうとした。この時期に入ると健康診断を受けることになる。
こういう時期だとやばいんだよなあ。主にひまりがヤバイ。何故かと言うと……。
――原因は体重だ。
今日の朝、ひまりが体重計に乗ったところ、悲鳴を上げた。それが原因で朝から抱き着かれてしまったわけで、今も半泣き状態だ。
「ひまり、いつまで泣いてんだよ」
「だって~」
「ひまりちゃん、なにかあった?」
つぐみが聞いてきた。さすがにこれは俺の口からは言えない。俺が言ったらひまりが傷つくからひまりの口から言ってもらわないと……。
「もしかしてひーちゃん、お腹が……」
「言わないで!」
「結月、ひまりが半泣きになってることはアレだよね?」
「なるほどそういうことか。これは仕方ないな」
蘭はわかっているかのように聞いた。どうやら巴はわかっているみたいだな。まあこれは自業自得だ。そもそもスイーツの食べ比べなんてやったからだ。
その結果がこの有り様だ。俺から見たらひまりは太ってはいないと思うんだけどな。さて、どうフォローしようか……。
「結月、どうするの?」
「どうすると言われてもなあ」
「じゃあ、あたしがひーちゃんにカロリーを送るのやめようか?」
「いや、それやっても変わらないだろ……」
モカはこんな提案をしたが、まず無理だろ。大体、どうやって送ってるのかが気になる。
「ならドラムやらせようか?」
「今からだと無理だし、練習にならないよ」
「じゃあ、お菓子を控えるとか」
「控えたら私が死んじゃうよぉ!」
ひまりが俺から離れてつぐみの提案に対して反論をした。さすがに控えた方がいいだろ。食べ比べした結果がこれなんだから。それに、巴の提案も厳しい。今からドラムやったらベースが疎かになるからやめたほうがいいと思う。
ここまで来たら蘭はどういうアイディアを出すのか。蘭なら普通のことを言うと思うがな。ここは頼むぞ、蘭。
「じゃあさ、デスボイスを出せるようにする?」
――頼んだ俺が馬鹿でした。
蘭、お前ボーカルだからと言ってデスボイスは物凄く無理だから!ひまりにデスボイスは似合わないし、こんな可愛い幼馴染みがデスボイスなんかやったら俺が死ぬから!
「蘭、相変わらずぶっ飛んでるねー」
「蘭が壊れた……」
「あたしは壊れてないよ。ボーカル故に考えついた結論だから」
それ結論になってないし、何ドヤ顔で言ってんだこの赤メッシュ華道は。
▼▼▼▼
練習を終えて家に入り、私は部屋で寛ぐことにした。今日は結月に部屋に入っていいって言ったけど、来るかな?
そんなことを考えていたらドアからノックの音が聞こえた。結月かな?
「ひまり、入っていいか?」
「いいよ」
「お邪魔しまーす」
部屋に入って来た結月は髪を縛っていた。服装はジャージのようだ。何か結月のセンスがおかしい。というより、ダサい。
服装が違っていればもっと良かったけど、どう見ても部屋着だよね?それ……。
「結月、それダサくない?」
「え、駄目だったか?」
「おかしいよ!さすがにジャージは無いって!」
やっぱりそうか、と声がした。結月は肩を落とし、落ち込みながら縛った髪を下ろした。さすがにやめたようだ。
「隣、座っていいか?」
「いいよ、座って!」
結月はそう言って私の隣に座った。結月の髪からはマスカットの匂いがした。またシャンプー変えたのかな?結月ってやっぱり女の子っぽいなあと私は思った。
マスカットの匂いに誘われるかのように私は結月の肩に頭を乗せた。うん、いい匂いだ。この匂いは落ち着く。
「ひまり、くすぐったい」
「ごめんごめん。ねえ、結月。シャンプーまた変えた?」
「ああ、変えたよ。最近、シャンプーにハマっちゃってな。どんな物がいいかなってこの前選んでたんだ」
「その結果、マスカットにしたんだ」
その通り、と結月は言った。そうだ、さっきの昼休みのこと聞こうかな?
結月はどう思うんだろう、私はドキドキしていた。確かにあれは私の自業自得だ。スイーツの食べ比べをしよう、なんてやったからこんなことになったんだ。それにしても私って見た目どうなのかな?
「ねえ結月、私ってやっぱり太ってるかな?」
「そんなことはないと思うが……」
「そうかな?」
私は落ち込みながら言った。その時、私は撫でられているんだと感じた。慰められてるのかな?
「大丈夫だひまり。俺から見たらひまりは太ってないし、そのまんまでも充分可愛いよ」
「か、可愛いって言わないでよ!恥ずかしいんだから!」
「ごめん!なんて言ったらいいかわかんなかったから……」
私は顔を赤くして怒ったら結月は狼狽えてしまった。でも、私は嬉しかった。結月は結月なりに私を慰めたんだ。その優しさが私は嬉しかった。
ありがとう結月。私を慰めてくれてありがとう。私は心の中で感謝の言葉を贈った。
「よーし、決めた!私ダイエットするよ!」
「そうか。なら俺も協力するか」
「協力するって、結月何かできるの?」
「できるというかだな、ダイエットに最適な料理を作るとか一緒に運動とかくらいしかできないけどな」
結月は立ち上がって自分の指を絡めて腕を伸ばした。疲れてるのかな?
「そうと決まったらレシピを調べて来るか」
「もう帰っちゃうの?」
「今日は遅いからな。充分寛いだし、ひまりのために色々とやらないといけないしで忙しくなるから」
また明日、と言って結月は私の頭を撫でて部屋を出た。結月がいなくなった後、私は枕に顔を埋めた。どうしよう、ニヤけそうだ。結月が私のために動いてくれるなんて、凄く嬉しい。
「ズルいよ。あんなこと言われたら嬉しいに決まってるじゃん。結月ってズルい人だよ」
本人は気づいていないだろうけど、あんなことを言われたら嬉しくなるに決まってる。しかも無意識に笑顔で言ってるんだから質が悪い。
私も頑張ろう。私は何ができるかを調べることにした。でも、今日は眠いから明日からやろう。少しスイーツは控えようかな。
▼▼▼▼
俺は家に戻り、寝る準備をした。あの時のひまり、可愛かったな。俺はとにかくひまりのためにできることをしよう。あいつに尽くすって決めたんだ。なら、俺は俺なりにできることをするまでだ。しかし、レシピは作れないから調べてやるしかないよな。
俺は思う。ひまりは俺から見ても太ってもいないし、あのまんまでも可愛いと思うんだけど……。
もう少し言えることがあったはずだ。なんで俺は可愛いとしか言ってないんだろう。俺は後悔した。もうちょっと言葉を選んだ方がいいなと決意した。
「さて、今日は寝ようか。健康診断は再来週だったはず。まだ時間はあるが、ひまりのためだ。頑張らないと!」
俺は布団の中に入り、眠りに就いた。しかし、眠れなかった。何故なのかは俺にはわからなかった。
それから二週間の間、野菜を重視した料理を作ったり、休日は一緒にランニングをしたり、柔軟運動を手伝ったりと色々なことをした。
その結果、ひまりの体重はなんとか落とすことができた。その嬉しさのあまり、俺はひまりに抱き着かれてしまった。彼女が嬉しそうにしてるから、まあいいかとひまりの好きにしたが、一緒に寝ていた時に抱き枕にされてしまった。
抱き枕にされたのはいいが、不幸なことに俺はひまりの胸に顔を埋められてしまい、昼まで気絶していたようだ。
好きな人とはいえ、できればあまりやらないでほしいと思った。全く、死にそうになったよ。
更新遅くなってホントにごめんなさい
ラストが投げやりになりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです
感想と評価、お待ちしてます