あくまで作者個人の意見です
アフターグロウと俺はなんとか赤点を免れた。特にひまりはよく頑張ったなと思う。付きっきりでやった甲斐はあったし、蘭も本当に頑張った。だが、湊先輩と全教科同じ点だったというのは偶然だろうか、いやこんなことあるのかよとさえ思ってしまう。
――あの二人、絶対に仲いいだろ。
まあいいか。無事に夏休みに入れたんだ、それだけでも安心だ。現にこうしてひまりは相変わらず俺の隣でのんびりとしている。そして俺はというと、キルトの作業を続けていた。
「結月、本当によかったの?」
「キルトのことでか?」
「うん。アイビーだよね?テーマは……」
「ああこれにしたよ。理由は教えないけどな」
「えぇ~教えてよ!気になる~」
いや、こればっかりは教えられない。アイビーの花言葉は「永遠の愛」だ。実を言うと俺はこのキルトをひまりにプレゼントしようと考えている。告白したら渡そうかと思っているんだ。
ひまりに永遠の愛を誓おう、なんてことを思っているが、俺はおかしいかもしれない。ロマンチックどころか変態染みている。これだとあれだな、愛が重いとしか言い様がないな。
「どうせあれでしょ?結月またロマンチックなこと考えてるでしょ?」
「そんなことない。俺が毎日そんなことを考えていると思うか?」
「七夕の時にあんなことした時点でアウトだよ。言い逃れはできないよ!」
ひまりはそう言って顔を近づけてきた。ここまで近づかれると色々ヤバイ!気づいてくれ、このままだとキスしてしまうということに。初めてのキスがこんな事故だっていうのはさすがに俺としても嫌だ!
気づいてない!もう1mmくらいの距離だ。これは言った方がいいのか!?言わないと俺のファーストキスが事故で終わってしまう。゛不発のファーストキス゛はごめんだ!
「えっとあれだ。アイビーにした理由はだな……」
「理由は?」
「は、花言葉なんだよ!てかひまり、顔近い!」
「顔?」
ひまりは数秒固まった。あ、やっと気づいたな。顔も徐々に赤くなってるのがわかる。そろそろ離れてくれないと俺の心臓がもたない。
「……ご、ごめんね!」
「いや、これは俺が悪い。俺もごめん」
ひまりが離れてくれた。名残惜しいと思ってしまうが、それは胸にしまっておこう。俺は心を落ち着かせるために深呼吸をした。
「ひまり、さっきの理由今から言うけどいいか?」
「いいよ」
「理由はな、花言葉に惹かれたんだ。その花言葉はな……」
――永遠の愛なんだ。
▼▼▼▼
結月は今なんて言ったの?永遠の……愛……?それはどういう意味なんだろう。今の私にはわからなかった。でも、なんとなくわかる。結月はきっとあの日の約束を覚えてくれてるんじゃないのかって。
私はそう思った途端に涙が出てしまった。嬉しかった。結月が約束を覚えててくれたことが本当に嬉しかった。
「ちょひまりどうしたんだ急に!?なんで泣いてるんだ?」
「泣いてないよ、ゴミが目に入っただけだよ」
結月は安心させようとしたのか私を抱き締めた。今そんなことをされたら涙が止まらなくなる。永遠の愛だなんて、結月らしい。私は結月を好きになってよかったと思った。
「アイビーにした理由はもう一つあるんだ」
「もう一つ?それってなんなの?」
「今は教えられない。花言葉だけは教えるけど、本当に言えないんだ。でも覚えてて欲しい」
大丈夫だよ結月、私は忘れないよ。そんな花言葉を言われたら忘れられる訳がない。永遠の愛だなんて、あの時の約束みたいだ。
そして三十分が経った。やっと涙が止まった。どのくらい泣いてたかわからない。結月から落ち着いたかと言われ、肩に手を置かれた。
「いきなりあんな理由言ったら恥ずかしいよな?」
「そんなことないよ。むしろ嬉しかった」
「なんで嬉しいんだ?」
「それは秘密かな……」
そっか、結月はそう言って肩に置いてる手を離した。これだけは秘密にしよう。今言うわけにはいかない。言う時になったら言うんだ。
▼▼▼▼
あの日から四日経つ、その間に練習があったり、宿題をやったりと色々なことがあった。俺はそろそろあの日が近づこうとしているのを感じた。
あの日とはひまりと十年前に約束をした日だ。もうあれから十年が経つのか……。あっという間だ、とうとうここまで来たのか、もう後戻りはできない。
夏祭りは明明後日、偶然にもその夏祭りは約束した日と被っている。ここまでタイミングがいいなんて、都合がよすぎるにも程がある。
「神様は本当に酷いことをしてくれるな」
「でも、あんたはその神様に感謝しないと駄目なんじゃないの?」
「その声は……蘭か」
俺は今circleの隣の休憩所にいた。ひまりは先に帰ったとのことだ。巴とモカとつぐみはひまりと一緒にいるようだが、何を話しているのやら。
「あんた、ひまりのこと好きなんでしょ?」
「……誰から聞いた?」
「ひまりからだよ」
「そうか……」
そうだ、ひまりしかいない。この想いが知られたのであれば隠す必要はない。隠してもしょうがない。でも、あまり知られたくなかったな。
「ああそうだよ。俺は十年前からひまりのことが好きだよ」
「じゃあいつ告白するの?」
「明明後日の夏祭りかな。花火が打ち上がるところ辺りで告白するかな」
「それだと花火の音で消されそうなんじゃないの?」
告白が花火の音で消される、それはよくあることだ。でも、俺はそうなる前に想いを伝える。告白が不発に終わるなんて、それは嫌だな。
もちろん、告白の時にアイビーのキルトも渡す。あれは俺が全身全霊を込めて作った作品だ。ひまりを想って作った、こんなこと知られたら引くだろうけど、それが俺の精一杯なんだ。
「結月ってひまりのこと好きすぎるよね」
「そうか?まぁ言われてみればそうだろうな」
「それはつぐみでさえも引くと思うよ」
だろうな、俺は黄昏ながら言った。とりあえず帰ろうかな。蘭に止められるかと思ったが、どうするかを聞かれるなんて。でも俺は止められても伝えないといけない。
――約束の日じゃないと駄目なんだ。そうしないと約束を果たせないのだから……。
▼▼▼▼
私は箪笥から出した浴衣を見つめた。この浴衣は私にとってとても大事な物だ。結月が選んでくれた大切な浴衣でもある。
結月はきっと似合ってると言ってくれるはずだ。毎年言ってくれたんだ。昨日言ってたアイビーの花言葉、永遠の愛、それは私と結月を象徴するかのような言葉だった。
自分でこんなことを言うのはおかしいのかもしれない。でも、お似合いだって思えてしまうんだ。
「上手くいくよね……」
巴とモカ、つぐは応援してるって言ってくれたんだ。蘭からも「結月と付き合えるといいね、あたしはひまりの恋を応援するよ」と言ってくれた。
幼馴染みからあんなことを言われたんだ。私は感じた。結月が約束を覚えてくれてるってわかったんだ。それなら告白するしかない。明明後日の夏祭りが勝負だ。
「後には退けない。私は絶対に結月のお嫁さんになるんだ!」
私は想いを込めてあの言葉を言った。みんなの前でやっても失敗に終わってしまう、でも結月だけは違った。二人きりの時は一緒にやってくれたし何度も合わせてくれた。
「えい、えい、おー!」
――その言葉私、上原ひまりを象徴する魔法の言葉だった。
こんなロマンチックなこと書いてる私はイカれてると最近になって思いました
次で最終章です。三、四話くらいしかありませんが