指切り拳万の意味を知った瞬間、吹いてしまいました
拳万で一万回殴るっていう意味らしいです
今日は夏祭りだ。俺にとって大事な日であり人生最大の勝負となる日だ。
あれから十年経つ。今日は夏祭りだけじゃない、俺とひまりが約束をした日でもある。俺はひまりを幸せにする、そう約束した。
俺は右手の小指を見つめた。あの時小指を絡めて指切り拳万をして約束したんだった、懐かしい。
「待っててくれよひまり、あの日の約束を果たすからな」
俺はあの時ひまりにキルトの花の意味を教えた時、泣いていた。きっとひまりは約束を覚えてくれてるのかもしれない。確信とまではいかないが、嘘じゃないはずだ。
「しかし、どうするか。浴衣で行くか私服で行くか、迷うな。ここで迷うなんて、まだまだだな」
こんなこと母さんや父さんには話す訳にはいかない。私服なら何かあった時にすぐ動けるっていうメリットがある。逆に浴衣なら夏祭りそのものを楽しむことができる。
どうするか……。ここは賭けに出るか?もしひまりが浴衣で来るとしたら合わせるべきか?いや、ひまりなら浴衣で来るに決まってる。あいつが浴衣以外で夏祭りに来たところなんて一度も見たことがない。
……よし決めた!浴衣で行こう、確か中学二年の時にひまりが選んでくれた浴衣があるはずだ。あの時はお互いに選び合ってたからな。
告白するのにここまでやるなんて、本当に俺はロマンチストだ。髪フェチ、ロマンチスト、幼馴染みが好きすぎる、こんな三拍子は俺しかいない。
「ふぅ……。よし!頑張ろう!」
準備は出来た。俺はこの日のために色んな努力をした。ひまりのために全力を尽くした。俺は心の中で好きな人に想いを告げた。
――ひまり、俺はお前のことが……。
告白する前なのに、顔が赤くなってしまった。本当に上手くいくのだろうか、心配になってきた。こんな状態で大丈夫なのか俺は……。
▼▼▼▼
夕方、私は結月に選んでもらった花火の模様にディープブルーの浴衣を身に纏って結月と待ち合わせをすることにした。待ち合わせといっても結月の家の近くだけど……。
蘭達とは商店街で合流するということになっている。巴は太鼓の方もやるようだ。まだ時間はあるから大丈夫だ、なんて言ってた。なんだろう、巴なら私と結月の恋路を応援を兼ねて太鼓を叩きそうだ。いや、巴ならやりかねない。
そういえば沙綾もパンを祭りに出すって聞いてるけど、モカが食べ尽くしそうで怖い。「モカちゃんはそこまでしないよー」なんて言ってるけど大丈夫かな
「ごめんひまり、また遅く……なった……」
「あ、結月待ってたよ!」
やっと結月が来た。あれ?どうしたんだろう?私のことをジロジロと見てるけど何かあったのかな?
「なぁひまり、その浴衣って……」
「そうだよ。結月が昔選んでくれた浴衣だよ。結月も私の選んだ浴衣着てくれてるんだね」
私は微笑んで言った。結月が照れてる、久しぶりに見たな。相変わらず可愛い顔をしてる。私は結月の照れてる顔も好きだ。
「そりゃあひまりが選んでくれたんだ。着ないっていう選択肢はないさ」
結月の着ている浴衣は刺繍の模様がある白の浴衣だ。結月は髪が長い、普段は一つ縛りなのに今回はポニーテールだ。
「なんか結月気合い入ってない?」
「せっかくの夏祭りなんだ。楽しまないと損だろ?あと、ひまり浴衣似合ってるぞ。可愛いよ」
「っ!?」
ず、ずるい。そのタイミングで言うなんて卑怯だよ!もう、顔が熱いよぉ。こうなったら!
「ゆ、結月も似合ってる……。綺麗だし……カッコいいよ」
「なっ!?ひまり、お前ずるいぞそれ!」
「結月が悪い!あんなこと言うなんて反則だよ!」
結月も顔が赤くなってる。これはお返しだ、急に可愛いなんて言われたら反則だし焦ってしまう。
私はこの夏祭りで結月に告白する、みんな応援してくれてるんだ。それに、結月は約束を覚えてくれてることがわかったんだ。それなら告白する時に言わないと!
「そういえば気になったんだけど、その袋何入ってるの?」
「え、これ?これは教えられないな」
「ええ~、どうしてもダメ?」
「ごめん、どうしてもなんだ。花火が打ち上がる前辺りで教えるから」
それなら仕方ない。花火の時に教えるって結月って変わってるなぁ。
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危なかった、この袋にはアイビーの花を刺繍にしたキルトが入っている。俺が今日に向けて徹夜してまで作ったんだ。今知られたら全部台無しになる。これは告白する時に渡さないといけない。
俺とひまりは夏祭りの場所へと向かった。まだ大丈夫、混んではいないようだ。途中で蘭と合流するが、どこにいるんだ?
「ひまり、離れるなよ?」
「離れたりはしないよ!」
「でも心配だ。手繋ぐからいいか?」
俺は左手でひまりの右手を掴んだ。離すわけにはいかない、いや離すもんか。この手を離したらひまりはどこかに行ってしまう。俺が守らないといけない。彼女の側にいてあげないと駄目だ。
「あ、ありがと……」
「どういたしまして、最後までエスコートするからな」
「う、うん」
また顔が赤くなってる。ひまりってこんなに照れ屋だっただろうか、でもそういう所も可愛いからいいか。
「おーきたきたー」
「こんばんは二人とも!」
「待ってたよ結月、ひまり」
「やっと来たかぁ!待ってたぜ!」
蘭達と合流した。やっと着いたな、さて楽しむかな。
「あんた達いつまで手繋いでんの?」
「え!?こ、これはだな……」
「なんでもないよ!なんでもないからね!」
俺とひまりは手を繋ぎながら誤魔化そうとした。さすがに離せない、そのせいかひまりの手に力が入ってる。そんなに力入れなくてもいいのに……。
「どうぞどうぞお構い無くー」
「ホントアツアツだなぁお前らー」
「どうぞお幸せにね!」
おい待てつぐみ、それはおかしい!俺とひまりばまだ゙付き合ってないからな!?
「ちょっとつぐ!」
「お前ら楽しんでるだろ……」
楽しんでるのはいいが、何お前ら親指立ててんだよ。なんだ、それは頑張って来いってことか?それなら嬉しいけど、完全にあれだ。俺とひまりが両片想いなのバレバレじゃねえか!
「あたし達のことはいいから二人で楽しんできなよ」
「いいの?みんなと楽しみたかったんだけど」
「アタシ達のことはいいからさ!」
「そーそー。二人で巡ってきてねー」
「私達は後で合流するから、二人とも楽しんできてよ!」
そこまで言われたらひまりと楽しむしかないのか、俺はみんなと楽しみたかったんだけど、ここまで応援されたらしょうがないか。
「なんかごめん、みんな」
「絶対に後で合流だよ?」
俺とひまりは蘭達と別れることにした。これは調整してくるだろうな。
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私と結月は二人で祭りを巡ることにした。なんかみんなには申し訳ないけど、あそこまでされたらこうするしかない。
「ねえ結月」
「何?」
「指絡めてもいいかな?」
「い、いきなりか!?いいけど……」
「やった!ありがと!」
私は結月を離さないぞと感情を込めて指を絡めた。これで私と結月は離れない。うん、完璧だ。私は結月の顔を横から見つめた。おお、照れてる照れてる。
花火が打ち上がるまで時間はある。それまでに心の準備を整えないと!
「頑張れ、頑張るんだ私!」
「何か言ったか?」
「何でもない、ただの独り言だよ」
そうか、結月は納得してくれた。聞こえてないようだ。上手くいくか心配だけど、ここで折れたら何もかもおしまいだ。
――結月、絶対に好きって言うからね!
次でいよいよ告白です