ようやく結ばれます
蘭達と別れて何分経つんだろう。そろそろ花火が打ち上がる時間になるかもしれない。確か結月は腕時計してたかな?
「結月、今何時かわかる?」
「今か?今は……六時半だな」
もうそんな時間か、本当に時間は早い。そういえば結月はどこで花火を見るのだろう、もしかして決まってないのかな?
結月の手が暖かい。なんだろう、私の心も暖まってくる。不思議だな。
周りの人達は賑やかだけど、私のこの心は誰にも聞こえていない。私だけが持っているこの想い、それは結月が好きという想いだ。私は結月のことを十年想い続けた。
結月はどうだろう、私のことが好きなのかな?今になってこんなことを思うなんておかしい。でも、不安に思ってしまう。何でかな?
「ひまり、そろそろ花火打ち上がるからどこかで見に行かないか?」
「どこで見るの?」
「ちょうどいい所があるんだ。一緒に行こう」
そう言って結月は私を連れてその場所へと向かった。何処なんだろう、気になるけど結月に着いていくしかない。結月はこうして連れてってくれてるけど、それでもこの手は離さなかった。わかる、伝わってくる、結月の想いが伝わってくる。
――なんとなくだけど、結月の想いがわかったような気がした。
▼▼▼▼
やっと着いた。俺がひまりを連れた場所は中学一年の時一緒に花火を見た所、それは俺とひまりしか知らない穴場だ。
そこは思い出の場所、風が気持ちよくて景色がいい所だ。後ろにお寺があるけど、それでも思い入れのある場所だ。
「え、ここって……」
「俺とひまりが中学一年だった頃、一緒に見た所だ。覚えてるかな?」
俺はひまりに優しく聞いた。覚えている筈、あの時のひまりは凄く喜んでいた。俺はあの笑顔を今でも覚えてる、忘れられる筈がない。
――あの時のひまりは輝いていたんだから。
さぁ、ここからが勝負だ。ここで決着をつけないときけない。やっと……やっとここまで来たんだ。俺は心の中でひまりに謝った。
――待たせちゃってごめんなひまり。辛かったよな?
「ひまり!」
「な、なに?」
「……なんでもない」
今俺は何て言った!?なんでもない?俺はそう言ったのか?もしかして俺は怖いのか?ひまりに嫌われてるって未だに思っているのか?
落ち着け、落ち着くんだ。こんなところで怖じ気付いては駄目だ!まずは深呼吸しよう!落ち着く筈だ!
「はぁ……ふぅ……」
「どしたの?深呼吸して……」
「えっとだな、ひまりに伝えたいことがあってな」
早く言うんだ!俺の告白が花火で消される前に!そうだ、まず座らせないといけない。いつまでも立ちっぱなしはまずい。
「その前に座らない?足疲れるでしょ?」
「そ、そうだな!あとひまり、足大丈夫か?」
「足?今は大丈夫だよ」
俺とひまりはベンチに座って互いに向き合った。よかった、なら問題ない。さぁ、早く伝えよう。
「それで伝えたいことってなに?」
「今から言う、聞いてくれるか?」
「うん、いいよ」
ひまりが真剣な表情になった。緊張する、告白する時ってこんな感じなんだな。心臓が鳴ってるけど、気にしてる余裕はない。
「言うぞ」
「うん」
「俺は十年前から……いや、初めて会った時からひまりのことが好きになったんだ。こんな俺でよかったら……」
――どうか付き合って下さい!
俺とひまりの後ろで花火が打ち上がる音がした。これで想いは伝えた。頼む、届いてくれ俺の想い!
▼▼▼▼
それは衝撃的な一言だった。花火が打ち上がった、それと同時に私は驚愕した。え!?嘘……でしょ……。
結月が私のことを好きだと言った。結月は私のことを好きでいてくれた。よかった、本当によかった!
私は泣きながら結月に抱き着いた。結月、想いは届いたよ。あとは私が結月に好きだって言う番だね。
「ひ、ひまり!?」
「結月、私ずっと待ってたよ。十年間想い続けてたんだよ?」
「知ってる。待たせてごめんなひまり」
「……ホントだよ、ばかぁ。どれだけ待たせたと思ってるの……」
それでも私は嬉しかった。結月が好きだって言ってくれたのが凄く嬉しかった。だって、私は結月のことを好きでよかったって思えたから、ずっとこの日を待ってたんだから。
私は抱き締めていた手を離し、結月の顔を見つめた。綺麗な蒼い瞳から涙の滴が流れてる。結月も辛かったんだ。私に想いを伝えたい、でも恥ずかしい、嫌われてるかもしれないって思ってたのかもしれない。
――大丈夫だよ、結月。私も辛かったから。
「私も伝えたいことあるんだ」
「ひまりもか?」
「うん、私もだよ」
さぁ言おう。十年間込め続けた想いを伝えよう。私はこの日まで待ち続けた。この一言で私と結月の関係は変わってしまう。幼馴染みから恋人、それは私の願っていたことだ。
「結月、私も結月のことが好き。実は私も初めて会った時から結月のこと好きなんだ。だから……こんな……」
また泣きそうになってしまう。それでも、それでもいい!嫌われてもいいから、今泣いちゃってもいいから言わなきゃ!
「……落ち着いてひまり。ちゃんと聞いてるから、泣いちゃ駄目だ。だから、まずは落ち着こう?」
「……わかった。ちゃんと聞いてよ?」
「もちろんだよ」
結月はそう言って私の頭を撫でて包むように抱き締めた。ばか、今こんなことされたら泣くなって言われても泣いちゃうよ。こんなの逆効果だよ。
背後で花火の音が聞こえる。でも私と結月はこの二人だけの空間に夢中だった。もう、これじゃ何のために来たのかわからないじゃん。
私は結月と向き合った。まだ抱き締められてるままだけど、さっきより落ち着いてきた。よし、今なら言える!
「改めて言うね。私は結月のこと初めて会った時から好きになりました。こんな私だけど……」
――どうか……どうか、付き合って下さい!
▼▼▼▼
ひまり、その想いは届いたよ。本当にありがとう、こんなに辛い想いをしてもちゃんと伝えてくれた。やっぱりひまりは強いな。
「ひまり、本当に強いよお前は」
「私が……強い?何で?」
花火が止んでる、一旦終わりだったっけ?後でまたやるはずだ。だが、今重要なのは目の前にあることだ。
どうするか、お互いに想いを伝え合ったのはいいがどうしたらいいんだ?まずはひまりを泣き止ませるか、そうしようか。
俺はひまりの涙を指で拭った。全く、泣きすぎだよ。
「いつまで泣いてるんだよ。泣きすぎ」
「だってぇ……嬉しかったから……。やっと好きだって言えたから」
「気持ちはわかる、まぁ俺も泣きそうになってるからな。人のことは言えないか」
そう、俺も泣きそうになっている。今は涙を堪えるのに必死だけど、いつ泣くかわからない。俺がしっかりしなきゃ!
「えっと……何て言ったらいいんだ?」
「何て言ったらいいって、私に聞かないでよ!」
「ご、ごめん」
何で謝ってるんだ。いや、ここはあれだな。あれを言おう。
「ひまり、俺達恋人になったけどさ、最初に何かしたいことあるか?」
「したいこと?それは決まってるでしょ、キスしかないと思うよ」
いきなりキス!?ハードル高いなぁ。まぁやるしかないか。
俺とひまりは目を瞑り、唇を重ねた。やっと、恋人らしくなれたな。本当に長かった、十年だなんて俺はどれだけひまりを待たせたのだろうか。
▼▼▼▼
私と結月は寄り添い合って花火を見ることにした。綺麗な花火だ。結月の横顔も綺麗だった。
「ねえ聞くけどさ、結月って本当に男の子だよね?」
「まだ言ってるのか?俺は女じゃないぞ」
「本当にそう?横顔が女の子ぽかったけど……」
本当に結月は性別詐称してるんじゃないのかってレベルだ。これじゃ私は女の子同士で付き合ってるみたいだ。あまりそう思いたくはないけど、どうしてもそう思ってしまう。
「ひまりだって横顔綺麗だった」
「え!?そ、そうかな?」
「ああ充分すぎるくらいに綺麗だったよ。花火より綺麗だった」
もう結月のばかぁ!そんなこと言わないでよ!今それ言われたら恥ずかしくなっちゃうよぉ……。
私は顔が熱くなるのを感じた。もう、耳まで赤い。ああもう、結月ってキザすぎるよぉ。
「ひまり、こっち向いて」
「え?何……」
結月の方を向いた瞬間、唇を奪われた。結月って本当に私の彼氏なの!?もう、やり過ぎだよ!嬉しいけど、これはやり過ぎ!
「ひまり、どうだった?」
「も、もう……。ばか!好き!」
「俺も好きだよ!」
結月は微笑んで言った。ああ、どうしてそんな恥ずかしいことを言えるのだろう。私は結月のことを好きになってよかったんだ。十年耐え続けたけど、ようやく報われた。
――結月、これからもよろしくね!
長かった、ここまで必死に書きましたが、ようやくここまでこれました
次のエピローグで終わりです