夕焼けと月に恋心を込めて   作:ネム狼

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思い出に残せる手段はいくらでもある


思い出の保管、二人の生きた証

 俺は編み物をしながらあることを考えていた。彼女の……ひまりの誕生日プレゼントをどうするかを考えていた。自分で選ぶか、蘭達と話し合って選ぶか。どっちにしたらいいんだ。

 

 去年はマフラーを編んだが、今年はニット帽を編むことにした。セーターにしてもいいが、そうなると早めにやらないといけない。何にしようか迷って時間が掛かり、結果ニット帽になった。

 

「ひまりは今練習中だったか。プレゼントどうしたらいいんだ」

 

 静かに作業をしながら、俺は独り言を言った。ニット帽はもう少しで完成する。今日は10月21日、ひまりの誕生日は明後日だ。今日中に帽子を完成させたら次のステップだ。

 

 編み物をしていた時、机から振動音が鳴った。スマホの画面を見ると、ひまりからメールが届いていた。練習が終わったからこれから帰る、とのメッセージだった。プレゼントのこと、ひまりに聞いてみるか?

 

 

ーーひまりは欲しい物あるのか?

 

 

「とりあえず……聞くか。欲しい物ないって言われたらそれまでだし……はぁ、不安しかねぇ」

 

 俺はひまりが帰ってくるまで作業を進めた。最悪、徹夜しよう。それで完成出来れば問題はない。休憩はひまりが帰ってきてからだ。

 

 ひまりからメールが届いてから30分が経過した。チャイムが鳴った、帰ってきたか。帰ってきたというより、寄ってきたが正しいか。

 

「ただいま、疲れたよー」

「おかえりひまり、お疲れ様」

 

 彼女は背負っていたベースを下ろし、後ろから抱き着いてきた。手を止めているからいいが、作業中だったら危なかった。ひまりは帰ってきたら俺に抱き着くことが多くなった。彼女曰く、結月分補給らしい。抱き着くのはいいが、大きい何かを背中に当てているのは無意識なのか?

 

「ひまり、あまり抱き着くのは……」

「いいじゃん!甘えさせてよ!彼女にこうされるの嬉しいでしょ?」

「それはそうだが、当たってるんだよ」

「当ててるの。私は結月分補給出来るし、結月は私を堪能出来る、お互い得でしょ?」

「言い方!もう少し言い方があるだろ!」

 

 抱き着いているせいか、彼女の汗の匂いがする。練習で汗を掻いたんだろう。離したいが、もう少しこのままにさせるか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 結月分を補給し終え、私は汗を落とすためにシャワーを浴びた。浴び終えた後、結月から話があると言われた。何だろう話って……。私、何かやっちゃったかな?抱き着いて当てたのマズかったかな?私は不安になりながら、結月の部屋に入った。

 

「お、お待たせ……」

「どうした、そんなに怯えて」

「話があるって言ったからさ、怒ってるかなって思って」

「怒ってないから安心しろ。ちょっと明日のことで話があるんだ」

「明日のことで?」

 

 私は首を傾げながら彼に聞いた。怒ってないなら安心だ。でも、そうなると当てられて嬉しいってことなのかな?

 

 明日のことで話があるんだった。このことは後で結月を弄る時に使おう。私は彼の隣に座り、話を聞いた。話の内容は、私の誕生日のことだった。プレゼントが決まらなくて、どうしたらいいか分からないという。

 

「そうなんだ。ていうかさ、誕生日プレゼントって秘密にする物じゃないの?」

「今回は特例、蘭達と話し合うっていう手もあるけど、時間が時間でな。だからこうして、ひまりとどうしようか話したんだ」

「私の誕生日まで時間ないよね?」

「ああ、時間がない。ひまりは何か欲しい物ってあるか?」

 

 欲しい物か。いきなり言われても決まらないよ。正直言うと、私は欲しい物はない。欲しい物は結月と一緒に掴んだ。彼と恋人になれたこと、私はそれだけでいい。だから、欲しい物は何もない。

 

 何もないって言ったら、結月は悲しむかもしれない。最悪、泣いちゃうかもしれない。こういう時ってどうしたらいいんだろう。やっぱり、正直に言った方がいいかな?もしくは、一緒に探すとか、かな?

 

 

ーーここは正直に言おう。

 

 

「欲しい物はないかな」

「ない……か。そうなると、アレしかないか」

「アレって何?」

「えっと、一緒に探すんだ。欲しい物がないなら、その場で決めるんだよ」

 

 結月は頬を掻きながら言った。顔が赤いけど、言うの恥ずかしかったのかな?一緒に探すってことはデートしながら探すってことになるのかな?もし決まらなかったらどうするんだろう。一日で決めないといけないから、その日は忙しくなるよね。

 

「二人で見つけるんだよね?」

「まぁそうなるな。明日はデートしながら見つけよう。一日中になるけど、大丈夫か?」

「全然大丈夫!結月とデート出来るし、誕生日プレゼントも決められるし、一石二鳥だね!」

「そうだな。明日は気合入れていくぞ」

 

 彼は微笑みながら言った。明日は私にとって大事な日だ。誕生日プレゼントを結月と一緒に決められる、これは滅多にないことだ。私は彼の家を出た後、部屋に戻り、早めに眠りについた。楽しみ過ぎて眠れなくなりそうだけど、大丈夫かな……。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 次の日、ひまりの誕生日プレゼントを探すという名目でデートをした。もし決まらなかったら、という不安に駆られるが、そうならないようにしよう。蘭とは別行動にしようと言ってある。どんなプレゼントになるかは俺も知らない。

 

「これとかどうかな?」

「これか?どうだろうな、着てみるか?」

「うん、着てみるね。覗いちゃ駄目だからね?」

「覗かねえよ。ここでやったら俺が消される」

 

 ひまりの着替えをここで覗いたら社会的に抹殺される。そもそも、あいつの着替えてる所なんて何回か見せられてるんだ、それも目の前でだ。今更覗くな、なんて言われても無駄だと思うが……。

 

 ファッション系とかならどうか、というひまりの提案に乗って来てみたが、決まっていない。ニット帽は昨日徹夜して完成したから、後はバレないようにプレゼントと一緒に渡すだけだ。喜んでくれたら嬉しいな。

 

 その後、ひまりは何着か試着をした。流れか、俺まで着せ替え人形の如く試着をされた。前のデートと同じことをされたが、付き合った後もされてるから慣れてる。これに慣れるのはヤバいか。

 

 午前は試着で時間が潰れた。昼食を済ませ、今度は写真屋に向かった。ここなら何か見つけられるんじゃないかと思った。ひまりはAfterglowの皆を想っている。幼馴染として何か出来ないか、思い出は残せないか、色々なことを考えている。俺も恋人として、幼馴染として一緒に考えている。

 

 思い出を残せる物は様々だ。写真だったり、物だったり、手段は豊富だ。俺はひまりとプレゼントになるような物を探した。ここで見つけよう、彼女のためになる物を……思い出を残せる物を見つけないと。

 

「ねえ結月、これならどう?」

「どれ……成程、それならいいかもな」

「でしょ!結月は何か見つかった?」

「俺はこれかな。まとめるにはちょうどいいだろ?」

 

 ひまりが見つけた物はアルバム、俺が決めた物は写真立てだ。アルバムなら思い出を残すには最適だろう。写真立ては印象に残ったことや大事な思い出を仕舞うには凄くいいと思い、写真立てにした。

 

 これでひまりの誕生日プレゼントは決まった。あとは明日を待つだけだ。蘭達は何にしたんだろう。それは明日のお楽しみだ。付き合ってから二回目の誕生日になるんだ、感動させるくらいに喜ばせてやらないといけないな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 10月23日、私は皆に祝福された。結月は泣きながら私を祝った。まさか誕生日に泣くなんて、祝われてるのは私なのに、何で結月が泣くんだろう。私は彼の頭を撫でて泣き止ませることにした。

 

「何で結月が泣くの?」

「ごめん……ひまりの誕生日迎えられたのが……嬉しくてだな……」

「ユズ泣き虫ー」

「結月泣きすぎだろ」

「結月君、気持ちは分かるけど……泣きすぎじゃ……」

 

 皆に弄られ、彼はやめろと言った。泣き止んだけど、本当に大丈夫かな?心配だけど、これじゃあ進まないよ。私は心の中で言いながら、彼の頭を撫で続けた。

 

「ひまり、撫で過ぎだ」

「結月が泣くのが悪いんでしょ?」

「それ言われたら言い返せねえじゃん」

「結月は可愛いなぁ」

「可愛い言うな」

 

 そんな甘いやり取りを終えた後、蘭からプレゼントを貰った。プレゼントの中身はカメラだった。待って、何この偶然……。

 

 結月と私が選んだ物はアルバムと写真立てで、皆はカメラを選んだ。まさか重なるなんて、これって奇跡だよね?こんな奇跡があるなんて、私まで泣きそうになる。

 

「ひまり、渡したいものがあるんだけど、いいか?」

「渡したい物?」

「まずは一緒に選んだからアレだけど、写真立てとアルバム。もう一つはこれだ」

「これって……ニット帽?」

「そう、俺が編んだんだ。誕生日おめでとうひまり」

 

 彼から写真立てとアルバム、ニット帽を渡された。また編んでくれたんだ。去年はマフラーで、今年は帽子にしたんだ。ありがとう結月、嬉しいよ。

 

「凄い、こんなことあるんだね……」

「これは予想外過ぎたな。蘭、狙ってないよな?」

「いや狙ってはないよ。皆でこれなら思い出に残せるって思って選んだんだ」

 

 狙ってないにしてもこれは奇跡だ。結月曰く、蘭とは別々で決めると打ち合わせたという。相談もしてないのに、息が合ってるように見える。これも幼馴染だから為せることなのかな?

 

 私は皆と写真を撮ることにした。最初の写真は私と結月、Afterglowの皆だ。本当は結月と一緒に撮る写真を最初にしたいけど、幼馴染との思い出が大事だ。恋人と撮る写真は後で撮ろう。皆とは長くいる、皆との思い出を大切にしたい。私はそう思い、皆と撮ることにしたんだ。

 

「ひまり、こっち向いて」

「何……ん!?」

 

 彼の方を向いた瞬間、私は唇を奪われた。皆も結月の行動に驚愕した。待って、皆の前で何をしてるの!?お祝いのキスは出来れば二人きりの時でやってほしいんだけど、どうしたの!?

 

「酷いよ結月……」

「ごめん、待てなかった」

「待てなかったって、我慢してよ」

「ひーちゃん、ユズ―今の撮りたいからもう一度キスしてー」

「やめろ撮るな!」

「モカ、それだけはやめて!」

 

 私と結月は同時に言った。キスしてるところ撮るのはヤバいって!そんなことされたら恥ずかしくてキス出来なくなっちゃう、結月とキス出来なくなるのは嫌だよ!

 

 

ーー結月、蘭、モカ、巴、つぐ、本当にありがとう。皆で思い出を作っていこう。

 

 

ーーそして結月と忘れられない思い出を作ろう。私と結月のこれからに幸せが訪れますように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少女よ、思い出を作っていくんだ
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