インフィニット・ストラトス 零ユートピア   作:ぬっく~

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第1話

「あ……あ、あああ、ああああああああああああああああ――――ッ!」

 

――慟哭が、世界を支配していた。

眼からは滂沱と涙が溢れ、喉から悲鳴とも絶叫とも取れぬ声が絶え間なく溢れる。

しかしそんなものは、彼女の途方もない悲しみの一端さえも示しきれていなかった。

今この場にいるのは、彼女と――その前に横たわった少年のみである。

彼女の手を取って逃げようとした少年が凶弾に倒れた瞬間、彼女は怒りと悲しみと混乱に意識を支配され、無差別に辺りに力を撒き散らして周囲を破壊し、その場を逃れていたのだ。

少年の身体には、傷一つない。当然だ。彼女が力を以て傷を塞いだのだから。

けれど――少年は目覚めなかった。

確かに彼女の力があれば、傷ついた身体を治すことは可能だ。

しかし一度失われてしまった命を取り戻すことだけは、出来なかったのである。

 

「なん……で……どうして……ッ」

 

彼女は――泣いた。

それこそ、どのくらいの時間が経ったかも分からないくらいに、泣いて、泣いて、泣き尽くした。

だが、それでも涙は止まらない。

彼女は噛み締めた唇から血を滲ませながら、ガリガリと頭を、肌を掻き毟った。

思考を回転させる。この絶望を打破する手段がないかを考え抜いた。

しかし、考えても考えても、答えは出てこなかった。

 

「…………」

 

少年の笑顔をもう一度見るためには。

そして、少年と少しでも長くともにいるためには、一体、何をすればいいのか。

彼女は考えた。

ひたすらに――考えた。

 

「…………ぁ…………」

 

――どれくらい、そうしていただろう。

いつの間にかカサカサになってしまっていた唇から、小さな小さな声が漏れた。

 

「そう……か……」

 

彼女はよろよろと身体を起こすと、静かに眠る少年の顔を覗き込んだ。

 

「――()()()()()……いいんだ」

 

そしてそう呟いて、少年の頬を撫でる。

そう。

それが、長い長い思考の果てに、彼女が至った答えであった。

――彼女は、ぺろりと唇を舐めて湿らせると、ゆっくりと、少年の顔に自分の顔を近づけていった。

そして、その唇に、自分の唇を重ねる。

少年の唇はまだ柔らかったけれど、もう、体温は失われていた。

 

「…………」

 

彼女は集中するかのように目を伏せた。

自分を取り巻く世界、それを、頭の中で変質させるような感覚。

すると、少年の身体が淡い光の粒と化し――彼女の身体に、吸い込まれていった。

 

「…………んっ…………」

 

少年の身体を完全に吸収し、彼女は小さな吐息とともに身を起こした。

そして、優しく自分の腹部を撫でる。

 

「――私が、もう一度産んであげる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

一度死んだ少年が生き返ることはない。

ならば――自分の胎を使って、少年をそっくりそのまま作り直せばいい。

否、そっくりそのまま、というのは語弊があろうか。

彼女の胎内で身体を再構成する過程で、少年に彼女の力を分け与える。

少年は、少年としての身体を持ったまま、力を得ることになるのだ。

嗚呼――だが、それだけでは駄目だ。

人の身体は余りにも脆い。一度に全てを与えては、きっと耐え切れず自壊してしまうだろう。

少しずつ、少しずつ。

幾つもの因子に分けて、力を少年に与えねばならない。

だから、最初に用意するのは一つだけでいい。

――『瞬時に回復する力』。

 

 

いつか、いつの日か、少年が産まれ、育ち、安定した身体を手に入れたときに。

一つずつそれを手に入れられるように、渡す。

彼女はそれを、側で見守っていればいい。

そして、少年が全ての力を手に入れたそのとき――

少年は、何者にも害されぬ力を持ち、未来永劫にも近い命を持った、彼女の、永遠の恋人となるだろう。

 

「――もう、絶対に離さない。もう、絶対間違わない」

 

彼女は、お腹を撫でながら呟いた。

 

「だから……待っててね。――()()

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