インフィニット・ストラトス 零ユートピア   作:ぬっく~

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第3話

「うーむ」

放課後、一夏は机の上でぐったりとうなだれていた。

 

(ISのこと何も知らないから、とりあえず勉強しようと思ったが。意味のわからん専用用語ばっかりだな。誰かに教えてもらわないとどうにもなりそうにないか……)

 

とにかく専門用語の羅列なのだ。辞書でもなければやっていけない。だがISの辞書など存在しないので、つまり一夏は今日一日殆ど全く何もやっていけなかった。

 

「よかった。織斑くん、まだ教室にいたんですね」

 

「あ、山田先生」

 

呼ばれて顔を上げると、副担任の山田先生が書類を片手に立っていた。

 

「えっとですね。寮の部屋が決まりました」

 

「え?」

 

そう言って部屋番号の書かれた紙とキーをよこす山田先生。

そう、ここIS学園は全寮制なのだ。生徒は全て寮で生活を送ることが義務付けられている。これは将来有望なIS操縦者たちを保護するという目的もあるらしい。

 

「確か一週間は自宅から通学するって聞いてましたけど」

 

「事情が事情なので無理矢理ねじ込んだそうですよ」

 

「でも荷物とかあるんで一度家に帰らないと……」

 

「あっ、それなら」

 

「それなら私が手配してやった」

 

ああ、この声、絶対に千冬姉だよ。

 

「着替えと携帯の充電器があれば十分だろう。ありがたく思え」

 

「はぁ……どうもありがとうございます」

 

すげぇ大雑把。

 

 

 

 

 

 

「えーっと、0号室……0号室……」

 

一夏は部屋番号を確認して、ドアに鍵を差し込む。

 

「おお、さすが国立というか。そこいらのビジネスホテルよりよっぽどいい部屋だな」

 

部屋に入ると、まず目に入ったのは大きめのベッド。それが二つ並んでいる。そこいらのビジネスホテルより遥かにいい代物なのは間違いない。

 

「ふー、ベッドもいいもん使ってやがんなあ……。しっかし疲れた。これからどうしたもんかね」

 

荷物をとりあえず床にやって、一夏は早速ベッドに飛び込む。

ベッドが余りにも気持ち良かったのか一夏は睡魔に襲われ、眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

――久しぶり。

 

頭の中に、どこかで聞いたことのある声が響く。

 

――やっと、会えたね、×××。

 

懐かしむように、慈しむように。

 

――嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って。

 

一体誰だ、と問いかけるも、答えはない。

 

――もう、絶対に離さない。もう、絶対間違わない。だから、

 

不思議な声はそこで、途切れた。

 

 

 

 

 

 

「~♪ ~~♪ ♪……」

 

耳に優しい鼻歌を聴きながら、一夏は次第に目覚める。

 

(う……?)

 

刹那、目に入る光に顔をしかめる。

そうすると、一夏の目覚めに気付いたその人は、光を遮るように一夏の前に顔を寄せてきた。

 

「目覚めた?」

 

妙に眠たげな顔をした少女は、その顔に違わぬぼうっとした声でそう言った。

 

「どち……らさま……ですか?」

 

「……ん、ああ」

 

少女はぼうっとした様子のまま身体を起こすと、垂れていた前髪を鬱陶しげに搔き上げた。

 

「同室になった草薙(くさなぎ)零香(れいか)。君が私のベッドで寝ていたから」

 

「そうですか……」

 

まだ眠りか覚めきらない、ぼんやりとした意識で返事をする。

 

「ていうかっ!」

 

ふと体勢に気付いた一夏はがばりと起きる。

妙に柔らかくて心地のいい、しかもいい匂いのする枕だと思ったら!

 

「な、な、何してるんですか!?」

 

「ひざまくら」

 

ぐあ。

その通りだが、その通りなんだけど。

そう思って零香から離れようとした瞬間、素早く両手が一夏の肩を下ろす。

 

「のわっ!?」

 

体勢を崩した一夏は再びふかふか膝枕へと。

 

「まだ、寝てていいよ」

 

「いやいや。それは不味いだろ!」

 

と、上体を起こす一夏。

 

「……ん」

 

もの足りなさそうに零香は一夏のことを見つめる。

いやいや、どうしてそんな顔をするのですか。

一夏は空いているもう一つのベット再び入る。

今日は色々なことが起こり過ぎた。肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていたのか、一夏は布団の中ですぐに眠りに落ちていった。

それからしばらく零香は一夏を見つめて、ひどく優しい表情を浮かべる。そして、黒いクリスタルを取り出すと。

 

「おやすみ、一夏……」

 

一夏の身体へと吸い込まれていった。




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