「そういやさあ……」
「なんだ?」
味噌汁に口を付けながら返事する箒。一夏も焼き鯖の身をほぐしながら続ける。
「ISのこと教えてくれないか? このままじゃ来週の勝負何も出来ずに負けそうだ」
「くだらない挑発に乗るからだ、馬鹿め」
「そこをなんとか頼む!!」
「…………」
「……無視かよ」
「ねえ。キミって噂のコでしょ?」
いきなり、隣から女子に話しかけられる。見ると、三年生のようだった。
「はあ……たぶん」
「ちょっと失礼
一夏が返事をすると、先輩は実に自然な動きで隣の席にかけた。組んだ腕をテーブルに乗せ、若干傾けた顔を一夏に向けてくる。
「代表候補生のコと勝負するって聞いたけど、ホント?」
「はい、そうですけど?」
「君さ……ISの稼働時間はどのくらい?」
「――20分くらい?」
「稼働時間に比例して上達するのよ? 絶対無理ね」
具体的に何時間以上から凄いのかわからない。しかし、このままではセシリアに敗北するのは明らかなようだ。
「私が教えてあげよっか、ISのコト」
「はい、ぜ――」
是非に、言おうとした言葉は、横槍に遮られた。
「それなら私が教えますので結構です」
「……え?」
食事を続けながら、いきなり箒がそんなことを言い出す。
「あなたも一年でしょ? 私のほうが――」
「私は、篠ノ之束の妹ですから」
言いたくなさそうに、それでもこれだけは譲れないとばかりに箒が言う。
「篠ノ之って……ええっ!!」
「…………」
先輩はここぞばかりに驚いた。
「そ、そう。それなら仕方ないわね」
「あ、なんかスイマセン」
その名前を出しただけで大抵の人間はたじろぐ。事実、親切な先輩は軽く引いた感じで行ってしまった。
「…………」
「……なんだ」
「なんだって……いや、教えてくれるのか?」
「そう言っている」
最初からそう言ってくれればいいのに。
ともあれ、これでISのことを教えてくれる人間を確保した。
「今日の放課後剣道場に来い。一度、腕が鈍ってないか見てやる」
◇
放課後、一夏は箒に言われるまま剣道場に向かおうと、廊下を歩いていた時だった。
「ん?」
廊下の角で手招きする手が目に留まる。
「なんだ?」
一夏は手招きする手のある方向を覗き込むと、
「うおわっ!!」
手を掴まれ、引っ張られる。
「零香さん!?」
「こっち」
手招きしていたのは、同室の草薙零香だった。
一夏は零香に引っ張られるまま、ある所に連れてかれる。
「ここで、待ってて」
一夏が連れてこられたのは、IS学園でISを唯一使用できる施設であるアリーナだった。
零香は持っていた二枚のカードをスキャンさせ、二機のISを用意する。
「ん」
「あの……零香さん? これは、どう言うことなんだ?」
一夏はあまりの出来事に理解できなかった。
箒の約束で剣道場に向かう途中で、無理矢理アリーナに連れてこられて、そんで目の前にはISがある。
「一夏に今必要なのは、実戦経験」
「いや、それもそうだけど……」
「知りたいことは、私が全部教えてあげる」
そう言って、零香は用意した二機のうちの一つであるラファール・リヴァイヴに乗り込む。
「ああ、わかりましたよ!!」
一夏は零香に言われるまま、打鉄に乗り込んだ。
そして、アリーナ内に降り立つと、零香に支えながら移動させられる。
「これが
零香はISの基本知識を実演しなが説明する。
時には手を放して、一夏自身の力だけでISを操縦させ、ある程度出来ると零香は次の説明にはいる。そうして、アリーナの使用時間ギリギリまで使い一夏にISを操縦させた。
「これが……IS」
一夏は打鉄から降りると、その実感を思い出す。
まだ、数回しか乗ったことのなかった一夏がここまで長時間乗ったのは初めてであった。
なんとも言えない感覚に、気分が上がっている。
「続きは、部屋で」
「お、おう」
零香は借りたISを返却し、一夏の袖を掴ると寮まで決して離さなかった。
部屋に入ると、一夏がこの前授業でやった所を零香が一つ一つ丁寧に教えていく。
「シールドバリアー。操縦者を守るためにISの周囲に張り巡らされている不可視のシールド。攻撃を受けるたびにシールドエネルギーを消耗し、シールドバリアーを突破するほどの攻撃力があれば操縦者本人にダメージを与えることができる。モンドグロッソなどの国際試合や通常の模擬戦ではこのエネルギーがゼロになるか、搭乗者が意識を失うと負けとなる」
「ふむふむ」
一夏は零香の説明をノートにまとめ、わからないことがあるとその説明を求める。
零香はそんな質問にもきちんと答えた。
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