古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第1008話

 添い寝の猛攻を凌いだと思ったが、クリスが向こう側に回ったら寝室に籠城など出来る訳が無い。結局押し切られるままに添い寝をしてしまった。しかも女性三人との添い寝……

 

 僕の第三の謎ギフトの添い寝効果。僕は女性三人と同衾すると色々なバフを受ける事が出来る。二人でも四人以上でも駄目で三人と添い寝した時に、翌朝起きると自動でバフが掛かる。

 

 何度か検証を繰り返したので分かっている事は、同衾する女性の組み合わせにより効果が変わるという最低の発動条件だ。最近は女性三人との添い寝はしていなかったので油断した。

 

 

 

 僕はそのバフ効果を『魔香の効果』と仮称して、封印していたんだ。何故なら良い効果だけではなかったから。

 

 

 

 イルメラ+ウィンディア+アーシャの魔香の効果は、全知全能感と多幸感だった。

 

 イルメラ+ウィンディア+エレさんの魔香の効果は、冷静沈着と寡黙だった。

 

 では、ザスキア公爵+リゼル+クリスの魔香の効果は……チャレンジ精神と好奇心旺盛だと思う。

 

 

 

 二つの効果が合わさってプラスともマイナスとも言えない効果なので有効性は低いと感じていたが、今回のもプラスっぽい感じの効果だけど二つ合わさると駄目っぽい。

 

 いや、これ駄目だろ。どんな事にも挑戦したい気持ちと、色んな事を知りたい気持ちが合わさると相乗効果で心の中で酷い事になっている。

 

 これ、我慢が利かずに誰かに止められても構わずに行動しちゃうやつだ。好奇心の方向性を間違えると、どんな最悪の結果が待っていても分かっていてもヤッちゃうやつだ。

 

 

 

「ヤバい。これヤバい。何とか問題の少ない事に興味を持たないと危険だ」

 

 

 

 比較的高級品で相応の広さの有るベッドに四人で寝ていれば狭いので密着してしまう。女性の神秘に好奇心が刺激されれば、僕は明日にも本妻と側室と愛人が出来る。

 

 爵位の問題で本妻はザスキア公爵、側室は既に僕に嫁ぐ事が既成事実化しているリゼル。平民階級のクリスは側室にはなれないから愛人枠となるだろう。

 

 それは駄目だ。当初の計画と違うし、僕の本妻はジゼル嬢と決めている。これは、イルメラも納得してくれている事だから決定事項なのだ。

 

 

 

 故に好奇心の方向性を強引に決める。自分の知らない事で興味の高い事と難易度の高い事を両方満たす事じゃないと、バフで盛りに盛られた心は動かない。

 

 

 

「よし、精霊魔法を極めよう。バレる危険性は高いが、だからこそ行動する事に意味が有る!筈だ」

 

 

 

 密着している女性陣を起こさない様に上半身を起こす。クリスが直ぐに気付いて目覚めたみたいだが、隠している水魔法で安らかな眠りの魔法を掛ける。

 

 一瞬だけ驚いたクリスが直ぐにレジストしようとしたが、僕の安眠魔法は強力だよ。直ぐに、瞼を閉じて安らかな寝息をたて始めた。序にザスキア公爵とリゼルにも安眠魔法を掛ける。

 

 深い眠りは多少の事では覚醒しないので、抱きかかえられていた両手をそっと抜いてベッドから抜け出し窓際に移動。カーテンを開けて外をみれば未だ暗い、日の出までに数時間の余裕が有るだろう。

 

 

 

 窓を開けて窓枠に足を掛ける。アインが音も無く後ろに控えていたが、お辞儀をしたので飛び出した後に窓を閉めてくれるのだろう。良く出来た娘だよ。僕のゴーレムクィーンはさ。

 

 

 

「あはははははぁ!僕は人間として初めて精霊魔法を極めるぞぉー!人間を止めてやるぅ!」

 

 

 

 気分が高揚しテンションが高めになる。好奇心が刺激され、人類初という精霊魔法の行使の難易度にチャレンジ精神が湧き上がる。女体の神秘などよりも魔法の深淵の理解の方が建設的だよ。

 

 

 

「とぅ!」

 

 

 

 夜の街に飛び出す。因みに寝室は二階なので、精霊魔法で水の飛魚(ひぎょ)を呼び出し足場に乗せて貰う。この子達は水の精霊だが羽の生えた魚の形をしているので乗って飛べる。

 

 大きさの関係で左右の足に一匹ずつ乗せて貰うのでバランスが難しい。身体を前屈みにしてバランスを取りながら前に進む様に思念を送れば、思った通りに進んでくれる。

 

 城壁を飛び越えて荒野を進むと、眼下に見える景色が楽しい。黒縄(こくじょう)に身体を絡めて疑似的に空を飛んだ事は有るけれど、水の飛魚の飛行とは違う。

 

 

 

 馬の全力疾走より少し遅い速度だが両足でバランスを取るので難しく、体感速度は結構早い。細かい制御も出来ず真っ直ぐ飛ぶ事に集中、方向変換は曲がりたい方向に身体を傾けると緩やかに曲がる。

 

 高度は上半身の上げ下げで行える。慣れるとソコソコ思い通りに飛ぶ事が出来るけど、あくまでも移動手段であり戦闘の為の機動は無理かな。進路が予想し易く弓矢で当てる事は難しくない。

 

 まぁ魔法障壁が張れるから問題は無いかもしれないが魔法障壁は衝撃は防げないので、爆発系の魔法が当たったらバランスを崩して墜落するだろう。

 

 

 

 まぁ精霊を攻撃に使用しないから関係無い。あくまでも移動手段としての運用で良い。初めて騎乗した時の事を思い出す。円を描く起動でグルグルと同じ所を旋回する。うん、大分慣れた。

 

 

 

「あははははっ!たのしぃー!」

 

 

 

 何故かハイテンションなのだが、これは知的興奮ってやつですね。何人かの兵士が指を指して大声で騒いでいるが、僕とは認識していないみたいだ。深夜に大声で笑いながら空を飛べば、普通に警戒対象だろう。

 

 その危険性と厄介事は心の隅に置いておいて、今は精霊魔法の可能性について実地検証する事が急務なのだ。人類初の夜間飛行は経験出来たので、次は新しい仲間である『風の空鼬(からいたち)』の実力の確認だ。

 

 僕の精霊魔法の適正は水と風らしい。属性魔法は水と土なので、水は被るが風と土は被らない。まぁ精霊魔法は精霊と心を通わせる事で使用可能になるそうなので、何時か残りの精霊とも心を交わしたいな。

 

 

 

 まだ出会えない『火の熱蛇(ねつへび)』と『土の亀岩(きがん)』の精霊に出会える事が楽しみだな。

 

 

 

 フルフの街から体感では1km程離れただろうか?ここなら人目を気にせず精霊魔法を使う事が出来る。精霊魔法は精霊達との対話で成り立つ、要は精霊にお願いをして聞いて貰う。

 

 バイカルリーズは精霊に命令したが、本来はお願いする事で力を借りられるし、より多くの力を借りる事が出来る。下級精霊とか上級精霊とか関係ない。要は心の通わせ方次第だと思う。

 

 精霊の存在自体は知っていたが、いざ自分で協力を仰げるとなると全く高揚感が違う。ゴーレム道の追求も未だ不完全なのに、新しい深淵を望む事が増えるとは第二の人生は幸せに満ちているな。

 

 

 

「飛魚達よ。僕に精霊魔法の可能性を教えてくれ!」

 

 

 

 その夜は攻撃以外の多様な精霊魔法を試してみた。意外と精霊魔法って汎用性が有るんだなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 二時間程、精霊魔法について研究を重ねたので『魔香の効果』は切れたみたいだ。冷静になると結構駄目な行動を平気で行っていた事に悩む。このギフト?って使い辛いというか使い勝手が悪い。

 

 効果は有った。最後の方は飛魚が数えきれない程集まり、空鼬は三十匹程が集まり力を貸してくれた。後で、レティシア達に報告しておこう。勝手に精霊魔法を使ってしまったが、自主鍛錬という事でお願いします。

 

 空を飛んだ事については目撃者も居るので隠しようがないが、信用性も低いので見間違いだと有耶無耶にすれば辺境の出来事だし何とかなるだろう。何とかなるかな?

 

 

 

 過去に黒縄を使い疑似飛行をした事が有るから、その話が混ざった事にすれば何とかなるかも知れない。ザスキア公爵に相談する為には、精霊魔法の件も教える事になるから駄目だろうか?

 

 流石に荒唐無稽な出来事を一般的なレベルまで落として話を広める事になるので、相応の力を持った諜報に噂話として広める必要が有る。最悪、権力を使って緘口令を敷く?

 

 いや、どれもこれも問題しかない様な気がする。全く僕の新しいギフト?って神様の恩恵じゃなくて、罰なんじゃないだろうか?そう思いながら人目に付かない様に屋敷に戻った。

 

 

 

 途中、フルフの街の中は少しだけ警戒が強化されていて、巡回の正規兵達が「外を巡回していた連中が夜空に怪しい影を見たと騒いでいる」と話していた。

 

 感じとしては見間違いだろうと笑っていたが、実際に見た当事者との温度差だろう。確かに今夜は雲も少なく月明りでも周囲を見渡せる位の明るさは有る。

 

 逆に月明り程度の明るさしかないので、大型鳥類か何かと見間違えたのだと言う事も出来るだろう。流石に僕と不審者を結び付ける事も無いだろうと少し安心した。

 

 

 

 これが目撃者の言葉を鵜吞みにして夜間飛行する不審者がフルフの街を攻めて来たとかで厳戒態勢が敷かれていたら大事だった。まぁそれを指示出来るのは、僕と両公爵達だけなんだけどね。

 

 僕は当事者だけど不在、ザスキア公爵は眠りの魔法によって安眠中。バニシード公爵は荒唐無稽な与太話として信じないだろう。だから大丈夫、何とかなる。

 

 黒縄を使い建物の屋根から屋根を伝い、時には壁をよじ登り見付からないように街中を移動し自分の与えられた屋敷に戻る。無断侵入だが、僕を捕らえられる者は居ない。深夜の徘徊は少しだけ楽しいのは秘密だ。

 

 

 

 逆に考えれば、同等の技量があれば厳戒態勢の此処に侵入出来てしまうって事かぁ……それはそれで問題有りだよな。まぁ僕やクリスと同等の者など辺境なんかに居ないと思うけどさ。

 

 

 

「ただいま帰りました」

 

 

 

 行きは二階の窓から飛び出したが、帰りは玄関扉の前で待っていた、アインに声を掛けて中に入る。ゴーレムクィーンは自律行動型ゴーレム。制御ラインは繋がっていないが、僕の存在を感知できる。

 

 故に出迎えも出来る。そうじゃなければ扉をノックして開けて貰うか、錬金魔法で壁に穴を開けて再度塞ぐ手間が増える所だったよ。自分で手間暇掛けて強化した屋敷の一部でも自分で穴を開けるのは嫌だから良かった。

 

 しんと静まり返った屋敷の薄暗い廊下をアインに先導されて歩く。案内された先は……アレ?此処って僕の寝室じゃなくて客間だよね。扉を開けて中に入る様に促されたけど、室内の反応ってさ。

 

 

 

「アイン?何故、ザスキア公爵達を寝かせた客間に通すんだ?同衾はしないし、彼女達は眠りの魔法で眠っているだろ?」

 

 

 

 寝ている?あれ寝ている筈の女性陣がユラユラと立ち上がって近づいてくる。後ろに下がれば、固い金属に当たった感触。これってアインだよね?僕の愛娘のアインが裏切ったの?

 

 急いで振り返ると、無表情の筈のアインのイルメラの顔を模したマスクに影が差し不思議な表情に見える。アインの両手が僕の両肩を掴み、身体を持ち上げてクルリと反転して廊下に出された?

 

 え?廊下に出されたの?後ろ手で力一杯扉を閉めると何時の間にか、ツヴァイが扉と床を貫通する様にロングソードを突き刺して開閉不能にした。おぃおぃ屋敷を壊すなよ。

 

 

 

 内側から扉を叩く音が聞こえるけど、扉はロングソードで縫い付けられているので女性の力ではビクともしないだろう。ワンチャン、クリスが扉を破壊するかだけど固定化の魔法を掛けてあるから固い。

 

 その固い扉にロングソードを貫通させた、ツヴァイの技量とパワーが凄い。自画自賛だけど、僕のゴーレムクィーンは凄いんだ。そのままお姫様抱っこをされたけど、何処に連れて行かれるのだろうか?

 

 隣の客間に通されてそのままベッドに寝かされたけど?左右にアインとツヴァイが添い寝してくれたけど、もしかして慰めてくれているのだろうか?ゴーレムクィーンと添い寝?それはそれで……

 

 

 

 翌朝、気持ち良い寝覚めの後で食堂に向かえば、女性陣から白い目で見られた。どうやら僕はゴーレムと同衾する変態らしい。だが深夜の精霊魔法乱発の件は気付かれていないみたいで安心した。

 

 

 

「ええ、自分の自慢の子供達と同衾しただけですが何か?」

 

 

 

 何とも微妙な顔をされたが、ドタバタの所為で年頃の女性を安楽死させた罪悪感が薄れたみたいだ。謎だったのが、眠りの魔法を掛けたザスキア公爵達が途中で起きた事だけど理由は簡単。

 

 僕が防御用にと魔法をレジストする腕輪を送ったので、その効果で眠りの魔法の効果が薄かったんだ。アインは僕の為に人肌で温かく寝て貰おうと客間に連れて行ったが、彼女達が起きている事に驚いた。

 

 覚醒した状態で同衾させる事の危険性を知っていたのだろう。でも魔法で眠っている女性と同衾させる事も、人肌を感じるという意味は分かるが良い事じゃないよ。

 

 

 

 危険回避と癒しの為に、ツヴァイと二人で添い寝をしてくれたのが真相だった。僕のゴーレムクィーンの成長の方向性が未だに謎なのだが、全く悪い気持にはならなかった。

 

 

 

 うん、僕は幸せ者だな……

 

 

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