古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第1029話

 フルフの街に、クロレス殿とルーツィア殿の三人で向かっている。他のエルフの方々は、愚か者共の残党狩りの為に未だに森の中を捜索している。血眼になって必死に探している。

 

 恐ろしい事にエルフ族の探索網をすり抜けた連中が居た事が、彼等のプライドを相当傷付けたらしくレティシア達も強制的に残党捜索に参加させられている。まさかの捜索隊に強制参加だった。

 

 滅ぼすと決めた連中に一時とは言え出し抜かれた事がエルフ族の上層部どころか全体的に駄目だったらしく、増援を呼び寄せてまで絶対に一人残らず探しだすぜって感じでさ。

 

 

 

 あんな顔をした、レティシア達は初めて見た。殺意と嫌悪感が溢れ出していて、正直少し怖かった。

 

 

 

「コウ川の改良ですが、最初は森の住人エルフ族として植物を使った浄化を考えています」

 

 

 

 コウ川に沿って馬ゴーレムで進んでいる時に、クロレス殿が簡単な説明をしてくれた。茶色く濁った川の水をどうやって綺麗にするのか?川の汚れの原因ですが、パッと見だと生活排水の汚れが原因の一つらしいです。

 

 森の木を切り倒し地表の土が川に流れ込んだ事も大きな原因だが、それは国土が森に浸食されたという事で問題は解決した。力技で解決してしまった。

 

 クロレス殿が探査魔法で水質を調べた時に、自然界には無い汚れが混入していたそうです。具体的には『チッソ』や『リン』が過剰に混入しているので、水辺に葦(あし)などの抽水植物(ちゅうすいしょくぶつ)を植えて浄化させる。元々チッソやリンは植物の育成に必要な栄養素なので、過剰分の浄化を行う。

 

 葦以外の水の中の汚れの成分を栄養素として成長する植物も一緒に植えたり、セリやクウシンサイなどの食用の野菜を水耕栽培で栽培して水を浄化したりと食生活に絡んだ取組も行う。

 

 既に川底に溜まってしまった不純物は魔法で分解・除去を行う。この中には不法に捨てたゴミも多く含まれているらしい。連中、処分費を川に捨てて浮かして横領したのかもしれないな。

 

 これは『自然の浄化作用』を効率化した方法で、僕でも教えて貰えたので運用可能だが劇的に直ぐに浄化出来る方法ではない。継続的に行う事で、水の汚れを抑える方に重点を置いている。

 

 

 

 土砂の流入を防ぎ、水質の浄化を行う。言葉にすれば簡単だが、実際に行う事の難易度は高い。

 

 

 

 特に川底の汚れを魔法で分解・除去って簡単じゃないよ!僕がやるなら錬金で薄く川底を固めてから、ゴーレムルークで持ち上げて取り除くかな。取り出した汚れを固めた汚物の処理は……

 

 大きな穴を掘って埋める位しか、処分方法が思い浮かばない。錬金で無害な土に変えるとか無理、出来て水分を抜いて固めて取り出し易い様に加工するしかない。

 

 膨大な魔力を注ぎ込んで岩や砂に錬金する事も不可能ではないが、対費用効果が全くない。僕でも全力で取り組んでも、何年経っても全然終わらないだろうな。

 

 

 

 これは魔法特化種族である、エルフ族の力技だね。僕以上の魔力を持つ連中が大量にいるから可能な方法だよ。

 

 

 

 古来からある水の浄化方法、濾過とかもあるけど量が膨大過ぎて終わる気がしない。個人の飲み水とかだったら出来ても、個人の農園程度の水ならば何とか可能か?ってレベルだな。

 

 ここでもバーリンゲン王国の連中の杜撰な国土の運用が足を引っ張るんだ。薪が必要だからと周辺の木々を伐採してそのまま植樹もせずに放置、ゴミは川に捨てる等の自然破壊の繰り返し。

 

 此処ではないが、数少ない鉱山の排水で川を汚していた場所も有ったそうだ。その鉱山は周辺の街ごと森に埋まったらしい。僕もバーリンゲン王国の全ての場所を見た訳でもないが……

 

 

 

 自分が良ければ他はどうでもよい。どこもかしこもやりたい放題で、相当酷かった。そういう事だろう。

 

 

 

 三人での馬ゴーレムの旅は、異種族の知識を口頭でだが教えて貰えると言う素晴らしい時間だった。男三人の気楽な旅、元々自然重視の暮らしをしている彼等の野営は素晴らしく洗練されている。

 

 僕も錬金で小屋や地下空間に居住スペースを錬金するのだが、彼等は植物を操り家を建ててしまう。基本的な構造やデザインは最初に決めているので、いつでも何処でも魔力と植物の種さえあれば建てられる。

 

 そして居心地が物凄く良いんだ。寝床がさ、蔦で編み込まれたハンモック形状なんだ。青臭くなく適度に乾燥していて肌触りも良い。麻みたいな繊維の毛布も、何て言うか素晴らしい。

 

 

 

 余りにも物欲しそうに見ていた所為か、簡易住居の魔法を教えて貰った。だけど植物の促成栽培と錬金は似て非なる物だから、僕には扱えない。だが完成品のインプットについては類似性が有る。

 

 僕の錬金も完成品を思い浮かべて行う事なので、その情報の扱い方については十分に流用出来る。植物魔法の初歩も触りだけ教えて貰ったが、此方は要研鑽だろう。でも全く使えない訳じゃない。

 

 土属性魔術なのだから、大地に芽生える植物達と親和性が全く無い訳じゃない。自己研鑽の楽しみが増えた。今後は少しは暇にというか自由な時間も作れる筈だし、夢が広がるな。

 

 

 

「人間の扱う錬金は、我々の扱う錬金とは全くとは言わないが随分と違うのだな」

 

 

 

 今夜の野営地を用意している時に、ルーツィア殿から指摘された。生きた植物の促成は出来ないが、加工品としての麻は錬金出来る。成分さえ理解出来れば限りなく近いものは錬金出来る。

 

 僕なりのアレンジした麻製のハンモックに揺られながら、感想を言われたが駄目出しのニュアンスは含まれていない。ユラユラと身体を動かしながら寝心地を確認している。

 

 僕の場合は寝床はベッドの枠を錬金し、マットや毛布は空間創造に収納しているものを取り出して使用している。一から全て魔法で用意するのは初めての経験だな。

 

 

 

 因みにだが、麻の毛布では暖が取れないので毛布だけは空間創造からストック品を出して使って貰っている。まぁ室温の調整とか、精霊魔法の『熱蛇』に頼めば何とでもなるのだけど……

 

 

 

「しかし羽毛布団は凄いですね。水鳥の羽根を布団に加工するとは!軽くて肌触りも素晴らしいし、良い仕事をしてますね」

 

 

 

 パフパフと羽毛布団を軽く叩きながら絶賛している。後で何枚か新品の羽毛布団を贈ろう。

 

 

 

「部屋を暖かくする事は難しくは無いが、毛布を掛けるか掛けないかならば、掛ける方が良いな。何だろう、安心感が違うのか?」

 

 

 

 こちらも羽毛布団に頭まですっぽりと埋まって寝心地を確かめている。後で何枚か新品の羽毛布団を贈ろう。

 

 

 

 ハンモックの評価は並み程度だが、羽毛布団の評価が高過ぎる。民生品なので、僕は購入しただけだが一応最高級品だから間違った評価ではないのだが、胸の中がモヤモヤする。

 

 男三人旅も良いものだな。寝る前になんでもない話をしながら眠りにつける。今は上級貴族として身分差の関係で親しく出来る相手も限られているけど、彼等は僕以上に高位の存在だが気にしない。

 

 こういう自由な旅をもっと早くしたかった。他国や国内でも長距離の移動は数多く行ったけど、仕事の延長だから役職や爵位を無視する訳にもいかず何処かに壁を感じていた。

 

 

 

 まぁ圧倒的上位者二人だし、外交関連の仕事だと言えばそうなんだけどね。自分が一番下の立場なのだけれど、凄い気楽さがある。

 

 

 

「人間は衣食住に拘ります。物凄く拘ります。特に睡眠の質は身体のパフォーマンスを高め維持する為に必須なので、僕も拘っています」

 

 

 

 そう言って自分もハンモックに横になる。ルーツィア殿が指を鳴らすと熱蛇が発光を抑えて室内を暗くし、床を漂って睡眠に最適な温度に調整してくれる。今は20度前後が快適な温度だね。

 

 ああ、でも精霊魔法ってこういう使い方もあるんだな。精霊を雑用に使う事に申し訳なさも有るのだけれど、そういう気持ちを汲んでくれたのか?一匹の熱蛇が心地よい暖かさの身体を擦りつけてきた。

 

 猫が布団に潜り込んでくる様な、そんな人肌とも違う心地よさ。軽く撫でるとビロードの様な触り心地?鱗状の見た目なのに感触が違うとは、どういう事なのだろうか?

 

 

 

「ふふふ。その熱蛇は、リーンハルト殿に心を開いたみたいですね」

 

 

 

「不思議だな。俺達だって二百歳以上にならないと精霊に認められないのだが、その十分の一にも満たない時間しか生きていないのにな。その熱蛇は、俺達よりもお前を優先しているぞ」

 

 

 

 視線を向ければ、熱蛇と目が合った。何となく気持ちが繋がった感じがする。これが精霊と気持ちが繋がったという感覚なのだろうか?猫の様に身体を擦り付けられる感覚を楽しみながら……

 

 

 

 僕は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたら、三匹の熱蛇が腹の上に乗っていた。飛魚や空鼬もそうだけど、熱蛇も小動物のような可愛さが有る。実際は物凄い力を秘めている不思議生物なのだが、愛玩動物みたいな感覚になる。

 

 既に他の二人は起きていて、クロレス殿が工芸茶を用意してくれていて……驚くべき事に、ルーツィア殿が朝食の準備をしてくれている。器用にプライパンで何かを炒めているけど、食材って持ってた?

 

 確か食事関係は僕の空間創造頼りで、彼等が食材を持っていた筈は無い筈だけど……意識が段々とハッキリしてきて、自分が最後に起きた事を理解した。

 

 

 

 しまった、寝過ごしたっ!慌てて飛び起きると、不満そうな熱蛇達が足元にじゃれついて動きが止まってしまう。おぃおぃ、流石に二人に朝食の準備をさせるのは不味いのです。

 

 

 

「すいません。寝過ごしてしまって……」

 

 

 

 慌てて謝罪する。クロレス殿が耐熱ガラスに淹れた工芸茶を手渡してくれたので、茶葉が開花する様子を暫く見て和む。

 

 その間に、ルーツィア殿が野菜の炒め物と数種類のカットフルーツを用意してくれる。植物関連は種さえあれば促成可能なので、食材は自前で用意してくれたのだろう。

 

 流石に漂ってくるバターは別に用意していたと思うが、彼等には飢餓とかは無縁だろう。羨ましい限りだが、僕は肉や魚も食べたいので妬んだり悔んだりはしない。

 

 

 

 種族それぞれ、それも食生活を楽しむ為のスパイスでしかない。でもルーツィア殿謹製のフルーツは信じられない位に美味い。これに関しては、少し羨ましい。

 

 

 

「構いませんよ。ルーツィアが起こそうとしたら、熱蛇達が体当たりして邪魔をしたのです。その時の彼の顔は見物でした。俺を裏切るのか?って、口に出して言う程に動揺してましたよ」

 

 

 

「お前だって、こんなに早く懐くなんて異常を通り越して不思議だっ!って大声で騒いで、熱蛇に口を塞がれたじゃないか」

 

 

 

 踏まない様に熱蛇を抱え込んでいたら不思議な会話が聞こえたが、こんな朝も良いかなって思った。

 




2024年も終わりに近付いて来ました。来週は12月31日(火)に今年最後の投稿を行います。

来年は3日から7日まで関西圏に遊びに行きますので1月9日(木)からの投稿となります。

今年もあと僅かですが、体調に十分注意して健康で年末年始を迎えて下さい。
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