古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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少し遅いですが、あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。




本日より最終章をスタートします。昨年で書きたい事は殆ど書けたので、本当の意味で最期の纏めの章となります。

完結まで、お付き合いを宜しくお願いします。


第1031話

 エムデン王国からの公式発表

 

 

 

 この衝撃の事実が公式に外交筋から通達される前に、周辺諸国の国民達は色々なルートから噂話として情報を得ていたので最終的な確認という受け止め方をした。

 

 そもそも問題の国の連中は勝手に住み着いて仲間内だけでコロニーを作り、自分達の決めた勝手なルールで居座っている厄介な連中だった。好意など芥子粒ほども無い。

 

 排除はしたかったが賄賂を使い中級役人まで抱え込み、破落戸を集めた暴力部隊まで擁している。最後は亡国の名前を出して外交問題だと圧を掛ける。金と力を持って裏社会で生きる厄介者共。

 

 

 

 他国に巣食う、寄生虫の様な連中だ。

 

 

 

 何かあれば数に物を言わせて騒ぎ出し、相手を脅して黙らせる。それでも駄目なら実力行使を行う。実行犯は国外に逃亡し、残った連中は知らぬ存ぜぬで薄笑いを浮かべる。

 

 『俺は知らない、やってない。やったのは他の奴だ。俺達が指示した?なら証拠を出せよ。無いなら謝罪と賠償と補償を要求する!』そう騒ぎ出す。馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返す。

 

 証拠を揃えても『嘘だ、偽造だ、言い掛かりだ。名誉が傷付いた、謝罪と賠償と補償を要求する!』と言って言い逃れようとする。しかも嘘を真実と信じ込んでいるから、余計に質が悪い。

 

 

 

 最後は賄賂を貰ったバーリンゲン王国の外交官が国際問題だとか騒いで嘘の報告を本国に伝える。結果として国家間問題を持ち出す程の労力を見いだせず、泣き寝入りすることが殆どだ。

 

 地理的にも間にエムデン王国が有るので、討伐規模の軍を通過させるのも面倒だしエムデン王国に借りを作る事になる。国に巣食う犯罪者を擁護する敵国、厄介以外の何物でもない。

 

 スラムを根城にしているので、騎士団や警備兵もおいそれとは介入出来ない。何度か大規模な討伐作戦も実行したが、上層部は逃げて捕まえたのは末端の連中だけ。

 

 

 

 捕まえた連中を極刑にしても見せしめにも警告にもならず、直ぐに補充されて元通りという悪循環。本当に頭を悩ませていた連中を国を挙げて排除する正当な理由が出来た。

 

 

 

 この最大のチャンスを利用しないでどうする?やるなら今でしょ!

 

 

 

 人類の敵として自国に巣食う寄生虫共を完膚なきまでに叩き潰す。もう国際問題という厄介な言い訳は使えない。亡国の残党など後ろ盾のない犯罪者集団でしかないのだから……

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 エムデン王国の公式な通達の要約が周辺諸国の全ての街や村にまで公布された。これで嘘や言い逃れが出来ない。事実を変えられない、曲げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーリンゲン王国の政府がケルトウッドの森のエルフ族に対し『かの種族の懸念である人口減少に対し、我が国の優秀な者の子種を提供する』という恥知らずな要求を突き付けた。

 

 更に魔牛族の里を元宮廷魔術師筆頭と王都の正規兵達が進軍し、支配下に置こうとした。理由は性的搾取、性奴隷として攫う事を実行しようとしたが反撃を受けて略奪部隊は壊滅。

 

 魔牛族はエルフ族の保護種族であり、報告を受けたエルフ族の王は『人間と言う種族の族滅をも視野に入れて行動を開始』し、バーリンゲン王国と戦争状態に突入した。

 

 

 

 事態は一刻の猶予も無く、元宗主国であり同じ人間の国家として隣接するエムデン王国にもエルフ族側から通告が有ったが、我が国は人類の存続を掛けてエルフ族と粘り強い交渉を行った。

 

 元々が好感度が皆無の状態から魔法特化種族という自国よりも強大な力を持つ種族との交渉は難航、敵対した事実を確認した時点で『人間種との敵対も止むを得ない』という思いに至る。

 

 当然だが、バーリンゲン王国以外の人間種が『下劣な欲望を国家が実行する』など有り得ないのだが、友愛を是とするモア教が見捨てた無法国家なので否定すら出来なかった。

 

 

 

 このままでは無法国家の仕出かした愚かな行為によって、一緒くたにされてなし崩し的にエルフ族と敵対する事になる。愚か者共も自分が助かる為に周辺諸国を巻き込もうと色々な工作を行った。

 

 その最大の愚行が『周辺諸国から要請を受けてエルフ族と魔牛族の女性達を攫い引き渡す為の行動。故に自分達も被害者、原因は他国にある』という虚言じみた妄言だが、彼等の中では真実だ。

 

 空想の中で生きている連中は、自分の考えた事が全くの事実では無くても『それを信じれば真実』『他人の迷惑より自分の命が最優先』『大声で騒いだ方が正義』という狂人理論を展開。

 

 

 

 流石にエルフ族も真実とは思わず、エムデン王国に確認を取った事を交渉の糸口とし『彼等と我々は別であり責任は全てバーリンゲン王国の者達に有る』事をエルフ族に認めさせた。

 

 

 

 だが性奴隷扱いされた、エルフ族の怒りは収まらず当事者連中の族滅を通達。『諸悪の根源を生命の森に還して浄化』するとし、全てのエルフ族がこの作戦に従事するという。

 

 エルフ族は魔法特化種属、全員が宮廷魔術師筆頭クラス以上の魔法の使い手。対応を誤れば人間種全てと敵対も辞さない強い怒りを理解しているが、罪無き者達も巻き添えにする事は忍びない。

 

 粘り強い交渉の結果、辺境に生息しバーリンゲン王国と関係の無い種族はエムデン王国に移住させる事を承諾させたが、その際に魔牛族や妖狼族も合せて移民させる事を条件とされた。

 

 

 

 移民達にはモレロフの街とスメタナの街及び周辺の土地を与え、生活できる基盤はエムデン王国が全て負担する事にする。それに伴いスメタナの街までをエムデン王国が接収し維持管理を行う。

 

 フルフの街はエルフ族が接収し、この街を新しい国境に定め大使館を置く事とし継続的な交渉の窓口を設ける事に成功した。此処まで行って漸くエルフ族の怒りが収まったと思ったが、彼等は更なる愚行を行った。

 

 曰く『国家的な要求を行ったのは政府であり国民は無関係、故に被害に伴う謝罪と賠償と補償を要求する』とエルフ族に要求。事態は更に悪化し、エルフ族は国土の森林化を急務とした。

 

 

 

 緩やかな森林化を協議し認めさせ、可能な限りの人命救助を行うと努力していたが救助しようとしていた者達に努力を否定された。この時点でエルフ族の怒りは頂点に達し、交渉の余地は皆無と判断。

 

 二万人前後の人員は救えたが、これ以上は無理と判断。フルフの街を最終防衛線とし、エルフ族の怒りを買った連中を他国へと流出させ連帯責任を負わぬ為に止む無く国境を閉鎖した。

 

 しかしエルフ族の怒りは凄まじく、古参級の人員を大量投入し国土を森にすると共にバーリンゲン王国の連中を自然の中に還した。その際に仲間割れや同族同士での略奪も数多く報告されている。

 

 

 

 自業自得、破滅に他国を巻き込む事を全く躊躇しない人類の敵。エムデン王国は、これ以上の擁護は不要とし国内に滞在するバーリンゲン王国人を捕縛し旧バーリンゲン王国領へと追放。

 

 前政権の指導者でエムデン王国に亡命したパゥルム女王と王女二人については、問題を起こす前に亡命した為に身柄はそのまま保護するが政権奪還の助力は一切しないと宣言する。

 

 尚、周辺諸国内に滞在するバーリンゲン王国人に対しては滞在する国の判断に委ねる事にするが、エルフ族に対しての仲裁等はエムデン王国は行わないし関与もしない。

 

 

 

 全ては滞在する国家の責任として、エルフ族に対し報告する事を望む。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 この公布に際し、いち早く反応し集団で滞在する国家の王城に対し保護や助力を訴える者達がいた。他国の者とは言え長く滞在し納税しているのだから『我らを救うのは当然』という理由でだ。

 

 同時にエムデン王国を非難『元とは言え宗主国、クーデターを成功させたのも宗主国が悪い。故に謝罪と賠償と補償を要求する。早くエルフ族から国土を奪還しろ。それまで国賓待遇で生活の面倒もみろ』だそうだ。

 

 これには、エルフ族もそうだが大陸最大国家のエムデン王国に正面から難癖を付けて敵対する行為以外のなにものでもない。巻き込まれて敵対し、最悪は絶対に勝てない戦争に突入する。

 

 

 

 そんな未来が誰でも容易に想像出来た。メリットなど皆無、自分達の苦労を当然だと声高々に吹聴する『人類の共通の敵』に対して、自衛行動を行うのを咎める者は居ない。

 

 自分達を巻き込むな、責任は自分達で負え、勝手な事ばかり言うな、自業自得で滅びろ、彼等を生かしておく事はデメリットしかない。自国のエルフの森に抗議にでも行かれたら完全に巻き込まれる。

 

 コイツ等、絶対に最悪な行動を嬉々として行って悪びれない。放っておけば自分達にも危険が及ぶ。積年の恨みも有るし正当な理由も有る。ならば正義の鉄槌を下す事に躊躇など無い。

 

 

 

 残党狩りは苛烈を極めたが、彼等と接する事により『その精神の異常性』を十分に理解させられた。駄目だ、コイツ等は狂ってる。常識など通じない、自分達は悪くなく、他が全て悪い事になっている。

 

 手助けしても慈悲を掛けても当然として感謝もしないどころか、もっとしろ、もっと寄越せと一方的な要求しかしない。それを当然の権利として、追加要求まで平然と行う。人の言葉か通じない?どういう事だ?

 

 当たり前の事だというふうに、他人の好意を当然だと受け取り更なる要求を突き付ける。ああ、関わっちゃ駄目な連中だ。放置も危険、エルフ族の対応が正解だった。殲滅しか正解が無い、いや殲滅させた方が後腐れ無い。

 

 

 

 そして最悪の隣国の愚行を水際で押し留めた、エムデン王国に多くの感謝が贈られた。エムデン王国がなければ、人間種は滅びまで最短距離を突っ走る事になっていた。

 

 捕縛した連中の殆ど全てが何かしらの悪事に加担していた事実は、正しく公表された。軽くても詐欺や窃盗、重ければ殺人や強盗。各国は総力を挙げて殲滅に乗り出し、一切の慈悲も無く罪を暴き裁いた。

 

 一部の貴族や豪商達も悪事に加担したり、賄賂を貰い罪を見逃したり便宜を図っていた。そういう連中も分け隔てなく捕獲し処罰した事に反発も多かったが、名前が公表されると……

 

 

 

 複数の有志の団体が武力を伴った説得を行う事が多発、容疑者は自主的に自首して罪を償う事になった。最悪は『罪を認めて自裁した』という報告が騎士団や貴族院に送られる。

 

 多くの国を巻き込んだ最悪の愚者の行動は、最後は犯罪の温床の浄化という結果にも繋がり治安の向上と世論の引き締めにも及んだ。諸悪の根源、存在するだけで害悪だという事が明るみに出る。

 

 この件に際し、モア教は沈黙を貫いた。教会に上から目線で保護を求める連中が殺到したが、信者達が一致団結して叩き出した。破門されたのに、何故都合の良い時だけ助けを求める?お前たちは教義を守らないから破門されたんだぞ。

 

 

 

 バーリンゲン王国の悪行と愚かな行為は後世まで延々と正しく『人類の共通の敵』として伝えられる事となった。

 

 

 

 

 

「以上が愚か者共の生き残りの殲滅作戦の内容と結果よ。思った以上に腐敗した連中だったみたいで、人間種どころか『世界の敵』としての地位を確たるものとしたわね」

 

 

 

 分厚い報告書の概要だけ説明したけれど、会議の出席者には報告書を事前に配布しているので内容は理解しているわよね?アウレール王も満足げに頷いていますし、理想的な結果に収まったわ。

 

 両騎士団の団長に少し不満が有りそうな感じなのは、国内に潜伏していた残党達の捕縛に積極的に関われなかったらかしら?当面の間、両騎士団が主役となる作戦はないでしょう。

 

 今後の国政は国力の向上にシフトしていきますし、どちらかというと軍縮というか人員の整理になるでしょう。その辺の調整は、リーンハルト様と考えれば良いわ。軍の活躍と存続の為に、他国と緊張関係を生む必要は無いわ。

 

 

 

「エムデン王国に潜伏していた連中も全て探し出して捕縛、犯した罪に準じた刑を受けさせた。殆どが極刑だが、罪を犯していない子供達は隔離施設に収容。再教育を施し、エムデン王国の為に働く準備を進めている」

 

 

 

 バニシード公爵は引き続いて、残党狩りの結果報告を行ったわ。アウレール王に直訴してまで手に入れた王命の達成に、仕事を取られた両騎士団の団長が彼を睨み付ける。

 

 最後の引導は自分達が渡したかった。前大戦からの因縁の相手ですし、そういう気持ちが強いのでしょう。まぁ気持ちは分かりますわ。私も嫌々ながら情報の提供と共有をしましたので、多少は関りも有りましたし。

 

 まぁ私のリーンハルト様と政敵として対立している関係上、和解も味方する事も皆無です。何方かと言えば、没落に追い込みたい。今の公爵三家の連携は上手く回ってますから、余計な公爵は不要ですわ。

 

 

 

「ふむ、周辺諸国に逃げ出した連中の処罰の報告も来ている。国家間で情報を共有しようというアイデアは良かったぞ。取り零しが無いように何重にもチェック出来る」

 

 

 

 各国が捕縛し処罰した人員のリストの国家間共有、これをする事で取り零しを無くしたわ。逆に各国が本気で取り組む事にもなります。他国で捕まった者が自国から逃げ出していたとか、恥でしかない訳ですし。

 

 人間種の存亡を賭けた作戦の不備を他国に知られる事は恥辱でしかない。なので、残党達への当たりは強くなりますし、成功率も高まる。これは、リーンハルト様の提案。悪辣過ぎると、バニシード公爵は言いましたが……

 

 結果は全て良い方向に向かいました。少しは感謝しなさいな。貴方は幾つもフォローをして貰っているのに、感謝の気持ちは無いみたいですし。

 

 

 

「一匹でも逃がせば、正しき情報を嘘で書き換えられる可能性もありますから。殲滅は絶対に譲れない条件ですわ」

 

 

 

 まるで害虫じゃな、と真顔で零したサリアリス様の顔色は余り良くない。体調不良というか寿命が終わり掛けているのかと本気で心配してしまいます。貴方が亡くなれば、リーンハルト様が悲しむ。

 

 流石の私も、そこに突け込む様な事はしないわ。今回の会議にリーンハルト様は不参加。フルフの街とエムデン王国の王都が聖樹の力で繋がった弊害が、ちょくちょく呼び出される事。

 

 バーリンゲン王国の件は落ち着いたのに、エルフ絡みは未だ終わりが見えないのよね。

 

 

 

 ふぅ、困ったものだわ。

 

 

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