古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第1035話

 モレロフの街の復興状況の確認が出来た。相当な労力と資本を投じているのも、周辺諸国とモア教への配慮と表の部分の慈善事業の側面が強い。まぁ後ろ暗い事が大量に有るので、必要な事だよ。

 

 僕が各所を巡回している時も、他国の間者と思える者達を見付けた。モア教関係者の慈善事業を行う者達に紛れて侵入したのだろうか?正規な方法で申請しての他国の視察団は、未だ受け入れていない。

 

 魔牛族や妖狼族という他種族も受け入れているので、彼等との接触を禁じる協定を結んでおかないと駄目だし、当然協定違反の罰則も事前に決めて双方が合意しなければならない。

 

 

 

 最初の決め事は大切、勢いやなぁなぁで受け入れては駄目なんだ。

 

 

 

 協定違反は最悪の場合、国家間紛争にまで発展する。要は開戦だが、戦争も政治の手段の一つに過ぎないので、その前に幾つか手順を踏む必要が有る。何でもかんでも力ずくで解決は駄目だね。

 

 普通に人類滅亡の危機だったのだから、もう問題事や厄介事は勘弁して欲しいのが正直な気持ちだ。クロレス殿達、エルフ族の魔法を間近で見れるチャンスを潰されたくはない。それ位の役得は欲しい。

 

 それに水質の改善とかを学んでおけば、後々絶対に役立つ。水は人類にって、いや生きとし生けるもの全てに絶対に必要な事なので邪魔するのならば容赦はしない。徹底抗戦も辞さないぞ。

 

 

 

 だが正規の手続きは行う。建前は必要で、正当性を示す事は大事です。強権発動で居座るのは、後々問題になるだろうし……

 

 

 

「僕の滞在する屋敷にも大分慣れたのだが、宮廷魔術師団員が入り浸るのはどうかと思うんだ?配下でもさ。」

 

 

 

 応接室で寛ぐバカップルに苦言を呈する。君達も宮廷魔術師団員なので、割り振られた滞在先のグレードも低くは無いと思うのだが?というか婚姻を結んだのだから一緒に住んでいる筈だが?

 

 独身の上司の屋敷に入り浸る意味が知りたい。本人達は気にせずに、持ち込んだ茶葉で紅茶を淹れて寛いでいる。アインも許容はしているが、世話をする気は無いみたいで放置している。

 

 まぁ差し入れの焼き菓子も高級品で美味しいし、なにより全て持込みなので片付けとかの心配も無い。リゼルも彼等が居座るなら自分も問題無いですね?と普通に居る。まぁ何時もの事なので気にしない。

 

 

 

 気にしろって心の声が聞こえたが黙殺する。

 

 

 

「建前は護衛です。上司を一人で住まわせる訳にもいかないのですが、相応の立場の者でなければ希望者を抑え切れませんので……」

 

 

 

 護衛?僕に?必要かな?コテンと首を傾げたのだが、あざといですよ!と叱られた。

 

 

 

「流石に、リゼル様と二人切りで同じ屋敷に住んでます!は常識的に受け入れられませんわ。妙に慣れを感じると言うか、それが普通です。みたいな雰囲気を醸し出していますが駄目ですわ。二度言いますが、駄・目・で・す・わ!」

 

 

 

 二度言われた。二度目は一言づつ区切って言われた。

 

 

 

 真顔の二人に駄目出しされたし、ヤレヤレ的な態度もしやがった。正直、何がそんなに問題なのかが分からない。貴族が世話役を侍らすのは普通の事だし、それが異性だとしても問題視はされない。

 

 ああ、リゼルも貴族だからか?お互いに爵位を賜っていても主従関係は普通だし、伯爵と男爵だから同階級でもない。それにお互い独身だから浮気の心配も無いし、それほど追及される事か?

 

 これが不倫とかの不適切な関係ならば納得するけどさ。男女間の秘め事で問題になるのは、既婚者に手を出したとか、相手の面子を潰す行為を行った場合だよね。

 

 

 

 そういえば貴族になった時に教本として貰った二冊の書物に、そういう男女間の秘め事について詳しく書かれた項目が有ったけどさ。頭が痛くなって、そのまま読まずに空間創造の中に死蔵してたよ。

 

 だって『一夜限りの関係を安全に楽しむために』とか『正しい浮気の方法』や『側室と妾の掟』なんて世の中の淑女達を疑う項目だったんだ。大事な教本なのに、色事関連が半分を占めていた。

 

 更に不貞の項目には『一時の情熱に任せて浮気をするのは賢明では無い、結果を考えた上で我慢出来なければルールを守って!』って書いて有るがルールがある浮気って何だよ!

 

 

 

 少し興奮してしまったので、深呼吸を数回繰り返して心を静める。

 

 

 

「それに希望者って?」

 

 

 

 アイン達も居るし、基本的に世話を焼いてもらう必要は無いよ。任務中だからって事もあるから、無理強いというか強行している事は理解していますが……こんなに自由な生活は、暫くは無理だろうな。

 

 今回の王命は問題は多かったが色々と楽しんでいたのも事実だ。単身赴任っていうか団体生活だったり単独行動だったり、少数の同性との旅もした。しかも自分よりも強大な力を持つ相手とだ。

 

 凄く新鮮な体験だった。生涯忘れない思い出、目的は愚かな隣国の連中の永遠の縁切りだけど過程は凄く楽しめた。まさか、ルーツィア殿と友誼を結べるとはね。しかも随分と気にかけてくれているし、自分でも驚いている。

 

 

 

「貴方の世話をしたがる連中は大勢いるのです。それが情報収集の為の他国の間者とかならば、問答無用で弾きますが……」

 

 

 

 ああ、娼婦ギルドの連中みたいな奴等が入り込んでいるのかな。逆に炙り出して取り押さえた方が良くない?

 

 

 

「魔牛族のお嬢さん達が世話をしたいと申し込んできたのですが、色々と問題が有るじゃないですか。なので此処に派遣された者の中でも最上位の自分達が世話をしているので大丈夫とお断りしました」

 

 

 

「しかも幼女が三人もですよ。幼女がですよ!」

 

 

 

 セイン殿が興奮して幼女幼女と幼女を連発しているけど、僕の配下に幼女愛好家は不要なのだが?あっカーム殿に張り倒されたぞ。まぁ自分の旦那が他種族でも幼女って単語を連発して騒げば、張り倒したくもなるよね。

 

 本人も反省したみたいで、頭を下げて謝罪している。彼はマゾッ気が有りそうなので御褒美かも知れないが、東方の諺(ことわざ)にある『武士の情け』って事で口を出さないで黙っている。

 

 幼女といえば、エアレー達の事だろうな。ミルフィナ殿も絡んでいそうだが、魔牛族の所にも顔を出しておくか。此処に滞在しているのに、訪ねないで王都に帰るのは気が引けるし不義理だろう。

 

 

 

「まぁ良いです。理由は納得はしませんが、理解はしました」

 

 

 

 配下として上司の事を色々と考えてくれていたのは理解した。普通に嬉しいし評価を上乗せしておきますので、今年の人事評価は期待して貰って良いですよ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 魔牛族のエリアに向かえば既に区画の前に、エアレーとクユーサー、それにナンディーとミルフィナ殿が並んで待っていた。彼女達は鼻が利くので、僕の匂いを嗅ぎ分けられる。故に近付いて来たのが分かったのだろう。

 

 体臭教の信徒としては羨ましい限りだが、別に嗅覚を強化したい訳でもない。僕は好きになった女性の体臭を双方合意の上で嗅ぎたいだけの、極々普通の性的嗜好を持った一般人なのだから……

 

 流石にエアレー達の匂いは嗅がない。それは紳士としての矜持が許さない。彼女達が嫌いな訳ではないが、友愛だからそんな気も起こらないし、そもそも幼女は対象外だしから正しい反応だね。

 

 

 

 幼女愛好家は滅べば良いんだよ。

 

 

 

「わーい!リーンハルトさまぁ!」

 

 

 

「お久しぶりでございます」

 

 

 

「近くに居るのに、来てくれないので寂しかったです」

 

 

 

 突撃幼女アタックを何とか踏ん張って耐える。毎回、ギリギリの力加減で攻めて来るのだが……計算づくなのだろうか?いやいやいや、そんな事は無いだろうし偶然だよな。

 

 両足と腰に抱き着かれると身動きが全く取れないし、身長差の関係で胸の辺りに彼女達の頭がくる。身嗜みで香料を付けているのか、髪の毛から良い匂いがするし特徴的な形の角が嫌でも目に付く。

 

 人間種とは違うのだが、特に嫌悪感も感じない。彼女達も拘束を解除したら、次は角に触らせるのでスベスベな感触を楽しむ。直ぐに伸びる訳でもないと思うが、これ以上大きくなるのだろうか?

 

 

 

 此方をニタニタと眺める不審者(保護者?)に視線を向ける。角の大きさは成人女性と殆ど変わらないので、これ以上は伸びないし大きくならないのか?魔牛族の神秘だね。

 

 

 

「そこの不審者……いえ、保護者の方は自身の責任を全うして欲しいのですが……聞こえていますか?そこの不審者じゃなくて保護者の方?」

 

 

 

 見た目は良いのに性癖と行動で台無しにしている、妙齢の魔牛族の女性に声を掛ける。毎回、一族で大切に育てている筈の幼女達のアグレッシブな行動を止めない駄目な保護者失格の一族の代表だ。

 

 本来ならば、協力者とはいえ異性に対して、一族の秘宝をむやみやたらに近付ける事は止めるべきだ。そこに好意的とか信頼とかは別問題で、先ずは安全の為に一旦止めるのは必要です。

 

 もし万が一にも、僕が危険な行動を取るかもしれないと対策する事は信用とか信頼とかの言葉で省略しては駄目だぞ。特に人間種は多種多様な性癖を持っているのだから……

 

 

 

 ああ、自分で考えていて鬱になってきたぞ。思わず足腰の力が抜けて蹲(うずくま)ってしまった。

 

 

 

「座り込んでどうしたの?」

 

 

 

「おなか痛いの?」

 

 

 

「ミルフィナさまが悪い事をしたの?またしたの?」

 

 

 

 三人が背中を擦ってくれるのだが最後の言葉を聞いて、ミルフィナ殿も膝から崩れる様に両手を突いて座り込んだ。まさか一族の幼女から全く信用されていない事が発覚したのだから当然だ。

 

 もし仮にだが、僕が自分の子供達に同じ事を言われたら黙って腹を切る位の絶望を感じるだろう。やはり、ミルフィナ殿は一族の代表としての信用度は限りなく低い異種族同性愛者の変態だ。

 

 クロレス殿も、ほんの僅かだが評価を上げたのに全然改善などされていなかった。残念だが変態は変態だった。変わりようのない変態、もうどう接して良いかも分からない。

 

 

 

 いや彼女の兄弟達を頼れば良いんだ。彼等ならば信用出来るし、まず大前提が変態ではない。未だ大丈夫、彼等の未来を潰すわけにはいかない。

 

 

 

「いや大丈夫だよ。少し絶望したけど、未だ大丈夫だから……」

 

 

 

 クユーサーの頭を撫でながら、足腰に力を入れて立ち上がる。センシティブな内容だから弱気になってしまったが、全然大丈夫だった。知り合いだから少し気が抜けてしまったのかもしれない。

 

 エアレーとナンディーの頭も順番に撫でる。笑顔も忘れない、幼女に気を使わせてどうするの?馬鹿なの?自分の性癖に関する事だからって、馬鹿みたいに動揺するなよ恥ずかしい。

 

 未だに項垂れている、ミルフィナ殿に手を差し伸べると想像以上に両手で力強く握ってきたが何とか引っ張り上げる。この駄目淑女、いちいち行動が危ないぞ。

 

 

 

「ミルフィナさま、メッです」

 

 

 

 エアレーが彼女の手を軽く叩いて、僕から引き離す。度重なる無垢なる行動に、ミルフィナ殿の目からハイライトが消えた。絶望って、こういう事なんだと物凄く良く分かる。

 

 

 

「えっと、ご愁傷様ですが自業自得だと思います。今後は御兄弟の方々も交えての話し合いをしましょう」

 

 

 

 リゼルを連れて来なくて良かったのか?まぁ良からぬ事を考えている訳じゃないので、心の中の闇?病み?を暴く必要は無いというか……

 

 

 

 もう少し手心を加える必要が有るのだろうか?あるよな?

 

 

 

 魔牛族の未来の為に、もう少し真面目に考えて行動しよう。

 

 

 

 

 

 

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