古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第1048話

 亡国の残党共がモア教の教会を襲って撃退された。実行犯は数名を捕縛し残りは……敬虔なる信徒達の怒りによる制裁により処罰された。まぁ亡くなった訳だが実行者の処罰は無し。

 

 実際、捕縛された者も尋問の後で簡易的な裁判はするが現行法で判断しても処刑となる。押し込み強盗の現行犯、しかもモア教の司祭に害をなそうとした。

 

 要求もエムデン王国を侮辱した内容だし、対外的にも法的にも対応に問題は無い。報奨金を出しても良い位だし、実際に申請して出そう。僕の個人資産から出しても良い位だ。

 

 

 

 領主である、お爺様も問題無しと言っているので大丈夫。王都への報告書には、僕も確認した旨を書いて貰えれば更に問題は無いだろう。

 

 

 

 問題と言うか気掛かりなのは、バーリンゲン王国の残党対策の担当が何故かバニシード公爵なんだよな。国内の治安維持は聖騎士団の仕事の範疇だったのを立候補してまで奪ったらしい。

 

 つまり報告先には、バニシード公爵も含まれるので文句を言ってくる可能性が有る。此方は被害者だし、そもそも向こうの仕事に粗が有ったから被害を受けたとも言える。

 

 もっと早く、残党共を見付けて捕縛しておけば集合して集団で犯罪に及ぶ事を防げた……かもしれない。と言えなくもない。まぁ言い掛かり過ぎて恥ずかしくて言わないけどね。

 

 

 

 向こうが恥も外聞も無く騒いだら、こっちも言い掛かりに近いが職務怠慢の所為だと反論する。水掛け論みたいで恥ずかしいが、言われっぱなしよりはね。

 

 

 

「リーンハルトよ。シモンズ司祭を呼んでも良いか?」

 

 

 

 考えに耽っていたら、お爺様から此処で保護しているシモンズ司祭を呼んで良いか聞かれてしまった。身分差の関係で、お爺様の一存では招けない。親族であっても身分差って厳しい。

 

 

 

「勿論です。お願いします」

 

 

 

 シルギ嬢が呼びに行ったが、扉の外で待機していたのか直ぐに入室の許可を求められたので応じる。前に見た時より気持ち顔色が悪く見えるが、怪我も無さそうで安心した。

 

 

 

「シモンズ司祭の無事を確認出来て良かったです」

 

 

 

 礼儀的な挨拶の後に、本人の無事を喜ぶ。バーリンゲン王国から撤退後に、お爺様の領地に建てた新しい教会の司祭になって貰い喜んだのに暴漢に襲われるとは何とも言い難い。

 

 それも自分が関係している王命絡みだったし、まさか各国に散らばっている残党共の悪性を見誤っていたというか甘く見ていた。本国の連中がアレなんだから同じかそれ以上に想定すべきだった。

 

 予想を軽く超えて来るとは大したものだと驚けば良いのか、まだまだ甘かったと反省するべきなのか。まぁ後者だろうな。どこかもう終わったと安易に考えてしまったのが原因だ。

 

 

 

 そんな内心を見透かした様に、シモンズ司祭は優しく明るく応えてくれた。

 

 

 

「いえいえ、これもモアの神が与えし試練と思えば何も問題は有りません。それに彼等は破門した方々ですし、今更破門は取り消しませんし帰順も認めません」

 

 

 

 破門は撤回せずに改心しての帰順も認めない。モア教全体の考えだろうな。友愛を是とする宗教だし、他宗教にも寛容な面が有るけど……奴等については完全拒否なのか。

 

 まぁそうだろうな。破門なんて余程の事がないとしないし、なんなら過去に破門されたのって寄付を横領したのと、修道女に暴力を振るったのと、他宗教に寝返った事の三件だけだった。

 

 脅迫と暴力を振るったのだから、既に破門していた相手に対しては友愛も慈悲も無いよな。それでも救いの手を差し伸べるのは、教義に反するとかじゃないよ。 

 

 

 

「ええ、まぁそうですね。エムデン王国も公式に彼等の対処を決めました。エムデン王国の法に準じた行動と結果ですので、問題は何も無いでしょう。冒険者の方々には僕からも何か褒美を与えようと思います」

 

 

 

 上から目線で申し訳ないのだが、身分下位者に対しての言葉使いを間違えると問題にする連中も未だに居る。出世をして力を付けても敵対者が居なくなる訳もない。

 

 まぁ反発されたら、やり返すので問題は少ないのだがイメージは悪くなる。僕は『英雄』で『モア教の守護者』という欲しくも無い称号を貰っているので、らしくないはダメージだ。

 

 望んでない称号に合わない行動を起こすとダメージを受けるってさ。なんとも不条理でやるせないが、相応のメリットも有るので甘んじて受けている。

 

 

 

 『英雄=敵対する者達への大量殺戮者』であり『モア教の守護者=使い勝手の良い権力と戦力を持つ者』って事だけど、モア教とは利害関係が一致しているから飲み込んでいます。

 

 

 

「そうして貰えると彼等も喜ぶでしょう。英雄殿の親族の領地で犯罪行為を犯すとは許すまじ!と憤っておりましたよ」

 

 

 

「お爺様も感謝していました。この領地でも将来を嘱望される見込み有る冒険者達だそうですし、今後の活躍が楽しみです」

 

 

 

 不意を突いたとは言え人数で倍する暴漢達を取り押さえるってさ、勇気も技量も高くないと難しい。それを十人程度で被害無く行えるなら有能だ。

 

 首謀者や、その取り巻き達は全員亡き者とし、逃げ出した連中も三人以外は亡き者にした。殺意が高いし過剰防衛とまでは言わないが、ギリギリグレー判定だぞ。

 

 全員無傷は無理だが怪我を負わす程度で捕縛は可能だったとは思う。だが、シモンズ司祭や修道女達の安全を考えればベストではないがベターな対応なのは間違い無い。

 

 

 

 あとは感情の問題。平日の昼間に教会に礼拝にくる程の信仰心の有る者達だから、教会関係者に暴行を加える様な連中に手加減などしないし出来ないだろう。

 

 

 

「ええ、リーンハルト卿から言葉を掛けて頂けるだけでも喜ぶでしょう」

 

 

 

 これでモア教の教会の襲撃事件についての処理の方向性は決まった。残党共の処理は有るけど、実行犯は領地の法により裁いて王都に報告。

 

 つまり、バニシード公爵には実行犯は引き渡さずに報告書を送って終了。文句を言ってくる可能性も低くは無いが、取り合うつもりも無い。

 

 逆にエムデン王国内の残党共の対処の担当なのだから、被害を受けたのは我々だって言っても良いだろう。しかもモア教の教会を襲撃とか、被害無く収めたが被害が有れば大事だった。

 

 

 

 お爺様も満足の結果だったと言って貰えたので、満点ではないが合格ラインは越えただろう。リゼルは何故かシルギ嬢と視線を交わして、終始ニヤニヤしていたのが謎で気になった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 お爺様の領地にも冒険者ギルドの支部が有り、活躍した冒険者達を労おうと訪ねようとしたが先触れを出さずに行くと大騒ぎになると言われた。つまり翌日以降に訪ねろって事なので、今日は此処で一泊する。

 

 まぁ当日立ち寄って直ぐに王都に向かうのも、親族としては情が薄いと思われるので大人しく一泊するのも良いだろう。そこまで急ぐ事も無いし、リゼルも滞在を喜んでいた。

 

 リゼルはシルギ嬢の部屋に遊びに行って、僕は宛がわれた部屋で寛いでいる。放置されて寂しいとかではないが、時間を持て余すと言うか手持無沙汰というか。

 

 

 

「ヤバい。彼女に依存しているみたいじゃないか?」

 

 

 

 ベッドに横になり天井を見上げる。この部屋は僕専用に用意してくれたらしく、領主である、お爺様よりも豪華な部屋になっていて恐縮してしまう。

 

 前回の訪問時よりも調度品が豪華になっているし、壁紙や絨毯も最新の流行に合わせて取り換えられている。いや、そんなに来ることも無いので客間で全然かまわないのだが……

 

 『自慢の孫の部屋を弄るのは祖父の楽しみ』って言われると何も言えない。因みにだが、父上やインゴの部屋は無い。まぁこれは、その仕方ないというか何と言うかアレだな。

 

 

 

 改めて身分差って怖い。

 

 

 

 夕食はシモンズ司祭を招いての懇親会形式になるが、モア教関係者を呼ぶのでメニューは華美になり過ぎないラインで出されるだろう。僕が文句でも言えば、お爺様とシモンズ司祭の顔を潰す事になる。

 

 まぁ文句など言わないのだが、暫く貴族の因習やマナーを半ば無視した生活をしていたので、徐々に慣らしていく必要が有る。自由気ままな生活も終わり、規則正しいガチガチな堅苦しい生活の始まり。

 

 現場主義って言えば聞こえは良いけど、宮廷魔術師としては現場寄りで良いけど。何故か官僚っぽい扱いになっているのが気になるんだよな。

 

 

 

「最年少宰相?ははは、僕は軍属で官僚じゃない。最年少侯爵?片親の血筋が平民の孤児だから無理、伯爵位だって実績と戦時中だからゴリ押せただけだよ。もう戦争は終わり、これからは内政重視だよ」

 

 

 

 軍縮、予算の縮小と人員の整理。防衛と治安重視に配置換え、領地は増えたから治安維持に兵力を割り振れば良いが各領主との折衝も必要。

 

 軍属のトップとしての仕事は膨大、つまり官僚的な仕事をする余裕は無い。エルフ関連は外交組の仕事の範疇に食い込んでいるけど、他種族絡みだから特殊案件という事で特例で良し。

 

 ラビエル子爵達に任せた仕事の確認と承認も必要だし、王都に帰ったら暫くは王宮の執務室に軟禁状態だろうな。気が滅入るが、イルメラやアーシャ達と一緒に暮らせるのだから差し引きゼロどころか大幅にプラスだよ。

 

 

 

 仕事以外にも私的な催しで、成人式と結婚式も準備しなければならない。僕の個人的な事が国家的な催し?ははは、嫌だよ。王族でもないのに公式に催されるなんて、恥ずかしい。

 

 でも、アウレール王から言われたら従うしかない。英雄だからで納得しろも、気持ち的には複雑だよ。一介の伯爵の成人の儀が国家的行事?ジゼル嬢との結婚だって、伯爵と男爵令嬢の結婚だぞ。

 

 アウレール王公認で、本人も結婚式に主賓として招くにしても配下の結婚式なだけで国家的行事にはならないだろ?これが、王族を本妻に迎えるとか他国の王族との結婚なら前例は多い。

 

 

 

「うーん、悩ましい。成人の儀を国家的行事にして結婚式は私的な催しにした方が?いや、伯爵の成人が国家的行事?なにそれ、笑えない」

 

 

 

 駄目だ。考えない様にしていたが、実際にもう直ぐ行うと考えたら胃が痛くなってきた。どうしよう?どうする?どうしたらよいんだ?

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