古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第1070話

 

 300年暖めた感謝の想い。転生を繰り返し、大陸最大の宗教を作り上げた教皇。マリエッタからの感謝の想いを告げられた。この一言の為に何回も転生を繰り返し、僕の転生を待ってくれた。

 心の中が温かい気持ちで満たされているのは、僕が世界一の幸せ者だからだ。過去の仲間達との絆を再確認出来たし、自分が犠牲になって仲間を守ったとかいう独りよがりな気持ちも反省した。

 もう少し良い方法も有ったかも知れない。その手段を取った所為で、マリエッタに何度も転生させると言う苦行を強いてしまった事は猛省が必要だ。

 

 でも、モアの女神からの提案ってさ。神様って意外に身近に存在するものなんだな。空想の偶像の産物でなく、人間の上位存在って感じでさ。いや比べちゃ駄目な不可侵的な感じだろうか?

 

「それで、女性に対して少なからぬ悪感情を抱いていた団長が惚れ込んだ、イルメラちゃんってどんな娘さんですか?モアの女神様も気にしてましたよ」

 

 嫌らしいニヤニヤ笑顔を浮かべて肘で突っ突いて来た。女神も信徒の恋愛について気にするんだ。

 

「何故か急に、女神様が不可侵的な存在から俗っぽくなったよ」

 

 親戚の女性レベルの他人の、恋愛事情が気になる気安さに感じる。それはそれで格式ばっているよりは良いのだろうか?それとも威厳とかを大事にしないと駄目なのだろうか?その境目が分からない。

 

「女性神だって乙女だしね。女神ルナ様も絶賛の団長の入れ込む娘さんが気になってしょうがないのよ。勿論だけど、私もよ」

 

 肘が鳩尾に当たって痛いよ。やんわりと腕を掴んで肘打ちを止めさせる。マリエッタもモアの女神様にも負けず劣らずの最大宗教派閥のトップだった。でも凄く俗っぽい。

 

「良い娘ですよ。僕はイルメラを世界で一番、大切に思っています」

 

 満面の笑みを浮かべて宣言する。

 

 愛情に順位は無い!とは言え、平等に愛を振り撒くのには抵抗が有る。勿論、ジゼル嬢やウィンディアも大切だけれども、どんな事をしても守りたい相手は一人だけだ。

 僕は、イルメラの為ならば世界を敵に回しても戦う。それがエルフ族だったとしても勝てなくても負けない戦いをするし、最悪の場合は彼女を連れて全てを捨てて逃げる事も選択の候補に入れている。

 魔王と言われても悪魔と蔑まれても、だからどうした?と言える位の割り切りはしている。最悪の場合は、他の大陸に逃げ出す事だって厭わない。

 

 空間創造に必要物資は貯め込んであるから、移動方法さえあれば何処にだって行けるし何処でだって暮らせる。

 

「うわっドン引きレベルの執着だわ。今の団長の身分と地位で固執する平民の僧侶のイルメラちゃんですか。相手から引かれない内に自重した方が良いと苦言を呈しますわ」

 

 身を寄せる位に密着していたのに、器用に素早く距離を取ってから暴言を吐かれた。別に執着や固執をしたって良いじゃないですか?

 聞かれた事を正直に答えた結果としては酷い部類だと思います。まぁ自分でも粘着質というか駄目男的な感じは理解しているけど、一応は『今年の結婚したい貴族男性ランキング一位』です。

 権力と財力と業績、変な柵(しがらみ)の有る親族が居ない。そういう総合評価が大部分を占めていて、僕個人の容姿や性格とかは判断基準の一部でしかない事も理解していますがね。

 

 それでも一位は間違いないので、まぁ優良物件です。そして……

 

「愛ですよ、愛」

 

「うわぁ安っぽくない特濃の愛情ですか?胸やけしそうで最高です」

 

 親指を立てて笑顔で言いやがった。

 

「そういう訳で、彼女は平民なので派閥の貴族の養子として、僕の側室として嫁ぎます。流石に本妻に固執すると貴族の対面や常識、柵が面倒臭い方向に働くので誰も幸せになりませんから……」

 

 そして僕自身が新貴族男爵の長子で、成り上がりの伯爵という血筋や歴史には文句の付け放題という経歴の持ち主。王命の達成という武力を伴った成果で周囲を黙らせているしかない。

 宮廷魔術師の次席で次期筆頭が確約されているけど、これからは戦争など殆ど無くなるから軍属の影響力は低くなる。軍縮の指導者になるから、同じ軍属からの反発も増えるだろう。

 派閥構成貴族と協力関係を結んでいる貴族。それと敵対している連中との調整に奔走する事が決定しているんだよな。正直に言えば、萎える。いや本当に萎える。

 

 権利に伴う義務と責任か?責任の方が比重高くない?

 

「それでジゼル嬢との婚姻ね。彼女も従来貴族の男爵令嬢ですが歴史と格式、それと武の重鎮という格式が有るのでギリギリ許容範囲ですか。確かに面倒臭いですよね」

 

「当然ですが、彼女も本気で愛しています。だから側室も……三人で終わりにします」

 

 イルメラとウィンディア、それとニールでお終い。それ以上は無理、僕にハーレム管理など土台無理な話なんだ。そんな甲斐性は無い。恋愛レベルだって漸く一桁後半程度です。

 

「無理じゃないかしら?絶対に増えるわよ。擬態的には連携している各公爵家から一人は側室を迎えないと駄目だと思うわ。外から見た他人でも分かるのに、当事者が分からないって無いわよ」

 

 肩を思いっきり叩かれた。しかも何度も叩かれた。力加減こそ弱いけど、連続して叩かれれば痛いよ。距離感が親戚の叔母さんレベルになってない?

 一応大陸最大級の国家の重鎮と大陸最大の宗教の教皇ですよ、僕達はさ。前世は上司と部下で仲間だったけど、まぁそれは良いか。誰も見ている訳でもないし、誰にも言える関係でもないし。

 

「はい?イヤイヤイヤ、無理ですって?あーでも、ニールはローラン公爵からの紹介だから問題無い?ニーレンス公爵は、メディア嬢と懇意だしザスキア公爵とは本人と懇意だから……問題は無いな」

 

 腕を組んで深く考えながら話す。うん、間違いはない筈だ。公爵三家との関係は利害関係を含めて盤石なので、今更血縁関係を結ぶ必要は無いだろう。公爵三家と全て婚姻関係を結ぶ方が問題だって。

 貴族の血族関係は重いので無暗に親戚関係を広める方が問題なんだ。貴族は血族重視で親族間は助け合いや融通を利かせる通例が有り、揉め事を起こした場合に血族頼りで助力を求められたりする。

 つまり婚姻による関係強化は無いと考えている。うん、完璧な貴族社会の柵を踏まえた考えだな。自画自賛じゃないけど、基本方針としては間違ってないと思うよ。

 

「いや問題しかないでしょ?ここで打つ手を間違えたらエムデン王国で内戦勃発でしょ?なにを馬鹿な事を言ってるのよ。亡国の危機待った無し!じゃない」

 

 フルスィングで肩を平手で叩かれた。スパーンって凄い良い甲高い音が室内に響いた。本気の力加減で思いっきり叩かれた。避けられたけど、気迫に負けて身体が硬直してしまった。

 

「痛いよ!本気で叩いたでしょ?それに何で内戦なの?誰が誰と争うの?バニシード公爵は悪いけど政敵ではあるけど実力行使すれば負ける事はないし、他の侯爵達もどんな条件を積まれても味方はしないよ」

 

「あのね、良く聞きなさい。団長とザスキア公爵との関係性について、モア教も周辺諸国も相当細かい所まで調べ尽くしているのよ。それは対エムデン王国との交渉のキモだからよ。分かるわよね?」

 

 え?僕とザスキア公爵の関係性?気の知れた信頼出来る仲間だけど?見た目は若返ったけど、その性質はお姉さん気質というか頼りになるお姉様だよ。まぁ『新しき世界』の盟主とか余計な綽名も増えたけど……

 もしかして、モア教として新興宗教っぽい『新しき世界』を警戒してる?確かにネクタルという若返りの秘薬を問題無く普及して相応の女性が問題が少なく使用出来る世界にする為の布石だよ。

 十数年後に、イルメラ達が気兼ねなくネクタルを使える世界の土台を整える為に、ザスキア公爵にネクタルを大量に提供しているんだ。

 

 そもそもネクタルは不老でも長寿じゃない。永遠に若いけど寿命は変わらないので、そこまで問題にはならない。これが支配者連中が長寿とかだと、別の意味で永遠の独裁国家とかで問題だけどね。

 

「いえ、ちょっと分りませんが?」

 

 国家の対策の重要性をもう少し調べた方が良いと思うよ。確かに諜報の要と戦力の要の自覚はあるけど、二人の関係性は微妙じゃない?仲間割れでも狙っているとか?無駄でしょ?

 

「この、お馬鹿っ!」

 

 何度もフルスィングの平手打ちは受けないからね。最小限の動きで躱す。

 

「この、ド阿呆っ!」

 

 今度は平手じゃなくて足が出た。おぃおぃ、流石に蹴りは駄目だと思います。ヒラヒラの法衣を来てるのだから、足技は捲れるから危険ですって。見てもどうこうする訳じゃないけど、傍から見られてもね?

 一応軍属だから、身体は鍛えているので体捌きはソコソコなので女性の徒手空拳をいなせない訳ではない。そう思っていたのだけど業を煮やした、マリエッタが神聖魔法の準備を始めやがった。

 

 いやいやいや、流石に神聖魔法は駄目だと思うぞ。

 

 魔法障壁に魔力を全力で注ぎ込む。そろそろ周囲にバレるんじゃないかな?

 

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