年度末で仕事が山積みで自由な時間が全く取れません。
我が社はブラック企業だったのか、知らなかったよ。
取り敢えず一話投稿します。
時間を作りながら少しずつ書いていますので不定期連載になりますが宜しくお願いします。
深夜の密会?イルメラと二人、屋敷の庭に設えた東屋で抱き合う。僕の悩みを黙って抱き締めながら聞いてくれて、更に意見まで言ってくれる。
彼女の中では、リゼルは既に仲間認定で側室に迎える事も賛成だそうだ。彼女については、僕が甲斐性を示すだけで解決らしい。つまり側室に迎え入れるって事だな。
確かにリゼルは素晴らしい女性だけど、僕の中では仕事仲間として信頼している腹心なので恋愛的な目で見てはいなかったので複雑な気持ちだ。
ジゼル嬢とも不思議な関係性を結んでいるらしく『光と影』とか『表と裏』とか、どういう関係なのか微妙に分からないけど……
既に話し合いは完了しているらしいので、イルメラもジゼル嬢もリゼルを側室に迎え入れる事は確定事項らしい。僕の意見は?いや、有りませんし受け入れますけど。
『打算無き献身』と言われれば、確かにそうだし無碍にも扱えないし扱いたくもない。リゼルについては、イルメラの後に時期を見計らい側室に迎え入れる。
逆に、ザスキア公爵に対しては複雑な感情が有るみたいだ。
『独占欲が強過ぎる。最初は私達と共存出来るけど、何時か彼女の心が自身の幸せの歪みを感じてしまう』そして『聖母イルメラが浄化出来ない程の心の闇』
ザスキア公爵は、エムデン王国の諜報担当として暗部の長として長年勤めて来た。国家間の闇や汚い所を誰よりも身近で見て来たのだから、心が荒むのは仕方無いというか当然だろう。
人並みの倫理観が有れば受け入れがたい事も多く有っただろう。それを『国家の為に』という理由で、自分の心を押し殺して実行してきたんだ。
『心が病む』というのは、彼女が善性であり国益を叶える……国家と国民の為に汚れ仕事を受け入れて熟して来たという事なので、否定は出来無い。出来る訳が無い。
そこに薄っぺらい正義感とか一般倫理とかを持ち込まれて彼女を非難する連中が居たら……僕は激怒して、ソイツ等に何をするか分からない自信が有る。
得難い協力者、そんな綺麗事で彼女の力を求めた自分も同罪だろう。まぁ軍属だし、既に五桁単位で敵兵を屠ってきた自分の方が……一般的には罪深いだろうな。大量殺戮者な訳だし……
まぁ職務だからという言い訳は有るし、信仰するモア教の女神様からも罰せられないので自分の心の中の棚にでも置いておくから良いか。
反省も後悔もしていないので、今更『悔い改めろ』と言われてもね。何故?って言い返してしまいそうだよ。
そんな事より『思考の海』から浮き上がったら、イルメラが物凄い近くで顔を覗き込んでいた。鼻先3cm位の距離で驚いた。この悪癖は全然直らないし、直そうともしていない。
ぼやけていた視線を合わせると、ニッコリと微笑んでくれた。常時展開型の魔法障壁はダメージが無いと反応しないが、不用心でも無警戒ではないので良しとして下さい。
お互いの息使いも分かる距離感は一般的に『恋人の距離』だろうか?流石に気恥ずかしくなってきたので、視線を逸らす。恋愛初心者には厳しい距離感です。
「んんっ、深夜の空の旅に招待するよ」
気恥ずかしさを誤魔化す為の、内緒話をする為の最高の舞台に彼女を招待しようか……
◇◇◇◇◇◇
黒縄(こくじょう)を纏い二人の身体を持ち上げると、気持ちの良い夜風が頬を撫でる。地上よりも気持ち空気が澄んでいる気がするのは、シチュエーション効果だろうか?
見下ろす貴族街の灯かりが上下に星空が有るみたいで雅な世界だと思う。これをセラス王女に知られたら、同じ事をして欲しいとか言って来る。絶対に言って来るだろう。
そして、レジスラル女官長に王族の安全対策について十分に再考しろ!と説教を受けるまでがセットだな。だから教えないし知らせない。そもそも王女と物理的な距離が近くなるからしない。
これは、イルメラさんと二人だけの想い出にする……相談した内容も含めて、共に墓場まで抱えて行く。それ位の覚悟が必要な判断を下す事になる予感がするんだ。
「凄く……凄く綺麗ですね。地上に見えるの生活の灯、エムデン王国の平和の証拠ですわ」
イルメラが両手を胸の前で組んで目を潤ませて感動している。こんな景色を見られるのは初めてだろうし、他では見れないから余計に楽しいのだろう。
確かに眼下に輝く光の一つ一つに、人々の生活が有る。もう遅い時間なのに、人々は人工の灯かりの下で生活を営んでいる。
裕福な人々の幸せの光、勿論だが、贅沢をしている訳ではなく必要だから明りを灯しているんだ。繁華街の方が明るく数も多いのは……まぁ仕方無いね。
アレは必要悪とまでは言わないけど、必要とする者達の希望を叶えている訳だから……
「そうだね。眼下にも星空が見える様だね。上下に星空が見えるならば、まるで世界の中心に居るみたいだね」
まぁ貴族街の方の人工の灯は、何方かと言えば『防犯と見栄』だから平和と言われると、どうなんだろうか?見栄を張れるのは余裕があるからだから平和で間違いないのか?
薄暗い場所が犯罪の温床とは言わないが、目が届かないという意味では警戒が必要な場所?最近は地方の農村地帯でも余裕が出来て『日没とともに寝る』みたいな事は減っている。
照明に掛けるコストを負担できる余裕が生まれたから?生活レベルの向上は良い事だよ。エムデン王国は大陸で有数の豊かで治安の良い国となったんだ。
「ザスキア公爵の件だけど……」
言い難いのだが、何時までも相談を伸ばす事は出来無い。ここで躊躇したりナァナァで済ませば、後で取り返しの付かない事になるのは目に見えている。
今のザスキア公爵の貴族達への影響力は、ネクタル絡みも含めてアウレール王よりも大きいかもしれない。『新しき世界』の信奉者達は、それ程の団結力と影響力を持っているから……
リズリット王妃や女性王族達を跳ね返すだけの力を持っている。いや、持ってしまった。これは国家のパワーバランスの崩壊も可能、簒奪すら不可能じゃ無くなってしまった。
だから、ザスキア公爵の不安を取り除かないと……エムデン王国の未来が分からなくなるんだ。
「彼女の希望は、純粋です。リーンハルト様と結ばれる事ですが、そう簡単ではなくなりました。身分差は何れ問題では無くなったでしょうが、モア教の教皇様の件が……」
そう、マリエッタの介入が問題を複雑化した。彼女もモアの女神様の御神託によっての行動だから拒否など出来る訳も無い。『信奉する女神の御意志』に逆らう事など絶対に無い。
そしてモアの女神様だけでなく、妖狼族の女神ルナ様も同じ思惑で動いている。二人の女神様が危険視する、ザスキア公爵とは本当に何者なのだろうか?
そして、その危険視する相手を諫める事が出来るという女神様のお墨付き得ている、イルメラって何者なのだろうか?聖母?聖母様だよな?聖母イルメラ、良い響きだね!
「本妻が男爵令嬢で公爵本人が側室は有り得無い。貴族社会の常識の根底を覆す暴挙だろうね。伯爵と男爵令嬢なら数は少ないが前例も有ったし、アウレール王も許可した」
エムデン王国の国内での挙式だったら問題は少なかった。招待客も選べるし数の制限も可能だったし、何より自国の貴族同士の婚姻に他国が口出しするのは内政干渉だし。
逆に大貴族同士の婚姻の方が、国内の勢力図の書き換えに他ならないから問題視された。僕の場合は実績が有った事と、デオドラ男爵家と親族になっても大した影響が無い事。
そもそもバーナム伯爵の派閥構成貴族なのだから、婚姻関係を結んでも勢力図は殆ど変わらなかった。現状維持、その程度の認識だっただろう。
だが諜報部門の長と軍事の要である宮廷魔術師第二席の婚姻は……『簒奪の恐れ有り』と言われても反論が難しい。絶対の忠誠心?
目に見えない忠誠心とか、他人からは分からないという不確かな理由にしかならない。そう解釈されても反論が難しい。可能という事だけで、理由として成り立つから……
「本来ならば有り得ない事ですが、リーンハルト様が侯爵に叙されて宰相に任命されれば……身分差は無くなります。ですが、直ぐにではありませんし結婚式も延期になりません」
既に結婚式の準備は進んでいるので延期も取り消しも不可能。モア教の総本山で教皇自らが執り行う流れを今更変えられない。
エムデン王国としても国家行事扱いにしているから、中止や延期は国威が傷付くしモア教に対しても同じ。面子は丸潰れになる。周辺諸国から笑い者扱いか……
どう考えても問題しか無い。マリエッタの暴走が恨めしいが、その裏に女神様達の思惑を考えれば何をしても変わらない。絶対的な決定事項、女神の意思か?
「ジゼル嬢を本妻に娶った僕と結ばれるのは側室か愛妾、ジゼル嬢は婚姻後は伯爵夫人だが元の身分は男爵令嬢、本妻と側室の身分の逆転。そしてお家騒動の勃発か?」
「当事者に、その気が無くても周囲は騒ぎますわ。周辺諸国も、エムデン王国の力を削ぐ良い機会だと利用するでしょう」
イルメラさんの苦渋に満ちた顔は見たく無かったけど、聖母イルメラさんとしてもザスキア公爵の澱みを浄化出来るかの自信は無いのだろう。
彼女を両手で強く抱き締める。女神様の御神託通りに全てを彼女に任せる事は出来無いし、したくない。何か僕にも出来る事が有る筈だ。
丸投げは信頼じゃない、責任放棄だ。ザスキア公爵も大切な人だから、不幸にはさせない。僕に何が出来るか分からないが、イルメラ達と共に何とかするしかないんだ。