レズンの街の攻略、これは少し悪辣な罠を仕掛けた。元々居た連中と逃げ込んで来た連中との仲違いを仕掛けたんだ。作戦は大成功、逃げ込んだ連中はハイディアの街に逃げる為に用意した罠に引っ掛かった。
レズンの街で籠城し徹底抗戦される事を一番嫌ったんだ、だから自ら逃げ出す様に仕向けた。予想通りに持てるだけの財貨を積んで、自分達だけ逃げ出した。
まともに攻略すれば被害は甚大だった、最小限の被害で逃げ込んだ連中を炙り出して倒せた。だが被害は0じゃ無かった、彼等は味方から略奪し女性も連れ出したんだ。
逃げ出した敵は全滅させた、レズンの街の守備兵も全員支配下に置けるだろう。これでレズンの街の守備兵は千人、此処を落とすだけの兵力をクリッペン殿下は用意出来ない。
問題は連れ出された女性達の事だ、粗末な荷馬車に押し込まれているが外が見れる状況だ。暗いし最後尾だから状況を把握出来てないとは思うが、僕等が財貨を奪ったのは見えただろうか?
フェルリル殿が終了の合図をくれたので用心しながら近付く、敵に生存者は無く味方に死傷者は居ない完璧な勝利。女性が乗せられている馬車から見えない様に、財貨を積んだ馬車に触り空間創造に収納する。
逃げ出した貴族達は五人、既に全員が妖狼族により殺されている。急所に一撃だ、痛みを感じる前に即死だったろう。
魔法の灯りを複数頭上に浮かべ全体を昼間の様に明るくする。護衛の兵士達も何も出来ずに殺されたみたいだな、殆ど抵抗の跡が無い。
ゴーレムルークを二体錬金し、街道の脇に遺体を埋める為の大きな穴を掘る。貴族連中は首だけ保管し身体は兵士達と一緒に埋める、野晒しだと肉食のモンスターが寄ってくるし腐って不衛生だ。
兵士達は身ぐるみを剥ぐ、武器や防具等の消耗品はこれから必要になるだろう。レズンの街の連中に無償で渡しても良いかな、偽善だが必要な事だろう。
「僕は正当なバーリンゲン王国から依頼された、エムデン王国宮廷魔術師第二席、リーンハルト・フォン・バーレイ。君達に危害は加えない、レズンの街の住人で間違い無いかな?」
急に明るくなったと思えば知らない武装兵士達に囲まれている、彼女達の驚き振りは凄いな。もう少し配慮するべきだった、馬車の奥へと無理矢理下がろうとする娘が多い。
失敗した、フェルリル嬢かサーフィル殿の女性に声を掛けさせるべきだった。平民階級の者が他国の宮廷魔術師とかに話し掛けられるのは普通じゃ有り得ない、混乱に拍車を掛けたか?
今度はゆっくりと優しい声色(こわいろ)で丁寧に聞こう。同じ失敗はしない、苦手なんだよな、こう言うのはさ……
「落ち着いてくれ、危害は加えない。直ぐにレズンの街に帰してあげるから安心して欲しい」
今度は成功したみたいだ、慌てていた女性達の動きが止まった。だけど誰が答えるかで迷っている、視線で押し付け合っているみたいだし……
だが全員を確認する事が出来た。全部で八人、若い美人ばかりだが普段着から夜着とバラバラで、着の身着のまま連れ去ったみたいだな。
もしかしたら負け確定とヤケになっていたのか?追い込み過ぎたか?あからさまな罠だが逃げるしかなかった、徹底抗戦は無理な状況に追い込んだから。
「は、はい。私はムルティ、グラス商会の娘です」
おずおずと二十歳前後の女性が近付いて来た、身形は良いし見た限りでは怪我もしていないし最悪の暴行もされてなさそうだな。
両手を祈る様に胸の前に持って此方を伺っているが、警戒しているのが分かる。信用されてないのか?当然だな、連れ出した連中は皆殺しだし次は他国の宮廷魔術師が現れたんだ。
「君達は無事にレズンの街に送る、逃げ込んだ逆賊共は全員始末した。今後の防衛は正規軍五百人が増員されるから安心して良いよ」
「その、未だ少年みたいですが……本当にエムデン王国の宮廷魔術師様なのでしょうか?」
おお、初めてのパターンだ。エムデン王国領内で僕を知らない者は居ない自負は有ったが、他国じゃ知らなくて当然だよな。
しかも僕の外見は未成年の子供、いくら魔術師っぽい姿をしていても疑問に思うよな。うん、確かにそうだ。
頭の上に乗っている神獣形態のユエ殿が慰めるみたいに、肉球で頬をペシペシと叩く。ムルティと名乗った女性が驚いた後に少し笑った、緊張が解けたかな?
「証明する物はアウレール王から授かった指輪なんだけど、他国の国民じゃ分からないかな?取り敢えず後ろで穴を掘ってるゴーレムルークは僕が錬金し制御している」
指差す先で穴を掘る高さ8mの巨大ゴーレムに驚いたのか?放り込まれる死体に驚いたのか?折角緊張が解けたと思ったのに、今度は腰を抜かして座り込んでしまった。
緊張していたのか初めて気付いたみたいだし、悪い事をしたな。コクコクと首を上下に振って理解したとアピールしてくれたが、これ以上驚かしても悪いな。
彼女達は解放すれば縁は終わる、もう出会う事も絡む事も無いだろう。いや、ユエ殿。僕は彼女を苛めてないので頭を叩かないで下さい。後悔も反省もしています、今後は気を付けますから。
「フェルリル殿は何人か引き連れて彼女達を西門の前まで送ってくれ。僕等は東門に戻る、アチア殿を待たせてるからな」
さて、逃げ込んだ奴等が逃げ出したなら街の連中は僕等を受け入れてくれるだろう。来なければ明朝に使者を立てれば良いな、反発する理由も無いしノルマを一つ達成した。
◇◇◇◇◇◇
「あの、フェルリル様?」
「何だ?」
あの少年が噂に聞いたエムデン王国最年少宮廷魔術師様、噂話だから盛られていると思っていたのに本当に少年だったわ。
噂だと敵兵三千人を一人で殲滅した冷酷非情なサディスト、アウレール王のお気に入りで、それを理由に傲慢に振る舞うと聞いた。
でも私達に対して凄く気遣っていたわ、だから噂と全く違うから結び付かなかったのよ。平民に気遣う上級貴族様なんて居ないから……
「貴方達は妖狼族ですよね?何故、他国のリーンハルト様に従っているのですか?」
獣人族、特に妖狼族は気性が荒く粗野で危険な種族と聞くわ。人間より優れた身体能力を持ち、異教の神を崇める。
魔牛族も見た目は穏やかだが本性は同じ、だからバーリンゲン王国も彼等を懐柔する為に爵位を与え腫れ物を扱う様に対応している。
その妖狼族が四十人近くもリーンハルト様に従っている、嫌々じゃないわ。良く分からないけど、物凄く丁寧に対応してた。
フェルリル様やサーフィル様は、畏れ多い的な感じだったわ。絶対服従?有り得ない、獣人族が人間に仕えるなんて聞いた事が無い。
今だって私達を見る目は冷たい、強引に連れ出された被害者なのに労る気持ちは欠片も感じない。これが普通よね、私達だって極力関わり合いを避けるし……
「女神ルナ様の御神託により、我等はリーンハルト様に臣従した。巫女様も神獣様も懐いた、私もリーンハルト様の強さに服従した。お喋りは終わりだ、歩け」
神獣様?あの頭の上に乗っていた子犬の事かしら?
「あ、分かりました。でも他の馬車とかは?馬も……その、奪われた財貨は……どうなりましたか?」
私達の実家から強引に戦費として奪われた金貨を積んだ馬車が無いわ、有るのは私達が乗っていた馬車と貴族様達が乗っていた馬車だけ。
でも引いていた馬も居なくなっている、だから帰りは歩くしかないのね。財貨を積んだ馬車は……リーンハルト様達も徒歩だし奪ってはいないの?それとも先に行かせたのかしら?
ああ、見知らぬ馬車が有るわ。鎧甲や武器が満載ね、所々に血が付いているのは倒した兵隊さん達から剥いだのかしら?
「知らぬな。リーンハルト様はお前達の安全確保と、逃げ出した貴族の始末を優先した。馬車は確保する為に馬を切り離したら逃げた、リーンハルト様がパゥルム女王から依頼されたのは二つの城塞都市を落とす事、奪われた財貨など知らぬ。奴等の武器は再利用らしい、消耗品だし戦争中だからな」
私達の安全を優先?二つの城塞都市の奪還?どう言う事、お金に執着しないの?それとも他国の事だから些細な事だと無関心なの?奪い返しても、バーリンゲン王国に接収されるから手間を惜しんだの?
お父様が言っていたわ、リーンハルト様の御用商人のライラック商会は破竹の勢いで勢力を拡大している。その勢いは既にエムデン王国一番の大商人となり、バーリンゲン王国内にも勢力を伸ばしている。
他の商会がリーンハルト様に好条件で擦り寄っても相手にすらしない、強い信頼で結ばれた確固たる関係。その蜜月の関係に割り込むのは無理だって……
だけどライラック商会の傘下に収まれば、リーンハルト様の恩恵を間接的に受けられる。これは凄いチャンスだわ!
バーリンゲン王国がエムデン王国の属国になったのは事実らしいわ、お父様のグラス商会はバーリンゲン王国内では大手だけれど……
規模で言えば二番目、こんな小国でも一番になれなかった。でもリーンハルト様と繋がりを持ってライラック商会の傘下に入れば未来が拓ける、輝かしい未来が……
「ムルティ、早く歩け。他の女達も急ぐんだ。早くレズンの街に送り届けて、リーンハルト様に合流したいんだ」
「申し訳有りません。あの、私はバーリンゲン王国でも有数のグラス商会の娘です。リーンハルト様に協力出来ると思います」
先ずは伝手を作らなければ、このフェルリル様ならばリーンハルト様の側近ぽいから何とか……
「不要だ、後の事はアチア殿が担当するだろう。私達はハイディアの街を落としに行く、だから早く歩け」
軽く肩を押されて急かされた、まともに相手すらしてくれない。やはり妖狼族は噂通りの連中ね、リーンハルト様には服従しても他の人間は見下している。
明日の朝、レズンの街の代表や主だった者達はリーンハルト様達を迎えいれるわ。その時が最大で最後のチャンス。
私は救われた恩の御礼を言うチャンスが有る、その時に交渉するのよ。バーリンゲン王国の商売はイヴァノ商会じゃなくて、グラス商会がライラック商会の傘下に収まり仕切るのよ。
◇◇◇◇◇◇
レズンの街の城壁に朝日が当たっている、燃える様に真っ赤だ。戦火に晒される事を免れたんだ、良かったと思おう。
朝八時きっかりに東門が開けられ、中から数名の男女が出て来た。レズンの街の有力者達だな、降伏の受け入れだ。
武装は解除し護衛兵も居ない、問題は無さそうだ。昨夜の内に攫われた女性達を返したのも良かったのかな?
「私はレズンの街の代官、オルレゴンです。彼等は各ギルドの責任者達、そして商会を仕切るイヴァノ商会の会長です」
未だ若い、二十代後半位か?目の下の隈が凄いのは一晩中悩んだか、逃げ出した連中の尻拭いに奔走したのか?此方を卑屈に伺うのは、脅し過ぎたか?
「冒険者ギルド、レズン支部のリリーデイルです」
珍しい緑色の髪をしている三十代半ば位の妖艶な美女だ、腰に差した鞭はマジックウェポンだな。かなり高位の元冒険者だろう、いや現役かも知れない。
「魔術師ギルド、レズン支部のロボロです」
うーん、高齢だな。八十歳前後だと思う、身に纏う魔力の制御は見事だな。レベルも高そうだが、肉体の衰えには勝てないのか……手に持つ杖が本来の働きをしている。
「イヴァノ商会、会長のイヴァノです。私達はリーンハルト様に最大限協力する用意が有ります」
最後に商人か……レズンの街を経済的に仕切っているのだろう、オルレゴン殿よりイヴァノ殿の方が権力が強そうだ。雇われ代官と街の有力者、二つのギルドは支部長か、王都に本部が有る。交渉なら本部の連中かな?
冒険者ギルドに魔術師ギルドは今後は戦力として抱えたい、無下な扱いは出来ないか……
「レズンの街はパゥルム女王の支配下に置かれた、正当な王家の指揮下に入ったんだ。細かい話は、アチア殿としてくれ。僕等は明日の朝にハイディアの街に向かう。疲れたので僕と妖狼族達の部屋を用意して欲しい、部屋割りは僕の近くに纏めてくれ。アチア殿、後は頼みます」
レズンの街の行く末に僕は無関係だ、アチア殿の仕事の範疇だから素直に話を振ろう。僕は利権も金銭も便宜も要らない、面倒事は嫌なんだ。
「リーンハルト殿、任せて下さい」
満面の笑みで胸を叩いて了承してくれた、アチア殿を恨めしそうにレズンの街の有力者達は見ている。彼等も噂話程度では、バーリンゲン王国がエムデン王国に属国化したのを聞いているだろう。
そして今回の件で確信したんだ、逃げ込んだ連中への悪感情も手伝っているな。大分派手に略奪したんだ、あの馬車には財貨が山盛りだった。多分だが金貨に換算すれば十万枚位か?
新しい支配者に擦り寄りたいのは分かる、僕はエムデン王国の重鎮で宮廷魔術師第二席だからな。だが面倒事は全てアチア殿に任せる、その為の人材だ。懇親会も歓迎会も参加しない、直ぐに休みたい。
明日の朝にレズンの街を発てば三日後にはハイディアの街の近くに到着する、次の増援部隊と合流し直ぐにハイディアの街を落とす。ロンメール殿下を待たせているんだ、寄り道している猶予は無いんだ。
それに属国化して距離を置く連中と余り親睦を深めるのは嫌なんだよ、縁を強くすれば後々にお互いが困る。妖狼族の連中だけで十分だ、それ以上は不要なんだ。
「その、リーンハルト様を歓迎する為の懇親会を予定しております」
「我が魔術師ギルドからも、リーンハルト様に献上させて頂きたい魔導書やマジックアイテムが有ります」
「冒険者ギルドも同じです!珍しいマジックアイテムを用意しております、リーンハルト様に気に入って頂ける事は間違い有りません」
「我がイヴァノ商会は、是非ともリーンハルト様に御融資させて頂きたいのです」
直球で利益を前面に押し出して来たな、アチア殿が渋い顔をした。自分と言うかバーリンゲン王国より僕を優先されたからだ、実際に彼等からすれば僕と縁を結びたい。
属国化した国の家臣よりも大国エムデン王国の宮廷魔術師第二席と縁を結べれば、一気に引き立てられる。理由は分かる、だが優遇は出来ない。
のらりくらりとかわして、パゥルム女王の手腕に期待するしかないな。本当なら直ぐにでも、ハイディアの街に向かいたい位に心に余裕が無いんだよ。
「有り難う。感謝するが、僕は直ぐにハイディアの街を落としに行く。懇親会には参加しない、悪いが早く休みたいんだ。ハイディアの街を落としたら直ぐに王都に戻る、ロンメール殿下を待たせているからね。
本格的に軍を率いて残りの逆賊共を倒しに来るのは一ヶ月後だ、今は余裕が無いので細かい話はその時にでもしよう」
残念そうな顔だが、アチア殿が今はパゥルム女王の政治基盤を固める事が大事だからと彼等を説得してくれた。お陰で今日はゆっくり出来るだろう、明日からは強行軍だからな。
◇◇◇◇◇◇
「まさに忠臣ですな。ロンメール殿下を待たせない為に、レズンの街とハイディアの街を十日間で落とすつもりとは驚きです」
「難攻不落と言われたハイゼルン砦を僅か二時間で落としたそうだからな、レズンの街など難しくは無かったのだろう。ハイディアの街も同様にな」
「全長8mの全金属製の巨大ゴーレム、突如として街中に現れた立て札を持つゴーレム。遠隔地にゴーレムを錬金し操る、リトルキングダムと呼ばれる禁呪紛いの魔法。素晴らしいですな……」
ふむ、パゥルム女王の予想通りに街の有力者達が、リーンハルト殿に媚びを売り始めた。確かに敵に回すと恐ろしいが、今は味方で良かった。
俺との付き合いは明日迄だ、明日以降は知らぬ。俺はレズンの街を予定通りに仕切れば良い、此処は良い街だ。
場所を変えて領主の館の応接室に同じメンバーで集まった、これからが一仕事だ。クリッペン殿下派の奴等を一掃する必要が有る、リーンハルト殿の滞在中にだ。
「リーンハルト殿はお疲れだ。最上級の持て成しをしてくれ、妖狼族達も同じにだ。さて、パゥルム女王からの命令書を預かっている。今から読み上げるから良く聞いてくれ。
先ずは……逆賊共が逃げ込む前に代官宛てにパゥルム女王からの親書が送られた筈なのに、何故奴等がレズンの街に入れたのだ?」
「それは……」
「オルレゴン殿、答えてくれ。何故、貴殿は彼等に従ったのだ?」
反パゥルム女王派だから、クリッペン殿下を支持したのだろう。元々此処の領主はクリッペン殿下だ、つまり現代官はクリッペン殿下の臣下。
このまま代官にしてはおけない、それにレズンの街の商いを一手に引き受けて莫大な財を稼いだイヴァノ商会もだ。
クリッペン殿下に擦り寄り多大な恩恵を受けて荒稼ぎしたのだろう、だからパゥルム女王は二人を処分する事にした。
「イヴァノ殿が逆賊共をレズンの街に引き入れた、調べはついているぞ。証人も目撃証言も有る、二人は逆賊共と共謀したんだ!」
声を荒げ机を叩いて立ち上がり糾弾する、二人のギルド支部長達は静観の構えだな。下手に口出しして飛び火したら嫌だろう。
「ち、違います!彼等はクリッペン殿下の命令書を持ってました、彼はこの街の領主なんです」
「そうです。確かに街に入れましたが、平民の私達では断れません」
慌てて弁解したが、命令書まで用意していたのか。その命令書は使える、何を命じたのか知る必要が有る。どうせ資金援助だろうが、好きにはさせない。
冒険者ギルドと魔術師ギルドは我関せずか、支部長だし大した権限も無い。二つ共に戦争への参戦には否定的だし、何も協力はしてないだろう。
だが代官とイヴァノ商会の行動を見逃した責任は取って貰う、資金援助に人材派遣だな。頭のすげ替えと適度な締め付け、それと恩恵が大事だと指示されている。
「オルレゴン殿は代官の任を解く、パゥルム女王から王都に来る様にと厳命されている。イヴァノ商会については、逆賊共の片棒を担いだ事について裁かれる。厳しい沙汰が下されるだろう」
「そんな……馬鹿な事が……」
「一緒に逃げていれば……いや、逃げても無駄だったか……」
両手を付いたり頭を抱えたりして後悔しているが遅いんだ、パゥルム女王に従わない連中は……ミッテルト王女により厳しく粛正される。
あの冷酷非情な第四王女は本当に怖い、恐怖政治とは言わないが抑止力として十分に機能している。俺だって逆らえば殺されるんだ、宮廷魔術師達ですら処刑された。
「一応言っておくが、リーンハルト殿に泣きついても無駄だぞ。彼はレズンの街に興味など無い、パゥルム女王が兵士や住民達に被害が無い様に懇願したから今回の作戦となった。だから普通に攻めても余裕で勝てたのだが、わざわざ面倒な謀略を仕掛けたんだ」
リーンハルト殿に依存されても困る、悪いが悪役になって貰うぞ。どうせレズンの街どころか、バーリンゲン王国自体にも興味は薄いだろう。
パゥルム女王とミッテルト王女は、何とかリーンハルト殿を引き込みたいと考えているみたいだが……短時間しか接してないが、感じからして望みは薄そうだな。
だが依頼された事を誠実に実行してくれる、精々良い気分になって祖国に帰ってくれ。バーリンゲン王国は我々の手で復興させる、今は我慢の時期だ……