古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第577話

 明日の朝一番でバーリンゲン王国を出発し、我が祖国であるエムデン王国に帰る。長かった、漸くイルメラ達に会える。もうイルメラ成分が切れ掛かっている、一ヶ月保たないんだよ。

 今日は丸一日休みだ、ロンメール様の護衛はチェナーゼ殿と武装女官達に任せている。アドム殿とワーバッド殿達、僕の副官は建物周囲の警備をしている。

 僕を休みにして奥に籠もらせる意味の一部には、バーリンゲン王国からの接触の機会を減らす事も含まれているのだろう。勿論だが多忙だったから休めって方が比重は大きいのだろうけど……

 普通なら城塞都市を二つも陥落させる軍事行動と成果を出せば、一ヶ月単位での休みになる。だが僕の場合は負担が少ないから休まなくても大丈夫、運用コストが低いのも大きなメリットだ。

 大した負担でもなかったが、対外的には休みを取らせないのは待遇が悪いと引き抜きの理由にされる。エムデン王国は成果に対して正当な評価をしないと思われるからだ。

 だから暇だ。朝寝坊をしなさいと、イーリンに言われたから十時迄は寝室から出れない。添い寝が基本だったユエ殿も、リゼルが強引に連れて行った。

 久し振りの独り寝、広いベッドに仰向けで寝れば豪華な天蓋が見える。四方の柱は緻密な彫刻が施されて金箔で塗られている、暇だから気付いた。

 僕は余裕が無かったのかな?身の回りの物に無頓着だったよ、暇になって分かる事も有る。周囲の微妙な変化も色々な対策を練るのに必要、観察眼を鍛えるってヤツだな。

 時刻は未だ午前七時過ぎ、朝日がカーテンの隙間から差し込み室内を淡く照らす。今日の天気は曇りみたいだな、日差しが強くない。

 ゴロゴロと寝返りをしても時間が過ぎる訳じゃない、一人じゃ暇も潰せない癖に一人で戦いたがる不可思議な存在だよな僕ってさ?

 目を瞑っても完全に眠気が無い、大体八時間も寝れば眠気なんて無くなる。疲労が蓄積してる?無いよ、既に回復しているから全く無い。

 転生前は二十代後半、それなりに鍛えていたし疲労が翌日に残る事など無かった。今は更に若い十代だ、回復力は半端ない。若いって素晴らしい。

「暇だ、休みの僕が働くと他の連中も休み辛くなる。だから仕事は出来無い、休むのも仕事だから……」

 警備の為にロンメール様の部屋に行けば、チェナーゼ殿の邪魔をする。まさか暇だからって、イーリン達を呼んで世間話も無いな。

 ユエ殿も強制連行された、最近構い過ぎだし少し距離を置くべきだろうか?ウルフェル殿やフェルリル達も此処には呼べない。

 妖狼族はエムデン王国領に移住するから、今頃は引っ越しの準備で荷造りの真っ最中で忙しいだろう。ユエ殿とフェルリル、サーフィルの三人は先に僕と同行してエムデン王国に向かうけどね。

 妖狼族の大切な巫女が先にエムデン王国に移住する、それとなく僕の報酬希望として彼等の領地を頼めば良いな。

 条件無しだと過大評価されてトンでもない報酬が用意されそうで怖い、今だって十分に貰っているんだ。これ以上は心臓に悪いんだよ。

「結局やる事が無い、使い捨て魔法障壁の護符を量産するか。女性用にアミュレットタイプも作ろう、後は雷光のノルマ分を作って……結局休みの日は錬金して終わりか、本当に僕は詰まらない男だな」

 ああ、早く帰りたい。僕はホームシックだよ、イルメラ達の匂い成分が切れて禁断症状一歩手前なんだ……

 腹筋の力だけで起き上がる、十時迄は二時間半位有るか。雷光なら五本は出来る、趣味として錬金しよう。そう趣味としてだ、断じてする事が無いから仕方無くじゃない。

 そう、趣味なんだ。暇を見付けて趣味に興じる、素晴らしい余暇の過ごし方だな……

◇◇◇◇◇◇

 アウレール王からの召集命令、今回は前回と違い緊急召集ではなかったわ。昨日の内に伝書鳩以外に伝令兵も王宮に出入りしていたのを確認している、前回から半月後の召集。

 私にもイーリンから詳細報告は貰っている、新しい女が増えたらしい。まさか、リーンハルト様は幼女愛に目覚めていないでしょうね?ユエって女、リーンハルト様に絡み過ぎる。一度直接会って話さないと駄目だわ、半月目を離しただけで悪い虫が付くなんて……

 あと馴れ馴れしく擦り寄ってくる、ミッテルト王女と未亡人のオルフェイス王女め。自国の繁栄の為にとか、損得勘定でリーンハルト様に近付かないで欲しいわね。目障りな女が湧き過ぎて目眩がするわよ、抹殺してやる。

 物思いに耽っていたら、既に全員が謁見室に集合しているわ。胡散臭い目で私を見ないで欲しいわね、睨んだら視線を逸らされたわ。参加者は前回同様、私達公爵五家。筆頭のニーレンス公爵、ローラン公爵にバセット公爵。私と最下位のバニシード公爵。

 次に侯爵七家、筆頭のアヒム侯爵にラデンブルグ侯爵、モリエスティ侯爵にエルマー侯爵。グンター侯爵にカルステン侯爵は苦虫を噛み潰した表情だわ。最下位のクリストハルト侯爵は未だに罪を許されずに謹慎中、無能な後継者を処分し健全化を図らないと謹慎は解けないわよ。

 次が宮廷魔術師達、筆頭のサリアリス様は出席。第二席のリーンハルト様、第三席のラミュール様、第四席のユリエル殿の三人は不在。第五席のアンドレアル殿と第七席リッパー殿は出席。第十二席フレイナル殿も不在、ユリエル殿と一緒にハイゼルン砦に詰めているわ。

 最後は武官連中ね、近衛騎士団エルムント団長に聖騎士団のライル団長。常備三軍のアロイス将軍と、マリオン将軍はハイゼルン砦に詰めているから不在。コンラート将軍が戦死したので、彼の配下の兵士達はマリオン将軍の軍に正式に吸収されたわ。

「ザスキア公爵、随分と不機嫌ではないか?リーンハルト殿が戻って来るのに、何が不満なんだ?」

「あら?そう言うバセット公爵も疲労困憊みたいね、何が悩みなのかしら?」

 バセット公爵は目の下に隈を作っている、第一陣としての調整話は難航しているのは調べがついている。やはりグンター侯爵とカルステン侯爵は怪しい、非協力的なのよ。

 バニシード公爵との協力体制も微妙ね、お互いに邪魔はするな程度にしか話は進んでいない。主導権を握りたくても相手は最初から非協力的で自分が上に立ちたい。

 バセット公爵は領地から最大限の戦力を集めている、総力戦ね。派閥の連中から非難されていても、強引に動員しているわ。領地の治安部隊まで動員させるなんて、領地持ち貴族達の不満は凄いでしょう。

「バニシード公爵の方が不機嫌そうだな?アウレール王の前で不敬な表情はするでないぞ」

「ふん、ニーレンス公爵とローラン公爵は余裕綽々だな。全く忌々しい」

「我々に絡むな。王命を達成する為の努力が足りないんじゃないのか?リーンハルト殿を見習ってはどうだ?」

 嫌みの応酬、公爵五家は三つに分かれたわ。私とニーレンス公爵にローラン公爵、残り二人は同じ王命を受けた仲間だけど信用など全く無い競争相手よね。

 バセット公爵とバニシード公爵は、自分の力のみを頼りに王命を達成する必要が有る。だから助力が欲しい、でも誰も手助けなどしないわ。

 泥船になど乗りたくないのよ、一蓮托生も呉越同舟もお断り。派閥を構成する貴族連中も何かを感じたのでしょう、水面下で私達に接触してきているわ。

 今は派閥を移ろうとしている連中など受け入れられない、機に聡い連中だけど直前で裏切る奴等など信用に値しない。今は派閥構成貴族を引き抜く時期でもない、精々戦力を擦り潰しなさい。

「アウレール王が、いらっしゃいます」

 近衛騎士団の言葉に全員が姿勢を正し入り口を見つめる、現れたアウレール王は今回も御機嫌だわ。

 理想的な戦果をあげて、リーンハルト様が凱旋帰国する。最強の魔術師の帰還、この状況は外交にも使えるわ。敵対するなら、リーンハルト様が先陣を切って攻め込むぞ位の事は言えるわ。

 既にウルム王国には宣戦布告をし、周辺諸国にも外交戦を仕掛けている。返事を渋る周辺諸国の連中に、リーンハルト様の帰還を匂わせれば……

「よう!集まっているな」

 王座に座るアウレール王に一礼し我々も着席する、珍しくリズリット王妃も同席したわね。エリアル新女男爵の件で、私が色々と秘密裏に仕掛けたから火消しに奔走したみたい。

 あの女狐め、一度は負けたけど……いえ、負ける前にリーンハルト様に助けて貰ったけれど、今度は私が全力で潰すわ。私達に敵対した事を後悔しながら沈みなさい、実家と共にね……

「ゴーレムマスターが城塞都市を十日で二つ落とした、移動を考えれば実質的には一日ずつだな。無血開城に単騎で侵攻しての勝利、色々と楽しませてくれる」

 ニヤリと笑っているのは、単純な力ずくの戦い方以外の事が出来ると周囲に分からせる事が出来たからね。無血開城は隔絶した戦力差以外に交渉能力が求められる、リーンハルト様は民衆を煽動し敵を追い出したわ。

 それは極力街を破壊せず守備兵を殺さないと制限を設けられたから、リーンハルト様は戦いに関しては臨機応変に対応出来る事を内外に示した。

 ゴーレム軍団による力ずくな戦い以外も出来無い事は無い、総司令官としても最前線指揮官としても有能だと示したわ。一国を相手に単独で勝てる切り札をエムデン王国は持っている、この意味は重いのよ……

「パゥルム女王の我が儘で条件を付けられたのよ、街も守備兵も壊さず殺さずとか普通なら不可能よ」

「そうだな、俺もハイゼルン砦と同じ様に城塞都市内部にゴーレムを大量に錬金して攻め落とすと思った。アイツは民衆を煽動して敵を炙り出したんだ、絡め手も使いやがる。最後は単独侵攻だがな、ストレスでも溜めたのか?」

 笑いが止まらないって感じね、本当に御機嫌だわ。理想的な戦果にロンメール様がバーリンゲン王国に更なる追加要求を出して飲ませたらしいし……

 反対にバセット公爵とバニシード公爵は苦虫を大量に噛み潰した顔ね、忌々しく思っているのでしょう。もはや武力では絶対に勝てない、政治的に追い込んでも報復されたら確実に殺される。

 中立と敵対、味方にするのも既に厳しい。私達公爵三家が連携して、リーンハルト様を取り囲んでいるから貴方達が擦り寄る事はもう不可能なのよ。

「ゴーレムマスターは五日後に凱旋帰国する、これでバーリンゲン王国については心配事は無い。後は調整だけだ、ザスキアも頼んだぞ」

「ええ、勿論ですわ。バーリンゲン王国の逆賊の討伐と安定化、それとエムデン王国の守りに問題など有りませんわ」

 ウムウムと腕を組んで頷いている、後顧の憂いは無くなったわ。後は前に進むだけ、ウルム王国と旧コトプス帝国の残党共の殲滅。

 この言葉に、バセット公爵とバニシード公爵。グンター侯爵とカルステン侯爵が肩をピクリと動かしたわ。侵攻戦の準備と進捗状況を聞かれるから、どう答えるのかしら?

 あら、アヒム侯爵が渋い顔をしてバセット公爵を睨んでいるわね。もしかしたら助力を申し込まれているのかしら?それをこの場でアウレール王に知られたら断れない?

「さて、ウルム王国に対してだが……周辺諸国は直接的な戦いには不干渉だと話を纏めた。状況により勝ち馬の尻に乗りたがるかも知れないが、ウルム王国には絶対に協力しない」

 下手な協力は奪った領土の分配とかが発生するから、アウレール王は敢えて不干渉だと話を纏めたのね。エムデン王国の戦力だけで勝てる相手だし、最悪逃げ込んだ場合のみ受け入れを拒む様にした。

 少しでも甘い汁を吸いたい連中の口を封じる為に、リーンハルト様の存在が大きなウェイトを占めたのね。反発しウルム王国側に付くとは言えない、リーンハルト様の存在が不気味だから……

 実際に単独侵攻などしないけれど、可能性として全く無い訳じゃない。侵攻されて兵力を一方的に減らされる危険、これが抑止力ね。アウレール王は外交で切れる最強の鬼札を手に入れた……

 単騎で一国を相手に戦える魔術師、大量のゴーレム軍団、たった一人に振り回される。移動も補給も最小限で済む、だが相手は纏まった戦力で迎え撃つしか勝てない。

 隠密行動をされたら発見は難しい、たった一人を探し出す難しさ。見付けても相手は即座に五百体のゴーレム軍団を展開出来る、悪夢でしかない。

 侵攻特化魔術師、敵兵を減らすのみに割り切って行動されたら?相手にしたら発狂モノの不条理な相手。それをバーリンゲン王国は証明させてしまった……

「バーリンゲン王国の属国化、早過ぎましたな。ゴーレムマスター殿が、ウルム王国と残党共の討伐に参戦すると噂になっていますぞ」

「しかり、彼をバーリンゲン王国に向かわせるのは、少し問題が有ると思いますな。ウルム王国攻略に従軍させるべきでしょう」

 グンター侯爵とカルステン侯爵が言い出した言葉に、アウレール王が不快感を示した後に考え込んだわ。だけど私にはそんな噂話は聞こえて来なかったわ、国内には違う噂話を流している。

 リーンハルト様は私と一緒に二人でバーリンゲン王国に向かうのよ、私達の愛の侵攻作戦!その邪魔をする事は何人たりとも許さない、それにウルム王国と旧コトプス帝国の残党共には因縁深い方々を当てる事に意味が有るのよ。

 噂話ね?それは本当かしら、グンター侯爵とカルステン侯爵の願望じゃない?リーンハルト様をウルム王国攻略に参加させたい、そうすると誰が得をするのかしら?

「ザスキア、そんな噂話を聞いているか?それとも流したか?」

「全く有りませんわ。リーンハルト様は私と二人で、バーリンゲン王国に向かいます。これは決定事項であり反論は許しません、そんな噂話が有るなら上書きします」

「全くだ、いくら侵攻特化魔術師だとしても常に最前線に送り込む事などさせられぬ。少しは楽な方を担当させるべきだ、リーンハルト卿を使い潰すつもりか?」

「バーリンゲン王国の逃げ出した元王族共の謀略じゃないのか?奴等にとってはリーンハルト卿は最大の障害だ、余所に行って欲しいだろう。そして意に反して敵対してしまった、ウルム王国を確実に滅ぼしたいとな」

 ニーレンス公爵とローラン公爵が追従してくれたわ、彼等も第三陣として参戦する準備を進めている。手柄を奪われては困るのよ、野獣共にリーンハルト様まで合わされば手柄を立てる隙など全く無いわ。

 それに政敵のバセット公爵とバニシード公爵の弱体化は必須なの、早く戦場に行きなさいよ。行って戦力と財力を使い潰しなさい、他人に頼らず自分達だけで何とかしなさいな!

 少し落ち着かないと駄目だわ、一瞬だけど私達の蜜月期間を邪魔する敵だと思い激高してしまったけど……怪しいわ、この時期にその噂話は怪しい。

 前回の時に感じた違和感、グンター侯爵とカルステン侯爵は不可解な行動を取っているわ。でもこの噂話は杜撰だわ、直ぐに裏が取れる策とも思えない愚策。

 その噂話で彼等に損得が発生する?第一陣を任された二人のメリットとデメリット、当初の作戦にリーンハルト様を投入する事により発生する変化……

 まさか、この二人は自分達の兵力と財力を減らしたくない?または直ぐにエムデン王国に戻れない様に激戦地にリーンハルト様を送り込みたい?

 王都の守りを薄くしたい?まさか、まさかこの二人は……

 ニーレンス公爵とローラン公爵に目配せをする、彼等も頷いたわ。同じ結果に辿り着いた、アヒム侯爵も私を見詰めている。目を合わせれば頷いたわ、彼も気付いたのね。

 バセット公爵とバニシード公爵は成り行き任せみたい、リーンハルト様の参戦にバセット公爵は賛成。出来れば味方として同行したい、バニシード公爵はお断り、名誉の回復に邪魔だから。

「グンター、カルステン、誰から聞いた噂話だ?ウルム王国と旧コトプス帝国の残党共には、前大戦の関係者を当たらせる。積年の恨みを晴らす為にもだ、ゴーレムマスターは参戦させない。奴にはエムデン王国の守りを任せる、なにせ『王国の守護者』だ、国民達も安心するだろう」

 前大戦を経験した方々から復讐の機会を奪う、それによるリーンハルト様へ生じる反発。折角纏まっている両騎士団と宮廷魔術師達の仲に波紋を投じる、嫌らしいけど離間の計にしては未熟。

 少し頭が働く連中ならば見破れるわ、リーンハルト様は王命ならば従うけど、アウレール王は無能な王じゃない。お馬鹿な二人の考えなどお見通しでしょう。

 さて、二人のお馬鹿さんは誰から聞いたと答えるのかしら?噂は噂で特定は出来ませんとか逃げるのかしら?それとも配下が集めて来た噂話なので、特定は出来ませんとか?

「バセット公爵からです」

「第一陣にリーンハルト卿を加えて協力し、ウルム王国に当たった方が良い。それが最善だと言ってましたな」

 え?一斉にバセット公爵に視線が向かう、口を大きく開けて固まっているけど裏切られた感じには思えない態度だわ。

 感じからして何を言われたのか理解不能とかかしら?プルプルと震え出したけど、この場で釈明しないと大変よ。

 お馬鹿さん二人は真面目な顔だわ、この場限りの嘘を吐いた顔じゃないわね。最初から計画してますって感じだわ、バセット公爵を追い込みたいのかしら?

 激しい打撃音がした事により思考が止まる、音の発生源はアウレール王だわ。右手で机を叩いた、護衛の近衛騎士団達が配置を変えたわね。

 無表情なのに激しい怒りを滲ませているわ、これは不味いわね。バセット公爵の釈明次第では、ウルム王国への布陣が大きく変わる可能性が高いわ。

 思わずリーンハルト様から貰った『魔法障壁のブレスレット』を握り締めてしまう、それだけアウレール王から発する怒気が凄いのよ。

 冷たい無機質の感触、でも少しだけ心が温かくなったわ。リーンハルト様の思い遣りを感じたから、私は物理的にも精神的にもリーンハルト様に守られているわ。

「バセット、何か言え」

「アウレール王、それは……」

 何故、言い淀むの?まさか貴方まで裏切り者の売国奴じゃないでしょうね?バセット公爵の背後に近衛騎士団が二人移動し、剣の柄に手を置いたわ。

 返答次第では捕縛も辞さない、彼等からの殺気も凄い。国防を司る近衛騎士団だからこそ、相手が公爵本人でも手加減はしないのね。

 さぁ、バセット公爵。早く答えなさい!

 


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