古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第638話

 ブレスの街に向かう途中の野営で、クリスから夜伽の相手をする発言が有り、しかもイルメラが妾になる許可まで出している衝撃的な事実を知らされた。

 全ては、ザスキア公爵を警戒する為の事。彼女の年下好きの噂を真に受けてしまった、あの噂は政敵に対する擬態なのだが真実っぽく感じたらしい。

 確かに『人物鑑定』と言う心を読むギフトを持つ、ジゼル嬢も騙されたんだ。だからイルメラも、ザスキア公爵が黒だと判断を下した。ギフトも騙せる凄い自制心と言うか思考制御なのか、嘘が真実だと思われている。

 だが僕とザスキア公爵の関係が、自分の不足を補う協力者から家族と同じに変化した。血族的な家族じゃない、家族愛で結ばれた関係が一番近い。

 これを言葉だけで伝えたら、大変な誤解を受ける。家族=親族関係=婚姻の流れとなるだろう。僕の女性関係には配慮すると約束してくれた、アウレール王も下手したら許すかも知れない。

 上級貴族の当主本人達の婚姻は普通は有り得ない。格的に言えば、僕がザスキア公爵家に婿入りだな。伯爵であり侯爵待遇だが、公爵本人には敵わない。

 うん。どう考えても無理が有る。無理しかないな、考える事自体が無駄だぞ。

◇◇◇◇◇◇

 シャンヤンの街を出発して二日目、引き続き穀倉地帯を進む。街道を馬ゴーレムで走っているが、藁や薪を背負った農民と数人擦れ違うだけだったが……

「主様、商隊でしょうか?」

 後ろに乗っている、クリスが耳元で囁く様に質問していた。何だかくすぐったいので止めて欲しい、だが移動中なので効率的ではある。

 見通しの良い街道故に、1㎞先に進む少し立派な馬車が二台に幌馬車三台、それと騎兵が六人と幌の無い馬車に乗る傭兵風の連中が八人。

 騎兵も革鎧だし騎士連中じゃないか?商人には間違い無さそうだが、護衛が二十人以下って言うのも怪しい。荷物も幌馬車三台だけ、量も少ない。

「此方に気付きました。隊列を止めて、騎兵を後ろに集めました。護衛の連中も馬車から降りて、街道の幅一杯に広がりました」

「ああ、迂回も出来るが追って来そうだ。警戒してますって所に、馬鹿正直に突っ込むのも嫌だな。だが引き返すと奴等を襲撃しようと追い掛けて来そうだな。つまり奴等は追われる後ろ暗い理由が有る?」

 馬ゴーレムの速度を落とす。走るから歩くに変えたので、接触するのに五分以上は掛かる。相手の様子は待ちの姿勢から変えないが、それなりに立派な馬車から魔術師風のローブを羽織った二人が出て来た。

 杖を構えて此方を警戒している。もしかして僕等の素姓がバレたか?いや、バレたのに少人数で迎え撃つのも違う気がする。敵意に溢れてるが、追い詰められた焦りみたいな?

 未だ距離は800m以上離れているので、彼等の装備は分からない。だが貴族じゃない、それにブレスの街に向かっている。もしかして下級の貴族か、商隊か判断に悩む。

「主様、奴等は私達が二人組みとは分かりません。私が幻術を使い、彼等に近付き情報を探りますので、ゆっくり進んで下さい」

「分かったが、100m手前で一旦止まる。奴等、弓も持っているな。クリスは隠密状態のままで頼む」

「分かりました。では行ってきます」

 矢をつがえる事はしないが、弓を手に持っている。ショートボゥだから、射程距離は精々50m前後かな?敵意が見え隠れしているが、何故悠長に待ち構える?

 スルリと馬から下りた、クリスは既に視覚や聴覚では何処にいるか分からない。辛うじて土属性魔法で、大地に立つモノを感知しているだけだ。

 素早く走り奴等に近付いているのは分かるが、全く見えないな。奴等も気付いてない、僕の単独行動だと思う。子供一人だから油断を誘えるか?いや、子供とも分からない距離だろう。

「ふむ、そろそろ100mを切ったか……」

 お互いが緊張しているのが分かる。警戒しているが、最悪な敵対行動だけはしていない。剣の柄には手を置いているが抜かない、本当に最低限の配慮だけだな。活発に話し合っている、クリスが情報を得やすいかな?

 街道を塞ぎ戦う為に配置を終える、普通なら敵対行動と取られても仕方無いのだが軍人じゃなく民間だからな。緩い判断でも問題無いのか?

 人目も無い場所だし、お互い何とでもなるか?気配察知に反応、クリスが近付いている。僕に分かる様に近付いているな、この状況で驚かす様なふざけた真似はしないか……

『主様、奴等は奴隷商人です。騎士風の者が近付いている為に警戒しています。上手くやり過ごせれば問題無いが、揉めたら殺す。幌馬車の中に捕まえられた連中と、クロスボゥを構えた伏兵が居ます』

「なる程ね。エムデン王国もバーリンゲン王国も奴隷は禁止している、非合法な連中だな。罪を自覚して、それを隠蔽する用意もしているか。敵認定だな、話してはみるが間違い無く攻撃してくるだろう」

『奴等、奴隷狩りの帰りです。当然ですが違法であり、強制的に何人も捕まえています』

「ああ、奴隷狩りの帰りに騎兵と遭遇すれば警戒もするか。それが騎兵……正規兵の可能性が高くても殺す選択を取る。戦時下で荒稼ぎする無法な連中だな」

 もし僕が騎兵で正規兵なら、不審な行動をする商隊を見逃す事は出来無い。この場で引き返すとか迂回する事は……いや出来るけど、職務に忠実ならしないしプライドで逃げ出す事を嫌がるか。

 彼等は僕が逃げ出しても迂回しても構わない。調べられても単独行動だったら始末すれば良い、逃げる前に増援や報告をされるのが嫌なんだ。

 幌馬車の中身を確かめられたら困る。だが街の中か隠れ家かに逃げ込めば問題無い、威嚇行動でも逃げずに近付く僕は、彼等からすれば最悪の選択をして殺される愚か者だな。

「近付いて調べる。捕まった連中は解放、奴等は全員始末する。だが馬車の中の連中には、倒すにしても詳細を聞く必要が有る」

 誰の命令か?単独犯か?何処に連れて行って誰に売るのか?もしもエムデン王国に購買客がいるならば、捕まえて処罰しなければならない。

 確かに過去には、旧コトプス帝国に仕掛けられた戦争に勝ち、相手の国の連中を奴隷として酷使した。そうしなければ国力は回復せず、国民達の気持ちも収まらなかっただろう。

 奴等の略奪部隊は頻繁に我が国に押し入り、略奪の限りを行っていた。その時に奴隷として連れ去られた連中も多い。男手を戦争で取られ、残されたのは老人と女子供だけ……

 その不足した労働力を奴隷で補ったが、国力の回復した数年前に全ての奴隷は解放された。だが未だ当時の旨味を忘れられない輩が居るんだな。

『隙間から覗きましたが、幌馬車の中には女子供とクロスボゥを構えた傭兵が各一名。馬車の方はカーテンが閉められていたので不明です』

「奴等が攻撃して来たら幌馬車の連中を始末して、女性と子供達の保護をしてくれ。僕は魔術師じゃなく騎士の従卒っぽい格好で近付く。その方が油断するだろう?」

『分かりました。主様の行動に合わせて、幌馬車を占拠し捕らわれた連中を守ります』

 そう言うと気配が急速に遠ざかる。声は聞こえたが、姿は全く確認出来なかった。感知魔法で辛うじて捉えていただけ、クリスの隠密能力は磨きが掛かったぞ。

 準備は整ったので、ゆっくりと馬ゴーレムを歩かせる。ローブの内側にハーフプレートメイルを錬金して着込む。ローブをはだければ、騎士か騎士見習いには見えるだろう。

 腰にはロングソードを吊す。魔法迷宮バンクを攻略していた初期の頃の格好だ、本当に久し振りだな。あの頃は勧誘が酷くて、身元を隠す為に軽戦士の真似をしたっけ。

「天下の街道で道を塞ぐとは何事か?」

「これはこれは騎士様でしょうか?何故御一人で、この様な場所に?」

 傭兵の隊長らしき中年男が丁寧な口調で聞いてきたが、貼り付けた笑みに嘲(あざけ)りが隠し切れてない。僕の顔を見るなり表情を変えたのは、子供一人など何とでもなると思ったのだろう。

 さり気なく半円形に包囲網を敷こうと少しずつ動いている、此方は騎乗したままだからクロスボゥの良い的だな。しかし未だ馬ゴーレムに気付かないとは……

 無駄に造形に拘ったし、馬ゴーレムより僕の動きに注目しているからか?魔術師二人は呪文詠唱の準備もしないで様子見を決め込んでいるのは、出番は無いと思ってるのか?

「軍規故に教えられぬ。貴様等こそ、戦時下に移動とは何が目的だ?只の商人にしては物々しい警備……」

「餓鬼の知る事じゃないぜ!俺等に会った事が不幸だったと諦めな」

 殺る気満々だったからか、全てを言う前に遮られた。近距離とは言え、未だ剣の間合いじゃない。だがそれなりに素早くロングソードを抜くと、切り掛かって来た。

 騎乗する僕にロングソードを振りかぶってどうする?普通は突きだろう。足を切って逃げられない様にしてから拷問か尋問か……甘く見られたモノだな。

 八人中正面と左右の三人が切り掛かって来たが、表情に驕りと慢心が見え見えだ。やはり即死させずに痛め付けるつもりだったか?まぁ此方の対応も予定通りだけどね。

「山嵐!」

「くひゃ?」

「あれ?何で、俺の腹に穴が……」

「馬鹿な……騎士見習いの餓鬼が魔法だと?」

 地中から生えた鋼鉄の刃が傭兵八人を貫く。自分達が負けるなど欠片も思わなかったのだろう、その目は驚愕の為に見開いていた。鋼鉄の刃を魔素に還えすと一斉に崩れ落ちる。

 僕の攻撃魔法を合図に、クリスが幌馬車の中の伏兵を倒した。短期間に連続で幌馬車から悲鳴が上がる。しかも血飛沫が幌を内側から真っ赤に汚した……

 捕らわれていた連中は阿鼻叫喚なのだろう、女性と子供特有の甲高い声が響く。腰が抜けて幌馬車から出られないみたいだし、トラウマにならなければ良いが……メンタルケアも必要かな?

「アイアンランス!」

 急いで杖を構えて呪文を唱え始めた魔術師二人に、各三本のアイアンランスを撃ち込む。攻撃力が高過ぎたのか、心臓付近に三個の貫通穴を開けて後ろに倒れた。

 この時点で外に居た連中は全滅、幌馬車の中は攫われた連中しかいない。それなりに立派な馬車の中の連中と、お話ししないと駄目だな。

 カーテンの隙間から此方を伺っていたのは知っているが、どんな連中か迄は分からない。僕と窓越しに視線が合った後、慌ててカーテンを閉めた。だが見逃さないぞ!

「クリエイトゴーレム!ゴーレムポーンよ、その馬車を拘束し扉を破壊しろ」

 合計二十体のゴーレムボーンが、各十体ずつ馬車を囲み片側の扉を引き剥がす。情けない声を上げながら、中から人が飛び出して来た。

 小太りの中年男にハンサムだが酷薄な感じの青年、猫背で卑屈な感じの青年。あと痩せぎすの老人が二人。皺が深く刻まれている、細目なので目を閉じているみたいだ。

 更に後から三人の女性が、落ち着きながら馬車から下りた。感じからして没落令嬢かな?汚れのない簡素なドレスを着ているが、手錠を嵌めている事で待遇が分かる。

 売値の高い奴隷だから、幌馬車でなく馬車に同乗させていた。彼女達は奴隷狩りで捕まった訳じゃなく、違法で売られた可能性が高い。

 しかも家族か親戚か、または実家が罪を犯し取り潰されて騙されて売られたか……その絶望に染まった目を見ただけでも理解出来る。

 バーリンゲン王国は簒奪によるゴタゴタで多くの貴族が罰せられ家が取り潰された。原因に関係している僕は……最悪だな、全く嫌になる。

「答えろ。お前達は違法な奴隷商人だな?誰に頼まれて何処に運ぶ?それとも誰に売る?黙秘しても無駄だぞ、拷問は慣れている。楽に死ぬか苦しんで死ぬかの二択だ」

「おっお前は、魔術師か騎士かは知らんが、俺達はバーリンゲン王国の上層部と懇意にさせて貰ってるんだ。お前など、直ぐに首に出来るんだぞ。だから、早く立ち去れ。そうすれば……」

 バーリンゲン王国の上層部?人身売買に絡む奴等が、国家の中枢に居るだと?嘘じゃなさそうだ、この期に及んで嘘を吐く胆力は無さそうだし。

 街道の進む方向だとブレスの街だ。あの街に関連する上層部なんて、コーマしか居ないぞ。奴が女子供や没落貴族の令嬢の奴隷を集める?

 何か違う、そんな訳は無いだろう。欲しいのは戦力、彼女達は転売して利益は稼げるが戦争に直接貢献しない。

「馬鹿な。お前達が向かっていた方向には、ブレスの街しかない。あの街に関係している貴族の上層部は、コーマしか居ない。この戦時下で、女子供が必要?欲しいのは戦力だぞ」

「私達は報酬として集められています」

「馬鹿野郎!黙っていろ」

 む、死んだ魚みたいな目をした令嬢が教えてくれた。なる程、金の替わりに女性を与えるから協力しろか。だが今のブレスの街は、ストライスがコーマから奪い支配下に置いている。

 会話の流れからは、コーマに命令されて奴隷を集めているみたいだ。奴は空手形と前金で仲間を募っていたが、足りなくて女性も集めさせていた。もしかして、ブレスの街の現状を知らないのか?

 戦場では女性は悲惨な扱いをされる。報酬として配下や、傭兵達に与えるつもりか。酒と女と麻薬、効果は高いが反動も大きい。まともな軍隊じゃ取らない手段、指揮官としては悪手だぞ。

「貴女達は詳しい事情を知っていそうですね。僕が保護しますから教えて下さい。当然ですが、身の安全は保障します。実家に帰りたい場合は手配しますが……」

「私は親に売られました。帰りたく有りませんし、帰れません」

「私は、親兄弟もバラバラ。実家は取り潰されましたので、帰る家は有りません」

「私の家族は、彼等に殺されました。身内など、もう居ませんわ」

 重い、重過ぎる。この三人の境遇は同情するしかない悲惨さだよ。これじゃ絶望して言いなりになるのも分かる、反抗する気力が無いんだ。

 奴隷狩りの部隊だが複数居る可能性も有る。正直、報酬として兵士達に与えるには数が足りない。令嬢三人は、それなりの貴族か高名な冒険者か魔術師用だな。

 まぁコイツ等の細かい事は聞かなくても大体分かった。生かしておくのも面倒だが、バーリンゲン王国の連中に引き渡して調べさせるか……

「君達の処遇について、僕が何とかする。信じられないかも知れないが……」

「エムデン王国宮廷魔術師第二席、リーンハルト卿ですわね。私も貴族の端くれ、我が国の宮廷魔術師との模擬戦を見ました」

「本当に単独でレズンの街とハイディアの街を攻略したのですわね。嘘だと思っていましたわ」

「貴方達が、バーリンゲン王国に干渉しなければ……私達は、不幸にならなかった!」

 何故か雲行きが怪しい会話になって来た。不幸な淑女の原因が僕だと思われている、三割は事実だが少し辛い。僕だって暗殺され掛けたし、貴女達の国の為に身を粉にして働かされているんです。

 他の男達も、彼女達が何を言っているのか分からない感じで惚けている。辺境の街道で出会った子供は、他国の重鎮で一人で居ました。

 確かに訳が分からないだろう。だが自分達が危険な立場なのは理解しているみたいで、ソワソワしていると思って注意していたが……一斉に走って逃げ出しやがった。

「止まれ!さもないと攻撃するぞ」

 一応警告した。若い男二人は左右に分かれて逃げ出し、中年は一瞬迷って右に逃げた男を追って行った。老人二人は、真っ直ぐ街道を走っているが遅い。

 街道を逸れて障害物となる岩や樹木の有る方に逃げ込むのが正解なのだが、残念ながら見通しが良いので逃げ切れないんだよ。

 大人しくしていれば、拘束しバーリンゲン王国に任せようとしたんだが……無許可の人身売買は極刑。どうせ捕まって処刑なら、万が一の確率でも逃げたいって事か……

「警告はした。止まらないなら倒すだけ……アイアンランス!」

 両手を広げ鋼鉄の槍を複数浮かべ、三方向に逃げ出す連中に標準を合わせる。一人当たり三本、必殺の構えだ。此方を振り向いた中年男が、恐怖で足をもつれさせて転んだ。

 その場で両手を上げて降参すれば命は取らないのだが、慌てて起き上がり走り出した。どうやら降参はしない、あくまでも逃げるのか……

 無言で振り上げた手を下ろす。真っ直ぐ目標に向かったアイアンランスが、逃げ出した男達に全弾命中。勢い余って貫通したが、即死だろう。

「さて、クリス」

「はい、主様」

 戦闘は終わったから驚かせても良いって訳じゃないのだが、気配を絶って真後ろから声を掛けるのは止めてくれ。

 絶望感溢れる淑女三人も普通に驚いたぞ。人間ってさ、どんな状況でも感情でも、理解出来無い事に遭遇すると驚くよな。

 クリスに悪気は無いか薄いのだろうが、周囲から見て呼び出した相手に驚かされる恥ずかしさは知って欲しい。何とか耐えたが、何時か人前で驚きそうで怖い。

「奴等の持ち物を改めてくれ。奴隷売買に関わる物や顧客のリスト、あと資金になり得る物は全て頂く。死体は何時もの通り埋めるから宜しく」

 そう言って、ゴーレムルークを錬金し大穴を掘らせる。今回は二十人以下だから、そんなに大きく深くなくても良いだろう。気付けば追い剥ぎみたいな真似も慣れたものだ。

 手際良く物色し終わった死体は、ゴーレムルークが摘まんで穴の中に入れる。この時点で幌馬車から、女子供達が出て来たが多いな……三十人位いるぞ。

 下は十歳前後、上は二十代後半と思われる。容姿は全員普通以上だが、身なりから全員平民だと分かる。一部血だらけなのは、クリスが倒した弓兵の血飛沫を浴びたのか……

 彼女達の反応は様々だ。年上の女性に縋り付く幼い子供達、他の女性達を守る様に前に立つ気丈な者。諦めて座り込む者を宥める者。

 憎しみをぶつけられるかと思ったが、敵意は無いのは何故だろう?彼女達からすれば、僕だって訳の分からない襲撃者だろう。

 怪我人は……居るよ。大怪我じゃないが、顔を殴られたのか腫れたりしている。反抗的だったので、暴力で黙らせたか?

 治療にポーションを渡せば良いが、更に良く見れば何人かは腕や足にも痣も見える。暴力は日常茶飯事だったみたいだが、商品に手を出す最悪な行為はしてないか……

「僕はエムデン王国宮廷魔術師第二席、ゴーレムマスターのリーンハルト・フォン・バーレイ。パゥルム新女王の依頼により、元殿下達の討伐に来ている。君達は保護するので安心して欲しい」

 その言葉に一斉に土下座するのは止めて下さい。この国の貴族は選民意識が高そうで同じ事をやらせていたのかも知れないが、僕に対して同じ事をされても困惑しかない。

 だが、ブレスの街の襲撃を前に大量の民間人を保護してしまった。此処で解放しても無意味なんだ、無事に帰れるかも分からない。

 困ったな、どうしよう。一緒に連れては行けないし、誰かに任せる訳にもいかない。拠点を作り待機して貰い、ブレスの街を攻略してから迎えに来るのがベストだろうか?

 


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