Fate/GrandOrder 異邦の小鬼殺し 作:痩せた骸骨
目的の村よりも近い丘に到着した立香達。
魔獣を飼い慣らした賊に襲われる道中だったが、キャスターが肩慣らしと称して一人で撃退してしまった。
歯応えがねえヤツらだと愚痴っていたが、こうして無事にたどり着けたので良かったことにしよう。
それよりもゴブスレがこっちに着いてからしきりにマシュの方を見ていた、というより盾の方を気にしていた様子だった。
「もうすぐ目的の村に到着するよ、立香ちゃんの健康状態も良好だ」
「いつもありがとう、ロマン」
ロマニの緩く明るい声が届き、少し気が緩んでしまった。もうすぐとはいえ、わずか数十分の距離を歩くだけで何度も襲われ、気が休まることはなかった。
ため息をついていると前方を歩いていたゴブスレが振り向いた。
「代わりが必要だ」
自分の肩を揉んでいた立香が呆然として声の主を見た。
マシュと向き合いながら提案を出すゴブスレ、唐突だったのでマシュは少し驚きはしたが話しが見えず、頭を傾げていた。
「代わりとは何ですか、ゴブリンスレイヤーさん」
「盾だ」
盾、それはマシュが持ち運んでいる大きな十字架と円卓が組み合った宝具。背丈を越え、身体を隠してしまうほどで、サーヴァントでなければ振り回すこともできない代物だ。
その武器にゴブスレは問題を感じて相談してきたようだ。しかし、その無遠慮な言い草にマシュは俯いて立ち止まってしまった。
心配になった立香が止まったのに気づいたのかゴブスレも歩みを止めていた。
「……それは、私が先輩の足手まといだからですか」
「違う」
「えっ?」
思いもよらない返答だった。ゴブスレはマシュの実力に不満はなく、ある点が気になっていたようだ。
盾の替わりを要望する意図がわからず、どう答えたものか思案に暮れているとキャスターが近寄ってきた。
「なにが問題なんだ、ゴブリンスレイヤー」
「洞穴で振り回すには盾が大きすぎる」
歩みを再開しながらキャスターの疑問に答えたゴブスレに、立香達も歩き始めた。
「代わりってのはその為か?」
「進退を決めるのに動きにくい、小さな盾が必要だ」
「どっかで調達するより作った方が早くねえか?」
「強度が問題だ、調達して武装を揃えればいいが、なければ別の手を考える」
「なら調達はオレがやった方がいいな、キャスターとは言えど足の早さは変わらねえからな」
「頼めるか」
「いいぜ、合流地点は巣穴の前で構わねえか?」
「構わん」
杖を抱える様に腕組をしているキャスターとゴブスレが段取りを話している間、立香はマシュの近くに寄り添い様子を伺った。
少し俯き気味だが、なにかを考えるように手を口に当てていた。
「ゴブスレが言ったことが気になる?」
「先輩。いえ、ゴブリンスレイヤーさんの説明は納得できるものでした。……ただ」
「何を考えているのか、でしょ?」
「……はい」
兜のせいで表情が見えず、寡黙さ故に言葉が少ないゴブスレの距離感が掴めないでいるマシュは悪戦苦闘を強いられていた。
当の本人はなんとも思っていないのか、特に慰めの言葉を掛けることはない。
しかし立香はゴブスレが時折こちらに視線を向けていることに気づいていた。道中の移動でもこちらの歩幅に合わせて歩き、側を離れないようにして行動を共にしている。
盗賊に襲われた時は真っ先に前に出て立香達を守ろうとしていた。
立香はゴブスレの性格に気づきつつあったが、マシュはまだまだ時間がかかりそうだ。
「気にしなくても良いんじゃないかなマシュ、彼は会話を好む性格ではないし、他のサーヴァント達と揉め事を起こしてないからね」
「ドクター、ゴブリンスレイヤーさんが悪い人ではないのは理解しています、ですがその」
「言いづらいをズバッと言っちゃうのが苦手?」
「……そうです先輩」
苦笑いを浮かべたマシュの気持ちは分かる。
ロマンも共感しているのか、困り顔でため息をついていた。
「俺がどうした?」
話が聞こえていたのか、ゴブスレが立ち止まってこちらを待っていたようだ。
いつの間にか離されていて、立香達は小走りで距離を詰め寄った。
キャスターは話の内容が分かっているのか笑いながらマシュに耳打ちしてきた。
「ゴブリンスレイヤーのことはあんま難しく考えんな、ありゃ裏があるというより言葉足らずなだけだ」
「そうなのですか?」
「ああ。ウチの師匠に比べりゃ、付き合いが楽な
キャスターとマシュが何を話しているのか気になって耳を傾けようとして。
「村に着き次第ゴブリンの情報を集めに回る」
ゴブスレが今後の事を唐突に切り出した。驚いて顔を見たが、相変わらず表情が分からない。
こちらが話し出すのを待っているのか黙して見ていた。
「他には?」
「身体を休め、情報を集めながら装備を整える。やることはある」
「装備って言っても剣は振り回せないよ?」
「ないよりはマシだ。有ると無いとてば勝手が変わる、常に守れるとも限らん」
「マシュが守ってくれるとしても?」
「
「分かった、そっちも休むんだよ」
「ああ」
イヤに現実的な提案だが、備えあれば憂いないしが実際に役立ったことを知っている立香は素直に聞き入れた。
話はそれだけだったのか、ゴブスレは静かに歩いていた。
「それでなんだけど」
「なんだ」
「ゴブスレは人と話すの苦手かな?」
「いや」
「その割には口数少ないけど」
「そうか?」
「お陰で分かりづらい」
「そうか」
「だから、少しずつで良いからもっと喋ってね」
「……」
口を閉じたゴブスレだが、彼が考え込んでいると立香は思った。
風が吹き、ゆったりと舞い落ちてきた葉が兜の隙間に入り込んだことを感じたのか、ゴブスレは手探りで葉を掴み取った。
「……善処しよう」
「ホントに?」
「ああ」
「じゃあさっそく喋ってみて」
「特に用はない」
あっれぇ!?
なにか語るのかと思っていた立香は肩透かしを食らい、半眼で睨んで無言の抗議を訴えてみたが効果はなかった。
「ゴブリンスレイヤー、立香ちゃんは趣味とか好きなものとか話すの待ってたんだよ」
「そうか」
「とういうわけで、リテイクしよう!」
「……」
ロマンが呆れ果ててため息をつきながらもフォローし、ゴブスレは再び考え込んだ。
「好き嫌いは特にない」
「趣味も?」
「ああ」
「じゃあカルデアで見つかるといいね」
「……そうだな」
ちょっと前進かな? 微かな手応えとも言い難い感覚を感じた立香は胸を撫で下ろした。
「先輩、ゴブリンスレイヤーさん、村の門に着きました」
いつの間にか先に行っていたマシュとキャスターがこちらを呼んでいた。
立香は振り返り、頷いて応えたゴブスレは並び歩き始め、村へと入っていった。