追記
脱字とか変換ミス見つけたので修正しました。
「?何だ、これ」
着替えの為に部屋に一時的に戻り、ドアを開けようとしたら、ドアの隙間に何やら手紙のような物が挟まれていた。
手に取り封筒の裏表を確認するが、差出人の名前も書いておらず、とりあえず中身の確認をする事にした。
「……『チェイテ城ディナー招待状』?」
「しっかり読んだわね、豚」
声のした方に振り向けば、立派な角──リツカちゃん風に言うなら悪魔的にキュートな角をお持ちのエリザベート・バートリーさんが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
「……えっと、こんばんは?」
「ええ、こんばんは。そう、もうこんばんはの時間なのよ!今日はもう帰って来ないんじゃないかって不安になって迎えに来ちゃったじゃない!」
「す、すみません」
勢いに圧されて、つい謝ってしまった。
正直、今日はたまたま帰って来れたから良かったものの、普段なら部屋に帰る事なんて滅多にないから、こういった招待状の渡し方は、少なくとも僕に対しては悪手だろうに。
「今ならまだ間に合うわ。ほら、行くわよ!」
「ちょっ……!」
僕の制止の声を聞かずに、エリザベートさんは僕の手を掴み歩き出す。招待状に「チェイテ城」と書いていたからレイシフトする気なのだろう。
…………レイシフトかあ。
まあ、今なら少しぐらい問題ないか。
僕は半ば諦めてエリザベートさんに引き摺られたまま、中央菅制室に連れていかれるのであった。
***************
「あれ、スバルさん?」
「リツカちゃん?何で、ここに……」
エリザベートさんに連行されて入ったホールには、リツカちゃんとカーミラさんがいた。
リツカちゃんが僕と同じ手紙を握っていたので、どうやら彼女も招待されたみたいだ。
リツカちゃんの隣に座り、顔を見れば絶望に満ちた目をしていた。
「り、リツカちゃん?」
「スバルさん……、スバルさんも逃げられなかったんですね……」
「え?…………あっ!」
リツカちゃんに言われて気付いた。
招待状の内容は「ディナー」。それを作るのは恐らく、いや絶対あの2人だ。
残念ながら、お世辞でも決して料理が上手とは言えない2人の料理をこれから味わう事になるのかと思うと、身震いする。
食堂で何度かロビンさん達が犠牲になる姿を目撃した事はあったが、まさか自分が食べる日が来るなんて……。
「おまたせ!料理の準備は万端よ!」
「今回はそれぞれで料理を担当したわ。私がマスターを、そこのドラ娘はスバル、だったかしら?を担当したから」
「私の方があの娘よりかはマシだもの」と、カーミラさんが言った瞬間、リツカちゃんはソッと目を逸らした。
ああ、どっちもどっちなのか……。
「それじゃあ、始めるわよ」
エリザベートさんがおもむろにベルを鳴らすと、騎士の人がそれぞれ僕達の前に蓋がされた料理を置く。
フルコースだろうから、まずは前菜、オードブルか。
なんとなく騎士の人が此方に同情の視線を向けてるように感じながら、蓋が開くのを見る。
「────」
目の前のオードブルに絶句した。
え、待って。オードブルが赤い。ひたすら赤い。緑が一切見当たらないんだけど。
リツカちゃんの方はどうなのかと、横目でそっと見れば、死んだ目で「……あれ、目の前に永遠結氷がある」と呟いていた。アレはアレでヤバい。
「どう?今回はオードブルから丹精込めて調理したの。拘りの一品よ」
「ちょっと目を離した隙に、見た目が永遠結氷みたいになっただけで、味は赤1色のやつよりかはマシよ…………多分。」
最後の方は自信がなくなったのか、カーミラさんは顔を背ける姿に苦笑する。
「リツカちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫、これは素材。これは素材」
どうやら自己暗示をかけて、やり過ごすつもりみたいだ。……でも、素材を食べるっていうのも、なかなか無い光景だと思うよ?
僕もいつまでも
フォークを持ち、葉っぱみたいな物を刺す。シャキッと、野菜特有の音が出るあたり、コレは本当に野菜なのだなと、戦慄した。
葉っぱ──多分レタスを、口に入れる。
「ぐっ……!」
口に入れた瞬間、なんとも言い難い臭いが、口の中に充満する。噛めば噛むほど、形容しがたい味が舌を襲う。
コレは本当に、元はただの野菜なのか!?
「ねえ、美味しいでしょ?」
期待しているのか、目がとても輝いている。正直オブラートを何枚包んでも、美味しいなんて感想は抱けないが……。
「…………は、はい」
だからと言って、バカ正直に不味いと言える雰囲気でもなかった。
カーミラさんから「こいつ、正気か……!」というような顔で見られてるが、もう訂正する元気もない。
隣から石を削るような音が聞こえる辺り、もしかしたら僕はまだマシな方かもしれないと、信じる……。
前菜をなんとか終え、次の品が準備される。
もう、あのオードブルだけで胃がいっぱいなんだけどな……。リツカちゃんの目も、ホールで会った時より絶望の色が深まっている。
スープは一見ただ赤いだけのものに見える。また赤か。
赤いスープ……、大丈夫きっとミネストローネとかトマトスープとかそういう──
「どう?このコーンポタージュ、自信作なのよ!」
コーンポタージュが赤いとか聞いた事ない!
どうやったらここまで赤くなる!?
さて、どうする。実はオードブルを食べた時点で、完全とは言わないが、ある程度無効にする事は可能だ。……可能、なのだが。
チラッと、リツカちゃんの方を見る。青い顔で頑張って、見た目が黒獣脂のスープを一生懸命食べている。
年下の女の子があんなに頑張っているのに、自分だけ楽するわけにはいかない。良心が痛む。
僕はスプーンを掴み、出来るだけ音をたてずに、口にスープを流し込む。
「…………ぅぷっ!」
頑張れ僕、舌で味わうな流し込め。咀嚼しなくていい分、オードブルよりよっぽどマシだ。もう、無心で(マナーは守りながら)スープを掻き込んだ。
「あら、豚ってばそんなにポタージュが好きだったの?おかわりあるわよ?」
「い、いえ、おかわりしたら、途中で食べれなくなりそうなので……」
嬉しそうな顔をしているけど、2杯目は駄目だ気絶する。
リツカちゃんも、なんとか全部食べきったようで、水を煽るように飲んでいる。気持ちは分かる。今、口にするもので一番美味しいのは、あらかじめ用意された水だ。
「あら、また水がなくなったわね。そんなに味が濃かったかしら……」
「んー、やっぱり東洋人とは味覚の感じ方が違うのね。もっとリサーチしとけばよかったわ」
味が濃い以前の問題なのだが、一々指摘する元気も度胸も、今の僕とリツカちゃんにはない。
フルコースなら確か大体10品程あるが、省略したりする場合もあるから、もうそれに期待するしかない。
「あ、でも口休めのソルベとか、ちゃんと用意してるから大丈夫よ」
あ、これ省略ないやつだ。
*************
なんとか、なんとかデザートまで行きついた……。
何故、ああも食べ物全て赤く出来るのか。あと、あの形容しがたい味を毎回出すあの手腕には、最早尊敬の念すら感じてしまう。
リツカちゃんも素材フルコースで、もう最終再臨してしまうのではないかという域に達している。
デザートは、どうかマトモで……。
「今回は私、ちょっと冒険してみたの。アナタ、タコ好きだったわよね?」
…………赤いゼリーの中にタコの足が見える。あと少しお酢臭い。
あとタコは特に好きではないです。
「タコのマリネをゼリーにしてみたわ!」
「うぐぅ……!!」
「スバルさん、しっかり!」
どう発想したら、そうなる!
とんでもデザートを出したエリザベートさんに、カーミラさんはヤレヤレとでも言うように、首を振りながらリツカちゃんにデザートの蓋を開ける。
「まったく、私の方が大分マシね」
「ワァ……、私スキルも上げられちゃうんです?」
「リツカちゃん、女の子がそんな顔しちゃいけない」
かなり渋い顔をしていらっしゃる。
カーミラさんが作ったデザートは何というか、見た目は普通に綺麗だと思う。
グラスいっぱいに輝石や魔石(カーミラさん曰くゼリーらしい)が引き詰められており、炭酸が入っているのか、シュワシュワとした泡と一緒に光輝いている。グラスの縁には聖晶片のような物が散りばめられている。
正直インテリアとかカルデア・キッチンの人達が作った再現料理とかならアリではないだろうか。
──まあ、カーミラさんが作ったという事実で、味はお察し状態なのだが……。
見た目が綺麗なだけに複雑な心境であろうリツカちゃんに、小声で話しかける。
「……リツカちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫、大丈夫。あとデザートで解放されると思えば頑張れるから……」
「(ダメだ、目が完全に死んでる)」
「スバルさん、これを食べ終えたら田舎に帰って結婚しましょう」
「リツカちゃんそれ完全にダメなやつ」
リツカちゃんはある意味遺言とも言える言葉を残し、ガリボリとゼリーらしからぬ音をたてながら、無心で食べ始めた。
残念だけどリツカちゃん、これが省略なしのフルコースなら、あと果物とコーヒーがあるんだよ……。
頑張るリツカちゃんに、そんな非情な事が言えるわけもなく、僕も目の前のゼリーを無心で食べ始めるのだった。
*************
なんとか残りの2品も終えました。
ちなみにデザートは、ゼリーはデザートらしく砂糖をきっちり入れたらしく、タコのマリネ以外にマグロの目玉と色付けの為にスッポンの生き血を使われていた事を明記する。とんだカオスだった。
もう全ての力を使いきった気分で、リツカちゃんと2人でぐったりと椅子に凭れ掛かった。マナー的にアウトだが、もう気にする元気がない。
エリザベートさんとカーミラさんは、僕達がフルコースを食べきってからこちらの方を、特に僕の方に何か期待するような目で見ていた。え、何、まだ何か食べさせられるの?
「どうかしらスバル、何かマスターに感じるものがないかしら?」
「具体的にはハートがキュンキュンしたり、子ジカの周りがキラキラ光って見えたりとか……」
「え、まあ、……感じるものはあると言えばありますけど」
ハートがキュンキュンというより、辛い戦いを生き抜いた戦友のような深い絆は感じる。
正直に答えたらエリザベートさんの目の輝きが増した。
「そうでしょ!?何たって私達が特別に企画をいっふぁーいっ!!!」
エリザベートさんが興奮して何かを喋っていたら、カーミラさんがビンタする勢いで口を押さえつけた。
「貴方達は何も聞かなかった。いいわね?」
無表情で淡々と言う姿に僕達は黙って頷くしかなかった。何か言おうものなら拷問されてしまう。そんな雰囲気が彼女にはあった。
……そろそろエリザベートさんが窒息しそうなので、解放してあげて欲しい。
*************
こうしてチェイテ城でのディナーは平和に終えたと言っていいか疑問だが、生きてカルデアに帰る事は出来た。
舌と胃に多大な被害を出しながら、気だるげにリツカちゃんと廊下を歩きながら、今回の事について話し合った。
「それにしてもエリちゃんは何を言いかけてたんだろ?」
「ああ、企画がどうとは言ってたね」
「あの2人がわざわざ協力するほどの内容って何だろう……」
最後の方でエリザベートさんが言いかけた言葉に頭を悩ませながら、先に廊下の角を曲がろうとしたリツカちゃんが急に立ち止まった。
「?リツカちゃん、どうか……」
「しっ!静かに」
声を抑えながら手招きするので、リツカちゃんの指示通りに音を出さないように、こっそり廊下の角を覗く。
少し離れた先にエリザベートさんとカーミラさんが何か話していた。
「ふふん、私の完璧な企画であの2人の距離も縮まったわね!」
「まさかあんな安易な作戦が上手くいくとは思わなかったわ……。『美味しい料理を食べさせて、2人の距離を縮めるわ!』とか言い出した時は、この
「失礼ね!……でも、まあ、アンタが協力してくれて正直助かったわ。おかげでスムーズに済んだし」
「……あの子の為だもの。その為なら嫌な自分とだって進んで向き合うわ」
「そこはお互い様よ」
軽い喧嘩をしながら2人はそのまま立ち去っていった。
なるほど、2人は僕達の仲を深める為、リツカちゃんの恋の応援の為に今回のような事をしたのか。
下を見下ろせばリツカちゃんが照れ臭さや嬉しさに、口をモゴモゴさせていた。
「マスター思いのサーヴァント達だね」
「──えへへ」
リツカちゃんは頬を緩ませ、幸せそうに笑っている。彼女達の絆は本当に眩く尊いものだと再確認した。
オリ主のエリちゃん料理への対抗するための術は、エリちゃんの料理の味を無効化するというより、自分の味覚を消すという手段でした。
英雄王の宝物庫ですら太刀打ち出来ない料理をオリ主がなんとか出来るワケがなかった。あと例え味覚消してもエリちゃんの料理の味は消えません。味覚を超えたナニカが舌を襲います。
エリちゃんの料理をどうにか出来るチート設定の小説が見たいです。絶対ハマる自信があります。