恋愛攻防戦争   作:雪苺

4 / 5

格好いいエミヤはいません。
弊カルデアのエミヤはうっかり成分多めです。

追記:誤字修正しました




エミヤは仲直りがしたい

 

 

本日も食堂にて美味しい料理を注文する。

カルデア・キッチンのメンバーが召喚されてから、カルデアの食事事情は本当に潤ったと思う。それまでレーションで終わらせていた僕が言うのだから間違いない。

 

「こんにちは、エミヤさん。今日の日替わり定食は何ですか?」

「ああ、お疲れ様。今日は鯖の味噌煮だ」

「では、それで」

「了解した」

 

いつもならこれでお膳を貰って終わりなのだが、今回は少し違うらしく、エミヤさんがお膳を渡しながら話しかけてきた。

 

「時にスバル、この後時間はあるかね?」

「ありますけど、エミヤさんがそんな事聞くなんて珍しいですね。お悩み相談ですか?」

 

半分冗談で聞いてみたら、エミヤさんは苦痛の表情を浮かべた。え、本当にお悩み相談?

 

「……相談したい事がある。先に席について待っててくれ」

「わ、分かりました」

 

エプロンを外しながらキッチンの奥に行くエミヤさんを見送った後、お膳を持ち直して席を探す。何だか深刻そうだし、出来るだけ人気のない席を選ばなければ……。

 

 

***************

 

 

食堂の奥が比較的空いていたので、そこでエミヤさんを食べながら待つと数分後に何かを持ったエミヤさんが此方に来た。

 

「待たせてすまない。これは相談料だと思って貰ってくれ」

「ありがとうございます。ブラウニーですね」

「ああ、仕事の片手間にでも食べてくれ」

「わぁ、めちゃくちゃ有難いです」

 

ブラウニーの包みを両手で掲げて、頭を深々と下げる。僕のその姿にエミヤさんが苦笑しているが、過酷なデスクワークをしている身としては少しでも糖分摂取する手段が増えるのは有難いのだ。

 

「まったく君は大袈裟だな。──それでは早速本題に入っても?」

「……ええ、大丈夫ですよ」

 

優しげな顔が一瞬で真剣な顔へと変わった事で、今回の相談がどれだけ深刻なのか物語っているようだ。その雰囲気に呑まれて、僕は固唾を飲み、体に力が入る。

 

「────したんだ」

「ん?」

「マスターと、ケンカしたんだ」

 

 

え、ケンカ?

 

 

「実はだな───」

 

 

 

 

 

そうあれは数日前の昼、昼食時のピークが過ぎた頃だった。

 

「エミヤ、ちょっといい?」

「ん?マスター、どうかしたのかね」

 

厨房の方にマスターが来るのは、珍しい事だった。おやつのリクエストなどはカウンターの方でいつも済ませていたからな。

 

マスターは周りの目を気にする素振りを見せながら、私の方へといそいそと近付いて来た。

 

「あのさ、エミヤ。空いてる時間の時でいいから私に料理教えてくれない?」

「君がか?確かに調理器具を渡したりして、催促をした覚えはあるが、また急じゃないか」

「その…………好きな人が思ったより料理が出来る人で、危機感を覚えたと言いますか……」

「……ほう?」

 

もちろん、彼女からの要望は了承したとも。迷惑なんかあるものか、むしろ何人か候補がいる中で私が選ばれた事は大変喜ばしく思うさ。

思えばここで、私の兄心というか一人の友としての気持ちが先走り始めてたのだろうな。

 

先に弁明が許されるなら、私とて別に他人に料理を教えるのは初めてではない。随分摩耗したとはいえ、そこは確かだ。だが、先述した通り私は気持ちが先走っていた。

 

そう、教えについつい熱が入ってしまい、通常よりもかなり厳しくなってしまったんだ。

 

今思えば、料理初心者のマスターは数日間よくあの修行に耐えた。並の初心者ならば初日の数時間で音を上げていただろう。

 

だがマスターも限界が来てしまった。

 

「まったくなっていない。ここは──が、─────こうで……?マスター、聞いているのかね?」

 

私がマスターの異変に気付いた時には、もう遅かった。

マスターは俯いて何かに堪えるように小刻みに震えていたかと思えば、勢いよく顔を上げて声を張り上げた。

 

「あれこれダメ出しばっか!確かに私、ダメダメだけど、少しぐらい良いところ褒めてくれたっていいじゃん!この教育ママ!!」

「誰がママだ!オレはマスターの事を思ってだな……!」

 

説得の言葉はマスターには届かず、彼女はエプロンを豪快に外しながら、去り際に捨て台詞を吐いた。

 

「エミヤのバーカ!服の色エリちゃんの料理カラー!」

「ふ、服の色を不吉な例えで言い表すのは止めないか!!」

 

 

 

 

 

「────という事がつい先日あってだな……。何故微妙そうな顔をしている?」

「いや、アレしなかったなって。『ホワンホワンホワン、エミエミ~』って」

「す、するわけないだろ!!」

 

「まったく、人をからかって……」と、小言を言っているけども表情を見るにやぶさかではない様子なので、これはいつかやるなと、確信した。

 

さて、冗談はこのぐらいにして、まず一つ言える事は「この弓兵、これを僕に話してよかったのか?」だ。話を聞く限り、リツカちゃんは他の人、特に僕に知られたくないような素振りの発言があった。これはバレたら更に拗れそうだ。

 

まあ、聞いてしまったものは仕方がないので、バレないように相談を終わらせるしか手はないのだが。

 

気遣い上手で、的確なアドバイスをよくする彼は、何故か時折こうやって変なミスをやらかしているように思う。このあたり彼もまた、「災難体質」とか「女難の相」とか言われる所以なのだろうな。

 

「?急に黙ってどうした?」

「エミヤさんって、基本タラシなのに変な所で女性の地雷踏み抜きますよね」

「……結構な言われようだな」

「いや、エミヤさんはドンファンだって聞いていたもんで」

「誰情報だ!?」

「メルトリリスさん」

「……君は彼女と仲がいいのか」

 

そう言ってエミヤさんは、とても意外そうな顔をして驚いた。

まあ、メルトリリスさんと接点があるように見えないとは自分でも思う。

 

「僕は主にプラモ作成とか手先の器用さがいる作業をして、メルトリリスさんが困った僕を見つけたら抱えて逃げてくれる。要はギブアンドテイクの仲ですね」

「マスターから逃げる時か……」

 

やはりマスターであるリツカちゃんは大事なのか、エミヤさんはあまりいい顔をしない。いや、マスターとしてでもあるが、一人の友人としていい気分にならないのは当然か。

 

だが、それは勘違いなので首を振って否定する。リツカちゃんはそこまでしつこく告白する事はないし、第一リツカちゃんから逃げるという条件をメルトリリスさんが承諾するワケがない。

 

「違いますよ。そのあとに来るメンバーからです」

「ああ……、それは、逃げたくなるな……」

 

ソッと2人で厨房の方を見る。丁度、厨房から顔を出していた頼光さんが此方に向かってにっこりと、微笑んだ。よもや聞こえていないよな……。

 

「……スバル、これに関しては私が言える事は1つだ。──生きろ」

「簡単に言ってくれるなぁ!」

 

直接的な攻撃はしてこないが、ほぼ毎日どこぞの姑よろしくネチネチと嫌味妬みを言われるのは精神的にかなり辛い。

是非とも僕の立場と代わって欲しい。

 

 

 

閑話休題。

危うく雑談だけで全てを終わらせるところだった。

 

僕が思うにだが、結局の所このケンカは相談してまでするような話ではないように思う。本人は深刻そうだが。

 

何故なら先程から食堂の出入口辺りでウロウロしているリツカちゃんが見えるからだ。リツカちゃんだってそこまで鈍感じゃないから、エミヤの言動は自分を想っての事だと十分理解しているだろう。今日中には仲直り出来ると思う。

 

まあ、彼女に背中を向ける形で尚且つ此方に集中しているエミヤさんは気付く素振りはないのだが……。

アーチャーって視野が広いイメージがあったのだけど……、というか鷹の目だか心眼とかそんなスキルお持ちじゃありませんでしたっけこの人?どんだけ悩んでいるんだ。

 

「それでスバル、君の意見を聞きたい」

「普通に菓子折持って謝ればいいのでは?」

「年頃の娘がそれで許してくれるだろうか?『もうエミヤのご飯なんて食べたくない!』と言われた日には、…………うっ!」

「なんか反抗期の娘との接し方に困っている父親みたいになってますよ」

 

正直この人は考えすぎなのだ。実際この話は菓子折一つで済むというのに。それだけ大事って事なんだろうけど

 

「もっと気楽でいいと思いますけどね」

「簡単に言うがな……」

「だって、リツカちゃんは悪意のない行為に対していつまでも根に持つ子ですか?」

「…………むう。確かに、そうだな……」

「でしょ。なので手早く終わらせましょう。おーい、リツカちゃーん!」

 

エミヤさんが渋々だが納得したので、手を大きく挙げて未だに出入口から此方の様子を伺ってたリツカちゃんを呼び寄せる。

 

エミヤさんも振り返って初めて気付いたようで、驚いた声を出していた。それだけこの悩みに真剣だったのだろうけど、エミヤさんしっかりしてくれ。

 

一方リツカちゃんは、僕に呼ばれたのに少し喜んだ様子で此方に駆け寄って来た。ただエミヤの側はやっぱりまだ気まずいのか僕の隣に座った。

 

「こんにちは、スバルさん!今日も好きです!」

「ありがとう。でも、今は僕の事より大事な用があるよね?」

「……スバルさん、全部聞いたの?」

 

リツカちゃんが少し顔を青ざめながら聞いてきた。やはり知られたくない話だったみたいだ。

ここで正直に答えようものなら事態はややこしくなる事必須なので、曖昧に答えるしかない。

 

「………………ケンカしたって事しか聞いてないヨ」

「そっか……」

 

おもむろに安堵した様子のリツカちゃんに罪悪感しか感じない。ごめんリツカちゃん、ホントごめん。

 

リツカちゃんはしばらく黙っていたが、あの出入口でウロウロしている時に決意を固めてたのか、思ったよりも早く口を開いた。

 

「エミヤ、昨日はごめんなさい。エミヤは私のために厳しくしてくれてるってわかってたのに……」

「……いや、私の方こそすまなかった。マスターの言うとおり少しでも褒めるべき所は、その場で褒めれば良かったんだ」

 

そこからの展開は早く、二人でポツポツとそれまでの反省点を言いながら謝り、仲直りした。

今リツカちゃんはニコニコしながら、エミヤが一応用意していたらしいブラウニーを美味しそうに食べている。

 

「仲直りしてよかったですね」

「ふ。キミのおかげさ。()()()()()話した甲斐があったよ」

「────……包み隠さず?」

 

エミヤの言葉に、リツカちゃんの動きがピタリと止まる。なんだか嫌な予感が……。

 

「ああ。スバルには昨日までの出来事を全て伝えて、相談に乗ってもらっていたんだ」

「それって私が料理の練習する理由も?」

 

これはまずいとエミヤさんに目配りしたが、この人散々悩んだ問題が解決した喜びが大きいのか、まったく此方に気付いていない。

この際、僕の目配りに気付かないのはいいから、リツカちゃんの表情をよく見てくれ。怖いぐらい無表情!

 

「エミヤさん、それ以上──」

「勿論だとも。相談する立場で、変に隠すのはよくないからな」

「…………」

 

──ああ。もう、僕に出来るのは今から起きる事の顛末を見ないように、彼らから目を背ける事しか出来ない。

正直、可能なら今すぐこの場から離れたい。

背けた瞬間、リツカちゃんの怒号が食堂全体に響き渡る。

 

「エ、エミヤのバカ!なんでよりにもよってスバルさんに言うの!バカ!鈍感!うっかり朴念仁!!」

「な、なんでさ──!」

 

リツカちゃんはエミヤさんを罵倒しながら、食堂から走り去ってしまった。エミヤさんは、せっかく仲直りした矢先にまたリツカちゃんを怒らせてしまった事に項垂れている。何で変な所で詰めが甘いんだろ、この人。

 

……とりあえず、エミヤさんは後ろに刀を構えた状態で佇む頼光さんから逃げた方がいいと思う。微笑みが怖い。

 

伝えるか迷って、結局自分の保身を選んだ僕はお膳を持ち、静かに席から離れるのだった。

 

 

 

 

 





お久しぶりです。
ちょこちょこ書きためてはいたのですが、更新出来るレベルではなかったので今になりました、すみません。
今月はもうちょい更新出来る予定です(予定)。
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