・今回は性転換ネタが入るので、苦手な人はこの話を飛ばすか、前半部分を読まない事を推奨します。
・前半と後半で書く時期が、大分空いたので、場合によっては加筆修正する可能性が高いです。
・今回キャラの口調にかなり自信ないです。間違ってたらすいません。
何度目かの強制送還にて数日ぶりに自分の部屋で眠った次の日に事件が起こった。
それは、早朝からリツカちゃんが重々しい雰囲気を漂わせて僕の部屋に訪ねて来たところから始まる。
この日のリツカちゃんは、いつものような元気よさは見せず、思い詰めたような又は何かに気付いてしまったかのような様子だった。
「スバルさん、私気付きました」
「……何に?」
恐らく録でもない内容だとは思うけど、一応聞く。
リツカちゃんは真剣な顔で部屋の外にまで響きそうな程大きな声で叫んだ。
「私が男になってスバルさんを押し倒せばいい!!」
どうしてそうなった。
いや、案の定録でもない内容だったが、そこに至った経緯が気にな──ダメだ、聞いたら僕の精神が確実に殺られる。
頭を押さえながら、リツカちゃんの話を聞く。面倒だけど、ある程度話を聞かなければ、それはそれで解放されない。
「それで、どうやって男になる気なのかな?」
「ふっふっふー。スバルさん、私にはここの誰もが知らない特技があるんですよ」
「……特技?」
自慢気に胸を張りながら答えるリツカちゃんに、首を傾げる。
男になる特技とは?まさか男性制服早着替えとかだろうか。今、トレーニング用のジャージを着ているのと関係があるのだろうか。ちょっと期待してしまう。
「見ててくださいね!ビックリしますよ~」
リツカちゃんがそう言った瞬間、ポンッと間抜けな音と煙が部屋に広がった。一瞬リツカちゃんの仕業かと思ったけど、「え、え、何これ?」と混乱しているようなので彼女はどうやら関係ないみたいだ。……というか、何か声変わってないか?
煙が晴れてきてリツカちゃんと思わしき人物の人影がしっかりと見え……?
???
…………なんとリツカちゃんが男になっていた。いや、本当にリツカちゃんか?
「えっと、リツカちゃ……。──っ!」
目の前の男がリツカちゃんなのか確認しようと声を出し、思わず口を手で覆う。明らかに普段の自分の声ではなく、もっと高い、まるで女性のような声が自分の口から出てきたのだ。
目線を下げれば豊かな胸が邪魔で足元が見えない状態に……。……???(混乱中)
これは、つまり……所謂、
「……女体化かな?」
「あばばばばばばばば!スバルさんがおっとり巨乳美女になっちゃったーーー!!」
慌てたリツカちゃん(仮)は、部屋を飛び出したが、そこにたまたま通りかかったらしいマシュが見知らぬ相手に出くわした事で、廊下に響き渡るレベルの悲鳴を上げたのだった。
****************
「はい。軽い検査だけど、身体に異常はないよ」
「ありがとう、ロマニ」
「本当だよ。マシュから急にSOS連絡が来た時は、腰を抜かすところだったからね!」
あれから混乱から回復したマシュの機転により、忙しい中ロマニが駆けつけてくれた。申し訳ない。
余談だが、マシュが僕の部屋の近くにいたのは僕がきちんと休んでるか確認の為だったそうだ。
検査結果だけで見れば、女性の身体に変化した以外は全くの正常と出た。だが、肝心の女性になった原因は不明のままだった。
ロマニとマシュは僕と同じく性別の変わったリツカちゃんに目を向ける。
「……あの、本当に先輩ですか?」
「うん、可愛い後輩であるマシュの先輩だよ」
「大変です、ドクター。急に激しい動悸、息切れを感じます。これは心不全の兆候かもしれないので、今すぐ医務室でナイチンゲールさんの検診を受けて来ます」
「ストップ、ストップ!一度落ち着こうか!ね!」
今のリツカちゃんに慣れないせいか、マシュがかなり楽しい事になっている。
婦長の検診なんて今のマシュだと心臓を抜かれるとかの処置じゃなかろうか。そりゃ、ロマニも慌てる。
話は戻して、目の前の黒髪の少年はリツカちゃん(この場合はリツカくんかな?)本人だった。今回の検査結果と今までの検査結果を照らし合わせた事により証明された。
「いやぁ、まさかここまで驚かれるなんてな~」
「いやいやいや、驚くから!……えっと、リツカちゃん?くん?性別が変わるのはもしかして、
「うん、昔からの特技だよ。あとオレの時はリツカくんでいいよ」
「と、特技で解決する内容かなぁ?」
ロマニがめちゃくちゃ狼狽えてる。確かに特技だとは、最初に言っていたな……。特技って言うぐらいには慣れているのか、一人称も「私」ではなく、「オレ」になっている。
「ねぇ、リツカちゃ……くん」
「何ですか?スバルさん!」
「その特技って、自分一人にだけ作用するんだよね?あの時驚いてたし」
「そう、なんですよね。家族に何回か披露した事があるんですけど、その時は周りの誰かも性別が変わる……なんて事はなかったです」
「そうなのかい?じゃあ、スバルの原因は分からずじまいか……」
「いや、ロマニ。一つ心当たりがある」
「へ?あるの?」
というか、もうこれしかないと言える。
「実は、先日パラケルススさんから貰った飴を糖分補給で仕事中食べた」
「「………………」」
「原因それじゃないか!!!?」
──ロマニの心からの叫びが部屋中に響き渡った。
そこからはロマニとマシュによるお説教が始まった。正座なんて久々にしたなぁ……。途中リツカくんが「あー、わかるわかる。うっかりあるある」等と言い、隣で正座させられていた。
「二人とも反省してるのかな!?」
「反省してます(多分)」
「海より深く反省してます(多分)」
「……何故でしょうか。反省の色が見えません」
マシュからジト目で見られる。
いや、気を付けるのに嘘はないのだけど、疲れてる時のうっかりまでは保証出来ないというか……。
等と言い訳を並べていれば、後ろから裾を軽く引っ張られた。
振り向けば、そこには静謐のハサンさんがいた。
静謐のハサンさん。リツカちゃんと会話をした後に声をかけてくるメンバーの一人ではあるのだが、彼女の性格上、積極的に声をかけてくる事はなく、少し離れた位置で何かを訴えるように見つめてくる事が多い。あと何かと腕を触ってくる。
それでも最初は敵意というか、嫉妬の視線をいただいていたのだけども、僕が彼女の毒が効かないのに気付いてからは態度が軟化したように思う。
彼女からしたら、例え恋敵と言える相手でも触れれる人間が増えるのは嬉しい事のようだ。
彼女をよく見れば僕にだけではなく、リツカくんの裾も引っ張っていた。
「あれ?静謐ちゃんどしたの?」
「あの、マスター達に預り物が……」
「預り物?」
静謐さんが差し出してきたのは手紙だった。リツカくんがそれを受け取ると表裏を確認する。
「差出人の名前書いてないよ」
「静謐さん、これ誰から預かったんですか?」
「錬金術師です」
「リツカちゃ……じゃない、リツカくん!すぐその手紙から離れるんだ!」
「へ?」
ロマニが手を伸ばし勢いよく止めたが、時既に遅し、リツカくんは普通に封を開けていた。
頭を抱えて項垂れるロマニに同情する。この子ったら説教された内容、もう忘れてしまったのかな?
マシュも同じ事を思ったのか、ゆらりとリツカくんの方に向かう。眼鏡が反射して目が見えないのがさりげなく怖い。
「……先輩、まだお説教が足りないようですね」
「ご、ごめんって!でも、ほら、中身は普通の手紙みたいだよ!」
マシュの怒っている様子に、リツカくんは慌てて弁明する。今回は確かに何も仕掛けられてないみたいだけど、手紙に魔術を施す輩は少なくないのだから注意して欲しい。
こういう所が元から魔術を知るものとそうじゃないものの違いなのだろうか。
……まあ、元から魔術を知っていて無用心に怪しい飴を食べた僕が言えた義理ではないのだが。
ロマニは呆れかそれとも安堵からか、大きなため息を吐きながらリツカくんに問いかける。
「それで、手紙にはなんて書いてあるんだい?」
「……えっとね、今回の解決策についてだね」
「え、あの人どっかから見てるの?」
顔を青くさせながらロマニが辺りを見回す。恐らく、僕の顔も青くなっているだろう。……あとで部屋に何か仕掛けられてないか確認しなければ。
「でも、よかったです。これでスバルさんは、元の姿に戻れるのですね」
「うん。流石に女性のままは色々キツいからね……」
マシュと二人で問題解決に喜んでいれば、リツカくんから不満の声が上がる。
「えー!せっかくなら、オレと子作り生活して欲しかったのにぃ!」
「絶対、嫌だ」
「……それ、男として精神的苦痛過ぎない?」
「先輩は後で私と話し合いをしましょう」
そんな
*******************
今回の解決策はなんて事もない。ただもう一度、リツカくんがリツカちゃんに戻れば、僕も戻れるというものだった。
「では先輩、さっそく……」
「えー、でもなぁ……。今ならスバルさんに、オレの子生んでもらえるチャンスが……」
「断固阻止するので、今すぐ諦めてください!」
「はぁーい……」
渋々した様子で了承した後、また最初の時のようにポンッと音がして、煙に包まれる。
煙が晴れてきたのを見計らって、自分の身体を触って確かめる。
うん、あったものがなくなって、なかったものがある。ちゃんと男性の身体にちゃんと戻れたようだ。
リツカく……、もうリツカちゃんか、ややこしいな。
まあ、あちらも当然だが、元に戻れたようだ。
いくら僕でも、どんな化け物になるのを許しても、流石に女性になるのはもう勘弁願いたいものだ。と、一つため息を吐く。
──この時には、静謐のハサンさんが部屋の何処にもいない事に気付いた人間はいなかった。
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薄暗い研究室に二つの人影があった。
「────以上で報告を終えます」
「ふむ。期待していた結果ではありませんでしたが、概ね成功でしょう。ただ、もう使えない手になってしまいましたが……」
「…………錬金術師。貴方は一体何をしようとしているのですか」
錬金術師──パラケルススは、次の手段を考えるように顎に添えていた手を、ゆったりとした動きで机の上の物を掴み上げる。
「この飴──薬の効用は、飲み込んでから最初に最も近くで使用された魔術に連動して、自身に作用させるものです。そして、効果は半永久的に続きます。代わりに一回しか連動しないのですが……。だからこそ、もうこの方法が使えないのは残念ですね」
パラケルススが、おもむろにため息を吐く姿に、少女──静謐のハサンは、少し苛立ちを見せながら目を細める。
「今回は性別転換だけで済みました。でも……もし、危険な魔術が彼に作用したらどうするつもりだったんですか」
「そういったものは、彼はあらかじめ無効にするでしょう。……それにしても、いやに肩を持ちますね。──あぁ、多少なりとも、彼も貴女のお気に入りでしたか」
パラケルススのその言葉に静謐のハサンは、ビクリと肩を揺らす。
静謐のハサンにとって、スバルという男は、恋敵であり、自身が触れても死なない数少ない人間だ。
始めこそ、彼に良い感情を持っていなかった。
だが、スバルの耐毒性を知り、試しに何度か触れてみるようになった。結果としては、彼は驚きつつも嫌がる事はせず、ただ幼子がじゃれつくのを見守るかのような眼差しを向けるだけだった。
それが、なんだか居心地良く感じる自分がいるのだ。
だから、私は彼を嫌いになりきれない。
常盤昴は、自身の恋敵だ。でも……もし、マスターが望むのなら私は──……。
「……私は、あの二人には幸せになって欲しい。…………そう、思います」
「無理ですよ。──
パラケルススの言葉に、静謐のハサンは特に否定する事もなく。
ただ、二人の未来を憂いて目を閉じるのだった。
色々事情が重なり投稿が遅れて申し訳ないです。
前書きにも書きましたが、この話は前半と後半で書く時期が、大分空いたので、矛盾点が多いかもしれないです。