「ふむ……、目立った外傷はないが栄養失調による疲労や、今までの虐待からくるストレスが大きいな。しばらくは安静にして栄養のある食事をおすすめするな」
”イサリビ”の医務室、メディカルナノマシンベッドに寝かされる少年、昌弘・アルトランドを背に一人の女性が振り返る。
乱雑に切り揃えられた赤い髪は長いこと手入れをしていないのか、元は綺麗だったろうがパサパサと痛み、フレームむき出しのメガネと所々薄汚れた白衣を着た彼女こそが”イサリビ”の船医となった彼女こそ”スミカ・スージエ”である。
そして、冷たい床には正座で座らされている昭弘・アルトランドが彼女の何処か気だるげな暗緑色の瞳に睨まれていた。
何故こうなったかは数刻ほど遡る。
『昌弘!!』
『あ、兄貴────
『まさひろぉぉぉぉぉっ!!!!』
”マン・ロディ”のコクピットから出された昌弘を昭弘が感極まったように抱きしめる。そこまでは良かったのだ。
だが、大柄で腕力もある筋肉巨漢が、力も弱く、栄養失調気味で骨もやせ細った少年を全力で抱き締めればどうなるかは想像に難くない。
その時は丁度、ミカエラは機体のコクピットにいたのだが通信機越しに”ベキッ……”というやけに耳に残る嫌な音が聞こえた。
おそらくは三日月たちにも聞こえていており、案の定力なく昭弘の腕の中でぐったりとした昌弘。
大慌てで兄弟を引き剥がし、医務室へと担ぎこんで今に至る。
「まったく、生き別れた兄弟同士の感動の再会はまだいい。だが、なぜ弟の方が肋を二、三本折るような大怪我をしているんだ? ん?」
もちろん、納得できる理由を説明できるよな? と、暗緑色の瞳が冷たく昭弘を睨みつけ、すっかり小さくなった体を更に萎縮させて昭弘は口を開く。
「……すまねぇ」
「はぁ……、あと少し位置がズレていたら折れた骨が内臓を傷つけていたが、運が良かったな馬鹿者」
その言葉に、すっかり意気消沈した様子の昭弘をユージンとシノのふたりが慰める中、オルガが苦笑しながら、
「まぁ、こうして生き別れた兄弟が再会出来たから良しとしようぜ。そういえば、他の連中はどうだ?」
「船室にまとめて、メリビットさんが容体を確かめてくれてるよ。一人はちょっと着替えさせてるけど、全員は命に別状はないってさ」
ビシケットの報告に、オルガは胸を撫で下ろす。
他の少年たちは全員は監視付きだがきちんと保護され、今頃は暖かい食事に戸惑いながらもがっついている頃だろう。(なお、そのうちの一人は妙に小綺麗な格好になっている)
「じゃあ、俺らは名瀬の兄貴に呼ばれてるんで。あとはお願いします先生」
「元からそのつもりだ。他の健常者もさっさとココから出ていけ。それと、筋肉ダルマお前は面会謝絶だ」
「なっ、俺はまだ「ア"?」……うっす」
本当に女医なのか? というほどのドスの効いた声に、昭弘はさらに肩を落とし、それをユージンとシノの2人が慰めながら医務室を出る。
ミカエラも他の面々が出ていくのに続き、通路を歩いていると角を曲がるオルガの背中がちらりと視界に映る。
「アハッ」
なにかイタズラを思い浮かんだのか、少しだけ悪い笑みを浮かべて彼女はオルガのあとを追いかける。
〇
オルガとビスケットに気が付かれないよう、”ハンマーヘッド”へと移動し、ブリッジへと入ると同時にアミダが口に人差し指を当てて静かにとしているよう促し、3人はそこで止まる。
そして、艦長席に座す名瀬がブリッジのメインモニターに映る人物と対峙していた。
その人物を見た時のミカエラの感想としては『オークがいたらあんな見た目なんだろうなー』とのものだったのだが、あのブサイクな人物こそが悪名高き腐れ宇宙海賊”ブルワーズ”の頭領”ブルヤック・カバヤン”その人である。
「───ほぉ、ぅんじゃあお前らは本気で俺たちに喧嘩を売ろうってんだなぁ? なあ、ブルヤック・カバヤンさんよぉ……」
『ケツがテイワズだからってでけぇつらしてんじゃねぇよ。なにもテイワズだけが力を持ってるわけじゃないんだぜ? タービンズの大将さんよ』
「ハハハハッ! そう言っておきながらテメェんところの
『ッ……! てめぇッ!!』
名瀬の煽りに、醜い面を赤く染め口汚く罵ろうとしたが、その寸前で名瀬が通信を切ると呆れた様子で口を開く。
「……ったく、血の気の多い馬鹿が居たもんだろ。ぬぁ?」
「はぁ……」
「オルガさんオルガさん。一応血の気が多いって鉄華団も入ってマス」
「うぉ!? ミカエラ? いつの間に……」
「えへへー、来ちゃいましタ〜」
「ハロ、ハロ。元気カ?」
そんな会話もありつつ、応接間へと場所を移す。
「それで、捕まえた奴らと弟の調子はどうだい?」
「はい。ステープルトンさんのお陰で安心してご飯を食べてますし、昌弘くんはスージエ先生のお陰でだいぶ安定しています」
「役に立つ女だって言っただろう? まぁ、スミカのほうは嬢ちゃんのお陰だがなぁ」
「船医も載せないで惑星間航行なんていうおバカなことを仕出かす前に手を打っておいて正解デス〜」
「そりゃ正論だな」
「うぐっ……。ゴホン、それで
話を強引に切りかえようとしたオルガに僅かに笑いつつ、名瀬はブルワーズがどんな組織かを説明する。
「名は”ブルワーズ”。主に火星から地球にかけての航路で活躍してる海賊だ」
「”海賊? ”じゃあ狙いは船の積荷ってことですか」
「あと、”クーデリア・藍那・バーンスタイン”の身柄だとよ」
「「なっ……」」
その要求にオルガとビスケットの2人は言葉を失い、ミカエラはニコニコと笑っていた。
「『大人しく引き渡せば命だけはとらねぇ』と偉く上から言ってきやがった……」
「ブルワーズってそんなに力を持った海賊なんですか?」
「武闘派で名の通った組織であるのは確かだね。勿論、テイワズに渡り合えるほどじゃあないんだが……」
アミダの言葉を名瀬が引き継ぐように続ける。
「だからこそ今回の件に関しては妙に強気なのが気にかかる。でかいバックがついたのかもしれねぇ」
「クーデリアさんのことを知ってたのも気になります」
「やれやれ、どうにもめんどくせぇ裏がありそうだなぁ」
名瀬の独り言ともとれる言葉は室内の空気に溶けるように木霊した。
〇
青く、命に満ち溢れた惑星を目の前にギャラルホル地球軌道基地”グラズヘイム2”
その展望デッキで地球を感慨深く見つめる存在がいた。
「これが……、地球」
ギャラルホル火星支部所属改め、ガエリオ・ボードウィンの部下として訪れたアイン・ダルトンは噛み締めるように呟く。
そんな時、どこからともなく彼を見下したかのような声が鼓膜をふるわせた。
「よう新入り、お前は地球への降下降りなかったのか? まっ、そうだよなぁ。火星生まれの汚い猿がいたんじゃ地球が臭くなっちます」
目付きの鋭いギャラルホルンの2人組の兵士の先輩とその後輩が立っており、アインはどこか胡乱な瞳を向ける。
「やめた方がいいですって。コイツ、ファリド特務三佐の船で来たんですから。ファリド家はギャラルホルンを束ねるセブンスターズのご家門じゃないですかッ」
後輩兵士が先輩兵士にむけて耳打ちするが、その先輩兵士は聞く耳を立てずにアインへと近づく。
「ハッ、だから教育が必要なんだろう?」
詰め寄り、アインを脅すように男は言う。
「お前のような奴がそばにいてはファリド特務三佐の名が汚れるんだよ」
「……今の私の上官はガエリオ・ボードウィン特務三佐ですので。その点、ご心配いらないかと思います」
「ボードウィン家もセブンスターズの1家門じゃねえか。バカにしてんのか!?」
アインからの鋭い返しに途端に語気を荒らげ、襟を掴むがアインはそれを冷めた目で口を開く。
「いえ、田舎者の御教授を賜りありがとうございます」
「チッ! 行くぞ」
「あ、ハイ!」
アインの様子に男は舌を打ち、後輩兵士を連れどこかへと消えていく。
だが、アインは宙に体を浮かせるまま誰に聞かせるわけでもなく吐き捨てる。
「俺はあの少年たちを……あの”隻腕”を討てればそれでいい……。その機会をくれるなら誰であろうとついて行く…………」
ドロッとした感情の込められた呟きは冷たい宇宙へ消えていく。
彼は知らない。慕う上官はが生きていることに、彼は気が付かない。クランクの思いを。
憎しみがぶつかるのはまだ、先だ。
はい、モチベやらなんやら色々と死んでおりました〜。
今度は月一で頑張りたい!
キャラ情報
・スミカ・スージエ
・身長:174cm
・体重:非公開
・年齢:27
ギャラルホルンで昔医師として働いていたが、現場出身でMSの操縦も可能。
昔、傷痍兵の治療のために阿頼耶識を研究していたが規制が厳しく、おまけに上官ともそりが合わなかったため退職届と一緒に右ストレートを顔面に叩き込んでギャラルホルンを退役。木星圏までやってきた。
腕は確かで、脳と心臓さえあれば人として形をこだわらなければ動くレベルまで治療可能。
見た目は手入れのしていない赤い髪を後ろにまとめ、塗装の禿げたフレームむき出しのメガネ、暗緑色の瞳、ヨレヨレとなった白衣の下に簡素なシャツとズボンを履いている。
性格はかなりキツめで毒舌家。だが、かなり不器用な根の優しい人物。
CVイメージは伊藤美紀。
歳星にて登場するアンドロマリウスの新装備案
-
近接攻撃型
-
遠距離砲撃型
-
電撃強襲型
-
強行偵察型