最強になりたい(小並感   作:ちくわぐみ

1 / 7
プロローグ

 落ちて行く。浮遊感が俺の体をくるんでいる。隣には驚きと恐怖を浮かべた友人の顔が見える。当たり前だ。途方も無く深い崖を落下している真っ最中なのだから。そんな中、なぜか俺は冷静に現状を分析していた。そもそもどうしてこんなことになったのか。

 

 

 

 

 

 

 日曜日(天国)が終わり月曜日(地獄)がやってきた。殆どの学生が憂鬱な気持ちを押し殺しながら登校するであろう曜日が始まった。俺こと竹下遥も例に漏れず重い足をちんたら動かしながら登校していた。

 

 教室に入った瞬間に見下したような視線が俺にあつまる。しかし、そういった空気は出来るだけ無視する事に限るので、脇目も振らず自分の席へ向かう。

 

 やっとの思いで席に着いたところで教室の扉が開き、南雲(なぐも)ハジメが入ってきた。その瞬間、教室の男子生徒の大半が舌打ちやら睨みを彼にプレゼントする。女子生徒でさえ友好的な表情をする者はおらず、針のむしろ状態だ。

 

 そんな中、俺がすでに教室にいることに気づき、飼い主を見つけた犬のように顔を輝かせ、一直線に俺に向かってくる。この学級ではサブカルチャーに理解がある者が少なく、唯一会話を弾ませられる相手は俺だけなので、このクラス内での友達は俺だけなのだ。

 

 悲しくはならないのだろうか、とも考えたが、特大のブーメランが突き刺さったような気がしたので深くは考えないようにする。

 

 そんな事を思いながらこちらに向かってくるハジメを見ていると、ハジメが一人の女子生徒に捕まったのが見えた。彼女は白崎香織(しらさきかおり)。 学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇っている。

 

 ハジメはそんな彼女にとても気に入られていた。正直理由はわからないが、俺に出来るのは祈ってやる事だけなので両手を合わせて彼の冥福を祈っておく。南無〜。

 

 周りが殺気に満ちた目で睨んでいるにも関わらず、彼女は呑気にハジメに話しかけていた。ハジメは冷や汗をかきながら会話を切り上げるきっかけを探しているように見える。

 

 それを観察していると、そこにさらに3人の男女がやってきた。カッコいいという言葉が似合う女子にしては長身な女子生徒、八重樫雫(やえがししずく)と成績優秀でスポーツ万能の爽やかなイケメン、天之河光輝(あまのがわこうき)、そして短髪で大柄な脳筋という言葉がぴったりな男子生徒、坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)の三人がやってきたことによって会話がさらに面白いことになっている。

 

 なんというか、天之河の言葉の端々から独占欲が滲み出ているが、白崎はそれに気づかず天然な発言を繰り返している。お陰で空気がすごいことになっているのだが…。

 

 そうこうしているうちにチャイムが鳴り教師が教室に入ってきたため、会話は終了。いやぁ今日も(見ている分には)面白かったなぁ。しかしハジメは大変そうだなぁ、と他人事のように考えている内に授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 昼休みになった瞬間にハジメがむくりと体を起こし、栄養を10秒でチャージし、再び顔を突っ伏する。流れるような動作だったが、白崎(魔王)からは逃れられない。

 

 ストーカーなのではないかと思うほどの執念でいつもハジメに話しかけているが大変ではないのか。…っとさらに天之河達(勇者パーティ)がやってきてさらにハジメの顔色が悪くなった。

 

 まあ他人の事はここまでにして、自分の弁当を食べるか。そう思い、自分の弁当に視線を移したところで地面が光り輝き始めた。

 

「眩しっ!」

 

 思わずそ叫んでしまった。しかしよくよく見るとなにやら魔法陣のような形に光っているような…。もしかしてこれって勇者召喚!?そう思ったのもつかの間、俺の視界は光で埋め尽くされた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 あまりの眩しさに閉じていた目を開くと、目に巨大な壁画が飛び込んできた。その壁画には、長い金髪を靡かせて微笑む、中性的な人物が描かれていた。背後からは後光が差しており、神秘的な雰囲気を纏っている。

 

 周囲を見回してみると、大理石と思わしき白い石材でできたドームの台座のような部分に俺たちが立っていることがわかった。そしてそんな俺たちの前には白い布地に金の刺繍が施された法衣のようなものを纏い、錫杖を傍らに置いた状態で跪き、両手を胸の前で組んでいるいかにも神官のような佇まいの30人近い人たちがいた。

 

 その集団の中で最も豪奢な衣装を身に纏い、30センチは優にある烏帽子のようなものを被った70代ほどの老人が手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、こちらに近づいてきた。その老人からは、形容しがたい圧を感じた。顔に刻まれた皺や老熟した目が無ければ、50代でも通じるだろう。

 

 そんな彼は、その容姿によく似合う深みのある、落ち着いた声で俺たちに話しかけてきた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。 以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、彼は好々爺のような微笑みを俺たちに見せた。

 

 

 

 

 

 

 その後、俺たちはテーブルがいくつも並ぶ、大広間へと通された。この部屋も、例に漏れずとても豪奢な作りをしており、素人目にも莫大な費用がかかっているのだと実感させる調度品や絵の数々が飾られており、壁紙をもが、職人技を感じさせる。

 

 さらに、全員が着席したタイミングで、男子高校生なら誰もが夢見る美女・美少女メイドがカートを押しながら部屋に入ってきた。そのため、クラスの男子の大半が彼女らを凝視し、女子達から冷ややかな視線を向けられている。

 

 しかし、その中に俺は入っていない。なぜかというと、俺の関心は手の中にある弁当に向けられていたからだ。先の移動中、弁当に視線を向けた時にふと思い出したのだ。昨日の夕飯の焼肉の肉が残っていた事をっ!

 

 うちの家族は俺を除き全員が少食だ。食べる量が少量でも満足できるので、量より質という風潮が我が家では蔓延している。そのため、うちの母さんは料理が趣味ということもあり、高い調理技術を持っている。そして昨日は奮発してお高い肉を買った。…あとは分かるな?つまり今俺の弁当箱にはお高い肉をとても高い技術力で調理されたものすごく美味しい弁当だということが簡単に推測されるのだ。

 

 さらに、転移した時間が昼食どきだったことも相まって、ものすごくお腹が空いている。今にも涎が垂れてきそうだ。そんなことを考えていると、イシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方 においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますので な、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そう言って話し始めたが、正直空腹が限界なので、弁当をいただくことにする。いただきます。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の 世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 弁当の中身は焼いた肉と付け合わせ、そしてご飯というとてもシンプルなものだった。しかし、ただ焼いただけなのに、その肉の旨味を全て引き出したかのような味がする。付け合わせも、肉を食べた余韻を邪魔せず、むしろ助長させているようだ。ぶっちゃけ滅茶苦茶美味い。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 俺のところに飲み物を配ってくれたメイドの少女も、弁当の放つとてつもなく美味しそうな匂いを嗅いだのか、俺の食べる様子を凝視している。俺は今幸せを噛み締めており、機嫌がいいのだ。少し分けてやろう。はいあーん。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 驚いたような表情をするメイドさんだったが、食欲に勝てなかったのか、素直に肉を口に入れた。彼女がとても幸せそうに肉を食べる様子を見て俺も気分が良くなる。肉だけでは可哀想なので、今度はご飯と一緒に食べさせてやろう。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 そうそう。付け合わせを肉を食べた後に食べるとさらに美味いんだよ。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 へぇ。やっぱりこっちはパン食が多いのか。でも日本人としてはご飯の方が好きなんだよな。こっちにも米はあるのか?

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 そうか。一応あるのか。それなら安心だな。とメイドさんとの会話を楽しんでいると、隣に座るハジメに肩を叩かれた。

 

「どうしたんだ?」

「ちゃんと話しは聞いた方がいいんじゃないかな?」

「なんか一件落着みたいな雰囲気が漂ってるし、いいんじゃないか?それに話を長々と聞くよりハジメに要約してもらったのを聞く方が早いしな」

「なんで最初から僕任せなの…?」

 

 イシュタルは、宗教にどっぷりと浸かってそうなので、話にもそういった要素が多分に含まれていると思われる。それを聞くよりかは憶測が含まれていたとしても、ハジメが要約した話を聞く方が手っ取り早いうえにわかりやすいと考えたのだ。一番の理由はなぜか話し方がイラッとくるので、あまり話を聞きたくないというものだ。ともかく、次の移動中にでもハジメから現状を聞きましょうかね。




セリフが原作とほぼ同じなので(というか、最後のところ以外同じなので)引っかかるきがするのでテラビビリながら投稿
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。