────(以下、pixivと同キャプション)────
pixiv初投稿です。というよりも、投稿できるかの検証みたいな感じです。
ある日のある時、突然事件に巻き込まれたリオルのお話です。誤字などがございましたらご指摘ください。
・ここに出てくる地名は、本家と全く関係ありません。
最近、こんなニュースを目にした。
この近くに住むツタージャが、突然姿を消したという。しかも、降りられるはずのない走行中の電車の中のことだったらしい。
『僕がいつも乗ってる電車と同じだ…』
そんな不安が募りながらも、僕はいつも通り電車に乗って家に帰った。
* * *
僕はリオル。都心から少し離れたところで暮らしている。今日は都会にちょっと用事があって、朝から出掛けていた。それは夜までかかり、乗った電車は終電だった。
(…今日は流石に疲れたなぁ。早く家帰って寝たい)
そう思いながら、僕は混んだ電車の椅子に座りながら、ついウトウトしていた。
…。
……?
………………………!
はっと僕は目を覚ました。いつの間にか眠っていたらしい。周りを見渡せば、もう誰も乗っていない。もしかして、駅過ぎちゃった…?慌てて電車の窓から外を見ると、僕は驚きとそれに勝る恐怖がこみ上げてきた。
…何もない。
というのも、地面が空か分からないくらい同じ白い風景が周り一面に広がっている。建物は、電車の向かう先にある木造の古ぼけた駅だけだ。もちろんそれも真っ白だった。白といえば明るく目が痛くなるはずだが、不思議とそんな感覚はしなかった。
駅に着くと、アナウンスもなしにゆっくりと停車し、ドアが開く。僕はお守りをしっかり手にして、電車を降りた。するとすぐに電車は行ってしまった。なんとなくほっとしたような、ちょっと不安になったような、微妙な気持ちだった。
僕は、駅のホームで立ちながら考えてた。ここは一体何処なんだろう?現実離れした場所であるということは薄々分かっていた。それで、僕はこれからどうすればいいんだろう?何もないところを見上げながら、途方に暮れていた。
そのとき、背後から誰かの声が聞こえた。
「あれ?君、どうしたの?」
振り向くと、そこにはピカチュウがいた。ハート型のしっぽなので、メスらしい。
「もしかして、君はこの世界に迷い込んじゃった感じだね?」
「え…迷い込んだってどういうこと?」
僕は他のポケモンを見つけることができて物凄く嬉しかったけど、それ以上に、今の状況を知りたかった。
「…教えてあげる。今、君の周りに何が起こっているのか」
* * *
「ここは神の住む世界だよ。神っていってもいろいろいるし、私みたいな神の使いもいる。それでね、何となくは分かってるかもしれないんだけど、リオルは今、神隠しにあってるんだ。だから、リオルはリオルの元いた世界からはいなくなっている。あと、この駅でリオルが降りたのは正解だった。もしあのまま電車に乗っていたら、間違いなく命を落としていたんだ」
「え…神隠し?ってことは、ちょっと前にいなくなったっていうツタージャとかもいるんだ?」
「あー、そんな話を聞いた気がする。とりあえずここにいても何にも出来ないから、私の住む所に案内するよ」
私にしっかり掴まってて、と言われ、僕はピカチュウの手を握る。何となく、僕たちの住む世界のポケモン達と手を握ったときの感覚が違った。やはり別の世界にいるんだと改めて感じさせられた。
「じゃ、行くよ!」
そう言って、ピカチュウは僕の手を握ったまま『10まんボルト』を出す。……ええええ、ちょっと待って!僕がしびれびれになるから!
しかし、不思議としびれは感じない。それどころか、電気が僕たちを温かく包み込んでる感じがする。
一瞬のフラッシュに目を閉じてしまう。目を開けると、そこはさっきまでいた真っ白で何にもない空間とは違い、色があり、建物があった。まるで、都会の夜の繁華街のようだった。
「…ここは?」
「さっきもいったでしょ、私みたいな神の使いが住む所。神のいるところはここから離れてるんだ」
そう言って、僕を連れて街を出ていき、暗闇の中に見える大きな建物を目指して歩いた。ピカチュウ曰く、直接テレポートしたくても神のオーラみたいな何某で出来ないらしい。
ところで、僕は思った。
……『神』って何?
* * *
大きな建物の中に入ると、何というか、石のレンガ造りで厳つい雰囲気をだしていた。どこぞの悪党のアジトみたいな…いやいやそんなはずないんだけれども。
少し進むと、僕の身長の3倍以上はある扉に閉ざされた部屋の前に来た。
「え…ここ?」
「うん。…だけどね、ちょっといい?」
ピカチュウは少し困ったように僕のほうを見る。
「今から起こること…驚かないって約束できる?」
「どういうこと?まあ多分大丈夫じゃないかと」
「これから分かるよ。…はぁ」
ドアを開けると、電気も何もついていなくて、ただ暗闇に包まれていた。こんなところにまず誰かいるのかがよく分からなかった。
すると、突然暗闇から声が聞こえた。
「ようこそ、神のすむ世界へ」
そう聞こえた瞬間、電撃が部屋の天井に当たり、それが壁を伝って部屋が明るくなった。部屋の真ん中には、ピカチュウがいる。
……え?
「私は、空間を司る神と呼ばれし者、ピカチュウだ」
口調が変わり、声も変わってて、一瞬は別ポケなのかと思い、振り替える。でも、僕と一緒に来たピカチュウはいつの間にかいない。
「え…さっきから一緒にいたピカチュウだよね?頭がイマイチよく回ってなくて…」
「リオル…すまなかった。騙すつもりなど全くない、仕方なかったのだ」
「えと、う~ん…」
ピカチュウは元の口調と声に戻して話す。
「だって、仕方ないんだよ!私、神だから自由な行動とか全くできないし、下界に行くなんてもってのほか。唯一の気晴らしになるのはテレポート能力だけ。私だって、皆とワイワイしたかったの」
はぁ、とため息をついて、話し続ける。
「だから、皆に気付かれないように私は神の下僕のふりをしてた。声も頑張って変えた。そうすれば、私も楽しいことがいっぱい出来るんじゃないかなって」
僕は……ただピカチュウの話とキャラの移り変わりに呆然とするばかりだった。
* * *
「下僕のふりをしてから、生活がとても楽しかった。色んな事話したり、楽しいことやったり。そんなときに、そういえば『結びの週間』だってことを思い出してね、駅の方に行ってみたらリオルが迷い込んでたの」
神って大変なんだな…、と思いつつ、僕には気になる言葉があった。
「結びの…週間?」
「リオルがいた元の世界とこの世界って、異次元の存在にあると言われているの。リオルみたいに神隠しにあうと、この世界に来る。この『結びの週間』ってのは、その移動が起こりやすい期間なんだ」
ピカチュウは、にこっと笑って僕に話した。
「まあ、馴染めば楽しいと思うし、リオルが元の世界に帰れるようにサポートするから」
「あ…ありがとう」
「よし!じゃあちょっと下界の街に行ってみよっか!」
「待って、ピカチュウ……寝かせて」
いろいろなことが起こりすぎて、さっきまで僕は眠気さえも忘れていた。そして今、何となく緊張がほぐれて、忘れてた眠気が一気に襲ってきた。
「あー…ごめんね、すぐに私の家まで連れてくよ」
ピカチュウは僕と建物を出るとすぐにテレポートして、とある家の前に来た。
「…テレポート出来んじゃん……」
「たびたびごめんね、テレポートも体力使うからさ、あんまり使いたくないの」
僕は家の中に入るとすぐに倒れ、急激に眠りへと落ちていった。
何かもう…何もしたくない。聞きたいことはいっぱいあるけど…もう明日にしよう…。
* * *
気がつけば、僕はフカフカのベッドで寝ていた。部屋の奥からは、何かを料理している音がする。
僕は、その音を頼りに家の中を歩いた。
そういえば、朝?なのに辺りが暗い。
唯一電気のついた部屋に入ると、ピカチュウが電気の熱で目玉焼きを作っていた。
「あ、おはようリオル。って言ってもこの世界じゃずっと夜だけどね」
ピカチュウの作ってくれた料理を食べながら、僕たちは話した。あ、料理は普通に美味しい。
「そういえばさ、ツタージャのことって知らないの?」
「うん…。この辺じゃ私しかあの駅に行かないから他に行ったのもいないと思うんだけど…あ、そうだ!」
ピカチュウはいきなり声を張ったあと、申し訳なさそうに話した
「昨日言った『結びの週間』のことなんだけどね、その期間中はリオル達が元の世界に帰れるようにサポート出来るんだけど、それが終わると自分の力で帰らないといけなくなる。元の世界とこの世界が離れて、私たちの力じゃ戻してあげられなくなるの」
「それって…いつまで?」
「今日合わせて、あと三日。明後日には帰らないと」
「…分かった」
朝食の後、ピカチュウの誘いで僕たちは街へ行くことになった。
ちなみに、あの砦?を長い間開けてて良いのか聞いたところ、返ってきた答えは、「どーせやることないし」。
街へ行ってみると、元の世界の繁華街とさほど変わらず、とてもにぎわっていた。ただ一つ違うことは、ここにいるポケモンは元の世界からすると皆色違いであるということだった。ピカチュウは普通の色だったが、身分?の違いをはっきりさせるための仕様かなと思っていた。
ピカチュウのポケットマネーが大丈夫な限り、僕は色んな店を回っていいと言われた。とはいえ、都会で買い物なんて経験があまりにも少ないので、気になることも気にならなかった。
唯一気になったのは、木製のキーホルダーが売っている店。僕は、あるものに心を引かれた。
星のような形で繊細な作りのキーホルダー。それを手に取ると、店員っぽいガルーラが僕に話しかけてきた。
「それはね、神の力がこもっている御守りだよ。それを身につけているだけで、幸運が訪れるって言われてるのさ」
「神の…力……」
振り返ってみると、ピカチュウは首をかしげて僕たちの方を見ていた。
「これ…買います」
「はい、まーいど。ピカチュウ、この子の面倒しっかり見るんだよ!カミサマの責任があるんでしょ」
「え…おばちゃん、何の話?」
あ、おばちゃん知ってるんだな。
それはそうと、ピカチュウの演技…。
* * *
店を出ると、遠くからピカチュウの名前を呼ぶ声が聞こえた。走ってきたのは、僕の中ではアローラの御三家と呼ばれる三匹だった。もちろん全員色違いで。
「ど~こ行ってたの?今日は食いログの店を廻る約束でしょ?」
アシマリは息を切らせながら、呆れた口調で言う。
「あ、そうだった!」
「ところで、ピカチュウ…そのリオルは?」
モクローが不思議そうな顔をして僕のことを羽で指す。
「神隠しに遭ったリオル。今この街を案内してたところ。リオル…ごめんね、私、こっちに行く用事があったんだ」
「ううん、大丈夫。僕も、ちょっと一匹でやりたいことあるから」
「ありがとう!とりあえず、この街の中にいて。終わり次第すぐ行くから」
「キミのカミサマは、私たちがしっかり面倒みてるから!」
だから私、神様じゃないってばー!と、ピカチュウは大声を出したあと、笑いが起こる。僕はこっそりニャビーに聞いてみた。
「あの…ピカチュウのこと、バレてる?」
「うん?あぁ、会ったときから知ってた。最初なんて、カミサマ口調が抜けてなかったんだ。まして…色違いだし」
「やっぱりか……」
ピカチュウ達と分かれた後、僕も歩き出した。この世界の土地勘がないはずから、この街にいるとは思うんだけど…。
…。
………。
…………ダメだ、見つからない…!
探し始めて三時間位たったかな?探しているポケモンはどこにもいない。この世界だと僕はどういうわけか波動が使えないみたいだし、何か腹も減ってきたし、一旦中断しようかな…。
ピカチュウからもらったお金で、とりあえず昼食を済ませようとした。適当な飲食店を見つけて、僕はその中に入ろうとした。
そのとき、あるポケモンとすれ違った。
緑色の小柄な体で、ちょっとつり目がちなポケモン……間違いない。僕は振り返って声をかける。
「ちょっと、待って!」
* * *
…昼食を済ませて店を出た私は、知らない誰かに声をかけられて、振り向いた。
そこにいたのは、元々いた世界だと普通の色のリオル…何でここに?
「よかった…やっと見つけられた」
「…誰?」
「僕はリオル。ツタージャと同じで、神隠しに遭ってここに来たんだ」
「ふうん、それで?」
「あのね、今日合わせてあと三日のうちに元の世界に戻らないと、元の世界に戻れなくなるかもしれないんだ!」
あ~、そんな話どこかで聞いたような。
「だから、一緒にピカチュウのところへ行こう」
「悪いけど!…私は元の世界に戻らない」
「え…?」
* * *
───私は今いる世界の一ヶ月前、リオルの言う神隠しに遭った。そのときは、私は色んな事があって疲れ切っていたせいでかなり混乱していた。
でも、内心嬉しくもなった。
最近は、特に元の世界に不満を感じていた。それでもガマンしてたけど、この世界に来て悩みが吹っ切れた。イライラする元の世界から離れて、私は新しい生活が始められると思った。
そう思って過ごしたこの一ヶ月で、元の世界には戻らない、ここで平和に暮らすことを決めた。
* * *
「…もういいでしょ?」
「じゃあ、ピカチュウは何でツタージャのことを知らないの?」
「この世界に来たとき、ピカチュウに会った。神様の存在って話を聞いたから、私の考えてることに絶対反発する。だから…街のエスパーポケモンに頼んで、ピカチュウから記憶を消した」
「なっ!?」
「私は、この世界から帰るつもりはない。見つけてくれたとこ悪いけど、諦めて」
「確かに、僕もストレス溜まったりするよ。でも、元の世界にはそんなのも一緒に話せる友達だっているんでしょ?」
「だって!」
ツタージャは急に声を張って言う。
「あんな、騙し騙され!強い者が生きて弱い者は蹴り落とされる!そんな世界になんていたくない!私だって少しは考えた。友達の存在も考えた。でも!結局は同じポケモン!どーせ表面上の言葉だけで裏切るときは騙されることくらい分かってるんだから!!」
急に振り向いたと思ったら、暗い夜の街をツタージャは走って行ってしまった。待って!とツタージャのことを追いかけるが、『リーフストーム』で起きた土煙に紛れて姿を消してしまった。
「あ、いたいた。おーい!」
そのとき、ピカチュウが僕のことを呼んだ。でも、僕はツタージャのことしか考えていなくて、声が届いていなかった。
「どうすれば…」
* * *
その日は、あの後もう少しツタージャを探したけど、結局見つからなかった。僕は心がモヤモヤしたままピカチュウの家(仮)に戻った。全くの他人なんだけど、何か放っておくことが出来ない。そんな気持ちで僕は夜を明かした。
日が変わって、あと二日。この日はピカチュウもツタージャを探すのを手伝ってくれた。一日中街の中を隈無く探し、街の外も少し探した。流石に飽きることもあったので、ちょっとは休んだけど。
それでも、その日はツタージャのことは見つけられなかった。
家(仮)に帰ってから、ピカチュウは話す。
「もしかして、『クラヤミの森』に行ったのかなぁ…」
「どこ?それ」
「砦のすぐ近くにある、暗くてよく分かんないけど緑が生い茂る森。光が当たらないから光合成できないけど、くさタイプのポケモンは行けばリラックス出来るんだって。でも…それは森の入り口とその周辺だけで、ちょっと奥に進むと、この世界の決まりを破って追いやられたならず者ポケモンがいるの。そいつらは森から出られないけどとても凶暴だって噂なんだ…」
え、それかなりヤバいんじゃない?今すぐにでも行きたかったんだけど、体が眠い動きたくないって言ってるから、今日はもう寝て明日そこに行こうってことになった。
(…もし明日元の世界に帰れなかったら?僕はどうするんだろう……?…やっぱ考えんのやめた)
* * *
────私は、街はずれにある暗い森の奥の木の上で休んでいた。
「いいな…ここ。誰もいないから静かで。光合成出来ないのは不便だけど、必要ない」
そのときだった。森のどこかから、ドスン、ドスンと大きくて重々しい足音が聞こえた。私は初めは気に留めなかったけど、足音が近づいてくると分かったときには、もう遅かった。
突然、何かが私のいる木に当たったのか、私は木から落ちてしまう。起き上がると、私はポケモンに囲まれていた。
真夜中ルガルガン、クワガノン、グソクムシャ、ジャラランガ…。どいつもこいつも、血に飢えたカイリューのようなギロッとした目をしている。
「…誰、あんた達」
私は怖がっている自分を出したくないから、強気に答えた。でも、そんな見栄っぱりな気持ちは一瞬で消えてしまう。
「俺らが誰だろうがお前にはどうだっていい。ただ…俺らはこの森に追いやられてから戦いたくてウズウズしてる」
「…え」
* * *
結びが離れるまであと十時間。不思議な胸騒ぎを感じながら、僕たちはツタージャを探す。
案の定、街にはツタージャがいなかった。となると、やっぱり『クラヤミの森』…?
そう思って街を出た瞬間、微かに砦の方から木か何かへの打撃音が聞こえた。「クラヤミの森だ!」とピカチュウが大声をあげると、僕たちは森の方へ走った。
森の中に入り辺りを見渡すと、木が倒れてたり表面が削れていたり、まるで何かが戦った跡のようだった。
(こんなに荒らされてる割には、静かすぎる…。ポケモンの気配が感じられない…?)
その瞬間、バンッ!と音がして、ピカチュウが網の中に捕らわれてしまった!ピカチュウは木の上に吊されて、僕の手では届かなくなってしまう。
「…なんでぇ、一匹逃しちまったか」
その声が聞こえると、木の裏から真夜中ルガルガンとグソクムシャが出てきた。息を殺して潜んでいたのか…!
「ピカチュウをどうする気だ…!」
「俺らはなぁ…今ものすご~く戦いたい気分なんだ。さっき一匹逃したからコイツを捕まえた」
「でもな、正直この状況をお前に知られたもんだから困るんだ。だから…」
ルガルガンはキラリと光る爪をたてて、凶器染みた声色でこう言った。
「お前には今ここで眠ってもらう」
その一言を聞いてピカチュウは叫ぶ。
「リオル、逃げて!そいつら、ヤバい奴らだから!!」
僕は咄嗟にその二匹から逃げる。ちょっと振り向くとルガルガンがすぐに追いかけてきていた。生い茂る木と暗闇を利用して、僕は必死で逃げ回った。
「お前、大人しくしてろよー?」
「…私が何かしたら?」
「これからのリオルと同じ状況になる。まぁ、どーせ何も出来ないだろうがな、ハハハ」
グソクムシャが笑いながらピカチュウの元を去る。
ブチッ。
* * *
木と岩に囲まれた所で、僕は身を隠しながら体力を回復していた。すると、仲間らしきクワガノンとジャラランガがルガルガンの元へ集まって話していた。
「見つけたか?」
「いや…ったく、ツタージャの次はリオルかよ」
…やっぱり、ここにツタージャが来てたんだ。
「早いとこ見つけないとな…、何されるか溜まったもんじゃねぇ」
ルガルガンのその一言で、三匹は散り散りになった。その隙を見て、僕はツタージャを再び探し出した。
* * *
私は…岩の陰で怯えていた。いつ襲われるか分からず、腕のケガの痛みを耐えながら、じっと耐えていた。ふと目を瞑ると、私の脳裏に走馬灯のようなものが流れ出した。
『え…ちょっと、どういうこと?』
『言ったとおりだよ、この雑魚が』
『俺らにとって、お前は邪魔物でしかないんだよ!』
『ひっどい…友達だと思ってたのに!』
『はぁ?そんなもん、もとからその気になってねーよ。さっさと俺らの視界から失せろ』
…私が元の世界で生活してたときの出来事。弱いからという理由で仲のいいと思っていた集団から外され、友達とかそういうのを信じなくなった瞬間。
この世界に来られて良かった。もう私…どうなってもいいや…。
「…」
「……」
「………やっと見つけたよ、ツタージャ」
「…え?」
顔を上げるとそこには…ちょっと前に会ったリオルがいた。
「…またアナタなの」
「随分落ち込んでたようだけど、大丈夫?」
「私のことなんていいでしょ、それより…なんでここにいるの」
「ツタージャを探しに来たんだ。あの時のあの言葉…ツタージャには心の悩みがあるんじゃないかってずっと心配だった。だから…聞かせて?悩みがあったら、少しでも力になるよう頑張るから」
その瞬間、リオルの後ろから空気を読まないグソクムシャがヌッと出てきた。
「…見つけたぞ」
「ヤバっ!?とりゃっ!」
リオルは咄嗟に『しんくうは』でグソクムシャの顔を押さえ込み、体勢を崩させた。その隙に、リオルは私のことをつかんで森の中を逃げ回る。私はリオルから目を反らしていたけど、心では反らしたくなかった。
「まだこの辺にいるはずだ!探せー!」
グソクムシャは大声で言う。よほどさっきの『しんくうは』が不覚だったのだろう。そんなことよりも…。
「なんで…なんで私のことなんかに構って助けるの…?赤の他人の…クズみたいな私のことを」
「そんなクズだなんて思ってるわけないじゃん。クズって言う方がクズだと思うよ。それに…なんか放っておけないんだよね!」
急に見せたリオルの無邪気な態度と照れくさそうな笑顔。そんな中で出た温かい言葉に、私はただただ涙が出そうでたまらなかった。私はゆっくりリオルに近づきそっと抱きついた。不覚にも流した一滴の私の涙をリオルは拭い、私の肩をポンポンと叩いた。
* * *
ここには長居できない。ツタージャと話して、ピカチュウの元へ向かうことに決めた。そう思って立ち上がったそのとき、上から複数の岩が落ちてきた。
これって『がんせきふうじ』!?僕たちは岩に囲まれ、あの四匹が入ってきた。
「ようやく二匹まとめて捕まえたぜ…」
「追いかけっこはお終いだ。覚悟しろ!」
四匹が一斉に技を放ち僕たちを攻撃する。もうダメか…!と思ったその瞬間、僕たちの目の前に雷が落ちてきて、僕たちを攻撃から防いでくれた。すると、段々と辺りが電気で黄色くなっていくのが分かった。そのとき、雷の落ちたところから誰かの影が見えた。煙が晴れると、そこにいたのは……。
「終わりなのはお前らの方だ」
ピカチュウだ!神の口調で、しかも完全に攻撃モードに入っている。すると、何かの構えをとりだした。
「げ、神様だったのかよ!?」
「反省をしないならず者に、神の鉄槌を下す!『スパーキングギガボルト』!!!」
僕たちの周りは激しい電気の明かりで明るくなり、目を開けていられなかった。
* * *
…。
……。
…………。
ようやく目を開けられるとおもって開けると、そこには僕とツタージャ、ピカチュウと、クラヤミの森の風景が広がっていた。
「あれ…ルガルガンたちは?」
「あそこ」
ピカチュウが指さす方向には、石化した四匹の姿があった。
「え…?」
「滅多にないんだけどね~…反省しないならず者は石にされて、虚無の世界に送られるんだ。こうなったらとことん反省しないと、戻ってこれないの」
「怖っ…で、さっきのは?」
ツタージャはピカチュウに聞いた。
「ん?あぁ、神の地位にいる者だけが使えるゼンリョクのZワザ。あそこまで本気出したの初めてかも」
「へぇ…」
「とりあえず、森から出ようよ!テレポートするから掴まってて」
僕たちはピカチュウに掴まり、森の出入口にテレポートした。ツタージャも抵抗なく僕の手を握っていた。
「あの時、私勝手なことして…ごめんなさい!」
ツタージャは、森から出て街に行くとすぐにピカチュウに頭を下げた。
「ツタージャ…顔を上げて。私の方こそ、ツタージャの気持ちに気付いてあげられなくてごめん」
ピカチュウはしゃがんでツタージャの肩に手を置き、そっと声をかける。正直、僕ここにいちゃいけないような…。そう思っているとピカチュウは立ち上がってこう言った。
「リオル、ツタージャ。結びが離れるまであと一時間と少しある。この間ならいつでも帰れるけど、やり残したことはない?」
「やり残したこと…大丈夫かな」
「じゃ、私から一つ」
ピカチュウは僕に小さな紙封筒を渡す。
「今はまだ開けないで。いつか開ける日が来るから。それまでは、ね?」
「…分かった」
「うん。じゃあ、駅まで行こっか」
* * *
僕たちはテレポートで、この世界に来て初めて見た真っ白な空間にある駅に来た。そのとき、ちょうど遠くに電車の光が見えた。ピカチュウにはあの電車に乗ったら何が何でも意識がなくなるまで降りないようにと忠告された。さらに、こう付け足した。
「元の世界へ戻った瞬間…君たちのここで過ごした記憶は全て消えてしまう。ここは、君たちにとって存在が知られちゃいけない世界だから。もちろん、二匹もまた赤の他人同士に戻っちゃう」
「そんな…」
「ガマンして、これは曲げられない定めなんだ。ただ、君たちが元の世界に戻ってまた出会ったら分からないけどね」
そうこうしているうちに、電車は駅に停車していた。まるで僕たちが乗るのを静かに待っているようだった。僕たちは、とりあえず電車に乗る。
「ありがとう、二匹とも。いろいろあっても楽しかったよ。そろそろ私も神の役目に戻らないとね」
「こっちこそ、路頭に迷う僕らを助けてくれて、ありがとう」
そう言うと、電車の扉が閉まり、ゆっくりと電車が走り出した。ピカチュウが手を振っていたので、僕たちも手を振り返した。
僕たちは、電車の椅子に隣り合って座る。
「私も、記憶がなくなる前に言っとかないと。リオル、アナタには助けてもらってばかりだった。本当にありがとう」
「いやいや…僕はただ、ツタージャが心配だっただけで…あ、そうだ」
僕は、ツタージャの両手を握り向かい合う。ツタージャは少し驚きを隠せない顔をしていた。僕は、気持ちを整えてはっきりこう言った。
「もし、僕たちが元の世界に戻っても覚えていたら─────」
もう一時間くらい電車に揺られた気がする。その中で、少しずつ意識が消えていくような感覚が生まれてきた。ツタージャも同じような状況だったのだろう。発した声がかなり小さく弱々しかった。
「ねぇ、リオル…」
私と……
友達になって………?
…。
……?
………………!
揺れる電車の中、僕はふと目を覚ます。いつの間にか寝ていたらしい。
…あれ、僕……。
「今まで、何してたんだっけ………?」
* * *
知らない間に意識してしまうことがある。
例えば、ニュースとかでいじめに関することに、深く関心を持つこと。就職難で、ホームレスで野生のポケモンと共に過ごす街のポケモンたち。幸運にも、僕はこのようなことにならなかったが、僕が他のポケモンよりも、ここまで興味を持つ理由が分からなかった。
「遅いよ、ルカリオ」
「ごめんごめん、ジャノビー。ニュースに釘付けだった」
「何それ怖い」
ジャノビーとは、もう五年くらいの付き合いだ。彼女との出会いもまた不思議だった。
五年前、僕がまだリオルだった頃、特に理由なんて無かったが、頭の中で行かなきゃダメだと訴えている場所、噴水広場に行った。来たはいいがすることがないので、適当に散歩して帰ろうとすると、突然彼女と出会った。
赤の他人同士だったのに、僕はこのポケモンを探していたのかもと悟った。ツタージャだった彼女も同様だった。噴水広場に行かなきゃいけない気がして、家を飛び出してきたんだとか。
僕たちは、街を歩きながら話をする。
「ルカリオのカバンにつけてるその星みたいな木のキーホルダー、いっつもあるよね」
「あぁ、うん。話してなかったっけ。確かこれは昔、神の力が宿るものだって言われて買ったんだっけ…?」
神の力…自分で話した言葉に、思わず立ち止まってしまう。
神…か。その一言に、とても大きいことがある気がしてならない。
「ジャノビー…『神』って言葉に心当たりない?」
「え?う~ん…そういえば私たち、同じ時期に神隠しに遭ったんだっけ。周りから言われるまで気付かなかったけど」
神隠し…確かにそうだけど、なにか不思議な力で記憶にふたがされている気がする。
…まぁ、考えても仕方ないか。今は、今あることをやらないと。そう言って、僕たちはまた歩き出す。
* * *
雪の降る寒い冬が過ぎ、桜が舞う温かい春が訪れ、炎天下の暑い夏を乗り切り…気がつけば、再び実りの秋を迎える。時がたつのは本当に早い。かれこれもう一年たつのかと思うと、少し不思議な気持ちになる。
周りからの支援もあり、僕たちは同居することになった。そんなある日、夕食を食べる僕たちは外国の紛争のニュースを聞く。
『─── 終わったはずの世界大バトル。各地では、巨大で残酷なバトルが後を絶ちません。───』
「…それぞれが相手を信用してないんだね」
「私もそんな時期あったなぁ。友達を信じられないっていう」
でも、今はルカリオとか友達がいっぱいいるからね、とジャノビーは笑って言う。怒ることも滅多にないが笑顔もなかなか見せないジャノビーが見せる笑顔に、僕は心の中でほっとした。
後片付けをしてリビングに行くと、棚の上にホコリをかぶった小さな何かを見つけた。紙封筒だ。
「これ…何だろう?」
「さぁ。開けてみれば?」
僕はホコリを払い、その紙封筒を開ける。その中には、写真が一枚入っていた。ところどころ色落ちしてるけど、何となく分かる。
リオルとツタージャ、ピカチュウが、笑っている写真。ここに映るリオルとツタージャは、僕たちだと直感的にすぐに分かった。
僕たち、あの時以前に会っている…?それと、このピカチュウは…?
見せて~、とジャノビーが近寄って写真を覗く。僕は写真を手渡そうと差し出した。そのとき、ジャノビーの手が僕の手に触れた。
そのときだった。僕たちの脳内に、失われていたのかよく分からない記憶が、曖昧のまま入ってきた。
でも、これだけは分かる。僕とツタージャはあの時以前に、あそこで会ってて、あんな事が起こったこと。それに…僕たちはあの時、出会う運命にあったってこと。
「ジャノビー…いや、ツタージャ」
「ルカリオ…いや、リオル」
友達になってくれて、ありがとう ──────。
─FIN─