ガーリー・エアフォースX2 ~蒼き鷹と灰の竜姫~   作:零八式

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(タイトルに他意は)ないです。
ただこれ以上にいいサブタイが思いつかなかったんや……


10話 スズメバチには気を付けよう

 

 状況は最悪だ。

 演習開始から僅か1分、味方2機が瞬く間に撃墜判定を下された。相手はたった二機、こちらはその倍の四機いたのにも拘らずだ。

 一機は得意の電子戦を駆使して情報を欺瞞しながら接近、不意打ちを仕掛けて黄金の鷲を、もう一機はその大型可変翼を駆使して並みのドーターを圧倒的に凌駕した空戦能力を披露して青い蜂を、それぞれ撃墜していた。

 

 『01!! そっち行ったぞ!!』

 

 「くそっ!! 何なんだあの機動性は!? まるでザイじゃないか!!」

 

 自身の背後にぴったりと張り付いてきた可変翼機体をモニター越しに肉眼で見ながら、グリペンのコックピットで慧は戦慄すら覚える。

 蒼穹の空に一際目立つガンメタリックの翼竜は、自身の機体速度に合わせてその翼をはためかせる様に稼働させる。低速時には前進翼を展開して安定性を崩すことで高い旋回性能を会得し、高速飛行時には主翼や尾翼を閉じて衝撃波の発生を遅らせることで高亜音速から遷音速領域での抵抗減少や臨界マッハ数を上げるなど、圧倒的な加速性能、最高速度を持ちつつも常に必要かつ最適な空力特性を維持したまま飛翔し、赤き有翼獅子を今にも喰らい殺さんと猛追する。

 

 『ほれほれどうした!! アレクトの小童どもの方がまだ筋が良かったぞ!! もっと気合を見せい!!』

 

 「何を……っ!!」

 

 ひたすら真後ろに付きながらも攻撃はせず、ロックオンを飛ばしては解除を繰り返してグリペンをひたすら煽り立てるX-02S ANMのアニマ、リューコ。ロックオンアラートが付いたり消えたりするものだから、コックピット内はやかましい事この上ない、見事な精神攻撃だった。

 

 「遊ばれてる……完全に」

 

 「グリペン、カナード直立だ!!」

 

 「あれを、やる……!!」

 

 慧はスロットルを開けたままエアブレーキとカナード翼を展開させ、一瞬だけ急速に機体を減速させる。以前の小松防衛戦でも披露した、速度を可能な限り殺さない上での減速機動だ。襲い掛かるつんのめる様な衝撃。だが、数秒待っても視界の先に翼竜は見えない。追い越した跡が、確認できない。

 

 『ほぅ、悪くはないのう。じゃが、詰めが甘いわ!!』

 

 「なっ……にぃ……!?」

 

 「嘘、何あれ……?」

 

 ストライクワイバーンはまだ、グリペンの後ろにしっかりと付いて来ていた。グリペンが減速してこちらを抜かさせてくると読むや、一瞬にして主翼を展開した上でコブラ機動による減速、更にそうしながらも三次元推力偏向ノズルを駆使して、何と機体を起こしたまま追いついてくるではないか。

 そのあまりにも変態的な機動に、グリペンと慧は驚天動地に陥る。

 

 『相手がザイならそれでも良かったかもしれんが、な』

 

 直後、一瞬にして上昇し太陽の中に掻き消える灰色の翼竜。

 すぐにカナード翼を戻し、決死のパワーダイブで振り切ろうとするも、太陽を隠れ蓑にした垂直降下しながらの強襲はそうそう避けられず、撃墜判定を下されてグリペンのコックピット内に耳障りな電子音が鳴り響いた。

 

 

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 演習開始 約一時間前 小松基地

 

 

 先日、イオは自分が所属している会社の企業秘密である灰色髪のアニマの少女、リューコに一日振り回された挙句、今度はライノとゾーイにも詰問される羽目となり、ようやく解放されたのは日もすっかり暮れた頃だった。

 その翌日、イオは精神的に疲れた体を引きずってファルケンのメンテナンスとエンジンチェック、自身の機体のメンテナンスが終わったのか暇そうにしているイーグルの相手、そしてファルケンの補給パーツに紛れ込んで運ばれていたMS社最高企業機密のドーター、ガンメタリックのストライクワイバーンの最終チェックの手伝いで格納庫を右往左往していると、日頃聞き慣れないエンジン音に気が付き、足早に格納庫の外へと向かう。

 そこにあったのはエメラルドグリーンのドーターが、エンジンの具合を確認しているところだった。

 

 「すげぇ!! F-4の偵察仕様じゃねぇか!!」

 

 「ほう、お前さん、あれが分かるのか」

 

 「当たり前だぜ!! ありゃあ半世紀以上前線で戦い続けた歴戦の猛者だ。日本だと最近じゃあ配備数が減ってるって話だが、まさかドーター化しているとはなぁ!!」

 

 陰ながら戦闘機オタクであるイオは、興奮覚める様子も無く語り続ける。舟戸が「その言葉、本人に聞かせてやれ」と言うと、不意にファントムのエンジンが止まり、装甲に覆われたコックピットが開く。

 中から出てきたのは、日本の和人形の様な風貌の落ち着いた風貌の少女だった。その髪は機体と同じエメラルドグリーン色に輝いている。

 

 「あら?」

 

 柔らかな声音を持つ翠髪の少女、ファントムは八代通と何やら話し込んでいた慧に視線を移すと、タラップを降りてから二人に近づく。

 

 「ごきげんよう、昨日はどうも」

 

 「何だ、顔見知りか?」

 

 「えぇ……まぁ……如何にもな奴に絡まれていましたから……」

 

 どこか落ち着かない様子でしどろもどろになる慧。その友人の窮地を助けるべく、イオはファントムに歩み寄った。

 

 「いやぁ~、歴戦のF-4乗り(ファントムライダー)に会えるなんて光栄だぜ。しかもこんな美人たぁ驚きだ。アニマは全員美少女の法則でもあるのか?」

 

 「あら、見かけによらずお世辞が上手いんですね……あなたは確か」

 

 「申し遅れました。わたくしめは、イオ・ケープフォード。現在日本国自衛隊に雇われているマーティネズ・セキュリティー社でアルバイトをしている者です……と言う訳で、以後お見知りおきを」

 

 イオはわざとらしく馬鹿丁寧な態度で深々とお辞儀をする。見た目と態度が比例しない、そのおかしさがツボに入ったのかファントムはクスッと笑うとその握手に応じた。

 

 「こちらこそよろしくお願いします。私はRF-4EJ-ANMファントムII。どうぞファントムとお呼びください」

 

 ファントムはイオと握手を交わすと、では、これからお父様とお話がありますので、と八代通を始め慧やグリペン、イーグルを伴って格納庫を去ろうとする。

 しかし、ストライクワイバーンの横でどこから持ってきたのかビーチベッドで寝ころび、機体のチェックリストを片手にジュースを飲みながらくつろぐ純白のワンピースを着た灰色髪のアニマ、リューコの横に立つとファントムの方から彼女にお辞儀をした。

 

 「ご無沙汰しています、先生(・・)。不肖ファントム、昨日付けで小松基地に配属となりました。また貴方と飛べる事を嬉しく思います」

 

 その今まで見たこともない態度に、八代通ですら目を剥いた。

 一方、当のリューコはと言うと特にこれと言った気負いを見せず、普通に接する。

 

 「うむ、久しいのう、ファントム。お主も壮健そうで何よりじゃ。儂にクラッキングを仕掛けた、あの腕は衰えておるまいな?」

 

 「えぇ、空戦をしながらの電子戦には磨きを掛けてきたつもりです。もし宜しければ、今ここで披露しても構いませんが……」

 

 「止めておけ。見ての通り儂の機体は組み立て中、最低でもあと1時間は掛かるじゃろうて。その後でなら、いくらでも構わんがのう」

 

 ひっひっひっとリューコが笑い、ファントムもまたそれに応えて笑う。どうやら師弟関係にある様だが、何か只ならぬ因縁を抱えていそうな雰囲気だ。 

 しかし、リューコを見たことがない慧は、ここで思わぬ爆弾発言を投下してしまう。

 

 「子供……何でこんな所に?」

 

 口に出さなきゃ良いのに。と、ストライクワイバーンの整備をしていたMS社直轄の整備員一同は内心一斉にそう呟いた。

 慧の呟いた独り言が聞こえていたのか、ピクリと耳が動くとリューコはチェックリストを置いて立ち上がり、慧の前まで詰め寄る。 

 

 「……おい、そこの小僧。今儂を見て何と言った?」

 

 「え、いや、あの……」

 

 「子供……確かにそう言ったように聞こえたがの、ん?」

 

 慧の丁度鳩尾の辺りにいつも持ち歩いている扇子を突きつけ、身長が足りないせいで上目がちになりながらも睨み上げる。

 一見すれば少しませた子供が子供扱いされて怒っているという微笑ましい光景なのだが、彼女の場合いかんせん纏っているオーラが違いすぎた。

 蛇に睨まれた蛙ならぬ、竜に爪を立て掛けられた冒険者、と言った方が正しいくらい、慧は異様な雰囲気に呑まれて動けない。

 それを助ける為か、グリペンが両者の間に割って入り、距離を離させる。

 

 「慧の率直な感想は間違っていないと私も思う。確かにあなたは小さい。自分より小さいアニマを、私は初めて見た」

 

 「アニマだって!? こんな小さい子が……?」

 

 「ほう、貴様は同族を見抜く程度には賢いか。だが分を弁えよ、この儂を誰だと思うておる?」

 

 「……知らない。初期学習のデータベースの中に、あなたの機体は存在しない」

 

 「はっ、だろうな。これだからマニュアル頼みのお子様は……ドクター八代通、この国のまともなアニマはバイパーとファントムだけか?」

 

 やれやれと言った具合で嘆息するするリューコ。

 それもその筈、X-02は当時内戦の勃発していたレサスからオーレリア連合国群に亡命してきたベルカ人が、技術の粋を集めて作り上げた当時における正真正銘、ワンオフの機体なのだから。戦争終結後に記念博物館で動体保存されていた当機体だが、一般公開はされていなかったので、一般人は認知しているかすらも怪しい機体なのである。

 彼女のその慇懃無礼過ぎる態度に八代通は呆れながらもフォローを加えた。

 

 「だが、あの二人は揃えば凄いぞ。この前の小松防衛戦の時は鳴谷君を乗せたグリペンは一機で重爆撃型を撃破、そして戦闘機型も多数撃墜している」

 

 「戦場の空気を知らないひよっ子に、よくもまぁそんな真似をさせられるのぅ……昔を思い出すわい」

 

 戦力の足りなかったあの頃を、な。とリューコは人知れず呟いたが、その呟きを聞き取れたのはこの場ではファントムだけだった。

 その一瞬の静寂を、イーグルが割って入って打ち破る。

 

 「ちょっと!! あなた、今お父様とイーグルを馬鹿にしたでしょ!!」

 

 「ドクター八代通には質問しただけじゃ。そう言う貴様こそなんじゃ、うちの若いのがいなければ危うく醜態を晒す所だったと聞くぞ?」

 

 「ムカつく~!! 偉そうに!! そう言うあなたは何様のつもりなの!?」

 

 「はっ、聞いて驚くが良いわ」

 

 リューコはサンダルのままビーチベッドの上に立ち上がり、バッと扇子を広げては背後に控える灰色のストライクワイバーンを背に大仰に構える。

 

 

 「かのオーレリア戦争を駆け抜けた伝説の飛行小隊、グリフィス隊。その一番機の改修型……ストライクワイバーンじゃ。覚えておいて損は無いぞ?」

 

 

 その場に居た者全員に不敵な笑みを振りまくリューコであった。「完璧に決まった……」とドヤ顔でふんぞり返りジュースを呷るリューコだが、

 

 「あれ~? 何やってんの~、社長秘書殿」

 

 「-----ブフゥ!?」

 

 機材のチェックを終えたライノが後ろから声をかけると、口にした液体を飲み込み損ねたのか気道に入り、むせた。エホッエホッ、と可愛らしく咳をする姿からは、まるで先程の様な威厳は感じられない。八代通を始めとした一同はそのギャップ差に忽然としながらも、その空気を物ともせずライノはリューコに近寄り、手持ちのハンカチで白いワンピースに染みついたジュースの跡を拭っていく。

 

 「げぇっ!? お主は海軍の蜂娘!! こ、これ、止めんか……」

 

 「大丈夫~? 社長秘書殿? 白い服はシミになりやすいもんね~。ちゃ~んと拭かないと……」

 

 「ちょっ、そこは……あふぅ//……」  

 

 珍しく怯えた声のリューコ、よいではないか~と拭き取りを続行するライノ。 

 ただ服を拭くだけにしては異様にアツい絡み合いが、ビーチベッドの上で繰り広げられる。建前上ちゃんとジュースの付いた部分を拭き取ってこそいるが、布越しにライノの手は腹回りから鼠蹊部、太ももを撫でるように動き回り、リューコの口から僅かに嬌声が漏れる。

 どうやら、先日イオを連れまわした事で彼が刑務所に行く原因になりかけた事を根に持っているらしく、その報復なのか隙あらば過剰なスキンシップを仕掛けてくるのだ。最も、原因はそれだけでは無いようにも見えるのだが……

 図らずも彼女がリューコの抑止力(ストッパー)として機能している事を確認すると、独飛の面々はそそくさとその場を去っていくのであった。

 

 「き、貴様らぁ~……空に上がったら、覚えておけよぉ……」

 

 すっかりご満悦したライノから解放された、死に体な状態のリューコはビーチベッドに伏せると息も荒げに呟いた。

 

 

 イオが彼女の報復のとばっちりに巻き込まれるまで、あと一時間。

 

 




現在6巻まで購入、5巻まで読了。

GAF12話見てまず思ったのが……ザイ化する空港とかを見て劇場版ダブルオーのELSを思い出しました。発電施設の下りは当時トラウマでしたね……
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