ガーリー・エアフォースX2 ~蒼き鷹と灰の竜姫~   作:零八式

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 友人に薦められて見たら「なんだよ……結構おもしれぇじゃねぇか……」となったのでとりあえず本屋に直行して三巻まで買ってきました。
 不定期ですがもし良かったらどうぞ!!


プロローグ 赤い蠍 墜つ

二〇一七年 五月 上海脱出作戦 戦線

 

 

 「はっ、俺も遂にヤキが回ったか……」

 

 既にセンサーに被弾した影響で視界の半分が死んだ六角形型モニターの集合体である全周囲モニター「COFFINシステム」に囲まれたコックピットの中で、男は一人毒吐いた。

 飛行服の左肩に飾られた赤い蠍のエンブレムが、今は被弾による衝撃で飛び散ったモニターのガラス片で出血した彼の血により赤く染まっている。

 中央のディスプレイに映る愛機の残弾を確認。

 ウェポンベイに短射程AAM残り1、機銃弾20発、これが今の彼の持つ最後の武器だ。虎の子の「TLS」は先程重爆撃機タイプを焼き払うのに使い切ってしまった。

 そして燃料も……多分、撤退するには足りていない。

 生還すら絶望的なこの機体は、正に今の彼にとってはCOFFIN(棺桶)そのものだった。

 

 『もういい、Antres01!! 現空域より離脱しろ!! 避難民の撤収作業は完了した!!』

 

 「そうっ……かい……っ!!」

 

 多量の出血により意識が朦朧としながらも、座席下に設けられた二段階設けられている非常用脱出装置のレバーを一段階(・・・)だけ引っ張る。

 すると、プシューと空気が隙間に入り込み、その直後に弱装爆裂ボルトが作動。最早半分以上意味を失ったセンサーとモニターを兼ねた天蓋装甲が排除され、キャノピー越しに外の光景が直接彼の眼に映る。

 

 「あぁ、綺麗なもんだな……」

 

 燃え盛る都市と水平線に消える消える寸前に輝く太陽を見て、彼は一人そう呟いた。

 時刻は既に夕方。

 突如現れた正体不明勢力『ザイ』の攻撃により、中国全土は瞬く間に戦火に包まれた。

 上海からのこの撤収作戦も、既に戦闘開始から5時間が経過しようとしている。

 中国空軍との合同演習を行おうとしていたマーティネズ・セキュリティー社の誇る飛行中隊アンタレス隊が同軍と協力し、市民の撤退を援護していた。

 しかし、彼は生き残った部下に避難船の護衛を任せ、自分一人で殿を勤めていたのだ。

 たった一機、既に中国空軍は全滅している。孤軍奮闘。

 それでも彼は、30機以上のザイを撃墜して時間を稼いでいた。撃ち漏らしこそ出てしまったが、それでも最小限に抑えていたのだ。

 一瞬だけ、ザイからの攻撃が止んだ。

 その隙に彼は無線で、味方のE-767と交信した。

 

 「Antres01よりCanopus、恐らくこれが最後の交信だ。現在弾薬はAAM1、GUN20、TLSは焼き切れた。そして残念な事に燃料も無い」

 

 『………』

 

 「だからバーフォードさん……息子に、今から言う言葉を、伝えてくれ。『もし、お前が運命に抗いたいのなら、プレゼントにZ.O.E.とn-------』」

 

 

 

 

 

 ドォン!! ザザッーーーーーーーーーーーー--------------

 

 

 

 

 

 

 「……アンタレス01……反応、ロスト……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 六月 石川県小松市

 

 

 「おーい、イーオー!! 例のアレ、使わせてくれよ~!!」

 

 小松市の郊外に沿う水路を伝った先にあるちょっとボロい一軒家、その前で自転車に乗った少年、鳴谷慧は門の前で止まると二階に向けて大声で呼びかける。

 すると窓から、眠そうな顔をしたざんばらな金髪碧眼の少年が姿を現した。上半身裸で。

 慧が、服着ろ服!! と大声で怒鳴ると面倒くさそうにTシャツを着てベランダに乗り出す。

 

 「ふわぁ~ぁ……ったく、人が呑気に寝てる時に……」

 

 「今午後の1時だぜ? 俺でも11時には起きるぞ」

 

 「どうせあの中国人美少女明華ちゃんに甘い声で起こされてるんだろ? ったく良いよなー、異性と同棲してる奴は」

 

 「そんな良いもんじゃないけどなぁ……うるさいし」

 

 やたら流暢な日本語で話すこの金髪の少年はイオ・ケープフォード。

 母方の血筋が日本人のハーフであるが故にクォーターだが、母は金こそ送ってくれるが蒸発、父はつい最近に事故死(・・・)したと聞かされている。現在は蒸発した母の妹夫婦に引き取られているが、その二人も大体帰ってこないことが多く、殆ど一人暮らし状態だった。

 母は聞いた限りどこぞの研究機関の所属だったらしく、その所為か仕送りは非常に高額で、生活に不自由する事は無いと言う。

 

 それだけ聞けば、親族に毛嫌いされているクォーターの少年だ。

 

 だが、彼をそれだけにしておかない所以が、この家の倉庫に眠っている。

 

 「で、例のアレを使わせろって? しょうがねぇな~、ワンプレイ500円」

 

 「ゲーセンかよ、まぁそれくらい良いけどさ……」

 

 「冗談だって、裏に来な」

 

 イオは笑って手招きすると、慧は自転車を停めてから門を開き、縁側を通って裏へと回る。

 おおよそ彼のようなアメリカ人のクォーターが住むにしては余りにもギャップのある日本式の家だ。

 そして件の裏の倉庫に付くと、イオと協力して錆付いたシャッターをこじ開ける。

 

 「いつ見てもすっげぇよなぁ……お前絶対金持ちの息子だろ」

 

 慧は数度目の驚嘆を吐いた。

 そこにあったのは、大型の発電機の様な物と、幾枚もの六角形のモニターで構築された全周囲モニターを採用した戦闘機のコックピットその物だったのだ。

 しかし、現在日本や世界を見ても一般的(・・・)にはこんな全周囲モニターを採用した戦闘機などあるはずも無く、武装にもレーザーがあることから、二人は完全に親が道楽で作ったゲーム筐体だと思っている。

 

 「親父がくれた最後の誕生日プレゼントだ。これぐらい豪華でも罰はあたらねぇだろ」

 

 「あ……悪い。親父さん、事故死したって……」

 

 「気にすんなよ、慧。あんな顔も覚えていないような奴に、そこまで俺も入れ込んじゃいないって」

 

 イオはそう言うと発電機を起動、補助電力から主電力へ切り替え、するとコックピットの上部が開き、搭乗者を受け入れる状態となる。

 

 「勝負は1回。敵が無限沸きするEX-2をより多くの敵機を落とした方の勝ちだ。お前が負けたらマジで500円貰うから」

 

 「えぇー!? 冗談じゃなかったのかよ!?」

 

 「電気代意外と馬鹿にならねぇんだぞ? それにお前が負けたら、だ。まぁ、今んところ9:1で俺の勝ちだけどな。なーはっはっはっ!!」

 

 「くっそー、俺が勝ったらチャラにしてもらうからな!!」

 

 「そんじゃ状況開始1分前、40秒で支度しな!!」

 

 イオがコックピットに接続されたパソコンに選択したミッションを入力すると、コックピット側に情報がアップロードされる。

 その隙に乗り込んでいた慧は備え付けられたシートベルトをして備え付けのお飾りのヘルメットを被り、HUDに映る情報をチェックする。

 持ち武器は20mm機銃弾800発、胴体内部格納式のウェポンラックに短射程AAM10発、翼部パイロンに搭載されたミーティア長射程空対空ミサイル4発、そしてTLSと称された10秒間レーザーを機首から放射する特殊武器が14回分。

 これらを用いて、今から無限に沸いてくるSFチックな敵戦闘機たちをより多く撃墜するのが目的だ。

 

 機体はどこかの地下格納庫からエレベーターでせり上がり、空母の甲板の上に移動、そして-----

 

 

 「Antares02 クリアード・フォー・テイクオフ!!」

 

 

 筐体起動時に毎度浮かぶその文字列をイオを01、自らのコールサイン02とした慧は、カタパルトから打ち出され、偽りの空を舞った。 

 

 

 

 

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 同時刻 小牧基地 第三格納庫

 

 

 「長旅お疲れ様です。バーフォードさん」

 

 「こちらこそお久しぶりです、都築二等空佐。五年前の合同演習以来でしょうか」

 

 小牧基地に降り立ったマーティネス・セキュリティー社の所有するM42飛行中隊、その司令官であるフレドリック・バーフォードは、かつて合同演習の際に起きた事件で共に戦った都築二等空佐と握手を交わす。 

 彼は元々中部航空方面体入間基地所属であったが、五年前突如日本で発生した武装組織との戦闘経験を買われ、この基地への転属となった。

 

 「しかし残念です。あの時のパイロットに会って、もう一度直接お礼を言いたかった……」

 

 「………」

 

 彼の言うあの時のパイロット、とは言うまでも無く上海撤退作戦おいて戦死したアンタレス01の事だ。

 その中には、武装組織に宗旨替えしたライジェル隊も含まれている。

 バーフォードはやるせない気分になりながらも、格納庫に運び込まれていく限りなく黒に近い青で塗装された機体を見上げた。

 

 彼が乗っていた燃え上がる炎のような赤色とは対照的に、何処までも深い海を模した瑠璃色の装甲。

 

 そして尾翼に施された蒼い蠍のエンブレム。

 

 翼形状は、主翼に前進翼、機体左右と下部に取り付けられた3面カナード、上下に張り出した大型エンジンユニットに接近配置された、内向き斜め双垂直尾翼で構成されるエンテ型。

 主翼の動翼は、内側にフラップ、外側にエルロンとなっているが、機体の大きさに比べて翼面積はやや小さめ。

 エンジンユニットは上下に大きく張り出し、左右の間隔もかなり広い。

 この左右のエンジンの間に上下に展開するエアブレーキが設置され、エンジンノズルには、垂直方向への推力偏向が可能な、シャッターのような構造の開閉式2次元偏向ノズルが採用されている。

 

 コックピットは通常のグラスキャノピーではなく、コックピット周辺にセンサーを多数配置し、それらのセンサーから得られる電波、赤外線、可視光線などの情報をAIシステムが解析、再構成した上で密閉されたコックピット内の全天球スクリーンに投影する「COFFINシステム」が採用されている……のだが、

 

 

 「ハッチの下が……無い?」

 

 

 整備士が早速機体に取り付き、発した第一声がそれだった。

 センサーを内蔵した装甲が跳ね上がった先には、簡易的な座席とモニター3枚、突貫工事で取り付けられたNFI、それだけだった。やたらスペースに余裕があるにも拘らずだ。

 後は何も無い、がらんどう。

 まるで、とりあえず付けておきましたと言わんばかりの適当さだった。

 

 「そいつなんだが、今は使えない……いや、やたら相性が悪いと言うべきか。どうやら現存のNFIのインターフェイス自体とうちのアニマの相性が極端に悪いみたいでな。この方がまだ落ち着くって事でその仕様にしてあるが……」

 

 「これが噂のADF‐01ANM FALKENですか……よくドーター化出来ましたね」

 

 「予備パーツで組み上げられた一機と偶々相性が良かっただけです。しかし……」

 

 

 バーフォードはそこで言いよどむと、ため息を吐いた。

 

 

 

 「この後に顔合わせも控えてると言うのに、『ゾーイ』はまた散歩か……」

 

 

 

 

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