ガーリー・エアフォースX2 ~蒼き鷹と灰の竜姫~   作:零八式

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GAFアニメの声優を見てふと思ったのがシャンケル博士の「出でよ!! ブルーアイズ・ホワイトドラゴン!!」の声にライノがノリノリで青き眼の乙女からの青眼の白龍を召喚する構図でした

最近ネタでブルーアイズデッキ作ったのが原因かもしれない……


4話 ダブル・トラブル

 小松基地 技本執務棟 グリペン、ゾーイ両機の飛行評価試験当日

 

 

 「どう言う……事だ……?」

 

 いくつものモニターに囲まれた部屋で、最初にそのセリフを発したのはバーフォードだったか、八代通だったか。それとも慧だったか、はたまたイオだったか。

 

 それは、グリペン、FALKEN両機の飛行評価試験当日の出来事だった。

 グリペン、FALKENの両機に課せられた評価試験の内容はいたってシンプル、佐渡島上空の指定されたコースを巡回し、途中に設置された無人ターゲット各々二機づつを撃破すれば試験合格だ。

 しかし、二機が一機目のバルーンを破壊し、周回して二機目に差し掛かろうとしたその時、

 

 「ザイ確認!! 航空機タイプ!! 機数3!!」

 

 「ここは東シナ海じゃないんだぞ、韓国軍は何をしていたんだ!!」

 

 「アンタレス隊、ADF-01ANM及びJAS-39DANM護衛の為、出撃準備に入ってください!! ASAP(可及的速やかに)!!」

 

 「それだけじゃ足りん。三沢のファントムも呼び出せ。あの娘ならすぐに駆けつけられるはずだ」

 

 「ダメです!! ドーター、アニマ共にメンテナンス中!! 出撃には最低一時間は掛かるとの事です!!」

 

 モニタールームに響き渡る怒声、悲鳴、怒声、悲鳴。

 その間も評価試験に立ち会っていたイオと慧は、今まで感じた事も聞いた事も無いような異様な雰囲気に呑まれ、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。

 最終手段として米軍に本格的な救援要請を出すかを思案したその時、

 

 『私たちが行く』

 

 カメラ越しに確固たる決意の声が響いた。それは、グリペンが発したものだ。

 

 『目標はこちらでも確認している。三機くらいなら、私たち二機で対応できる』 

 

 「駄目だ、両機体には訓練用の装備しか積んでいない。他のアニマに任せろ」

 

 『グリペン。ここは私に任せてほしい。バーフォード、TLSを使おう。集束レンズが訓練用とはいえ、二発は撃てるはずだ』

 

 「まだ『気持ち悪い』のは来ていないんだろうな?」

 

 『肯定だ。今までよりずっと気持ちが良いよ』

 

 「……TLSの戦闘出力移行を許可する。これよりAntares04はBARBIE01の撤退を援護せよ」

 

 『了解。ありがとう』

 

 機体の状態を示すモニターの項目のうち、FALKENのTLS出力の項目が「Training(訓練用)」から「Militaly(戦闘用)」に切り替わると同時に、グリペンは反転して帰投を開始し、ゾーイのFALKENは旋回してアフターバーナーを吹かし、ザイの元へ向かう。

 ザイとの遠距離からの正面からの真っ向勝負(ヘッドオン)時に先に発せられたのは、FALKENの機首から伸びた赤い光だった。

 集束率を下げて威力を落とした訓練用のレンズを使っているとは言え、メガワット級の名前と出力は伊達ではなく、そのエネルギー量は健在である。

 ゾーイは思考制御でレンズをユニット内部で角度を調節し、ゆっくりとレーザーを薙ぎ払う。

 そして一機……二機のザイが火だるまに包まれ、爆散したのを確認した。

 

 『Antares04、二機の撃破に成功。残り一機は撤退。これよりBARBIE01撤退のカバーに入る』

 

 ゾーイのその報告に、モニタールームのあちこちから、安堵のため息が漏れる。

 残り一機のザイはTLSの長距離攻撃能力に恐れを為したか、反転して撤退を開始した。

 よしんば来られたところで、こちらにはあと一発のTLSと小松基地から出撃したMS社の誇る精鋭部隊、アンタレス隊が向かっている。彼らの腕前なら一機くらいは余裕で対処ができる。しかし、

 

 (正直、これ以上はキツイ、かな……) 

 

 既にゾーイの額には汗が流れ、表情も先ほどまでの余裕綽々のそれとはいかなかった。COFFINシステムを搭載し、新たに調節されたアニマ用のアクリル板の様な操作端末、NFIに置いた手が僅かに震える。

 これでも以前に比べれば随分と持った方だが、症状が完璧に消えた訳ではなかった。

 アンタレス隊がグリペンと合流するまで残り二分弱。そして、自分も三分程度あれば追い付くだろう。

 そうなれば磐石。そう思い、少しだけ気を抜いたその直後、異変は起きた。

 

 「BARBIE01背後に新手のザイが出現!! 数3!!」

 

 『っ!?』

 

 先程までは反応すら無かった撤退中のグリペンの背後に、突然三機の航空機型ザイが姿を現した。

 先の三機は、最大火力であるFALKENとグリペンを分断するための陽動部隊だったようだ。

 訓練用の弾頭しか積んでいないが故にザイに対しての決定打を持たず、回避行動に徹するグリペン。バレルロール、コブラ、スパイラルダイブ、どれも人間の操作では成しえない正確さと急加減速を組み合わせたマニューバだが、それでも振り切れない。ダメもとで正面に来たザイに機銃を発砲をするが、余裕の回避を見せられる。

 そして、恐れていた事態が発生した。

 

 「グリペンとのダイレクトリンクに異常発生!! ノイズ増大、EGGパターン、安定しません!! このままでは意識障害を起こします!!」

 

 「強制覚醒信号を送れ!! アンタレス隊はどうなっている!?」

 

 「あと一分三〇秒!!」

 

 もはや悲鳴にも近いオペレーターの声。急にコントロールが不安になるグリペン。グリペンの覚醒が困難と判断し、自動操縦に切り替わる。

 しかし、自動制御ではそう複雑な回避運動が出来るわけでもない。

 

 『TLS、二射目を使う』

 

 ゾーイは高度を上げたまま接近し、機首を下げてからFALKENのTLSを発射形態に移行させた。同高度での射撃はグリペンや応援に来る僚機に被弾する危険性が高いからだ。

 対象は捉えている。アニマ用に調整された超高感度センサーが拾う情報は、極めて正確だ。

 既に気持ち悪さは限界に近いが、あと一射撃つくらいは出来る。それで片づけて、その後は自動操縦で帰らせれば大丈夫であろう、と自分に言い聞かせて平静を保つ。

 背後からターゲットをロック、そして発射しようとトリガーを引いた時、コンソール中央のモニターが警告音と共にエラー表示を吐いた。

 TLSが、発射されていない。

 

 『どう……して……っ!!』

 

 限界を迎えたゾーイがコンソールに突っ伏す刹那、中央コンソールに映った機体の自己診断プログラムがエラーの箇所を示した。

 エラーを吐いていた箇所はTLSユニット、正確にはその集束レンズパーツ。そのレンズが、熱量に耐え切れず溶解しているのだ。

 一射目を放つ時に無理やり威力を持たせようと、集束率の低い訓練用レンズに規格外の出力を流し込んで放ったのが原因だった。

 自分の不覚を呪いながら、ゾーイは意識を失う。

 

 「どう言う……事だ……?」

 

 「ゾーイ!!」

 

 「二人とも意識他界系女子やってる場合かよ!? 何とかなんねぇのかよ、おっさん!!」

 

 「アンタレス隊、到着まであと1分!!」

 

 「誰でもいい、二人を助けてくれ……っ!!」

 

 もはや絞り出すような、悲鳴に近いオペレーター達の声。

 その不安と恐怖に拍車を掛けるように耳障りなアラート音が鳴り響く。徐々に感覚が狭まるそれは、まるで死へのカウントダウン。

 誰もが絶望の淵から底に落ちかけた、その時、

 

 『あーあ、もう仕方ないなぁ……助けてあげよっか』

 

 『ちょっとぉ!! せっかくイーグルがカッコ良く決めようとしてたのに~!!』

 

 場違いなほど明るい声が、コントロールルームに響き渡った。

 声の主は二人だった。一人は明るくやや舌っ足らずで幼い声。そしてもう一人は、華やいだ明朗な声、そしてそのどちらも少女の物。であれば、まともなパイロットの物ではなく----------

 

 「なんだ、あの二機は……」

 

 太陽の中から姿を現したのは、二機の戦闘機だった。

 一機はまるで太陽のように光り輝く山吹色、そしてもう一機は空のように鮮やかなサファイアブルー。後者の機体には機体下部に空中給油用の大型増槽が取り付けられていたが、ザイがこちらに気付いたと同時にそれらをパージ、チャンスを逃すまいと戦闘機動に移る。 

 突然の襲来にザイは対応しきれず、必死に回避しようとするが

 

 『FOX2!!』

 

 『FOX2!! いっけ~!!』

 

 完全に奇襲に成功していたサファイアブルーのF/A-18Eが一発、サンライトイエローのF-15Jが二発の赤外線ホーミングミサイルを放つ。

 噴煙、射出、命中、爆発。

 つい15秒程前までの絶望的な空気は、二機の登場とたった三発のミサイルを持って打ち砕かれた。

 その機体を見た八代通が、忌々しげに呟く。

 

 「出番を見計らっていたな、目立ちたがり屋め」

 

 「日本の持つもう一機のアニマ、F-15Jですか。しかし、何故あの機体が……?」

 

 その隣を飛ぶ青い機体を見て呟いたバーフォードの疑問に答える者は、この場にはいなかった。

 

 

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 小松基地 兵舎付近

 

 

 「……はぁ、疲れた」

 

 イオはその後、調整設備に運び込まれた意識不明に陥ったゾーイとグリペンを見送ってから、マーティネズ・セキュリティー社の面々に宛がわれた宿舎の自室に帰宅しようとしていた。

 二人が無事……とは言わないが、帰ってきたこと自体は喜ばしい事だろう。しかし、MS社管轄のゾーイはともかく、結果を出せなかったグリペンはこのままでは廃棄処分確定コースだという。

 そして、気を重くしているイオに畳み掛けるかのように、予定を早めて本日新たに小松に着任したF-15Jのアニマ、イーグルの相手を八代通の代わりに勤めさせられ、イオは心身共にくたびれていた。

 曰く、「この基地じゃあ珍しい金髪同士、仲良くやれるだろう」との事だ。

 

 「悪い子じゃ無いんだろうけどさぁ……あん?」

 

 兵舎まであと少しというところで、イオはブーツに何かが当たったのを感じて足元を見る。

 夕日に照らされ光るそれは、劣化からかチェーンの千切れた銀細工のロケットだった。

 

 「ロケット? 何でこんな所に?」

 

 イオはそれを拾い上げると、まじまじとそれを見た。

 特に変哲のない、表面には鷲の形が彫られているそれは、随分と年季物なのか所々に傷が入っており大分傷んでいた。裏返すと、こちらは後から自力で彫ったものなのか、乱雑に英語で『Fu○kinFate(運命なぞ、糞くらえ)』と彫られている。少なくとも持ち主は男性だろう。

 兵舎の近くに落ちていた事だし、受付にでも届けるかと踵を返したその時、

 

 「ねぇ~!! ちょっとそこの君~!!」

 

 突然、聞き覚えのない少女の呼び止められて振り向いた。

 どこかの軍服なのか、襟章の付いた白いシャツに黒のタイとスカート姿の、自分と同じかそれ以下の年頃の青い髪の少女は、走って詰め寄ると間髪入れずグイッと踏み込み、

 

 「あたし、今すっごい探し物してるの!! これぐらいの大きさの銀色のロケットなんだけど、この基地に来た時に無くしちゃったみたいで……ねぇ、君。心当たり、無いかなぁ?」

 

 「お、おぅ……もしかして、こいつの事か? 今、そこで拾ったんだけどよ」

 

 顔立ちの整った可愛らしい少女に詰め寄られ、至近距離で身振り手振りで落し物の詳細を説明される度に、柑橘系の香水の匂いが鼻をくすぐる。

 その状態を照れくさく思ったイオは少女から目線をそらし、鼻頭を掻きながらも今しがた拾ったロケットを少女に見せた。

 

 「そうそう!! それそれ!! 良かったぁ~、見つかって……あ~、チェーンが千切れちゃってるのかぁ。新しいやつ、買わないとなぁ……」

 

 「随分年季物みたいだけど誰かの形見、とか?」

 

 「うーん、ちょっと違うかな? あたしがあたしであるために必要な物っていうか、うん。そんな感じ」

 

 少女は一人納得したように頷くと、イオから返却されたそのロケットを大事そうにギュッと抱きしめる。

 どうやら、相当思い入れのある品らしい。

 

 「じゃ、じゃあ、探し物も見つかったみたいだし、俺はこの辺で失礼するぜ」

 

 「……あっ!? ちょっと待って!!」

 

 少女はロケットの中を開き、その写真を見ると何かを思い出したのか、再びイオに詰め寄る。今度は、さっきよりも深く抉り込むように。「むむむ……」と大きな青い瞳がイオをじっくり品定めする。気恥ずかしさからイオが再び視線を逸らした数秒後、少女はハッと我に返ると今度は先程までの溌剌した表情とは違う、トロンとしたどこか穏やかな笑みを浮かべた。

 

 「そっかぁ……君だったんだぁ……」

 

 「? それってどういう---------------」

 

 事だ? の部分は発することが出来なかった。顔をか細い指でそっと引き寄せられ、その唇の上に、彼女の唇で重ねられていたからだ。しかも長く。それが挨拶代わりの物ではない事に気が付くのは、唇が重なり合ってから実に十秒後だった。

 思考がフリーズする誰だ初めてのキスはレモンの味がするとか抜かした奴はこれはとてもだがこいつはそんなもんなんかじゃねぇしかも男からじゃなくて向こうからされるとかいやそれはそれで野郎の本懐ここに極まれりというかしかしなんだこの説明しがたいいい匂いは絶対いいシャンプー使ってるだろこれというかやばいそろそろ離れないと理性壊れ---------

 

 「ぷはっ」

 

 ようやく解放され、少女はイオから一歩距離を置く。

 どれくらい時間が経過したかは、イオには分からなかった。オーバーフローする気恥ずかしさと共にもうちょっとあのままでも良かったかもと思う自分がどこかにいるのが、何とももどかしい。

 まだ思考が混乱状態から回復しきっていないイオは、しどろもどろになりながら訊ねる。

 

 「え、えーと……い、今のは?」

 

 「ゴメンね、嬉しかったから、つい。だってやっと会えたんだもん、君に」

 

 青い髪を夕日に照らされた少女は、悪戯そうな笑みを浮かべて片目を閉じ、舌を出した。

 




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