彼は急いでいた。時間に制限があるわけではなかったがとにかく急いでいた。何故か。理由は簡単。ゲームがしたかったから。
彼は陸上部に所属している。部長であり、県大会でも首位を勝ち取れる程の俊足の持ち主だ。本人曰くそれ以外取り柄はないそうだが。そして、それを保つ為には毎日長時間の練習が必要....となると自然に彼の趣味であるゲームをする時間は少なくなってくる。
陸上部は楽しいし、走るのも好きなのだが、ゲームをする時間が減るのはあまり好ましく思っていなかった。
だから彼は家に向かい走っている。ゲームをする時間を増やすために。急いで帰ることは何も初めてじゃなかった。なんなら毎日こうだった。ただ、今日はいつもと違った。おかしい。人通りがやけに少ない。が、彼は気にせず走った。
曲がり角で人とぶつかる。軽く謝罪の言葉を口にするが、相手からは返答なし。疑問に思ったが、今の彼はゲームのことで頭がいっぱいだった。立ち去ろうとした次の瞬間。
後ろから、刺された。
筆舌に尽くしがたい痛み。
自分のものと思える血が辺り一面に広がる。
どうにかして振り返ったが、恐らく刺したであろう黒外套の男は、足早に去っていた。
彼は知らなかった。隣町で通り魔が出たことを。確かに陸上部担当の教師は気をつけるよう促していたが、彼にその言葉は届いていなかった。何故か。理由は簡単。ゲームのことを考えていたから。
出血が止まらない。
薄れ行く意識の中、最後に考えたことも勿論ゲームだった。彼は最後まで
目を覚ます。暗い。かろうじて石?レンガで作られた天井が見える。知らない天井だ....などと言ってる場合ではない。ここどこ。俺、さっき確実に死んだ気がするんだけど。
万が一助かっていたとして、病院....はまずないと思う。こんな不衛生そうな所が病院なはずがない。戦時中ならともかく。
....いや、だとしたらやっぱりここどこ?というか寒くない?夏だったはずなんだが?
とかなんとかいろいろ考えていたら、コツ、コツ、と、誰かの足音がした。音のほうに顔を向けてみると、なんと檻。いや、檻。刑務所にぶち込まれるいわれはなかった....はず。あまりにも優等生。
その足音の正体が檻の前まで来て、姿を現した。全身黒ずくめの、痩せぎすな男。ふと、違和感を覚える。そりゃこんな格好の男は怪しいが、そうではなく....そう、既視感だ。しかし当たり前だがこんな知り合いはいなかった。だとすると?
....なんかもうよくわかんなくなってきて思考を一旦手離そうか、などと思っていた所に、その悩みの種である黒ずくめが話しかけてきた。
「出るんだジョーカー。ギルツ様がお呼びだ」
―――――え。完全に思考が止まった。すぐに我に返り、今かけられた言葉を分析する。 ジョーカー。ギルツ様。確かにこの男はそう言った。いやまさか。思考がショートしかけている所に男がもう一言。
「どうした?ロウの中がそんなに気に入ったか?」
そんなわけねーだろ。心の中で悪態をつきながら思考を立て直し、いろいろ考えていると。
「とにかく!」
こいつ思考を遮りやがった。
「ジェイルの一員であるからには統主の命令は絶対だ」
「たとえお前が統主ギルツの息子であろうともな」
その言葉を言われて思い出した。ここを認識してから見たものは薄汚れた天井と檻と目の前にいる黒いこいつだけ、当たり前ではあるが自分の姿を見ていない。視線を下に向け、服装を確認してみる。
着ていたのは制服なんかではなく。間違いなく。
俺が熱中していた、初代ドラクエジョーカーの主人公の服であった。
いかがだったでしょうか。なんせ初執筆初投稿ということもあり、とても目を向けられたものではないと思いますがここまで見てくださりありがとうございます。
ありふれた転生ものなわけですが、ドラクエジョーカーの小説だけないのかな?と思い書いてみた次第でございます。
ちなみに句読点が多いのは仕様です、だんだん減らしていきたい....
それでは、次回も早いうちに更新したいと思います。