虹ヶ咲短編集 日常の切れっ端   作:キルメド

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宮下愛は悩んでいた。気付いたと言ってもいい。自分を見たときに、他のスクールアイドルを見たときに、何が自分に欠けているのかを。
だからまずは欠けた物を埋めるために新たな自分を作ろうと果林の元へと向かう。
しかし、果林はその胸の内の迷いと悩みを見逃さなかった。

1人の悩みを仲間の力で解決する。そんな日常の切れっ端


曖昧な愛マイミー

(あれは愛さん?)

「んんん〜?にゃるほど」

 図書室でファッション誌を広げる愛。時折唸り声らしきものを漏らしながら一つのページを凝視し続ける。

 愛のことを知っている者からすれば少し異様な光景だ。その様子を距離を開けて見ていたしずくは近づき声をかける。

「ここがこうで、こんな感じを〜?」

「あの〜愛さん?」

「あれ?じゃあ足とかもう少し開いた感じなのかな?」

 しかし愛は聞こえていないのかまだブツブツと何かを言っている。

「愛さん!」

「うわぁ!しずくかぁ。図書室じゃ静かにしなよ」

「すみません。何度も呼んだのですが反応しなかったので」

 ただ雑誌を読んでいたわけではなさそうだ。愛のリアクションを見て確信する。

 よく見ると雑誌の手前には愛自身の写真が置いてあり、開かれた雑誌には果林のグラビアが載っている。

(この写真、自分で撮ったのかな?)

 自撮りではないが、愛の自室らしい布団の上でセクシーなポーズを決めている。おそらく果林を意識したと思われる。

「もしかしてこれ」

「あ?ああ!いやこれは違う!ちょっと」

 見られてしまった愛は慌てて写真を隠す。

「図書室では静かに、でしょう?」

 自分が言った言葉を返されて愛はまた照れ臭そうに苦笑し、そして観念したかのようにため息をついた。

「いやちょっと新しい扉を開こうと思って、カリンを参考にしてたんだ」

「果林さんを参考に……そっち路線ですか」

「そうこっち路線」

 果林といえば雑誌モデルのグラビアなどのいわゆるセクシータイプを目指しており、愛の身体を考えれば確かに需要のある路線だろう。果林と衣装について弄り合ったこともあり愛本人も認めている。

「でも何故そのようなことを?愛さんはセクシー路線でなくともいつもステージで皆さんを笑顔にしているじゃないですか」

 確かに愛といえばそういう方向性に変えるよりも今のままでいた方が良いだろう。

「うーん、そうなんだけどさぁ。悩みって言うのかな?こ〜、スクールアイドルとしてモヤモヤした何かがあって、なんとなくカリンのスタイルならそれを吹き飛ばせるかな〜って感じ?」

「分かります!なんとなくですが」

 演技や役作りで曖昧な表現に悩むことがあるしずくには共感できることがあった。

「でしたら、本人に聞いてみるのはどうでしょう?」

「え?」

 だからそういった時にしずくがやっている事を勧めた。

「ですから、果林さん本人に聞いてみるのはどうでしょうか?撮影をしている時に気をつけている事とか、セクシーさを出すためのコツを教えてもらうとか」

 実際しずくが果林に聞いているところは愛も何度か目撃している。ただ愛本人が聞いたことはなかった。

「それは考えてみたんだけど、カリンに直接聞くのなんか恥ずかしいし」

「こういう時こそ強引にGoingするべきだと思いますよ」

「そこ突かれると弱いなぁ」

 しかしこのまま何もしないでいても解決策は生まれはしないだろう。だったら恥を忍んで聞いてみるのも選択肢として十分だろう。

「よおぅっし!愛さんちょっとカリンにインタビューしてくる!」

 決断とともに愛は立ち上がる。すると途端にしずくが慌てだした。理由は言うまでもないだろう。周りの視線が声の主である愛の方に向けられている。

「愛さん、図書館では静かに」

「あ、ごめんなさい」

 足音を立てずに雑誌を戻し、必要以上に静かに愛は立ち去った。

 

「ふふ〜ん、ネオンに包まれ〜た〜今夜はぁ〜」

 鼻歌を歌いながら下駄箱を後にする果林。今日はこれから駅近で開催されるフリーマーケットに向かう予定。いつも品揃えが豊富な商店よりもこういった場所の方が意外のものがお得な価格で見つかる。またそれを見つける楽しみもある。

(今日はどんな商品が私を待っているのかしら)

 そんな期待を揺れる胸の奥に光らせていた時であった。後ろから突如として強烈な足音が響いた。

「カーリーンー!!」

「あら愛。なんの用?」

 声を上げ腕を振りながら猛ダッシュで近づく愛に一瞬引きながらも揺るがずに果林は対応する。そして走ってきた愛が呼吸を整えているのを待った。

「カリンのアレってどうやってんの?」

「あれ?」

 いきなり現れて抽象的な言葉を持って来られては流石にどう反応しようもない。

「ほらいつもやってるじゃん!セクシーなキャラ作るやつ!」

「キャラ作るやつねぇ……」

 何やら雑な言い方をされて少し傷ついた。愛が単に表現できなかったからだとは思うのだが、それにしても何とかならなかったものかと少し項垂れる。

「で、なんで愛がそんな事を?もしかしてこの間撮影した雑誌のセクシーな私に興奮でもしちゃった?」

「その通りだよカリン!」

「……正直というかストレートね」

 愛には他の下級生に使うような揶揄いが通用しない。それは分かっているがつい揶揄って痛手を負ってしまう。

「アタシね、カリンみたいにちょっとセクシーでアダルトな感じにやってみたいなぁって思ってさ!だからアドバイス頂戴よー!」

 ガッシリと肩を掴み頼み込む愛。しかし果林の中にある疑問は消えていなかった。

「なぜそんなにセクシーさを求めるのかしら?」

「いやだからカリンの写真見て愛さん感動して」

「だけじゃないでしょ?嘘は良くないわ愛」

 愛には今更セクシーさを強調する必要がないだけの自分のスタイルがある。

 それは人を引っ張り会場にいる全員のテンションを押し上げるものだ。果林のスタイルとは全く方向が異なる。

「いやぁ果林には隠せないか。浅はかだったよ、朝香だけに」

 ダジャレを飛ばしながら笑う愛だったが、ゆっくりと肩から手を離して腕を組む。

「アタシね、ちょっと悩んでるんだ。このままスクールアイドルやってていいのかなって。いや辞めるとかそういうのじゃないんだけど、みんなを見てるとね」

 周りのスクールアイドル達の活動が愛の中でそんな思いを抱かせたようだ。愛の表情は笑っているのか沈んでいるのかよく分からなかった。

「周りを見て感化されるなら、むしろ自分をより向上させるものじゃないかしら?」

「普段はそうだと思うよ。愛さんもこうしちゃいられない!って感じになるんだけどね」

 そう、普段の愛なら間違いなくそうなるはずだ。ただその時は違ったようだ。

「なんかね…みんながステージで歌って踊ってやってる時ってさ、いつも同好会でやってる時と違うじゃん!かすみんは猫かぶってるし、カナちゃんもステージじゃ眠たそうでもちゃんとしてるし、カリンもなんかすっごいじゃん!」

(私だけ雑じゃない?)

 愛が言いたいのはステージと裏でのギャップの強さのことだろう。アイドルとしてステージに立っている時と普段同好会で見かける彼女達の差のことだろう。

「アタシって普段でもこんな感じでステージでもあんまり変わらないし、ちょっとはそういうキャラ作った方がいいかなって」

「それで私の真似をしようと思ったわけね。確かに愛のスタイルを考えたら有りかもしれないわね」

 愛は果林とエマに次いで身長が高く、エマの様な柔らかさよりも果林の様な刺激的なスタイルの方がよく似合うだろう。衣装の露出度も高く、愛自身もそれを好んでいる。

 それでも果林は引っかかりを感じている。このまま愛に軽くでも指導をしてやるのが自分ができる最大の貢献なのかと疑念を持った。

「キャラを作るも何も、愛は愛のステージがあるじゃない?セクシーで刺激的な事もいいスパイスになると思うけど、メインにするものじゃないと私は思うわ」

「いや、うん。そりゃいきなり方向転換するのもおかしいとは思うけどさぁ。いやーなんて言えばいいのかなこれ」

 愛は固執していた。別に果林のやり方をコピーしようというわけではない。ただ自分が踠いて足掻いて一番近くに届く場所にいたのが果林だったに過ぎない。

「愛、もっと思考を単純にしてみなさい。何があったのかをちゃんと口にしてみなさい」

 果林はあくまで冷静に愛に対応した。柔らかに手を握り、愛が本音を口にするのを待った。

「ありがとカリン。やっと言葉にできそうだよ」

 愛の表情がやっと笑顔になった。とは言ってもいつもの様に明るい太陽のような笑顔ではなく、少し照れくさそうにはにかんでいるのだが。

「アタシね。スクールアイドルってのがイマイチよく分からないんだ。ステージやカメラの前で歌って踊ってるのはいいんだけど、なんかこう『アタシ』なのか『愛さん』なのか分かんなくなることがあって。これぞ曖昧ミーマインってね」

 ダジャレを口にはするもののその表情は浮かないものだった。

「なるほどね。だからスクールアイドルをやっている時の自分を変えてみようと」

「そうそう!なんかアタシってあんまり変わってないからさ。本気じゃないってわけじゃないけどさ、素のまんまにしか見えなくってさ」

 普段の自分とスクールアイドルとしてステージに立つ自分の区別がつかなくなる。それは自分の中での切り替えだけでなく、自分が本気でやっているのかということを客観的に感じられなかった。

「でも愛が自信をなくすなんて珍しいわね」

「愛さんってずっとこんな感じだなぁって思っちゃってさ。ステージで演技してるしずくはもちろんだけど、りなりーとかせつ菜の自分がやりたいことを精一杯頑張ってるところ見るとね」

 愛の切なげな目は憧憬の色をしていた。普段の愛なら決して見られることのない表情に果林は不安を覚えた。

(なんだかここまでしおらしいと面白くなってくるけど、弄ってもいられないかもね)

 面白がってもいられない。愛の悩みが深刻なことが分析できた。

「愛の不安もよく分かるわ。そんな時には誰かの意見を聞くことよ。ちょっと待ってね」

 スマホを取り出してこの時間帯でも学園にいそうなメンバーに電話をかける。

「歩夢。いま暇かしら?ちょっと校門の方まで来てくれない?」

『はい。今ちょっとかすみちゃんが後を付けて来てるんですけど、振り切った方がいいですか?』

「ちょうどいいわ。むしろ一緒に来て」

『分かりました』

 歩夢を呼び出した。恐らくは歩夢の弱点探しをしていたのだろうかすみも付いてくる。

 かすみ本人としては見つからないように付いてきているつもりなのだろうが、既に看破されあろう事かスルーされている。

(歩夢にバレるなんて相当よね?)

 かすみのスニーキング能力を心配しながらも歩夢達の到着を待つ事にした。

 

 

「果林さーん!」

 10分もすると歩夢がやってきた。

「ああ、普通に一緒に来てる」

 後を着けていたはずのかすみの手をガッチリと繋いで引っ張っている姿を見て苦笑せずにはいられなかった。

「歩夢と……かすみん?どういうこと?」

「え?いやぁ偶然ですよ。偶然歩夢先輩の後ろを通りかかったら歩夢先輩に『一緒に来て!』と手を引っ張られて」

 かすみの誤魔化しに何も言わずに歩夢は果林の言葉を待った。愛もその反応を見て状況を察したらしい。

「呼び出したのは大した事じゃないのよ。ただ愛のステージの感想を愛本人に言ってあげて欲しいだけよ」

「だったらわざわざ呼び出す必要あったんですかねぇ」

「それがあるのよ、か・す・か・す」

「かすみんです!」

 実際に呼ぶ必要があった。愛の問題を解決するには面と向かって客観的な感想を言う必要があった。

「愛ちゃんのステージかぁ。みんなをいっぱい盛り上げられるのはさすが愛ちゃんだよね!この前もすぐ面白いギャグ言ったり、お客さんと凄く距離が近くて…私ももっとって思うんだ」

 歩夢の言葉は純粋にステージ上での愛のことを評価する。

「ステージで喋る時は緊張でたまに頭の中が真っ白になるけど、そんな時こそ愛ちゃんみたいに!ってみんなが楽しむ事を意識してお喋りしてるんだ」

「そっか。そんな感じかぁ」

 歩夢の言葉はたしかに高評価のものだ。だが果林と歩夢が求めているのはそういった事ではなかった。

「あの歩夢、もうちょっと何かないかしら?ステージ上での愛は普段と比べてどうかとか」

「そうですよ〜、さっきから褒めてばっかりじゃないですか」

 果林の促す言葉に便乗するようにかすみが割り込んできた。歩夢の言葉に耳が痒くなったのだろうか。

「この間の愛先輩のステージ見てましたよ〜。確か2番のサビの時とか凄い失敗してましたよねぇ」

「え?」

 愛の『めっちゃGoing!!』のサビ振り付けは腕を大きく回しながら片足飛びをする。かすみが言うステージの時は少しだけバランスを崩して普段から後ろに下がってしまった。

「その後に若干ズレてるのを戻そうとして少しだけアタフタしてたのをかすみんは見逃してませんよ〜!」

 鼻を鳴らすかすみ。見る側からすれば些細なミスかもしれないし大きな影響を与えたわけではない。しかしかすみはしっかりとそのステージの様子を見ていた。

「へー、かすかすって意外とちゃんと見てるのねぇ」

「かすみんです!」

 果林は茶々を入れながら愛の反応を伺う。2人の言葉を聞いて少しだけ照れ臭そうだった。

「でもそういうミスも愛ちゃんっぽいよね。自分の事をめいいっぱい出してる愛ちゃんのステージ、私は好きだよ」

「たまにダジャレを挟むのはどうかと思いますけど、そこは先輩の個性ですし。歌もダンスも盛り上げ方も凄く上手ですし」

 クオリティと個性を合わせた愛のステージを2人は素直に賞賛していた。

「どう?愛のステージをみんな素敵だって言ってるわよ」

 少しは気分が晴れただろうか愛の表情は明るい。しかしまだ苦い感情は消えていないようだ。

「二人ともありがとね。そうやって褒めてもらってアタシは嬉しいよ」

 軽く二人の頭を撫でる。歩夢はそれを嬉しそうに受け入れる。その姿はまるで犬のようだ。

「えへへ。こうやって撫でてくれるのも愛ちゃんらしいよね」

「え?これも?」

 歩夢から思わぬ言葉が漏れた。こういった行為はむしろ母性的なエマのイメージだった。

「そうですか?愛先輩はもっと思いっきりわしゃわしゃする感じだと思うんですけど」

「え?こんな感じ?」

「だああ!せっかくセットしたかすみんヘアーがああ!」

 かすみに言われたように力を込めて頭を撫でる。するとかすみの髪がボサボサになり悲鳴をあげる。

「ねえ、どっちがアタシっぽいかな?」

「愛ちゃんは優しいからこっちだよ!」

「愛先輩はいつもこんな風に力を入れて来るじゃないですかぁ…もう、好きにしてください」

 2人の意見が割れた。そして何より愛の思っていたことと違った。

「ねえ。アタシらしいってステージの愛さんじゃどうかな?逆になんか普段の愛さんらしくないとことかない?」

 急に何かに食いついたように勢いよく2人に聞いた。その反応の変化に困惑するがすぐに愛に答える。

「普段の愛ちゃんよりも元気っていうか物凄く力が入ってるなって。たまに力んでるの見るといつも愛ちゃんでも緊張しちゃうんだなぁって少し安心したり、なんて」

「うんうん!」

 少しだけ申し訳なさそうに苦い笑みを見せる歩夢だが、愛は感心したという反応で頷いている。そしてかすみにも意見を求める目線をやる。

「らしくないも何も、愛先輩って普段から何か隠そうとしてないじゃないですか。それがステージにも出ていて、愛先輩の全部を曝け出してる感じだなぁと」

「そっかそっか!」

 感想を聞くとまた2人の頭を撫でる。今度は満面の笑みを見せる。腕には自然と力の入り2人の髪はクシャクシャになる。

「うわああ!」

「2人ともありがとっ!2人のお陰で悩みが晴れたよ!」

「え?悩み?愛先輩悩みあったんですか!?」

「こらかすみちゃん、愛だって悩むこともあるのよ」

 かすみとしては愛に悩みがある驚きだけでなく、その悩みに付け込むことができればという思いもある。

「何がなんだかよく分かんないけど、愛ちゃんの役に立てたなら私は嬉しいよ」

「くぅ〜!可愛いこと言ってくれるねぇ!ほれほれぐりぐり」

「くすぐったいよぉ〜ふぅ〜ん」

 愛の歩夢を撫でる力がより一層強くなる。徐々に抱え込むように動く愛とそれに従順にある歩夢。

 そんな2人をかすみと果林は第三者の視点で見ていた。

(まるで犬ですね)

(というか完全に犬ね)

 ようやっと愛が歩夢を離すと次は2人の元へ向かう。一瞬身構えるかすみだったが愛が向かったのは果林の方だ。

「カリン、やっぱセクシー路線はいいや。もしかしたらいつか必要になる日が来るかもしれないけど」

「その時はその時ね。待ってるわ」

 果林に見せた愛の笑顔は普段見せるものとは少し違った。ただ声を上げて笑うものではない朗らかな微笑み。

 歩夢とかすみの言葉にあったのは着眼点の違いだ。賞賛するところは似ていてもそれ以外のところは異なる。ステージだけでなく日常の些細な事も2人の中では印象が違った。では他の者はどうだろうか?

(かすみちゃんを連れて来てもらったのは正解だったわね。そう……自分で客観的に見てもそれはあくまで自分1人の視点でしかない。また別の誰かからは違って見えるはず)

 愛は自分で客観的に見た部分に囚われていた。愛が悩んでいたギャップの薄さはたとえ彼女には欠点に見えても他の目にはそう映らないかもしれない。

(悩むことなんてない。きっとこれが今のアタシには最高のやり方なんだ!)

 己という存在を最大限に発揮させる愛のやり方は、ある意味では宮下愛という存在を色々な角度で見てもらえる。

「色々考えてたけどみんなから見えてるものが違うんだなって気付いた。だからまずは演技とかキャラ作りとかじゃなくて、アタシのやれる限りをやるってことで!」

 愛の笑顔にいつもの明るさが戻った。やっとその顔を見ることができて果林はホッと胸をなでおろす。

「よっしゃあ!こうなったらこれから特訓だー!愛さんこれから自分にもっと磨きをかけるもんねー!」

 言うが早いか踵を返して校舎の方へと駆け出す。

「せっかくのオフの日なのにいいの?」

「こんな事考えちゃったらさ、オフDayだけどオフでいられないよ!こうなったならとことんまでやるよ!愛ドゥーイット!」

 しっかりとダジャレまで決めて愛のエンジンは急速に温まってゆく。恐らく誰にも止めることはできないだろう。

「あー!そういうのずるいです!先輩が特訓するならかすみんも特訓します!」

「あら、かすかす。愛と一緒にしたいの?」

「かすみんです!一緒にやりたいんじゃなくて負けたくないんです!!」

 それに感化されて負けず嫌いなかすみが飛び出す。揶揄う果林に返事はするが顔と体は愛の方へと向いたままだ。

「あぁなるとかすみちゃん止まらないのよねぇ。で、歩夢はどうするの?」

「そりゃ負けてられないなって思うよ。果林さんは?」

「奇遇ね、私も……行きましょう」

 愛を先頭に4人は走り出す。向かう先は同好会の部室。愛は特訓と言ったが何をするかは考えてないだろう。しかしその背中を追いかけていた。

「いいねー!なんかこういうの青春って感じじゃん!」

 部室に1番に到着した愛は後からやってきた3人と息を切らしながら笑った。この楽しさがまたステージの表現に繋がる。それがスクールアイドル宮下愛の表現なのだから




かすみんや璃奈はもちろんのこと、虹ヶ咲はみんな同好会でいる素の状態とアイドルやってる状態のギャップ凄いなぁって思ったのが事の始まり。愛さんはその辺が薄く、それでいて真剣に考えたからこそこういう悩みが生まれるものかと思いました。
虹ヶ咲は9人それぞれソロのアイドルだけどこういう感じで仲間としても共に高め合うのもいいんじゃないかと思ったり
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