私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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ハーメルンの皆様、初めまして。
まずは閲覧していた頂き、ありがとうございます。
たまごぼうろ、と申します。
どうぞよろしくお願い致します。
さて、今回Fate/stay nightのバッドエンドの1つである「鉄心END」のその後を書かせていただきました。
鉄心ENDは原作の中でも異質なエンドです。
士郎が死ぬわけではなく「それもまた1つの結末だ」といって暗転します。
しかし、「いったいどうやって勝ったのか?」と思った方も多いと思います。自分もその1人です。
なのでそれを考え、文字に起こしてみました。
文章を書くこと自体が初めてなので、とても稚拙な文章だとは思いますが、最後まで読んでいただければ嬉しいです。
では、衛宮士郎の「その先」をご覧ください。



2月8日 第1夜
Prologue


私的鉄心エンド

 

「俺が最後まで残るっていうのか、アンタは」

「無論だ。今のお前は衛宮切嗣だ。それが勝てないはずがない」

そう言って神父は去った。礼拝堂には、心が鉄になった衛宮士郎だけが残されている。

「………………………………………」

あいつの予言は真実だろう。俺はこのまま戦いを続ける。臓硯を殺し、イリヤを殺し、場合によっては、遠坂さえも殺して、聖杯を破壊する。

いや、破壊しなくてはならない。それが正義の味方になると誓った俺の責任。理想通りの自分になるための初めての代償だ。

やってやる。やってやるとも。

彼は心を剣(けん)にする。もう二度と失うことは恐れない。

静かに、けれど確かに決意をする。

もう、後戻りはできない。

 

2月8日 Prologue ×××Rain(---レイン)

  

丁度そこに事を終えた遠坂が戻ってきた。表情は何一つ変わっていない。部屋に入った時と全く同じまま。

いつも通りの遠坂凛の表情。

「…………」

「…………」

視線が交差する。しかし、俺から話しかけることなんてもう無い。

すると、

「衛宮くん、怒っていないの?」

意外にも、遠坂の方から声をかけてきた。

「怒る?どうしてだ?遠坂は何も間違ったことはしていない。桜は危険だった。処理をするのは当たり前だろ。」

「ッ、あんたにとって、桜は大切な人じゃなかったの。自分でそう言っていたじゃない。」

「…………あぁ、そうだったよ。」

そう、俺にとって桜は大切で、特別で、俺には居なくてはならない存在だった。それは事実だ。

しかし

「けど、それとこれとは話が別だ。いくら大切でも周りを傷つけるなら、俺はそれを容認できない。」

いくら大切だろうと、誰かを傷つけるなら、それは俺にとっての敵だ。

優先すべきは自己ではなく他の幸福。

桜1人の犠牲で何人もの命が救えるなら、そんなの、比べるまでもない。

それが俺の理想。目指すべき正しい正義の形。

だから、思ったままの言葉を口にした。

「でも!」

「でもも何もない。だって、それが正しいってことだろ。」

迷いは、なかった。

「………」

すると遠坂は悲しそうに

「そう…それがあなたの選んだ答えなのね….」

なんて、わかりきったことを口にした。

「わかった。あなたがいいなら、それに越したことはないわ。」

「あぁ、そうしてもらえると、助かる。」

一瞬だけ悲しそうな顔をした後、直ぐにいつもの顔に戻った遠坂。

「あともう一つ。私ね、もうなりふり構ってられないのよ。なにがなんでもこの戦いに勝たなくちゃならないの。」

最後通告、と言わんばかりの言葉を投げかけてくる。

「分かる?もう足手まといは必要ないの。だからね、衛宮くん。あなたとの契約はこの場限りで終わり。そもそもサーヴァントも令呪もないあなたは、とっくに敗退してるんだから。残りの期間は家でおとなしくしてなさい。」

言峰の言うとおりだった。遠坂は本気だ。言葉からもその覚悟が伝わってくる。

ここからは魔術師としての殺し合いになるだろう。なら半端な魔術使いなんて、いても弾除けか、囮か、どちらにしろ邪魔になるだけだろう。

「……分かった。ならこれっきりだな。世話になった、遠坂。」

「ええ、私も悪くなかったわ。縁が続けば、また会いましょう。」

お互いに別れを告げる。言い残す言葉も、恨み言も、俺たちの間にはもう何もなくなった。

最後に、ただぽつんと、

衛宮士郎は、完全に遠坂凛と決別した。そんな事実がたった一つ残っただけだった。

 

礼拝堂を背にする。これで腹は決まった。遠坂(あいつ)は敵だ。次に会うのはきっとこの聖杯戦争の終幕だろう。

悔しいが、神父の予言は絶対的な真実になる。

それまでに俺はこの実力差を埋めねばならない。正直なところ絶望的だ。魔術師としての遠坂凛に勝てるところなんて、俺には一つもない。

だけど

「それでも、やらなくちゃ。」

策がないわけではない。あっちがその気なら、こっちだってなりふり構わなきゃいいだけだ。

切嗣が、そうしたように。俺にだってできるはずだ。

「さて、とにかく今日は帰ろう。」

雨でも降っていたのだろうか。外には湿気のにおいが充満しており、地面にはいくつもの水たまりができていた。

「ふぅ…。」

冷たく湿気った空気を肺に満たす。火照っていた頭と体が冷えていく。存外緊張していたようだ。やはりあの礼拝堂は、俺と相性が悪いらしい。

明日から、また忙しくなる。だがひとまずはゆっくり休むとしよう。そう思い、帰路についた。

 

 

すっかり夜が深くなったころにようやく家についた。礼拝堂からうちまでは片道でも1時間近くかかる。

あたりに人の気配は全くない。すべてが寝静まっているのだから、当然だろう。怖いくらいの静寂がこの空間を支配している。

「すっかり遅くなっちまった。」

早く寝よう。そうやって門をくぐり、家の扉を開ける。

 

『おかえりなさい、先輩』

 

「…………………………………………………………………」

無論幻聴だ。こんな言葉聞こえるはずがない。桜はもういない。俺が見殺しにした。

「……疲れてるのかな。」

確かに今日はいろいろあった。人生で一番濃い1日といってもおかしくはないだろう。なんてったって自分自身の迷いと何時間も殴り合ってたんだ。疲れて当然だろう。

そう言って靴を脱ぎ廊下を歩こうとする。

ポタッ

「えっ?」

水滴が落ちる音がした。下を見ると数滴水が滴っており、しかも水滴はどんどん増えていく。

「なんだ、これ」

そうやって顔を触ってみると、頬っぺたが濡れていた。

「え、待て。なん、何だこれ。全然、全然止まらないぞ。」

簡単な話だ。

水滴だと思ったものは涙で、しかもそれは自分が流しているものだった。

「止まれ、止まれよ。くそっ、何だって、こんな。」

分かってしまえば止まるわけがない。栓を切ったように大粒の涙は勢いを増すばかりで、拭っても拭っても止まらず、ただ袖を濡らすばかりだ。

「うっ…くそ、なんで…」

泣いたところで、桜は帰っちゃ来ない。そんなの分かってる。

分かってる筈なのに

「くっ…ずっ…………うう…、はぁっ、はぁ。」

声を殺して静かに泣く。ここで思い切り泣けたら、どれだけ楽だろうか。

しかし、それは許されない。それは誰よりも自分を裏切ることになる。

正義の味方が、1個人の死を悼み、涙を流すなどあってはならない。

そもそも、命の価値を天秤にかけている時点で、俺に涙する権利などあってはならない。

だからきっと、これは最後の抵抗なのだろう。

衛宮士郎という人間の、最後に残った希薄な人間性が、悪あがきしてるのだ。

まったくしぶといものだ。そんなとこまで強情じゃなくたっていいだろう。

しかし、いくら泣き続けようと、その時間は長くは続かない。夜明けの時間は刻一刻と迫ってきている。

朝になったら泣き止まないと。藤ねえに心配されちまう。あのバカ虎のことだ。泣いてる俺を見たら、きっと今までで一番びっくりして、今までで一番慌てて、きっと俺以上にわんわん泣くだろう。

それだけは避けないと。だから早く泣き止まないと。早くしろ。早く。早く。早く。早く。早く。早く。早く。早く。早く。

でも、でもちょっとだけ。この時間だけは、この一瞬だけなら。

「泣いてもいいのかな…桜……。」

 

 

 

懺悔は終わらない。おそらくは一晩中続くだろう。赦しを与える神父も、罰を与える神もここにはいない。少年はただ嘆くだけだ。何故、何のために泣くのか、それすら理解しえぬまま。

 

 

 

ただ、ずっと一人のまま。

 

 

2月8日 Prologue Tears Rain(ティアーズ・レイン) 了

 

   

 

 

 

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