まさかgw以降一切投稿しないとは…本当にごめんなさい。
加えて、自分本当に誤字がひどいですね。指摘してくれる方は大変ありがたいです。
さて、今回投稿が遅れた理由など、詳しいことは活動報告にまとめました。告知もあるので是非ご覧ください。
では、どうぞ。
「終わりだ。間桐臓硯。」
剣の切っ先を向け宣言する。
一方的な言葉ではあったが、状況を見ればそれは明白だった。
2頭の怪物。
それらを下した今、最早俺たちを止める手段はこいつには存在していないはずだ。
火に包まれたまま、実体を顕にする臓硯。
「何故じゃ……?」
しかし臓硯は恨みの篭もった目を向けるでも無く、諦めるでも無く、ただ虚ろな瞳で語りかけてくる。
それは恨み言と言うよりも、独白のようだった。
「何故、儂を狙う。何故、儂を殺す。儂の可愛い虫達共々、間桐の500年の歴史諸共。何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故何故ぇ!!!」
最初は静かだった言葉が、次第に怒気を孕んでいき、しまいには裂帛の叫びに変わる。
「何故って、そんなの決まってる。」
しかし、その叫びは俺の心にはちっとも響かない。
五月蝿いくらいの音なのに、俺の頭を通り抜けるだけ。
まるで動物の雄叫びのようだ。
きっと、それには彼等にとっての意味があり、感情がある。
怒り、悲しみ、喜び、様々な感情を音に乗せて周りに振りまく。
だけど、俺達人間には、それを理解する事は決して出来ない。
わんわんと、きゃんきゃんと、声は聞こえるもののそれが何なのかは感じる事は出来ない。
出来ないならば、如何にそれに意味や感情があったとしても、こちらに何も届かない。
こいつの叫びはまさにそれだ。
俺にとって、何も意味が無い。何も変えれない。
きっとこれが、負け犬の遠吠えってやつなんだろう。
もしそれが間桐という存在の否定となろうとも、
もしそれが、誰かを傷つける事になろうとも。
もしそれが、愛せたはずの後輩と、背中を預けた友人の全てを、壊してしまう事になっても
「お前は悪だ。あの影と繋がっている時点で、それは変わらない。」
それが、世界に仇なす行為なら、俺は許容できない。
それが、始めから何一つ変わらない、俺の回答だった。
「はっ、影…影ときたか…。」
しかし、臓硯はその言葉を対し笑うように言葉を返した。
「ならば、その影がもういないとすれば、貴様は一体どうするのじゃ?」
その言葉は、負け惜しみと言うには些か無視できないものだった。
「なんだと?」
影がいない?
そんなはずはない。
あの災害のような奴が、こんな数日で消えるとは考えられない。
確かにここに襲撃するまでの期間出現はしなかったが、そんなの一時しのぎに過ぎないはずだ。
明日すぐに動き出してもおかしくない。
だからこそ、出来るだけ早く準備をし、こうしてこいつを殺しに来たんだ。
こいつを止めれば、影も止まる。
そう信じていたのに。
「門が消えたのだ。貴様も扉のない部屋からは出る事は出来んだろう?それと同じく、あの影も再び器の中に閉じ込められた。あのように動き出すことは2度とあるまい。」
「門……?器…………?この後に及んで何を言っている?」
剣を向けたまま問う。
こいつが何を言っているのか分からない。
けど、本能が告げる。
聞いてはならないと、残酷なものがその先に待っていると。
冷たい汗が背中に流れるのを感じる。
必死に手の震えを抑える。
「………ほう?なんだ、知らなかったのか。そこの神父から聞いていたと思っていたがな。」
先程の叫びより、はるかに小さな声なのに、やたらと五月蝿く感じる。
その一言一言が意思を持ってこちらに語りかけてくる。
「どうゆう……事だよ。……言峰。」
耐えきれず、横に立つ言峰に静かに声をかける。
「………………」
しかし、言峰は何も答えない。
「何だよ………何なんだよ………」
俺だけか取り残されたような不安感に襲われる。
今まで追ってきたものを見失ってしまったような感覚。
真っ暗闇に取り残されて、見えるのは自分のみ。
けど、予想なら出来る。
ずっと前から考えていて、きっと心の奥底では辿り着いてた。
でも、それはしてはならなかった。
気付いたら、そこで何もかも終わる気がしてた。
自分が変わってしまう気がしてた。
「なら、儂が代わりに教えてやろう。」
臓硯が徐々に調子づく、普段の陰鬱でべったりと張り付くような悪意を纏っていく。
やめろ。聞きたくない。
やめてくれ。それはダメだ。
だってほんとうは
「我が愛しの孫にして、儂が10余年かけて作り上げたマキリの聖杯。貴様が自らの理想の為に見殺しにした大切なもの。間桐桜こそが、影を生み出す門だった。」
「10年前、第四次聖杯戦争にて手に入れた聖杯の欠片を桜に埋め込み、あそこまで育て上げた。その覚醒の予兆こそあの影よ。」
「あの影は聖杯の中身じゃ。生まれでる為に魔力を欲し、人を喰らい、英雄を喰らった。桜という門の無意識を借りてな。尤も、門無き今それも徒労に終わったがな。」
声が遠い
「どこかでは理解していたのであろう?桜が死んだ日からあの影が形も何も見せない事を。貴様の所業はまさに聖人の御業と言っても良い。この事実を知らぬままに、多くの人々を救っていたのだから。いや全く、正義の味方というものは何処までも度し難い。」
「しかしこれが現実じゃ。どうじゃ?それでも尚儂を殺すのか?そうなれば貴様は私怨で動く者となる。自らの怒りで人を殺める者のどこが正義の味方だと言うのだ。」
ひどく、ひどく頭に響く。
「私怨で動く?どうにも結構!まさに人と呼ぶに相応しい醜さよ。最早貴様は何にもなれんよ。どっちつかずの半端者。いくら心と体を偽ろうとも、それが正義だとは到底思えんな。」
「何で、言わなかった。」
顔を伏せたまま、言峰に問い掛ける。
知っていれば、苦しまなくても済んだのに。
「……これを知れば、お前は揺れると思った。鋼の意思にヒビが走ると感じた。私は私の目的の為に臓硯を殺す必要がある。その為にお前には迷いなく戦いに臨んでもらう必要があった。………ただそれだけだ。」
そうだった。こいつはそうゆうやつだった。
こうやって俺が苦しむのを愉しむようなやつだった。
桜の治療をしたんだ、知らないわけがない。
知らなかったのは俺だけだ。
違う、知らなかったんじゃない。気付こうとしなかっただけだ。
「さて、ではどうする?このまま聖杯戦争が進めば杯は英霊の魂で満たされる。満たされればあの中身は再び現れるぞ。10年前、いやそれ以上の災害としてな。ならば今お主が殺すべきは一体誰なんじゃろうな。」
「!!!」
捲し立てるように矢継ぎ早に語る臓硯。
音が遠い。
その言葉など耳に入ってこない。
俺の頭は1つのことでいっぱいだった。
『10年前、いやそれ以上の災害としてな。』
このまま聖杯戦争が進めば、あの災害が再び起こる。
そしてその時限爆弾のスイッチは、もう既に押されている。
残る英霊は3騎、
遠坂のアーチャー、イリヤのバーサーカー、臓硯のアサシン
こいつらが倒れれば、災害が顕現する。
残る時間は、やるべき事は、
————————どうすればいい!どうすれば止められる!!
頭が爆発しそうだ。
必死になって頭を回すも、どれもこれもが空回りで、まともな答えなど得ることが出来ない。
こいつを殺す事は出来ても、この先の結末を止めることは俺にはできない。
変えられない破滅。終わらない連鎖。
堂々巡りのいたちごっこ。また繰り返され、再び開く煉獄の釜の蓋。
「………っ」
目の前にノイズが走る。
気づけば、あの炎の中でいつかの声が聞こえてくる。
炎の中にいるからか、いつもより強く地獄が過ぎる。
頭痛と共に蘇っていく死者たち。
炎の中を縋るように歩く。
今にも倒れそうにふらふらと、その瞳に希望など灯るはずが無い。
まさに地獄の具現。息つかぬ灼熱の世界。
あぁ熱い、火にくべられた薪のようだ。
体が燃えて、黒ずんでいく。
自分だけではない。周りの人も例外なく、徐々にその命を燃やされている。
あぁ痛い。針の筵に巻かれるとは、まさにこの事なんだろう。
痛みで涙が流れても、それを炎が攫っていく。
あぁ五月蝿い。ここは酷く淀みに満ちている。
怨嗟の声が聴こえる、助けを求める声が聴こえる。
聴こえない振りをしてるはずなのに、頭に響いて鳴り止まない。
『タスケテ』
『ココカラダシテ』
『ドウシテ』
『ナンデコンナコトニ』
その言葉全てを無視をして、ただ生きたいが為に、余りにも醜い自我のために、宛もなく火の中を歩き続けた。
1歩を踏み出すことに、心が欠けた。
2歩目には体だって言うことを聞かなくなっていた。
3歩目には、ついに倒れ込んでしまった。
それでも進む。這ってでも、何をしてでも前を向く。
顔を上げると、遠くの丘。
屍の積み重なった上に誰かが立っている。
不釣り合いな白いワンピースを着て、遠慮そうに笑う女の子。
それで、何かが壊れた。
「………………………………………あぁ」
ずっと、そこにいたのか。
あそこが俺の終着点。
繰り返し、繰り返し、何度もよぎる現世の地獄。
――――――――――あんなものが、―――――――――もう一度
「衛宮士郎!!!」
「え……………………………」
声と共にはっと気付いて振り返る。
しかし、もう遅かった。
先程自分が袈裟斬りにしたはずの怪物、その半身が動き出し、鋭い腕を振り下ろしている。
この身を穿つ杭のように振り下ろされる黒い棘。
先程逃れ、打ち破ったはずの死が再び甦りこちらを殺そうとする。
ただぼうと、死の間際で想像する。
これはきっと、断罪なんだ。
あの時全てを捨てた自分。あれを変えようと、必死になって、それでも今こうして揺れる半端な自分。
もういい、もういいよ。
もう分かった。俺の罪深さは身に染みた。
だから早く、
この身体を突き刺してくれ。
それできっと、楽になれる、赦される。
だから、もう。
後ろで死神が嗤っていた
「残念だ。儂の勝ちじゃよ、正義の味方。」
その声と共に目の前に死が迫る。
そして俺は、その意識を深い闇へと、手放して————————
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
その直前、余りに凡庸でちっぽけで惨めな光が、その最期を否定した。
間桐慎二という、小さな光。
その光は、他の光の前では見劣りしてしまうほど消え入りそうだったけど。
でも、暗闇の中に溺れた俺にとっては、眩しすぎるほどの光だった。
そんな彼の、弱々しい、ただの人間の、ただの捨て身の体当たり。
だが、魔術によって死に体を無理くり動かされただけの怪物は、その程度でも大きくバランスを崩し、その一撃は大きく空を切った。
そのまま怪物と共に倒れ込む慎二。
「し、慎二…どうして……?」
こいつがここに来るの計画に含まれていない。
何より危険すぎるからだ。
俺らですら命の保証がないのに、こいつまで守れとなってはどうしようもない。
しかし真っ白になった頭では、真っ当な文句の1つも紡げなかった。
すると、何を言おうか考えるよりも早く、慎二が俺に向かって叫んでいた。
「揺れるな!!」
「!!」
「お前の、お前の道は間違ってなんかいない!私怨だって?一体それの何が悪いんだ!!」
再び意識は地獄の内へ。
炎の中、倒れ込んで動かなくなった体に力が漲る。
立つんだ。動け。前に進め。
理由はない。ただ、ここで立たなきゃならないと
懸命に体に鞭を打つ。
膝に手を付き、歯を食いしばって何とか地面に足をつける。
「だって…だって!お前は、僕と桜を助ける為にここまで来たんだろ!それの何処が正義じゃないって言うんだ!!」
立ち上がり、前を向く。
体も動く、これでなんとか進むことが出来る。
すると横から、2人の男がこちらを見もせずに通り過ぎる。
向かう先は俺と同じ。あの丘の向こう。少女が立つ屍の上。
黒いコートの男と、赤い外套の男が、躊躇いもせずに進んでいく。
きっとあいつらも考えている事は俺と同じだろう。
でも、それはダメだ。
これは俺の役目だ。俺だけの役目なんだ。
「忘れるな!お前は、衛宮士郎は、腹が立つくらいに不器用で、吐き気がするくらいお人好しな、正義の味方なんだろ!!」
足を踏み出す。
熱さも痛みももう感じない。
走る。走る。走る。
瓦礫の中を、よろけながらも懸命に走る。
眼前の2人を追い越して、懸命に丘の向こうを目指す。
そして、漸くここに至った。
黒い孔を見つめる少女の隣に、遂に辿り着く。
少女はこちらを見ない。
悲しそうに孔を見つめている。
その儚さに、思わず抱きしめたくなるが、それはきっと俺の役目ではない。
気づけば俺の手には剣が握られていた。
覚悟する必要は無い。
逆方向からやめろと聞こえるも、心には届かない。
俺はゆっくりと振りかぶり、それで
「ごめんな。辛かったよな」
その首を一刀のもとに切り落とした。
「…………っ!」
意識が現実に戻る。
慎二の言葉によって、ブレた心に芯が入った。
そうだ。そうだろ。
黒い影とか、聖杯戦争とかそんなの関係ない。
俺はただ、友人を助けたいから、こいつを殺すんだ。
「間桐、臓硯―――――!!!!!!」
剣を構えて突進する。
「何だと!?」
一気に距離をつめ、驚愕の表情の臓硯のその首を、撥ねる。
だが、
「カカカ!甘い甘い!その程度じゃ殺せんぞぉ?」
首が離れた肉体が、虫共に霧散する。
やはり本体を傷つけなくては、こいつを殺せないか。
少し離れた所で、虫が集まり、再び体を形作ろうとする。
なら、それが間に合わないくらいぶった斬って————————
「いや、十分だ。よくやった衛宮士郎。」
踏み込もうとした瞬間に、顔の横から十字の剣が通り過ぎた。
「グッ!」
形になったばかりの肉体に突き刺さる刃。
「ハッ、こんなものが一体なんだと」
そう言い切る前に、言峰の口から言葉が紡がれる。
「私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。
我が手を逃れられる者は1人もいない。我が目の届かぬ者は1人もいない。」
それは憐れみの聖句。
現世への憐憫をもって、救われぬ魂に浄化をもたらす聖なる御言葉。
「打ち砕かれよ。
敗れた者、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え。」
臓硯の肉体が、燃え上がる。
周りに広がる赤い炎ではない。
包み込むような蒼い炎が、こいつの体を蝕んでいく。
「グ、ガァァァァァァァ!!!貴様、貴様ァァァァ!!!」
何処からか虫が湧き出て、言峰を襲う。
「やらせるか!」
そいつらを片っ端から切り捨てる。
言峰の切り札、その邪魔はさせない。
再び剣を投擲する言峰。
刺さる。
炎がまた大きくなる。
「休息を。
唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる。
装うなかれ。
許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を。」
唄いながら、次々と剣を投げる言峰。
刺さる度に大きくなる炎。
最早臓硯の体を飲み込むほど大きくなっている。
虫達の勢いも弱くなる。
指示を出せるほどの余裕も無いのだろう。
「ガァァァァァァ!やめろ、やめてくれぇぇぇぇぇぇ。」
断末魔は悲痛に響き渡る。
救いの炎は、こいつには些か眩しすぎるらしい。
妄執によって作られた体には、この救いは毒となるようだ。
「休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。
永遠の命は、死の中でこそ与えられる。
――――許しはここに。受肉した私が誓う。」
終末は近い。聖なる賛歌は、最後の文言を言祝ぐ。
この呪いに、終焉を。
この拘束からの、解放を。
蒼い炎に包まれて、声も絶え絶えに叫ぶ臓硯に、言峰は最後の言葉を告げた。
「―――――――
「グワァァァァァァァァァァァーーーーー!!」
そして一際大きな炎が上がったかと思うと、
間桐臓硯の身体は、完全に灰となり、消滅した。
残る灰の中、ぎいぎいと蠢く1匹の虫が見える。
あれが本体。
桜を喪った後、臓硯は一時の繋ぎとして、自らの体に本体を埋めていた。
それが剥がされた今、今度こそこいつは万策尽きた。
「我々の勝ちだな。間桐臓硯。」
言峰が静かに呟く。
漸く、長きに渡った呪縛が、ここに無と帰した。
こうして
再開された聖杯戦争、その初戦となる戦いは、
ギリギリながらも、俺たち勝利によって、幕を閉じた。
しかし俺には勝利の余韻に浸る間も無い。
目の前に現れた新たな脅威。
確定した破滅を回避しなければならない。
時間も無い、手段も無い。
俺1人ではどうしようもならない。
俺の戦いは、ここで行き詰った。
この先は、もう————————
風が吹いた。
暗闇を照らす月明かり。
教会入口の手前で退屈そうに待っていた英雄王は、その表情を少し緩めた。
事の終わりを察したのか。
遠くの間桐邸を見据えて、愉快気に口角を釣り上げる。
邪悪と言うよりも、無邪気という言葉が似合うその笑みは、戦いの渦中にいる者達には分からない。
月光を飲むかのように我有りと佇む英雄王は、ここには居ない男に語るように口を開いた。
「…………おっと、終幕にしては些か早いであろう。エミヤシロウ。」
運命の歯車は終局を迎えようとする。
1度始まったものを、止めることなど出来ない。
狂った馬車馬の如く、終わりに向けて一直線に
余計な日常など、ここからは不要。
戦いは終わりへと、日常がその姿を変貌させる。
それを回避するにはもう1つ。
彼だけでは得られない、ラストピースが残っている。
少年よ、抗え。
自らを捉える螺旋を破壊し、誰も傷つかない終幕へと。
例えそれで、自らが壊れようとも。
最後の駒は、影の内に。
その運命を、打ち破れ。