私的鉄心END   作:たまごぼうろ

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Q.ここ三か月、一体何をしていた?

A.ダクソ3、神ゲーでした。


お久しぶりです。たまごぼうろです。
まずは謝罪を。三か月間失踪して申し訳ありませんでした。
理由としてはシンプルなモチベの低下です。
後ゲームしてました。楽しかったです。
今回から凛視点です。
では、どうぞ。

※ここから先作者の言い訳となります、興味の無い方は飛ばしてください。



そもそも自分、自己承認欲求があまり高くない人間なので、定期的に投稿していないと書けない、というタイプでは無いんですよ。
寧ろ投稿する手間の方をめんどくさがってしまう人間で、三か月の間、合間を縫っては書いてはいたんですよ。投稿していなかっただけで。
完成した後、ルビ振って、誤字脱字確認して、前書きとタイトル考えて、こうやって打って…っていうのをめんどくさがったんですね。
実は今、ストックとしては六話ほどありまして、コンスタントに投稿しているのとペースは大差ないのではないかと思います。
ですが、そろそろ完結も視野に入ってきていて、流石に投稿したい!と思い今回に至ります。
久しぶりにハーメルン開いて、UAもお気に入りもじわじわ上がっていて、まだ読んで下さる人が居て大変嬉しく思います。
このように継続力の無い、飽きっぽい人間ではありますが、また失踪したら
「あ、めんどくさがってんな」
程度に思っていただければと思います。大丈夫です。多分書くこと自体はずっと続けていると思うので。
では、また少しずつ投稿していければと思います。
楽しんでいただければ、幸いです。



2月11日 第4夜
後悔、先には立たず


朝七時。

半分微睡みながらも、僅かに覚醒した意識に体を移す。

やはり朝は苦手だ。とりわけ本日の目覚めは最悪と言える。

体を起こし伸びを一つ。ついでにカーテンを開けて、外の光を入れようとする。

しかし、昨日の晴天は影も形も残っておらず、どんよりとした雲が空を覆っていた。

風は強く、雨も降っているようだ。この部屋は暖房が効いているが、きっと外は冷え切っているだろう。

「はぁ…………」

大して気分も晴れず、溜息をつく。

すると、薄暗い部屋のガラスに写った自分と目が合った。

「うわ………。ひっどい顔。」

一昨日と昨日、何かするをする気にもなれず、二日間ろくに食事もしないで部屋に篭もって眠っていた。

別に体調が悪かった訳でも、魔力が足りなかった訳でもない。

ただ、これは私の心の問題だった。

 

三日前の二月八日。

いや、もしかしたらあの時既に日付が変わっていたかもしれないから、二日前かもしれない。

私は桜を殺した。

自らの暴走を抑えれない彼女に、魔術師として処罰を下した。

彼女は特に抵抗もせず、すっぱりと自分の運命を受け入れていて、だから私も魔術師のままでいられた。

私の生まれて初めての殺人は、皮肉な事に実の妹だった人になった訳だ。

その時は良かった。その時はまだ私のままでいられた。

常に余裕を持って、優雅たれ。

父さんがいつも言っていた我が家の家訓。

その言葉通り、私はこんなのなんて事ない、なんて顔で教会を後にして、雨に濡れながら家に帰って、シャワーを浴びて、アーチャーの淹れてくれた紅茶を飲んで部屋に戻った。

私はほっと一息ついて、柄にもなく心配そうなアーチャーにお礼を言って、ゆっくりと部屋に戻った。

けれど、そこで限界だった。

ベッドに倒れ込んだ瞬間に、色々な感情が押し寄せてきて耐えきれなくなり、必死に声を殺して泣いた。

 

初めにやってきたのは、悔しさだった。

絶望の淵で必死に足掻いていた彼女を救えなかった自分が不甲斐なくて、奥歯が砕ける程に噛み締めた。

きっと私のほんの少しの勇気で彼女を救えたのだろうに、それをやらなかった己を心底呪った。

魔術師が過去を呪う、なんてゾッとしない言葉だが、それでも悔しいものは悔しかった。

ここまでの悔恨は、生まれて初めてだった。

次にやってきたのは、罪悪感だった。

何故、私ではなく彼女があんな目にあったのだろう。

たかが1年ほど生まれるのが早かっただけ。

たったそれだけの話なのに。

勿論、私だってそれなりに苦労はした。

父さんが死んで、母さんが死んで、一人で遠坂の家を継いでから、駆け抜けるように日々を送った。

止まったら孤独に押し潰されそうだから、だから必死に努力して、その孤独を打ち消すために走り続けた。

凡そ成人前の少女が背負わない責務に対して、挫ける事無く挑み続けた毎日だった。

それは紛れもなく苦難の日々だったと思う。

けれど、

桜に比べたら、それはなんて楽な事か。

彼女は文字通り拷問を受けていた、それも一日とて休むこと無く。

私のこれまでは苦しかったが、それでも私はその毎日を楽しめた。

自分がそんな性分である、というのもあるが、私は私の人生が苦しみに満ちていたとは思わない。

けれど、桜は違う。

苦しみだけが彼女の全てだった。苦しみだけが、彼女の人生の意味だった。

あの修練所を見れば、彼女が今までどんな事をされてきたか想像するのは容易だった。

さぞ叫んだことだろう。さぞ泣いた事だろう。

けれど、救いなど無かった。あろうはずが無かった。

蝕まれるような地獄。自分を作り替えられて行く苦痛。

それに比べたら、私の人生など寧ろ幸せな方だと思えるくらいだ。

そう思っては泣いた。泣き続けた。

涙はとめどなく溢れ、痛いほど食いしばった唇からは血が流れた。

そうなればもう、声を殺すなど出来なかった。

喉よ裂けろ、涙よ枯れろ。

この五体など、ぐちゃぐちゃになって消えてしまえ。

後悔と罪悪感、そしてそれらに対してもう何も出来ないという絶望を抱えて、私は泣き続けた。

加えて、私はこの時ほど自分を殺したいと思った時は無い。

あろうことか、私は、私という愚か者は。

その絶望を、心地よいとさえ思ってしまっていた。

この苦しみを、自分への罰だと思い込んだのだ。

罪人へ与えられる罰とは、即ち贖罪への道だ。

だから私は、無意識でこの絶望を罰だと思い、赦しを乞うていたのだ。

最低だ。最低にも程がある。

そんなもの、今更受けられるとでも思っているのか。

そうして、その絶望を桜が抱いていたものと同視している自分が憎らしくて。

この絶望を通して、桜のことを分かった気になっている自分に心底吐き気がして。

自分が嫌で、他人が嫌で。

世界が嫌で、魔術師が嫌で。

何もかも嫌になって、ただ涙が止まらなかった。

私はその夜一晩中泣き続け、いつしか疲れて眠っていた。

それが、一昨日の話。

そして昨日、時間は覚えていないが目を覚ました。

体を起こす気力も無く、ベッドの上で蹲っていると、ふと枕元にあるテーブルに置いてある写真が目に入った。

それは、幼い頃の自分の写真だった。

父さんと母さんが撮ってくれた写真。

小さな私が一人、頬を薄紅で染めながら笑顔で写っている。

きっと目の前には父さんと母さんが居て、きっと私は少し恥ずかしくも、誇らしく思っているのだろう。

まだ走り出す前の、何も知らない私。

これからの運命も知らず、無邪気に微笑む私。

そんな私の髪には、ピンクのリボンが着いていた。

あぁ、そうか。

確かこれは、桜がいなくなる前の写真だっけ。

最後に姉妹の写真が欲しい、なんて言って、けれど二人の写真は思い出になってしまうから、一人ずつ撮ったんだ。

そしてこのリボンは、その後桜にあげたんだっけ。

私たちが姉妹だった証として、彼女にプレゼントしたんだ。

あの時の彼女の心底嬉しそうな笑顔は、今も脳裏に焼き付いている。

そんな家族の最後の団欒の直前の写真。

幸福の予兆を噛み締めて、静々と笑う私。

そんな写真を見て、ぽつりと言葉が出た。

 

「寂しい………………。」

 

その言葉が、私の最後の引き金を優しく引いた。

言葉にした途端に、急に孤独感に包まれた。

誰かに近くにいて欲しい。大丈夫だと言って欲しい。

誰かに、優しく抱きとめて欲しい。

そんな想いでいっぱいになって、昨夜散々泣いたはずなのに、また涙が流れた。

やっぱり、私は人でなしだ。

そこまでずっと泣き続けて漸く、そんな、ふとした言葉がきっかけとなって。

最後に、思い出したかのように深い、深い悲しみがやって来た。

それは、私の消し去るべき良心が顔を出した瞬間だった。

魔術師としては有り得ざるべき涙だった。

それでも、それでも私は涙した。

桜が死んだ。

私が殺した。

私の大好きな妹。私の唯一の愛すべき肉親。

努力だけの毎日を照らす希望であった存在が、いなくなった。

彼女も何処かで頑張っているだろう、などという楽観的な推測で、自分も頑張ろう等と思っていた。

そんな私の妹は、もう居ない。

私は遂に天涯孤独となった。

もう頼れる人間はいなくなった。

私は正真正銘の一人になった。

その事実が、どうしようもなく、悲しかった。

寂しかった。

辛かった。

目の前が真っ暗になって、底の無い奈落に突き落とされたようだった。

無論、それだけでは無い。

ここまで誤魔化してきた悲しみ。

走り続ける事で無かった事にしてきた悲しみも押し寄せる。

 

「父さん……………母さん………………」

 

父を亡くし、母を亡くし、それでも強がっていたツケが回ってきた。

 

 

「桜……………さくらぁ………………」

 

そして何より、桜が亡くなったのが、一番辛かった。

そうして、そんな悲しみと孤独感に包まれたまま私はまたもや泣き続けてた。

家族の為に涙したのは十年ぶりだ。

父さんの出棺の日、綺礼に父さんの遺品を貰ったあの時以来だった。

そうして、この二日間の間泣き続けて、今ようやく目が覚めたというのに。

 

「……………………」

 

私はまた、それらに包まれそうになっている。

ガラスに映る自分を見て、再び悲しみが蘇る。

また、このまま倒れ込みたい思ってしまう。

そして、悲しみという逃避を甘受しようとしている。

あの闇は辛く、苦しいけど。

息の詰まるような閉塞感に溺れている間だけ。

その間だけ、桜に触れていられる気がするのだ。

苦しみこそが全てだったあの子に、近づける気がするのだ。

でも

 

「そうじゃない。そうじゃないでしょ、私は。」

 

だけど、それは幻想だ。

それは逃げだ。それは甘えだ。

彼女の苦しみは彼女だけのもので。

だからこそ私は前を向くんだ。

彼女の分も背負って、走り続けるんだ。

他でも無い私が、それを1番分かっている。

死者は甦らず、又、語る口は存在しない。

こちらが幾ら嘆こうと、それに赦しは存在しない。

そして、存在しないもの、有り得ないものに縋ったところで、人は何処にも進めない。

心地よい暗闇の中で停滞し、いつか朽ちていくのみだ。

停滞とは、行き止まること。

行き止まりの地点で、何も成せずに漂うのは、存在しない事と一体何が違うのだろう。

 

「……………みっともないな。私。」

 

そう言って、ガラスに映る泣きっ面の自分を打ち消す様に、両頬を自らで強く叩く。

ばちんと乾いた音が響く。

 

「……………………よし。」

 

両頬から流れるひりひりとした痛みで意識が完全に覚醒する。

同時に、今まで抱えてた悲しみも引っ込んだ。

もう十分だろう。

もう十分休んだ。もう十分止まった。

悲しみは深く、傷もまた深い。

けれど、けれど、

それでも、私はまだ動ける。前に進める。

なら、止まってはならない。

だって私は私だから。

私が私でいるために、私は前に進むんだ。

決意を込めて、部屋を出る。

もう二度と、その中で溺れないように、大きく深呼吸をして。

戦う。勝つ。その為に。

私はまた、全速力で走り出すんだ。

 

 

 

 

私室から出ると、外の外気を取り込んだかのように冷え込んでいる廊下に身震いしてしまう。

「さっむ……。先ずはシャワー浴びないと。」

とりあえずはこの酷い顔を何とかするのが急務だ。

それに、日々のルーティンをこなせば、それだけ早く元に戻れる。

そうと決まれば善は急げ。

すぐさまお風呂に入り込んで、熱いシャワーを頭から被る。

この二日間自分を縛っていたものが剥がれていくような感覚になりながら、頭、体の順番で丁寧に洗う。

そうして、お風呂から出て、体を拭き、服を着て、髪を乾かして簡単に化粧をする。

そんな一連の朝の動作が終わって、改めて鏡を覗き込むと、そこにはいつも通りの私がいた。

 

「うん。これなら何とかなりそうかな。」

 

誰に言うでもなくそう呟いて、洗面所を後にする。

さて、次は食事だ。

丸二日何も食べていないせいで、先程からお腹は頻りに空腹を訴えてくる。

確か何か食材はあっただろう。

簡単に済ませようと、台所に向かおうとした時だった。

 

「あぁ、目覚めていたか、凛。」

 

「……………………アーチャー。」

 

私のサーヴァントであるアーチャーが霊体化を解除して出てきた。

それに対して私は微妙な顔をしてしまう。

何しろ二日間彼を放置していたのだ。

ろくに命令も与えず、説明もせず、ただ引き篭っていただけの私に、きっと彼は小言を投げてくるだろう。

やれ、『二日間も放置するとは、まさか最初に私が言った事を本気にするとは思わなかったよ。お嬢さん』だの。

もしかしたら。『そんな未熟者に仕えていたとは甚だ信じられん。今からでも教会に赴いた方がいいのではないのかね。』とか言われるかもしれない。

いや、それも仕方が無い。これは全て私が不甲斐ないから招いたことだ。

ここは甘んじて、彼の説教を受け入れよう。

そうやって少し身構える。

しかし、彼の言葉はそんな私の予想とは外れて、寧ろ深刻味を帯びていた。

 

「起きがけで悪いが、早急に報告しなければならない事がある。何しろ私も先程確認したのだ。」

 

「あ、え、うん!な、何かしらアーチャー。」

 

いつになく真剣な彼に少し面食らってしまう。

いや、それだけじゃない。

彼には焦りや困惑、或いは怒りがあるように見えた。

故に、その次の言葉によって、そんな私の腑抜け切った考えは一瞬にして吹き飛ぶ事になる。

 

 

嗚呼、やっぱり

 

 

「間桐邸で大規模な火災があった。家は工房含め全焼で、生存者はいない。」

 

「…………なん、ですって。」

 

この世界は私が止まることなんて、許しちゃくれないようだ。

 

 

 

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